地上に姿を現す魔界の住人、悪魔たちの中には、あえて人間に似た姿をとって現れる者もいる。
特に支配階級にある者や知性的な高位種族にその傾向が強いようだ。
この地下迷宮では上級魔族のアークデーモンや配下のヘルマスター、夢魔サキュバスなどがそれに当たる。
彼らが秩序を好む誘惑者ならば、見るからに怪物じみた姿で現れる者たちは混沌を好む破壊者と言っていいだろう。
邪神マイルフィックを始め、グレーターデーモンやレッサーデーモンなどはその典型的な例である。
彼らは地上におけるあらゆるものを破壊と殺戮の対象としか見ておらず、人語は解せても会話は成り立たず、
駆け引きをするために人間に近づこうなどとはまず考えない。ゆえに本来持つ姿のままで現れるようである。
そんな中で、恐らくは地上に降臨して初めて体型変化を図ったのではないかとすら思われる邪神マイルフィック、
どうやら再び奇跡は起こりつつあるようだ。
プリーステスは惚けたように主を見つめていた。少しだけ唇を噛む。今さら緊張しているのか思うように動けないようだ。
主もまた肉体がうまく機能していないのか、指を開いたり閉じたり肩や首を回したりしている。
もしかしたら彼は体型変化をあまり得意としていないのかもしれない。
彼女がなかなかこちらに来ないことに痺れを切らしたのか主は自ら彼女の前までゆらりと歩み寄り、ふと周囲を見渡した。
彼女はやはり惚けたように主を見つめている。もしかしたら本当に抱いてもらえるとは思っていなかったのかもしれない。
「場所ヲ 変エルゾ」
「……」
「ココハ 魔物共ノ 通リ道ダ。邪魔ヲ サレテハ 気ガ散ルカラナ」
「あ…はい。あっ」
言うが早いか主は彼女の背を片手でつかみ抱き寄せた。
収縮したとはいえ人間よりはまだまだ巨体であり(3mほど)、片腕だけで彼女の体を悠々とつかみ持ち上げたのだ。
彼女は主の鍛えられた胸板に顔を埋めた。
小鳥さんの匂いがする…。
羽毛にこもる湿気を含んだような鳥類特有の体臭……実際のところそんな穏やかな匂いではなかったろうが、
彼女にはそう感じ取れたようだ。
「マイルフィック様、どうか私たちもお連れ下さい」
溜まりかねたようにサキュバスが声をかけた。
主はすでに邪魔されたと言わんばかりにサキュバスを睨みつける。
「私もあなた様と一つになりとうございます。それに…」
サキュバスは視線をプリーステスに移した。
「彼女の最期を、どうか私たちにも拝ませて下さいませ」
「……」
主はしばしサキュバスを睨んでいたが、ふと視線を宙に移し、そのまま背を向けた。
「好キニ シロ」
何もかも計算どおりに事が進んでいることに夢魔は笑みを漏らさずにはいられなかった。すでに歩を進めている主の後を急いで追う。
マイルフィック、プリーステス、サキュバス、メデューサリザード2匹、セラフ。一時とはいえここに奇妙なパーティーが結成された。
とある玄室の片隅で一組の男女が向かい合い、それを見守るように遠巻きで外野2人と魔獣2匹が腰を下ろしている。
玄室内は湿気やカビ、埃など非衛生的な空気で淀んでいたが、先ほど蔓延していた腐臭のそれよりは格段にましな環境に思えた。
男……主マイルフィックは女が着込んでいる胸当てやプロテクターを外すべく手をかける。
女……プリーステスもまた戸惑いがちにベルトや止め金を外し、主の手により次々と防具は外されていった。
防具の下からは暗緑色の法衣が現れ、主がそれに手をかけるとプリーステスは少し躊躇いを見せそっと両の手を上に添えた。
何を今さらと言わんばかりに主は法衣をたくし上げ、彼女の頭を通し脱がせる。
法衣はそのまま敷布代わりに床に広げ、主は彼女を抱きしめゆっくりと寝かせた。その腕のたくましさに彼女は小さく吐息を漏らす。
目の前には淡いモカの下着をつけただけの女性が横たわっている。頬を赤らめ、両の手で口元を隠す姿はとても初々しく見えた。
いったん体を起こして彼女の足元に座し、主は改めて目の前の美女を眺め見た。
「何ダ コレハ」
「っ…」
主は彼女の腹部を覆っている下着をぐいっと引っぱった。
それは腹部から太ももまでをぴっちりと覆っており、絹と見紛うほど滑らかな生地でできている。
その下に同じ生地のショーツが見えた。
「…ソウカ。コレガ 俗ニ言ウ ももひきト イウ奴カ」
「あ、いえ、あの…」
「マイルフィック様、それを言うならガードルですわ」
外野の一人、サキュバスの絶妙な突っ込みに主は表情を歪める。
邪魔されたことに対する苛立ちか、知識不足だったことに対する屈辱か、不機嫌な顔を隠そうともせずサキュバスを睨みつけた。
サキュバスは戸惑うことなく言葉を続ける。
「美と健康を保つために締めるところは締めて寄せるところは寄せる矯正下着ですの」
「キョウセイ…?」
「あ、あの…あの…」
何かを必死に言いかけようとするプリーステスに主は不機嫌な顔のまま向き直る。
「主にこの身を捧げるのに、少しでも綺麗な体でいたくて…」
「……」
主はしばしプリーステスを見つめた。
不機嫌だった顔がいったん無表情になったがより一層不機嫌な顔になった。
「エエイ、イチイチ 愛イ 奴メ!」
「え…あっ」
主は強引にガードルをショーツごと脱がし彼女の目の前にちらつかせた。
「コンナ異物デ 肉体ヲ 締メツケルナ!血ノ巡リガ 悪クナルッ」
そのまま下着を放り投げ、ことさらに不機嫌な顔をプリーステスに近づけた。
「肉体ヲ 締メタイノナラ 鍛エレバ ヨイノダ。我(われ)ガ 鍛エテヤル。ダカラ」
彼女の太ももをがしっとつかむ。
「コノママデ イロ」
「…はい」
プリーステスは突然のできごとに反射的に返事をしてしまったが、すぐにあふれんばかりの笑顔に変わった。
「はい、あなた様がそう仰るのなら」
「〜…ッ」
主はますます表情を歪めた。
我はいったい何を言っているのか。この小娘に明日などないというのに。
少しだけ動揺している。
これから得られるであろう甘美な快楽を前に、少なからず彼も浮かれていたのかもしれない。
主は彼女の足を開かせ間に割り込み、覆いかぶさるようにして抱きしめた。
そのまま彼女の左肩に顔を沈め長いコバルトブルーの髪に埋める。湿気を帯びてはいたものの、髪は女性特有の甘い香りがした。
彼女はされるがままにおとなしくしていたが、足を開かれたことが恥ずかしいのか膝を折り曲げ内股気味に浮かせている。
その初々しいしぐさに興奮してか甘い香りに刺激されてか、恐らく今までこんなかたちで関わったことはなかっただろう人間の雌を前に
雄はいよいよ肉欲を露にした。
我が物にせんが如く4枚の翼をばさっと広げ包み込むように閉じると、右腕で彼女の肩を抱き上げ左腕をその胸元に伸ばす。
淡いモカのブラジャーを上へずらしつつ露になったふくらみをつかみゆっくりと揉みしだいた。不意の刺激に彼女が小さく反応する。
「ん…」
さながら生クリームに触れたかのような柔らかさに主はなおもその乳房を手の内で弄んだ。
サキュバスに比べれば彼女のそれはやや小振りだったかもしれない。
だが前回は体格差のために満足に触れることができなかった分、彼にとってはじゅうぶん興味をそそる対象だったようだ。
乳房の先端にあるピンクの突起を指の腹ですりつつ主は彼女の首筋に口づけ舌先でなぞった。
「あぁ…」
彼女は思わず吐息を漏らした。生涯をかけ崇拝する主にこの身を求められているという実感に全身をぞくぞくと興奮が走る。
主は構わず彼女の首筋に、耳に、頬に、口づけを移していく。そして正面まで来たところでじっと彼女を見つめた。
そこには頬を朱色に染め、恍惚の表情を浮かべた美女の姿があった。優しく扱っているためか恐怖は露ほども感じられない。
彼女もまた、わずかに呼吸を乱しながらも潤んだ瞳を主に向けた。
そこには一切の感情が読み取れない無機質な眼球に、尖った耳の近くまで裂け上がった獅子の顎を持つ禍々しい姿があった。
だがそれすらも愛おしいと言わんばかりに彼女は目をそらすことなく主を見つめ続けた。
「……」
「……」
二人はしばし見つめ合っていたが、ふと主が顔を近づけ彼女の色づきのよい唇に自らのそれを重ねた。
「ん…」
獅子の顎と人間のそれを重ねるには構造上あまりに適していない、そんなもどかしさすら楽しむが如く二人は唇を重ね合った。
舌を絡ませ、唇を舐め合い、不器用ながらもちゅくっちゅぷっと淫らな音を立てて互いの興奮を高めていく。
主は彼女を抱き起こし、いったん唇を離すとブラジャーを外すべく手をかけた。
彼女も次第に状況に慣れてきたのかそれを手伝うべく両腕を背に回しホックを外す。淡いモカのブラジャーがぱさりと床に落ちた。
生クリームのような白く柔らかい乳房を前に、主は改めて彼女の裸体を眺め見た。
しなやかな腕や腰、しかしつくべきところにはしっかり肉がついており、全体的に丸くて柔らかそうな印象を与えている。
それらの肌すべてが白く透き通っており、思わず傷つけたくなる衝動に駆られる。
太もものつけ根にはわずかに青みを帯びた黒く柔らかな陰毛に覆われた秘部が見える。
上から下まで見られていることに恥じらいを見せつつ、彼女もまた主の鍛えられた肉体を上から下まで見つめた。
その視線に気づいたのか主は再び彼女を左腕で抱きしめ押し倒し、自らは隣にずれつつ彼女の乳房に口づけ先端を口に含んだ。
「あっ」
びくっと体を震わせる彼女をよそに右手でもう片方の乳房を揉みほぐす。
「っ…」
行為をするごとに敏感に反応する彼女に主は口の端を吊り上げ、右手を胸元から腹、下腹部へと滑らせていった。
彼女は思わず両の手をその上に添える。だが抵抗しているわけではないようで、主の手はそのまま彼女の秘所に触れた。
「あっん…っ」
指の腹を使い上から下までラインを沿うようになぞる。彼女にはよほど刺激が強かったのか、それだけで体をびくびくと震わせた。
秘所はわずかに濡れていたが、刺激が足りないのかまだ受け入れ態勢はできていないように思えた。(サキュバス比)
主はもっとよく彼女のそこを見ようと口づけを乳房から腹部へ下ろしていき、再び足の間に割り込む。
彼女は切なげな声を上げ両の手で顔を覆った。
今まで誰にも見せたことのないだろう最後の砦を、生涯をかけて崇拝する主に一番に見られるということが、求められるということが、
彼女にとってどれだけ幸せで、満たされて、恥ずかしくて、興奮して、怖くて、後ろめたくて、気が狂いそうになるかを主は知らない。
主は彼女の足の間に顔を寄せまじまじとそこを見た。
そこは熱を帯び、愛液で潤い、乳房の突起と同じ健康的なピンク色をしていた。見るだけで感じてしまうのか時折ひくっと動く。
彼女の体全体から発しているのか、雄を誘う雌の甘い香りが主の鼻をくすぐった。
野生の香りとも言うべきその甘さを堪能しつつ、さながら実験観察でもするが如く主はじっとそこを見つめた。
その時間が彼女にとってはたまらなく長かったようで、手で覆った顔をいやいやと振りながら何度も足を閉じようと力を込める。
それを両の手でやんわりと遮り、主はそっとそこに口づけた。
「あっ」
彼女は思わず腰を浮かせた。とっさに足を閉じようとするも主の手につかまれさらに大きく開かれる。
「あぁっ…」
その合間にも敏感な谷間を幾度となく舌先で舐められ濡らされていく。
彼女は全身に電撃が走ったかの如く体をびくびくと痙攣させた。もしかしたら軽く達してしまったのかもしれない。
主は構うことなく舌先で上から下まで舐め回しては秘所の奥へ突き入れようとする。
「やっ…だめっ…あぁっ!」
彼女は艶かしい喘ぎ声を上げ首を振り、刺激から逃れようとしているのかさらなる刺激を求めているのか腰を淫らにくねらせた。
顔を覆っていた手も下に持っていき主の頭や手に添える。その手に自らの手を絡ませ、主はさらに舌を奥深くへと突き入れた。
「ああぁぁあっ」
彼女の体がびくんとはねた。全身に力が入り、絡ませていた手をぎゅっと握る。
主が顔を離し彼女を見やると、彼女は目に涙を浮かべ荒く息をついていた。全身の力が一気に抜けたのか力なく手が離れる。
あまりに脆すぎる…。
こんな調子では先が思いやられると半ば呆れつつ、主は次第に潤い始めた彼女の秘所に再び右手の人差し指を伸ばした。
「っ…!」
傷はふさがったものの神経部分までしか再生されていない爪は、ちょうど人間が短く切りそろえたような丸みを帯びた形になっている。
なおも敏感に反応する彼女をよそに、主はその熱く潤った胎内に躊躇なく指先を挿入した。ぬぷっとわずかに水音が聞こえた。
「あぁっ!!」
きつい。あまりにきつすぎる。人差し指1本ですら侵入を拒むが如く強く締め上げてくる。
少しだけ前後に動かそうとするもその度に全身に力が入るのか、彼女はびくびくと痙攣しなおも胎内をきゅうきゅうと締めつけた。
かき回していればそのうち程よくなるかと主はしばし彼女の体を弄びよがり狂う姿を楽しんだ。
「やっあぁっ…っあっ」
指1本で蹂躙しているという征服感と感じさせているという興奮……いつの間にか主は下半身を露にさせていた。
それはすでに硬くなり、先端は濡れ、上を向き始めている。肉欲に駆られるまま、主は彼女に挑発的に問いかけた。
「コンナ細身デ 我ガ肉体ヲ 受ケ入レルツモリカ?」
「っ…っ」
このままでは主に抱いていただけない…。
彼女はとっさに罪悪を感じたのか、少しだけ体を起こし何かを訴えるようなまなざしを主に向けた。なおも体を起こそうとする。
今までずっと無抵抗だった彼女が自ら動き出したことに興味をそそられたのか、主はいったん指を引き抜いた。
指は愛液で潤った中わずかに赤い血が混じっていた。粘膜を傷つけてしまったのかもしれない。
そんな事態にも動じず、彼女は座り込んでいる主の下半身に目を向け、硬くなっている男根をしっとりとした指先でそっと触れた。
主は少し反応したが、黙ってその様を見続けた。
彼女は正座に座り直し、顔を近づけ、さらりと落ちる長い髪を耳にかけ、両の手でそれを包み込み、戸惑いがちに、それでいて
堂々と先端を舌先でくすぐったのだ。
「ッ…」
「んぅ…?」
主はとっさに彼女の頭をぐいっと離させた。
「あ…」
彼女はふいの行為に驚き主を見上げた。
一切の感情が読み取れない眼球、これまでかろうじて感情が表れていた口元も今は固く閉じられ何も読み取ることはできなかった。
拒まれた…。
彼女は目に涙を浮かべ主を見つめた。
「主よ、どうか、私の中に…」
涙を抑え切れず、ぽろぽろと頬を伝って落ちる。
「どうか、どうか下さいませ…っ」
「……」
子どものようにぽろぽろと涙をこぼす彼女を前に、主は何を思ったのだろうか、再び彼女を強く抱きしめ押し倒した。
「あぅっ…」
少しだけ体を起こし自ら男根に手を沿え、彼女の秘所に押しつける。
肩越しに向き合っているため互いの顔は見えないが、主が彼女の中に入ろうとしているのはひしひしと伝わってきた。
主の呼気は乱れている。
あぁ、主よ…!
彼女は言いようのない喜びと切なさに襲われた。
同情でもいい、求められたからじゃなくてもいい、無様で愚かな人間で構わない、最期に主に抱いていただけるのなら…!
胸が熱くなり、なおも涙が頬を伝い落ちた。
だが主はなかなか挿入しない。固くそそり立った男根は彼女の秘所をこすり上げる。
それだけでも彼女にはじゅうぶんな刺激だったが、高ぶった興奮と衝動は彼女をさらに先へと走らせた。
「主よ、どうか焦らさないで……どうか、ここに……」
彼女は両の手でそっと男根を沿え、自ら足を大きく開き、秘所の奥へと導いた。
主が彼女を見た。彼女もまた主を見つめた。
互いに視線がぶつかった刹那、太くて硬いそれが彼女の狭くきつい中へと押し入る。
「はぁ…あっ!!」
「グ、ゥ…ッ!」
ぐちゅりと卑猥な水音を立て、それは奥深くへと突き刺さった。
マイルフィック様は前でされるんだわ…!
メデューサリザードの尻尾のじゅうたんに腰を下ろし、両の太ももに顔を寄せている彼らの頭をなでながらサキュバスは確信した。
でもやけに優しく扱うのね…。あ、もしかして、処女だから…?あーもうなんて紳士的なお方!?
次々と見えてくる新たな発見に興奮が走る。
時折メデューサリザードたちの喉元をくすぐったり尻尾の裏側をなで回したりするあたり、彼女も相当体が疼いているようだ。
「あなたも加わらないの?」
すぐそばで同じく尻尾のじゅうたんに腰を下ろしていたセラフが溜まりかねたように問いかけた。
「ダメよ、主は今あの子に夢中だわ。そんなときは邪魔にしかならないの」
絡み合っている二人から視線をそらさず、サキュバスは答える。
「体を感じさせることはできるけど、心を感じさせたいのよ。それほどあの方は魅力的な男性だから」
「魅力的……ね」
セラフはよくわからんと言わんばかりに軽く言葉を切った。
「あなたこそ加わらないの?」
サキュバスは視線をいったんセラフに向け逆に問いかけた。
セラフもまた絡み合っている二人から視線をそらさず答える。
「私があなた方に同伴したのは別の目的があったため。このような情事は目的外だ、終わるまで傍観させてもらう」
「ふぅん?傍観……ね」
サキュバスはもったいないと言わんばかりに軽く言葉を切った。
「クゥゥゥ…」
サキュバスの左の太ももの上で頭をなでられていたメデューサリザードが小さく鳴いた。
もう一匹も右の太ももに頬をこすりつけている。
「なあに?あなたたちも我慢できなくなっちゃったの?」
「クゥゥ…」
鳴いたほうのメデューサリザードが体を起こし、鼻先で彼女の秘所をつついた。
「あん。ダメよ」
「クゥ…」
一歩下がり全身を地に伏せるも視線はずっと彼女をとらえている。
頬をこすりつけていたメデューサリザードも上目づかいに彼女を見上げた。
「…もう、しょうがないわね。それじゃマイルフィック様の前にあなたたちを感じさせてあげる」
セラフが思いっきりこちらに振り返った。
サキュバスはすでに体を倒し、全身を地に伏せていたメデューサリザードに絡ませなで回している。
「クゥゥ…」
頬をこすりつけていたメデューサリザードも小さく鳴いた。
サキュバスは妖艶に微笑みそっと後ろを指さした。メデューサリザードが振り返ったその先にはセラフの姿があった。
「あなたはあそこで傍観者を気取ってる彼女を感じさせてあげて。きっと彼女も体が疼いてどうしようもなくなってると思うわ」
「なっ!わ、わたしはそんな趣味はないっ!!」
セラフは思わず一歩後ずさった。メデューサリザードは彼女を見つめながらじわじわと近づいてくる。
セラフはなおも後退した。寒くもないのに全身が総毛立つ。
本来爬虫類は同種の爬虫類にしか発情しないはず!いったいこの夢魔はこいつらにどんなしつけをしてきたんだ!!
壁に背が当たった。横に逃げなければと思うもなかなか機がつかめない。
空を飛んだら最後、一瞬のうちにその長い尻尾に巻きつかれてしまうだろう。逃げ場のなさにセラフは息を呑んだ。
「石化がっ」
「大丈夫よ。この子たちはとっても賢いの。狙った相手以外は石化させたりしないわ」
「グェッグェッ」
セラフは思った。こんな魔獣にヤられるくらいなら石化されたほうがましだったかもしれない。
「あぁん、ダメよいきなり挿れるなんて」
そんな彼女の思考をぶち破るかの如くサキュバスともう一匹の魔獣はすでに行為に至っていたようだ。
「あんっ」
見るつもりはなかった。決してなかった。たまたま見えてしまったのだ!セラフは自分に強く言い聞かせた。
瞬間飛び込んできた光景は思わず目を覆いたくなるほど怖ろしく淫らな光景だったのだ。
長い尻尾のじゅうたんに横たわる白い肌の美女の上に不釣合いなほど青い肌、否、鱗を持った魔獣が乗っかっている。
美女は腕を魔獣の背に回し強く抱きしめ、足も大きく開き尻尾に絡ませている。
魔獣もまた後ろ足を美女の腰に回し下半身を密着させ、前足は重みをかけないためか半分立たせ、頬を彼女に寄せている。
そして時折大きく腰を揺する。その度に美女が甘く切ない声を上げ体を震わせるのである。
「あぁん、あなたのふとくてかたぁい。あぁだめゆすらないで、おくまでとどいちゃってるぅ」
美女はセラフに見せつけるかの如くことさらに甘い声を上げた。セラフは思わず顔を背ける。
だがもう一匹の魔獣はすでに彼女の足元まで来ていた。
彼女を見上げては小さく鳴き、足首に頬をすり寄せる。その肌の冷たさにセラフはぶるっと身震いをした。
なぜあいつはこんなトカゲとヤることができるのだ!
だが当のトカゲは足首に頬を寄せたり鼻先でつついたり時折小さく鳴いたりするだけでそれ以上のことはしてこない。
強引に襲う気はないようである。
まさか、私が承諾するまでこいつはずっとこのままでいる気なのか?ならば私が最後まで応じなかったら…?
「あぁん、すごぉい、あ、あ、いっぱいでてる。エッチなのが私のおくにいっぱいでてるぅっ」
突如飛び込んできた刺激的な台詞にセラフは下半身がぞくりと疼いたのを感じた。秘所が濡れ始めているのだ。
そんなバカな…。
「もう、こんなにいっぱい出しちゃって。お仕置きよ。今度は私があなたを犯してあげる」
「クェェッ」
ずり、ずず、するするという肌のこすれ合う音にセラフは視線をそらし続けることができず、再び見てしまった。
そこには魔獣の上に乗っかって腰を淫らに動かす美女の姿があった。
魔獣は仰向けの体勢のままでは落ち着かないのか懸命に体を反転させようともがくが、最終的に彼女の体にしがみついた。
彼女も魔獣の背に再び腕を回し抱きしめ、座位のような体勢で腰を上下に打ちつける。
ぐちゅっじゅぷっと卑猥な水音を立て魔獣のそれが美女の中を出たり入ったりしているのが目に飛び込んできた。
魔獣のそれは鱗の色に反して淡いピンク色をしており、彼女に動かされるのがたまらないのか後ろ足は広げたままでいる。
彼女にしがみつきまぶたを閉じている姿はさながら必死に快楽に耐えている男のようだった。
「あ…あ…」
あんなに奥まで入っている…。あんなに激しく動かして、あ、あんなにぐちょぐちょに絡み合って…!
セラフは今度は視線をそらすことができずにいた。時の経つのも忘れ小さく息を呑む。
足元の魔獣は相変わらず頬を足首にすり寄せ小さく鳴いている。
先ほどまであれほど悪寒が走り身震いしていたというのにいつの間にか気にならなくなっていたことにふと気づく。
セラフはぶるぶると首を振った。どこか逃げ場はないかと懸命に視線を彷徨わせる。
だが右手には神と人間が絡み合い、左手には先ほどの魔獣と悪魔が、そして足元にはもう一匹の魔獣が自身を求めている。
天を見上げるしかなかった。
「何を躊躇ってるの?大丈夫よ、遺伝子の構造が全然違うから赤ちゃんはできないわ。
それに人間と違ってこの子たちのおちんちんはとっても清潔よ。排泄口とは別だから病気の心配もないわよー?」
「そーいう問題じゃないっ」
何の躊躇いもなく誘惑するサキュバスにセラフは大きな声で否定した。
目のやり場のなさに両の手で顔を覆いぎゅっと目を閉じる。
「もったいないわね。ねえ、あなたもそう思うでしょ。あ、ああん…」
再びサキュバスの艶かしい喘ぎ声が聞こえた。目を閉じれば耳がさえるのか、神と人間の呼吸の乱れすらも聞こえてくる。
ああ、もう…!
セラフは下半身の疼きを抑えられなくなっていた。とにかくこの不合理な衝動と焦燥をどうにかしたかった。
「……」
「クゥゥ…?」
視線を向けられていることに気づき、足元の魔獣は上目づかいでセラフを見上げた。
セラフは切羽詰った表情で魔獣を見下ろしている。
「クゥゥゥ…」
魔獣は鼻先で彼女の足首をつつき、行ったり来たりをし、再び頬をすり寄せる。
さながらおねだりをしている子どものようである。
「あぁん、すごぉい、またこんなにいっぱいだしてぇっ」
遠くで二回戦を終えたらしい甘ったるい声が聞こえた。
「…あぁ…」
全身の力が抜けてしまったのかセラフはその場に崩れ落ちた。途端に膝の上に乗っかってきた魔獣に思わず声を荒げる。
「犯すならさっさと犯せばいいだろう!下手に優しくするんじゃない!!」
「クゥゥゥゥ…」
それでも魔獣は無理に彼女を襲おうとはせず、膝の上に乗っかったまま淡い緑色の衣に頬をすり寄せ上目づかいで見ている。
ああ、もう…。
セラフは思った。このトカゲ、よくよく見ればかわいいのかもしれない。
目の前に広がる淫靡な光景に彼女の最後の理性はもはや崩壊していたのだろうか、やけに投げやりな思考になっていた。
もうどうにでもな〜れ。
主マイルフィックとプリーステスはじっと見つめ合っていた。互いに苦痛の表情を隠せないでいる。
主の男根は彼女の胎内に半分ほど挿入されたままである。
さらに突き入れるでもなく、抜くでもなく、半分ほどという中途半端な状態のまま二人は見つめ合い止まっているのである。
「何この初々しい空気…」
メデューサリザードとの行為を終え、再び太ももの上に顔を寄せる彼の頭をなでながらサキュバスはつぶやいた。
「ま、まさか、そんな、もしかして、マイルフィック様って……は……は……」
初めてでいらっしゃるのかしら!
「…グゥ…ッ」
主は体をかがめると彼女の顎をくいっと持ち上げ口づけた。
「んっ…」
ことさらに優しく口づけを交わす。彼女の頬に、目に、額に、そして唇に。
彼女もまた唇を寄せ主の口づけを求めた。
何度か交わし合ううちに緊張がとけたのか、彼女の体から力が抜けていった。きつく締めつけていた胎内も少しだけ緩まる。
その隙をついてか主は一気に彼女の奥へと突き進んだ。
「あぁっ!!」
「ッ…!」
肩をつかみ、さらに奥へと突き入れる。その度に彼女の体が大きくはねた。
「っ!!っ!!!!」
彼女は懸命に声を抑え激痛に耐えている。主もまた表情を歪ませ、何かに耐えているかの如く全身に力を込めている。
しばしの後、二人は動きを止めた。互いに呼吸を大きく乱し、再び見つめ合う。
彼女は目に涙をあふれさせていた。それでいて懸命に笑おうとする。そのしぐさをしばし見つめ、主は彼女の涙を手で拭った。
「…我ヲ スベテ 受ケ入レタカ」
ぽつりとつぶやく主に、彼女は激痛にさいなまれながらも不思議な表情で見つめた。
主が視線を下に向けたのでその先を追うと、互いにつながっている場所が見えた。彼女は思わず頬を赤らめ視線をそらす。
これだけの体格差がありながら、彼女は主の男根をほぼ根元まで呑み込んでいたのである。
「存外 淫ラナ 娘ナノダナ」
「や…ん…」
彼女は思わず両の手で顔を覆った。無意識に足も閉じようとするも主の腰に阻まれてできない。
それ以前に足がうまく動かせない。さながら神経が麻痺しているかのようだった。
主は意地悪い笑みを浮かべ彼女の腕をつかみ顔から離させた。そのまま指を絡ませ地に固定し、ことさらに彼女を見つめる。
彼女は激痛と至福と恥ずかしさと、様々な感覚や感情が混ざり合い体中が熱く火照るのを感じた。
あぁ、体が溶けてしまいそう…!
一目だけでいい、お会いしたいと願っていた主が、今目の前に、こんなに近くに、私を見つめ、私と手を取り合い、
私と一つに解け合って下さっている…。
なんて幸せなのだろう…!!
激痛に耐えられずにあふれ出ていた涙がいつの間にか至福のそれに変わっていた。
挑発するが如く見下ろしていた主に、彼女は優しく愛しげなまなざしで微笑む。
主は驚きと戸惑いを隠せなかった。
間違いなく今も続いているはずの激痛の中、彼女はその加害者である主に微笑みかけたのだ。
「…何ガ、オカシイ」
主は苛立ちと疑惑をこめ低く重い声を発した。
彼女は戸惑うことなく主を見つめたまま言葉を返す。
「…嬉しいんです…」
「嬉シイ…?」
彼女は微笑んだまま言葉を続けた。
「主とこうして一つに解け合えたことが、こんなにも嬉しくて、幸せで、私…っ」
「……」
再び涙がつつっと頬を伝い落ちた。声が少し震えている。彼女はそれ以上言葉を紡げないでいるようだ。
何なのだ、この娘は…。
主は絡ませていた手をほどき、肘を立てて少しだけ体を起こした。とっさに下半身に視線を滑らせる。
肉体は完全につながっている。入るはずもない最奥まで強引に押し入ったのだ。間違いなく今も彼女に激痛や苦痛、屈辱を与えているはず。
いったい何なのだ、この小娘は…。
彼女は自由になった手をそっと主の腰に添えた。思わず自身を見る主に心の底から優しく微笑む。
何ナノダ…。
疑惑の表情を隠せないでいる主をまっすぐ見つめ、さながら独り言の如く彼女はゆっくり言葉を紡いだ。
「かつて地上にいらっしゃった神々は、私たち人類を置いて皆天界に移動され、誰一人その御姿を見せては下さらなくなった」
突然何を言い出したのか、この小娘は…。
「そんな中、異界の神でありながら、重き封印に縛られても、このような不自由なお体にさせられても、それでも私たちの世界に御姿を見せ
私たちの心に、記憶に、大いなるお力で働きかけて下さる…」
再び声が震える。彼女の瞳は潤んでいた。
「遠い古の時代からずっとずっと私たちのお傍にいて下さった……誰よりもあなた様こそが、私の絶対なる主でございます」
「……」
主…。
「…救イヲ 求メル相手ヲ 誤ッタノデハナイノカ?」
「いえ、いえ、私を絶望と孤独から救って下さったのは他ならぬあなた様です…!」
「……」
「私を救って下さった……私は決して一人ではないことを教えて下さった……」
「……」
彼女は天を見上げながらゆっくり言葉を続けた。
「欲のために誰かを傷つけて生きていく人も、傷つけられて恨みや憎しみを抱く人も、人のことなど何も気にかけないで生きる人も、
私を地の底に突き落としたあの人も、それでもあの人は崇高な方なのだと信じたがっていた私も、皆等しく滅ぶべき愚かな存在だった。
私だけが不幸で孤独で特別なのではなかった。みんな等しく、滅ぶべき存在だった」
「……」
「神の御手を離れ、人類はあまりに愚かな道を歩みすぎてしまいました。
本当は、神が私たちを置いていってしまったときに気づかなければならなかった。省みなければならなかった。
それなのに、しなかった。今も、していない」
「……」
「だから主は来て下さるのでしょう?私たちに、その愚かさを教えて下さるために。気づかせて下さるために。
私たちがあまりに愚かで馬鹿だから。だから、滅びという救いを与えて下さるために、何度でも来て下さるのでしょう…?」
地上の神々ですら私たちを置いていってしまったというのに…!
人間共の、ため…?
違う…。
まったくもって違うこの娘はいったい何を言っている。
我はそんなに崇高な存在ではない。我はただ、我を追放した者共に……愚かな人間共ニ……我ハ、タダ……。
「ずっと、主に恋をしていました…」
ぽつりと告白し、彼女は憂いと悲しみを帯びたまなざしを主に向けた。
初めて彼女を見たときに見せたあのもどかしいまなざしである。
「申し訳、ありません…っ」
再び涙があふれ幾度も頬を伝い落ちる。
「私などのために主のお体を、そのお姿を汚してしまいました……どうか、どうかこの卑しいプリーステスめを、お許し下さい…っ」
「……」
「私、私、は……幸せです……っ」
「…………ッ」
腰に甘い痺れが走った。今まで感じたのことのない快感が全身を優しく包み込む。
体が熱い、熱イ…。
アァ…。
「ア…アァ…ッ」
「?…」
「ハァ…ッ」
主は無意識に腰をよじらせた。
「あ…っ」
彼女は未だ胎内に残る鈍い痛みに顔をしかめる。
主は体を倒し全身を彼女に密着させた。肩をぎゅっと抱き寄せ、どこにも行かせんと言わんばかりに強く抱きしめる。
彼女はびくっと体を震わせた。
「んっ…」
「動クナ コノママデ イロ…ッ」
「は、はい…っ」
主は彼女を強く抱きしめたまま何かに耐えているかの如く体を震わせている。
彼女もまた必死に痛みに耐えようと主の腰に回していた手を強く引き寄せ全身に力を込めた。
刹那、主が低く呻いた。
「あ…」
胎内に熱いものが流れ込んでくるのがわかった。
主はずっと呻き声を上げ続け、無意識なのか彼女に何度も何度も腰を打ちつけていた。
胎内を抉られる激痛に表情を歪めながらも、胎内を満たす熱さに彼女は感じていた。
ああ、私の中に注がれている…。
これが、神の愛…!
射精が終わったときには彼女は充足と幸福で満たされていた。
それは痛みを忘れるほど甘美なひと時であった。
「主よ、どうかしばらくこのままで…」
声をかけるも主は彼女を強く抱きしめたまま顔を上げなかった。呼気がひどく乱れているのだけは伝わってきた。
彼女はそっと主の背に腕を回し優しく抱きしめ、いつまでもこのひと時が続いてほしいと、決して叶うことのない願いを口にした。
「どうかもう少しだけ、あなた様をお傍に感じさせて下さい…」