恍惚として唾液を味わっていたところへ、下半身から発して腰を痺れさせ、背筋を駆け上って首筋を刺激する快感が襲い掛かってきた。
あまりに唐突な快感に耐え切れなかった私は、思わず仰け反って口を離してしまう。
まだまだ味わい足りないのに惜しいことをしてしまった。もう一度、甘露を味わおう。ああ、唾液が零れる。何と勿体無い。
唇と唇を繋ぐ唾液の架け橋が滴り落ちてしまうことさえ許容できず、それを啜りながら再び唇を合わせようとする。
だが、私の唇は無情なことにサキュバスの完璧なまでに美しい唇に触れる直前で押し留められてしまった。
なぜ邪魔をするのかと、微量の苛立ちを込めてサキュバスを睨む。
「あん、そんなにがっつかないの……もっといいことをしましょう?」
だが、サキュバスは私の視線を気にした様子も見せずに妖艶な笑みを浮かべ、意味ありげな視線を下に向ける。
私もそれに釣られて下を見て、愕然とした。次いで、これから訪れる快楽への期待に打ち震えた。
「い、いつの間に……!?」
私は全裸だった。身につけていた鎧や小手、兜に留まらず、その下に着ていた衣服などはいつの間にか剥ぎ取られ、床に散乱している。
一体、いつの間に脱がされたのだろうと考えかけて、口づけをしている最中に互いの身体をまさぐり合ったことを思い出す。
私が口に夢中になっている間、サキュバスは一人冷静に私の衣服を脱がしていたのだろう。私は完全に翻弄されていた。
「無粋なことは言わないの」
「ぉうっ……!」
先端から先走りを迸らせていきり立つ男根を無造作に掴まれ、その刺激だけでも達しそうになる。
長い間女に触れていなかったとはいえ、触れただけで達させかけるとは流石はサキュバス、淫蕩にして淫靡なる女魔だった。
「ふふふ、こんなに大きくて硬いなんて……流石にレベルの高い冒険者は違うわね」
サキュバスがうっとりとした様子で私の男根を褒め称えているが、この世でこれを超える肌触りのものはないのではないかとさえ思える繊手で扱き上げられている私に、
その賛辞を受け入れて喜ぶだけの余裕はなかった。ただただ、達さないように耐えるだけである。
「うぅ……っ…!」
しかし、淫猥なサキュバスの責めに人間が耐えられるはずもない。男根の根元が酷く疼き出し、限界を告げる。
これ以上の我慢を続けることは、津波の前に立ちはだかるに等しい無駄な行為だった。
私は男根を脈動させながら、これまで抑え続けてきた全てを解放しようとした。
「あん、勝手にイッちゃ駄目……ねぇ、どうして欲しい、ジャック・ザ・レイバーロード?」
私が達しようとしているのを敏感に察知したサキュバスは男根を律動的に扱き立てる動きをそのままに、もう片方の手で根元を握り締めた。
既に達しているのに達させて貰えないという地獄の苦痛に悶える私の顔を悪戯っぽく見つめてくる。
「うっ……くっ……貴様……!」
「イカせて欲しい? それともこのまま? どこで? 手で? 口で?
 どうしたいの? かけたいのかしら? それとも飲んで欲しいのかしら?
 さぁ、よく聞こえるように、この広間中に響くほどの大きな声でお答えなさいな」
それだけでも達してしまいそうな淫蕩な笑みを浮かべ、それだけでも達してしまいそうな問いかけを発し、サキュバスが男根を扱き立ててくる。
達させて欲しいかだと。達したいに決まっている。いつまでも苦しむのは嫌だ。
どこでだと。手も捨てがたいが、やはり口だ。あの口で果てることができればどれほどの快楽になるだろうかと想像するだけで射精感が込み上げる。
どうしたいかだと。白皙の美貌を汚し尽くすのも悪くないが、精液とは身体の内に納めるものだ。是非とも飲んで貰おう。
通常ならばそれに回答することなど考えられない質問だったが、今の私に理性などほとんど残っていない。
この地獄の苦痛から解放されるのであれば、そのくらいのことはどうということもなかった。
私は、この広い玉座の間全体に響くほどの大声で恥ずかしげもなくサキュバスに懇願した。
「た、頼む、出させて、く、くれ! く、口でっ……! 飲んで……くれっ……! 頼む、お願いだっ……!」
「うふ……ここと同じでとっても素直なのね。いいわ。飲んであげる」
サキュバスは淫蕩な笑みを浮かべながら私の前に跪き、今にも張り裂けそうなほどに
怒張した赤黒い男根へと顔を近づけた。私はこれから訪れる人外の快楽への期待に身を打ち震わせた。
心なしか、男根の疼きもより強くなった気がする。
しかし、私の希望は思いも寄らぬ方向で叶えられることとなった。
「な、なぜだ……!」
淫蕩な表情を浮かべたサキュバスは飲んでやるという言葉とは裏腹に、男根の根元を握り締めたまま私への奉仕を開始した。
「だって……長く楽しみたいんだもの。それとも、すぐに終わっちゃう味気ないのがお好み? そんなはずはないわよね」
怒張し、先走りの露を零す先端に柔らかな唇を押し付けたかと思うと、
上目遣いに淫らな表情を浮かべたサキュバスは亀頭全体を濡らすほどに滴り始めていたそれを啜り上げた。
それだけで達してしまいかねないほどの快楽が下半身を貫く。
男根が痙攣して精を吐き出そうとするが、サキュバスの繊手で押さえられているせいでそれも叶わない。
だが、刺激された男根にとっては、それすらも快楽だった。
「あらあら、口では文句を言っていたのに、こっちは随分と嬉しそうにしているわね。素直なのはいいことだから、ご褒美ね」
私の顔と男根とを交互に見て淫らな笑みを浮かべたサキュバスは男根に温かい吐息をかけながらゆっくりと唇を近づけ、
あちこちに口付け始めた。唇を触れさせるだけの単純な愛撫だというのに、触れた瞬間にその部分が堪えがたい熱を
持ち始める。唇が全体を通り過ぎた後には、男根は灼熱した一本の棒と化していた。
「あん、吸っても吸ってもどんどん出てくるわね。んふぁ、美味し……ふふ、こっちも可愛がってあげるわね」
びくびくと脈動する男根の先端を啜って満足げな笑みを浮かべた、サキュバスは何と今度は私の陰嚢に手を添えた。
平常時にはさほど敏感な場所というわけでもないというのに、サキュバスの性技の冴えと私の興奮とが
そこを一つの性感帯となるほどに高め上げていた。冷たく温かい滑らかな指先にやんわりと撫でられただけで
陰嚢が収縮し、男根の先端を銜えたサキュバスの口へと先走りを送り込む。
「ふぅん、そうなのぉ……ここが好きなのね」
「な、っ、うぉっ……!」
男根が示した反応に気をよくしたらしいサキュバスは、男根に頬擦りしながら顔を動かして散々に刺激した挙句に、
私の陰嚢に口付けた。唾液と先走りで濡れ光った男根がサキュバスの美貌を汚していく光景と感触に
情欲を刺激され、ますます美貌を汚す先走りが量を増していく。
「あは……大きくて口に入りきらないわ……仕方がないから、舐めてあげるわね」
陰嚢を頬張ろうとして頬張りきれずにいるサキュバスが感嘆の声を上げ、別の愛撫に移る。
唾液で淫らに光る舌で陰嚢を舐め回し、或いは口付けるようにして吸引し、軽く歯を立て、唇で揉み込む。
一つ一つが射精一回分に値するほどの刺激を断続的に受けて、私はただただ身悶えするのみだった。
辛うじて両の足で立ってはいるが、サキュバスの頭に手を添えて支えにしているおかげなのだから世話はない。

どれほどの時を夢見心地のまま過ごしたことだろうか。唐突にサキュバスが口を離した。
何の前触れもなく快楽が喪失したことに不満と疑問を持って様子を窺うと、
目にしただけで快感が背筋を突き抜けるほど淫靡な笑みを浮かべた女が私の前に跪いている。
サキュバスは唾液と先走りの混合液で濡れ光った唇を真っ赤な舌で一舐めすると、
まるで無邪気な小悪魔のように悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
「さて、と……そろそろ本格的なのを始めましょうか」
私はその言葉に戦慄した。
私にとっては一つ一つが絶頂に至るほどの刺激だったというのに、この女にとっては単なる余興に過ぎなかったというのか。
この先に一体どれほどの快楽地獄が待ち受けているのか、それは最早想像不可能だった。
「それじゃ、いただきまぁす……」
「………!……!?……………!」
無造作に亀頭を頬張られた瞬間、尋常ではない灼熱感と共に思考が爆発した。
私は意味を成さないどころかそもそも音そのものを構成しえない嬌声を上げて、
サキュバスの淫猥な口がもたらす人外の快楽を享受した。
「あん……むふ……おっき…入りきらな……んむぅ……」
私自身これまでに経験がないほどにまで怒張しきった男根は流石のサキュバスでも手に余るらしく、
喉までを駆使して銜え込んでも半分程度しか口内に納まりきらない様子だった。
だが、そんなことは関係ない。全てが納まりきらずとも、それ自体が性器であるかのように思える最高の口がもたらす刺激と、
男根を至上の美味であるかの如く頬張る淫猥な姿がもたらす刺激は、
それぞれが単一でも男を射精に導くほどの刺激であり、それが同時に襲い掛かってきた場合の快楽が
一体いかほどのものであるかというのは言わずもがな。
私は精を吐き出してこそいないものの、既に何十回も達していた。
既に欲望を吐き出しているはずなのに吐き出すことができていないという矛盾した状態に私の心は狂いつつあり、男根の方は既に脈が硬く浮き出るほどに張り詰めていた。
「びくびくして…あぁ、まだ大きくなる………ん、まだ出しちゃ駄目よぉ……はぁ、ん、美味し……もっとぉ……」
それなのに、サキュバスは私の矛盾をまだまだ解消させてくれるつもりがないようだった。
強い力で根元を握り締めたまま、サキュバスは拷問にも等しい快楽を生み出す丹念な愛撫を続ける。
しっとりと湿った唇を蠢かせて男根の半ばを扱き立て、通常ならば痛みしか生み出さないはずの歯列で
軽く圧迫することでむず痒い官能を刺激し、ざらついた長くて温かい舌が亀頭に絡みつき、
無限に湧き出す唾液と共にねっとりと吸い付いてくる口内の灼熱した粘膜全体が男根を包み込み、
蕩けそうな快楽を私にもたらす。
想像を絶する快楽だった。サキュバスが男根を吐き出し、再び口内に誘い込むたびに射精感が込み上げてくる。
だが、相変わらずサキュバスは真の意味で達することを許してくれない。
サキュバスの挑発的な視線を感じ、恍惚とした表情を見るたびに、腰を全力で叩きつけてこの口内を思う存分に
犯したいという欲求が込み上げてくる。
だが、私の君主としての、そして人間としての自制心がそれを許さない。
完璧に納まりきらない小さな口にそのようなことをしたら、このサキュバスに一体どれほどの負担がかかるのか。
それを考えると、私だけの欲望を追及することなどとてもではないができはしない。
私はサキュバスの艶やかな髪を撫でることで気を紛らわせた。
「……あ……やっぱり……むぅふ…優しいのね、ジャック……お礼に…ん……イイコトして、あむ、あげるわ」
私が髪を撫でたことにか、それとも私が腰を振りたいという欲求に耐えていることに対してか、サキュバスは
驚いたような表情を浮かべる。
だがそれも一瞬のことで、次の瞬間には奇妙に優しい、母が子を、妻が夫を、女が恋人を見る時に
浮かべるような慈愛と愛欲と慕情に満ちたそれへとサキュバスの表情が変化した。
男根を一旦口から離して唾液の架け橋を作りながら、サキュバスは艶然としかし優しく笑った。
「じゃ、思い切り出しちゃっていいわよ。遠慮はしないで、ね?」
大きく口を開けたサキュバスは亀頭部を銜えこむと、何とそのメロンを思わせる美しい乳房で男根を
挟み込んできた。柔らかさと弾力を兼ね備えたそれをサキュバスが揉みしだくたびに形を千変万化させ、
吸い付いてくる餅肌が、辛うじて先端のみを谷間から突き出している男根を優しく、時に激しく摩擦する。
その上に亀頭までを口に含まれて優しい舌遣いで愛撫されているのだ。
「くっ、あぁぁぁっ………!」
これまでに散々に焦らされ続けた男が、この上一秒とて保つ道理がない。
私は存在自体が性技としか言い様がない豊乳の乳圧と感触、口内の粘膜による愛撫を堪能しつつ、
これまでに経験したこともないほどの精液を放っていた。
陰嚢が目でわかるほどに収縮して溜めに溜めた濃密な精液を絞り出し、男根が心臓のように脈動して
それをサキュバスの口内へと注ぎ込む。
「んぷぅ……凄い量……飲みきれるかし……ぁむん……」
なおもその巨大な胸と舌技を駆使して愛撫を続けつつ、サキュバスは喉を鳴らして私の精液を飲み干していく。
口の端から飲みきれない量を零しながらも美味そうに吸い続ける様子がとても淫靡で、
口内に注ぎ込まれた大量の精液を飲み込み、嚥下していく喉の様子がとても艶かしかった。

ようやく射精が止まった。長い長い射精を終えた挙句に中に残った精液を残らず吸い上げられたために
硬さを失った男根がサキュバスの美唇から引き抜かれ、下唇、顎と美貌を汚しつつだらりと垂れ下がった。
「はぁ……はぁ……」
数分間はあのペースで射精を続けていたように思う。虚脱感と脱力感が凄まじく、私は思わず尻餅を突いてしまった。
だが、不思議と硬い床に叩きつけられる痛みはなかった。代わって私が感じたのは、粘液質の湿り気を帯びた
座り心地のいい何かに腰掛ける感触だった。私は何か、椅子のようなものに座っていた。
「ん……? 椅子、だと…? そうか、玉座か」
それは玉座だった。私が広間に突入した際にサキュバスが腰掛けていた、豪奢な玉座だった。
私がここに座っているということは、射精を終えた瞬間に私が立っていられなくなることを見越したサキュバスが
行為の最中に流れを妨げない絶妙の動きで立ち位置を変え、私が怪我をしないように計らってくれたのだろう。
思いもかけない思いやりを向けられたせいか、自然と礼の言葉が口を衝いて出た。
「……ありがとう。貴様の……いや、君のおかげで助かった……」
先ほどサキュバスが見せた優しい表情や優しい気遣いに、私は魅了されかけているのかもしれない。
だが、不思議とそのことを不快に思わない自分がいる。同時に、それに愕然とする自分もいる。
どうすればいいのか、私の中に善と悪とは異なる新たな対立軸が生じるのを、私は自覚した。

「え……ちょっと、いきなり何を……!?」
私がかけた礼の言葉に、サキュバスはなぜだか慌てた様子を見せた。
私が礼を言うということが意外だったのだろうが、たとえ相手が何者であろうと礼を尽くす真の騎士に対して随分と失礼な態度だった。
私がそのことについて少し抗議してみようと思い立つのと同時に、サキュバスは口を開いた。
「……ねぇ、そんなことよりも、その椅子、湿ってなかったかしら?」
随分と無理のある話題転換だったが、確かにその通りだったので一応頷いておく。
「それ、ね……私のなのよ。私、貴方が扉を蹴り開けた時から、濡れ始めちゃったの……」
羞恥心か欲情か。僅かに頬を染めたサキュバスは自身の秘所にそっと指を這わせ、しばらくまさぐってから
そっとその指を戻す。その指からは透明な粘液が滴っていた。
「ほら、こんなに……ね、凄いでしょう? こんなに興奮したの、私、初体験の時以来よ……あら、興奮した?」
サキュバスがその指を口に含んで自身の愛液を啜り取る、その淫ら極まる情景に欲情して
再び屹立した男根を見て彼女は満足げに笑う。
「ふふふ、この中に入れたいかしら?」
胸を強調するポーズを取って立っていたサキュバスが、指で自身の秘所を開いて私を挑発する。
淫乱なサキュバスには不似合いなほど綺麗な桜色をしたそこは、既に充分なほどに潤っていた。
愛液が肉感的な太腿を伝うばかりか、直接床に滴り落ちてすらいた。
淫花の濃密な香りが空気中を漂い、私の情欲を刺激する。早くこの中に入りたいと、強く思う。
淫乱なサキュバスを押し倒して思うさまその秘所を貪ろうと、私は即座に立ち上がろうとした。
だが、それはできなかった。
玉座の空きスペースに足を乗せ、いつの間にか私の顔に秘所を押し付けるようにして立っていたサキュバスに両肩をそっと押さえられて押し留められたからだった。
「じゃあ、まずは奉仕して貰わないといけないわね……嫌かしら?」
私の顔の前で唾液を上回る甘露とすら思える濃厚な蜜を滴らせる秘所を開きながら、
サキュバスが扇情的に腰をくねらせる。腰の動きに連動して巨大な乳房が揺れ動くのが、溜まらなく淫らだった。
耐え切れなくなった私は、言葉ではなく行動で返事をした。
「あん……! そんなにがっつかなくても……んぅっ、逃げないわよ……ひぁっ……」
苦笑交じりの喘ぎ声が聞こえてくるが、そんなものはどうでもよかった。
今の私には、この滴る蜜をどれだけ大量に味わえるかということだけが重要だった。
豊かに萌える茂みの柔らかな感触を、そこに頬を擦り付けることで充分に味わう。
淫らなサキュバスという種族には似つかわしくない慎ましやかな陰核を唇で挟み込み、刺激を与えるたびに
漏れる喘ぎ声とひくつく太腿の動きを楽しむ。
そして、蜜を零す秘密の花弁にそれらと並行して舌を差し込み、尽きることなく湧き出てくる淫蕩な甘露を掻き出して啜る。
「あぁ、っ、はぁ……どう、んぅ、美味しい、かしら……あっ、そこ、そこぉ……!」
私の頭を抱え込んで淫声を上げるサキュバスだったが、吸っても吸っても流れ出てくる蜜液の味の方が、
声によって煽られるよりも多くの情欲を掻き立てる。口を離すことができない。
母乳を求める赤子のように、私はこの世で最も甘い蜜を貪り続けた。

「ん……ぁん……そろそろ、ぅん、いいわよ……ふぁ……」
私は顔中が愛液だらけになるのも厭わずにサキュバスの股間に顔を埋め、サキュバスの背中に回した両の手で
凄まじい弾力を持った豊満な尻を乱暴な手つきで揉みしだくことに夢中だった。
もし仮に一生をこのままで過ごせと言われたとしても全く苦にならないほどの快楽がここにはあった。
だから、私は最初、サキュバスの言っていることの意味がわからなかった。
「あら……入れたいんじゃなかったのかしら……? それとも、ずっと舐めているだけがお好み?」
上気した顔に浮かんだ妖艶な笑みを見て、ようやく私は言われたことの意味を理解した。
「……い、い、入れても、いい、のか?」
舐めるだけでも凄まじい快楽をもたらすこの蜜穴に男根を突き立てたとしたら、
どれほど破滅的な快楽がもたらされるのか。そのことを想像して更に情欲を掻き立てられた私は、
まるで童貞の少年のように慌てた答え方をしてしまう。
「ええ。貴方の好きなように、ね? どうする? 私を犯したい? 私に犯されたい?」
艶然と笑うサキュバスは私の膝の上に座り、甘えるようにもたれかかってきた。
頬を撫でる手の滑らかな肌触りが、首に回された腕の艶かしい温かさが、
筋肉質の無骨な胸板に押し付けられて形を柔軟に変える豊満な胸の感触が、
筋肉で張り詰めた腿を圧迫する柔らかくも引き締まった尻の重みが、
同じく腿を挟み込んだ股間から滴る熱い蜜のぬめりが、
これ以上の高まりはないだろうと私自身が思っていた情欲を、更に昂ぶらせる。

「ふふ、さぁ、どっちにする? 答えないとこのまま手でイカせちゃうわよ?」
込み上げる欲望を持て余して沈黙した私に業を煮やしたのか、サキュバスが男根へと手を伸ばしてくる。
それはそれで凄まじい快楽ではあるものの、やはりそれでは私の心が満足できない。
サキュバスは自分が本気であることを示すかのように男根に手を添えてきたので、私は慌てて答えた。
「待て、よせ! 答えるから! 私は……私は君を犯したい!」
「最初から決めているのなら、もっと早く答えて欲しいものね。まぁいいわ」
私の答えを聞いて満足感と不満感を等配合したような笑みを浮かべたサキュバスは、体重を感じさせない
動作で床に降り立つと優雅に寝転がり、上体を起こしたまま大きく足を開くという実に淫猥なポーズを取った。
「……いいわ。おいでなさい。好きなようにしていいわ」
その言葉が終わるのを待たずに、私はサキュバスに飛びかかった。
「ん、強引ね……」
勢いと体重によって押し倒されたサキュバスは苦笑しながら背中に腕を回して抱きつき、私を受け止めてくれた。
抱きついてくるサキュバスの温かく柔らかい身体の感触、特に私の胸に当たる胸の感触が、私をどこまでも高めていく。
私は衝動的に身体をずらし、眼前で揺れるたわわに実った果実のように大きく熟れた乳房に手を伸ばした。
パン生地を捏ねるように揉みしだき、刺激と興奮によって膨れ上がった桃色の乳首ごと乳房を頬張る。
「ぁ…ん…赤ちゃんみたい……んん、そう、上手よぉ……あぁっ……」
顔を埋めて巨大な乳房を貪っている私からは見えないが、きっとサキュバスは呆れと慈しみと情欲が
含有された淫蕩で美麗な表情を浮かべていることだろう。
馬鹿にされているようで癪に障る。私は少し見返してやることにした。
口内に含んだ乳房を歯型がつくかつかないかという強さで噛み、鬱血しそうなほどの強さで吸引し、
淫らに膨れ上がった乳首を舌先で執拗に弄ぶ。
もう片方の乳房を放置するような真似はもちろんしない。口による責めと並行して、そちらも責めている。
全体を跡がつかない程度に強い力で掴んで捏ね回し、親指と人差し指を使って愛らしくもどこか淫らな乳首を
擦り上げ、摘み上げ、捻り上げ、爪を立てる。
「あんっ、胸ばっかり……もうっ、んぅ……!」
私の頭を抱えるサキュバスの手に力が籠もる。声からも心なしか余裕が消え始めているように思える。
狙い通りに余裕たっぷりの態度を崩すことができ、男ならば誰もが一度は触れてみたいと思う美しい豊乳を
思う存分に揉み、噛み、吸い、舐められたのだから、まさに東方で言う一石二鳥というものだった。

「あっ、あぁ……ね、ぁん、もぉ、いい、でしょ……! あ、はぁう……入れ、てよぉ……んん……っ」
「あ、こら……!」
私の頭を抱え込んだまま喘ぎながら、サキュバスは脂の乗った太腿と腰を巧みに動かして男根を誘導する。
その動きですら男を達させる威力を秘めた愛撫としての役割を果たすのだから、全くサキュバスとは恐ろしい種族だ。
「ねぇっ、私を犯すんでしょうっ、ほら、早くっ、早く入れてよっ!」
秘裂の入口を男根に擦りつけながら、情欲に身体を火照らせたサキュバスが私の腰に脚を絡めて叫ぶ。
ここまでくれば私が何もせずとも交わることができるというのに、サキュバスが敢えて私を待っているのは、
一旦犯す者と犯される者の立場を定めた以上は、最後までそれを押し通そうという腹づもりだからだろう。
「うっ、わ、わかった! 今入れる、だから、そんなに動くなっ!」
それにしても、このサキュバスはどうにも気が短い。それとも、サキュバスは昂ぶると皆こうなるのか。
サキュバスは私の返答がなされるのを待つのももどかしいといった風に、その汗と愛液で滑らかに光る
贅肉の一片たりとも見当たらないほどに引き締まっている割に柔らかい、人間には有り得ない腹で扱き立ててきた。
「もうっ、早く、早くしてっ! 流れとタイミングが大事なのよぉっ、早くぅぅ!」
私はなおも腹で扱き立てようとするサキュバスを押さえ込み、溢れ出した蜜でしとどに濡れた淫花へと
遠慮も会釈も手加減もなしに、全力で男根を突き立てた。
すっかり蕩けた秘所は私の男根を拒むことがなく、それどころか深くへ誘い込むように蠕動する。
溶岩のような熱と万力のような締め付けが、私にこの世のものとは思えない快楽をもたらした。
「あぁぁっ、やっぱりぃっ、やっぱりぃっ、おっきぃのぉっ……あぁっ……!」
怒張しきった男根で秘裂を貫いた瞬間、サキュバスは快楽の叫びを上げて文字通り全身で私にしがみついてきた。
しなやかな両の腕を私の背中に回して爪を立て、脂の乗った太腿で私の腰を挟み、
引き締まった長い脚で私の背中を撫で回し、芸術品のような唇を私の口に押し付けて口付けをせがみ、
淫欲に満ちた蜜穴は全てを収めて貪るように締め付けながらも更に深くへと誘い込もうとする。
「ぐっ、あぁぁっ……!」
私はその全身を使った貪欲な要求に耐え切れなかった。
がむしゃらに全身を押し付けてより深くを目指しながら、再び大量の精液をその最奥に放ってしまった。
「あっ、あっ、出てるっ、出てるのね……! あぁっ、こんなに濃いなんてぇ……!」
一体どこにこれほどの子種が存在したのかというほどに精を吐き出した私の男根。
嬌声を上げてそれを締め付けながら淫らに腰をくねらせるサキュバスに獣欲を刺激され、
私は精を吐き出してなお硬さを保つ男根でより多くの快感を得ようと、何度も何度も激しく腰を律動させた。
最早、互いに相手にかける言葉は持たなかった。互いの情欲を刺激し合う愛撫もなかった。
あるのは、ただ結合部分からより多くの快楽を貪るための腰の動きと、互いを離すまいと
汗まみれになった互いの身体を求め合う淫らな手足の蠢きだけだった。
甘美な痛みすら感じるほどの強さでしっかりと抱き締め合ったまま、いきり立ち続ける男根の疼きが
命じるままにサキュバスの秘奥を貫き、ねっとりと蚯蚓のように絡みついてくる肉壁を堪能する。
抱き合ったまま転げ回って絨毯に汗と淫液の染みをつけ、頻繁に入れ替わる上下すら快楽の助けとし、
私達は淫欲に狂った。組み敷き、組み敷かれ、互いの体重すらも快感に変えて、私達は何度も絶頂に達した。
隙間なく男根を締め付ける肉襞の働きがなければ、私がサキュバスの胎内に放ったものが際限なく零れ出していたことだろう。

だが、そろそろ、この体位にも飽きてきた。同じ体位で何度も絶頂に達するのも、味気ない気がする。
「はぁ……はぁ……お、おい……そろそろ、体位を変えたい……はぁ…から、手と脚を……離して、くれ……」
「これで……ん、いい、かしら……?……あ、もっと大きくなってきた……素敵よ……」
絡みついていた手足を離して大の字になった美女と腰だけで繋がっているという淫らな状況に色欲を
煽られながら、私は一体どのような体位でサキュバスを犯すかを思案した。
答えはすぐに出た。
ただ繋がっているだけで達してしまいそうなほどの快感が常に私を襲っており、
悠長に考え込んでいる暇など存在しなかったからだ。
「……よし……四つん這いになれ……」
この豊満な肉体に淫乱さを備えた魔性の美女を獣のような姿勢で犯すということを想像するだけで、
その背徳的な肉体を征服したような気分になってくる。
「あんっ、もっとゆっくりぃ……」
私は腰を結合させたままサキュバスの身体を引っくり返して、豊満な尻を抱え込んだ。
少し乱暴にやりすぎたのかサキュバスが甘えたような声でやんわりと私を咎めるが、きちんと手足に
力を込めて踏ん張っている辺りから、その言葉が真意でないということが伝わってくる。
そもそも、この状況下での甘い叱責の言葉には、目の前の女を犯しているという淫靡な現実を強調する効果しかない。
「ん……乱暴にしちゃ駄目よぉ……」
サキュバスもそれをわかってやっているのだろう。繋がったままの尻を振りながら、甘い声で私を刺激する。
「よく、くぅ、言うものだ……激しく、腰を振っていた、女が……」
指が柔肉に食い込むほどの力で尻を掴み、わざと乱暴に腰を叩きつけた。
腰を引き始めると、まるで抜け出ようとするのを拒むかのように肉壁が絡みつき、肉襞が捲れ上がる。
その蕩けそうな感触に身悶えしながら更に腰を引くと、私が散々に放った白濁液とサキュバスが分泌した蜜とが
混ざり合った淫液が絡みついた男根が見え、視覚情報としての快楽を私に与える。
しかし、それに見惚れているばかりではない。
そこまでの動作をゆっくりと行った反動としての意味があるのかは私自身よくわからないが、
私は抜け出る寸前にまで引いた腰を全力で叩きつけ、最奥を目指して男根を捻じ込んだ。
「あっ、あぁぁっ! ひぃっ、んっ、あっ、そんっ、乱暴、とぉっ、激し、激しくはっ、違うっ、のよぉっ……!」
甘い抗議の声を上げながら、サキュバス自身も私の動きに合わせて尻を振って快楽を貪っている。
私の腰が叩きつけられると柔らかく変形して衝撃を吸収し、私の腰が離れようとすると凄まじい弾力で押し返す桃尻。
秘裂の上に所在なげに佇み、蜜穴が男根を締め付けるたびに連動してひくつく淡い色彩の窄まり。
これまでの昂ぶりのために噴き出した玉のような汗に濡れて光る、引き締まった白磁の背中。
その全てが私のために存在しているという現実は、溜まらなく淫靡で、溜まらなく幸福だった。
「ふんっ、それ、ならば、今のは、どう、なんだっ、気持ち、いいのだろうっ」
更に激しく腰を叩きつけ、或いはより深くを求めて腰を押し付けて尻の感触を楽しみながら、
サキュバスの魅惑の背中に問いかける。
「あんっ、いぃっ、いいのぉっ、これ、いいのぉっ、もっとぉっ、もっとぉっ……!」
私のタイミングに合わせて腰と尻を振りながら、サキュバスが正気を失ったような嬌声を上げる。
だが、快楽に正気を失いかけているのは私も同様だから、それに関しては何も言えない。
「これかっ、これが、いいのかっ、どうだっ、んっ?」
男根が精を吐き出す予兆として膨らみながら脈打つのを感じ取り、サキュバスと共に絶頂と達するべく
腰の動きを速め、覆い被さるようにして抱き締めた。
しっかりと繋がったまま速度を上げるには、これが最もいい体勢だったのだ。
「あっ、あっ、いいっ、もっとぉっ、そこぉっ、あぐっ、あぁっ、ひぁぁっ……!」
重力に従って揺れる乳房を鷲掴みにし、汗の浮いた艶かしい背中に幾度も口付け、
私はサキュバスの全身を貪り続けた。
揺れる果実を掌で強弱をつけて押し潰し、唾液と汗で濡れ光る背中に所有の証をつけ、空白が満たされることを
貪欲に求め続ける淫腔に精を吐き出す直前の最も昂ぶった男根を埋め込む。

そろそろ限界が近いのが、自分でもわかった。きっとサキュバスもわかっていることだろう。
サキュバスも私と同じで限界が近いだろうことがわかった。
ずっと繋がっていたせいか、私達は互いの身体の状態が理解できてしまうほどに心までも通じ合っていた。
「ぐぅっ、出るっ、出すぞぉっ……!」
「来てっ、一杯っ、私の、んっ、中にぃぃっ…!」
私達が絶頂に達するタイミングは、秒単位で考えてもほとんど誤差がないほどに一致していた。
男根から信じられないほど大量の精液が吐き出されたのが先か、肉穴が信じられないほどの強さで締め付けてきたのが先か。
それは考えるだけ無駄だった。正確には、考えるだけの余裕すらなかった。
私は男根から迸る精液を肉穴に注ぎ込むことに夢中だったし、サキュバスは蜜穴で男根から精液を搾り取ることに夢中だった。
互いに絶頂に達しながらも、まだ私達は互いの全てを貪り尽くそうと蠢き続けた。





完結編へ