ローンローンターイマゴー、これから語られるのは我々が知るあの世界に酷似した別の世界でのおはなし。
あえて言うならリルガミンがトレボーの城塞都市とは別の都市という世界でのおはなしである。


「登録完了しました、ようこそリルガミンへ!」
登録を終えた冒険者に窓口の係員がにこやかに微笑む。
「ああ、ご苦労さん」
「あんがとなー」
人間のサムライとドワーフのプリーストは窓口に礼を述べると、悠々とその場を後にした。
「次の方どうぞー!」
その後ろで別の冒険者を呼ぶ声がした。

「あーこりがリルガミンっか、前の街より兵隊いねぇな」
「だけどこないだまでは魔物がウヨウヨしてたんだぜ?それが今じゃこの賑わいだ。たくましいねホントに」
「いないよりはいいよー、それよか酒場いこう酒場、リルガミンの酒飲ましちくりー!」
「お前は酒のことだとやたら急かすね、また飲み過ぎんなよ」
「いいから早よー、早よー!」
急かすドワーフにサムライは苦笑しながら、共に酒場へと足を進めていった。


 かつてこのリルガミンはニルダの杖によってあらゆる侵略や災害から守られた平和な都市であった。
だが、その平和はリルガミンにて生まれた魔人、ダバルプスの反乱によって脆くも崩れ去った。
奇跡的に助かった王族の1人、アラビク王子によってダバルプスは討たれたが、ダバルプスの最期の呪いは
王子の命を奪い、己が造り上げた魔物の巣窟にニルダの杖を封印した。
リルガミンに真の平和を取り戻すには、巣窟の地下奥深くにあるというニルダの杖を
地上に持ち帰らなければならないという。
最後の王族、マルグダ王女はリルガミンの内外から冒険者を募り、魔の巣窟からのニルダの杖の奪還を要請した。
かくして冒険者たちが次々にリルガミンに集まりだした。
それは冒険のためであったり、名声欲しさであったり、あるいはリルガミンを救いたい一心であったり。
思惑は様々あれど、多くの冒険者が巣窟に挑んでいった。
そして今日も新たな冒険者が続々とリルガミンを訪れるのであった。


「おー!着いたどー!」
先に酒場に着いたのはドワーフだった。
店内は先客で賑わっており、サムライとドワーフはカウンターの方へ案内された。
2人はさっそくジョッキを注文すると、ささやかな祝杯を挙げた。



「ところでよ、こんなウワサ知っちるか?」
ジョッキを3杯空けたころ、ドワーフがサムライに切り出した。
「どんな噂だよ」
「リルガミンじゃよぉ、転職で忍者になれるのはノームだけだってよ?」
「え?なんだそりゃ?」
「なんでもさ、目一杯鍛えても忍者に必要な能力に届くのノームだけっちよ。そりだけじゃね、前のとこじゃ
オリらドワーフやどんな種族でも目一杯鍛えりばちゃんとシーフでやっちけたのに、リルガミンじゃホビット以外は
みんな使えねぇっちよ」
「なんだか妙なことになってんな。つか誰だよ、そんなこと言ってんのは」
「オリたちの前にリルガミンに行ったベレンだよー。オリたちが出発する前の晩にリルガミンから出戻っちきちったって」
ベレンという名に、サムライの脳裏にあるドワーフの顔が浮かび上がる。
ドワーフのくせにシーフに就いているという変わり者だ。
パーティーで一緒になったことはないが、相方のドワーフとは飲み仲間なのは知っていた。
リルガミンで冒険者を募る話を聞き、真っ先に行ったベレンがよもや城塞都市に舞い戻っていたとは。
「アソコじゃオリはクズだカスだ役立たずだって泣いちてたんだよー、だからオリもずっと一緒に飲んでたんだよー、」
「ああ、そうかい…」
サムライは相方のドワーフと最後まで飲み明かしたことがない。
飲み比べではドワーフにまったくかなわないからだ。だからいつも途中で酒席を外している。
その晩はサムライが帰った後から入れ違いにベレンがやってきたのだろう。相方の話を聞き、サムライはそう解釈した。
「ベレン今ごろどうしちるかな、元気にやっちるかな、」
「あいつ次第かな。プリーストなら前向きにいい方に考えろ」
「そっだな、神様、どうかベレンが元気になるますように」
敬虔なプリーストでもあるドワーフはジョッキに両手を合わせ、小さく祈った。
サムライも相方の友人の為に心の中でささやかに祈った。

空けたジョッキが20杯に達した頃、突然サムライが立ち上がった。
「どしたァ?もう飲めねぇっちか?? ヒック!」
赤ら顔のドワーフがサムライにたずねる。
「今から地域経済の発展にささやかな寄与をしてくる」
「何わけわからんこと言ってんだ、おめーはメイジかよぉ」
完全に酔っ払ったドワーフを残し、サムライは酒場から出て行った。



 外はすっかり陽が落ちて、通り沿いに並ぶ店舗からの明かりが往来を照らしていた。
サムライは酒でクラクラしそうな頭に活を入れ、行き交う人々の間を粛々と進んでゆく。
向かう先はとある一軒の宿屋。そこはリルガミンにて冒険者登録をした際、紹介された店だった。
冒険者の為の宿は増えているものの、馬小屋まで揃えているのは今のところそこだけらしい。
つまりは、文無しが夜露を凌げる唯一の場所ということだ。
サムライとドワーフには冒険で稼いだ貯えがあったが、必要ない出費はできるだけ避けたかった。
となれば、馬小屋のある宿に世話になるのが一番の節約である。

(しかしな……)
サムライの中でドワーフの言った話が引っかかる。
転職で忍者になれるのはノームだけとは本当なのだろうか。
以前いたトレボーの城塞都市では何人かの忍者を見かけたが、ドワーフとノームにはついぞ出会わなかった。
しかし、そこでは鍛錬を極めればいかなる種族も同等の能力が発揮でき、それゆえドワーフが
シーフとして働くこともできたのだ。それがリルガミンではできないという。
もしノームだけが忍者に転職できるという噂が本当だとしたら、リルガミンでは能力の限界に何らかの異変が
生じているのではないか、それが一体何なのか、現時点ではサムライには察しようがなかったが。

そしてサムライがもう一つ思うところ、それは、裸忍者はいるのだろうかということだった。
冒険者に知られる忍者は、装備品を一切身に付けない状態こそ最高の戦闘力を発揮できると言われ、熟練した忍者の中には
全裸で戦いに臨む者もいるという。
初めて聞いた時、そんなバカなとサムライは笑っていたが、後に真実であったと否応無しに思い知らされた。
何一つ纏わぬ肢体が疾風のごとく駆け、巨人の首を刈り、竜を屠る光景は今でも思い出される。
それを為した忍者が凛々しきエルフの美女であったことが強い印象となって記憶されたせいでもある。
これがサムライの知る裸忍者の最初の記憶だが、果たしてリルガミンからそのような忍者が現れ出るであろうか?
まあリルガミン以外から入ってくる忍者なら転職なんて関係ないし、転職の力を秘めたアイテムが見つからないとも限らない。
だが、もう既に転職によって忍者になった者とかはいないのだろうか…?

「うーん、」
サムライは天を仰ぎ、深くため息をついた。
ノームの忍者なんていないんじゃないか。サムライはそう思えてならなかった。
彼の知る限りではノームという種族はおしなべて敬虔で慎み深く、殺戮や破廉恥を好まない連中ばかりだった。
そんな彼らが忍者、しかも全裸になって戦うことなんてあるのだろうか。サムライにはとても想像しきれなかった。
そうこう考えてるうちに、サムライは宿の前にまで来ていた。

「シンクロウ様とケレル様ですね、確認しました」
カウンターの店員は帳簿を確認してサムライに告げた。
シンクロウとはサムライの、ケレルは連れのドワーフプリーストの名前である。
「ところでケレル様は今どちらに…?」
「ギルガメッシュでまだ飲んでんじゃないかな。ま、宿はここしか知らないからそのうち来るだろ」
店員の質問にシンクロウはにべもなく答えた。
「ところでシンクロウ様は今晩どの部屋にお泊まりで…」
「うーんそうだな、できたら隣を気にしないでくつろげる部屋にしてほしいな」
「隣を気にしない…?」
「これから風呂屋に行くんだ、誰かが訪ねるかもしれん」
「そうですか、わかりました」
店員は得心の笑みを浮かべながら部屋の鍵を渡した。
「では旅の垢をゆっくり落としてきて下さい」
「ああ、どうも」
チェックインを済ませたシンクロウは部屋に荷物を置くと、さっそく歓楽街へと向かった。


「いらっしゃい!いらっしゃい!風呂炊き立てだよー!」
「そこのお兄さーん、今なら入浴料3割サービスするよー!!」
「うちは蒸し風呂、温泉、薬湯、他にもあるよー、入ってみないかーい!?」
煌びやかな蛍光色の看板が上がった店先では、風呂屋の店員らがけたたましく客を呼んでいた。
それはまるで娼館への呼び込みを思わせる有り様であった。
シンクロウはその中をしばらく歩いたのち、ある風呂屋の前で止まった。

「ねぇお兄さん、ここで一風呂浴びてかない?安くしとくよ!」
シンクロウに声をかけたのは、恰幅のいいドワーフの女だった。
「安いのは結構だが背中を流してくれる娘はいるのかい?」
「ああ、もちろんさね!人間もエルフもホビットもノームもよりどりみどりさ!さあさあ、どうするね!?」
ドワーフの女は自信たっぷりの口上でシンクロウに迫ってきた。
「そういやさぁ、」
首を傾げながらシンクロウがつぶやく。
「さっきの君の言いぐさだとドワーフがいないんだけど、ドワーフは背中流してくれないのか?」
「えっ?!」
ドワーフの女はドキッとした表情で言葉を詰まらせた。
「……あ〜、え〜と、その〜、生憎ドワーフの娘は今いなくて、ねぇ〜、あはは……」
シンクロウから視線を逸らし、照れくさそうに言い訳を述べる彼女であったが、
「あ〜、でも、別の時間になら流してくれるかもしれない、かな〜?」
チラチラとシンクロウを見ながら言うあたり、彼女も風呂屋の“流し女”だと察しがついた。
「そうだな、また別の時間に来てもいいかな…」
「えっ!?ほんとに!?」
「でも俺はすぐ風呂に入りたい。日を空けて来ても別の時間に違いないよな?」
「え〜…」
ドワーフの女は一瞬喜んで、すぐさまガッカリした顔になった。
こんなところで呼び込みをやってるのは需要がなくてヒマだからなのだろう。
「そういうわけだから、風呂入ってもいいかな」
「ハァ……そいじゃ一名様ご案内ね、こっちだよ!」
期待を肩すかしにされたドワーフ女は微かな苛立ちを見せながらも、シンクロウを店内に案内した。

さて、シンクロウが入った風呂屋は蒸し風呂だった。
密閉した部屋の中で湯を沸かし、充満した湯気に全身を晒して汗を流す、そういうタイプの風呂である。

(やはり酒の後は蒸し風呂が一番だな……)
微かに明かりが灯る風呂場にて、おびただしい熱気と湿気の中、シンクロウは汗とともに酔いが抜けていくのを感じていた。
丸裸に布一枚を腰に巻き、風呂場の一角にて腰掛けにデンと腰を据える彼の姿は堂々としたものがあった。
シンクロウはどちらかと言うと、風呂は好きな方である。
酒の後は蒸し風呂、戦いの後は湯船に浸かるのが彼の常であり、それは彼の故郷で
風呂が嗜まれていたことと大いに関係していた。
そして同じように好きなのが女を抱くことであった。
街に行けば娼館は必ず行くし、もしその気になったなら女性の冒険者と同衾することだってある。
後々面倒なことにならず、同意の上であればシンクロウは進んで女を抱いていた。
リルガミンではまだ娼館を訪れてはいないが、これから女を抱くことに変わりはなかった。

「こんばんわー」
若い女の声とともに風呂場の扉が開き、白い人影がそそくさと中に入ってくる。
もうもうと立ち込める湯気の中、シンクロウの視界に現れたのは薄着を纏った少女だった。
少女はシンクロウの前に立ち、ニッコリ微笑んで挨拶した。
「お客様、私たちのお風呂へようこそ! これからお背中流させていただきますね♪」

その姿を見てシンクロウは直感した。
(この娘、ノームか…)
少女はシンクロウの背後に回ると、手にした垢擦りタオルでその背中を擦り始めた。
鍛えられた背中を擦るタオルの感触は強くもなければ弱くもなく、シンクロウの肌に心地良い刺激を与えてくる。
タオルを通して伝わる少女の指使いは実に細やかで、指先一つ一つに意識を集中しているのが感じられた。

「お客様、痒いところはありませんか?」
「ああ、背筋の上の方かな、なんていうか、肩甲骨の間、ってわかるかな、」
「わかりました♪」
返事が終わるより早く、少女はシンクロウの注文に応えた。
白くしなやかな指は筋肉や骨格の流れを伝い、探り出した快感のツボを指先でしごきあげた。
「う、うう、うむ、」
「気分はいかがですかお客様?」
「ああ、いいよ、そこでいい、君は背中を掻くのが上手いな、」
「ありがとうございます♪」
シンクロウからは見えないが、少女はニッコリ微笑むとシンクロウの背中に指を這わせ、カリカリと肌を掻いた。
「ぬぅ…!く…う…うぅ…!」
十本の爪先が肌に刻んだ軌跡はそれぞれが快楽の刺激を呼び起こし、シンクロウの中でハーモニーを奏でる。
それはまるで甘美な音を紡ぐ竪琴のように。少女の爪先が弾くのは弦ではなく、鍛えられた肉体であり、その内に宿る神経。
少女の操る指に快楽という音色を引き出され、身をもって愉悦という曲を受けるシンクロウの身体中から
汗がタラタラ滴り落ちる。
「…どうですかお客様、まだ痒いところはありますか?」
「う、うん、もう十分かな、」
「そうですか、では次は腕を流しますね、」
そこで少女の指は背中を掻くのを止めた。

(何だ、今のは…)
シンクロウは少女の妙技にいささか当惑していた。
背中を流すのが上手い女はいたが、背中を掻かれてこんな感覚を覚えたのは初めてだった。
これが熟練した流し女の技なのだろうか。だがシンクロウは何か引っかかるものを感じていた。
それは今は何ともいえないが、ただの流し女とは違う何かがあるように思えてならなかった。

「失礼します、」
少女が腕を取り、タオルを擦りつける。
その様を眺めながらシンクロウは少女の肢体に視線を巡らせた。

背丈はドワーフとやや同じだが、ガタイが良いわけでも筋肉質でもなく、耳はエルフのような形をしているが、エルフほど
長くない。ホビットに似ているようで、ホビットより顔や体つきは人間に近い。
ノームという種族を身体的特徴で言い表そうとすると、なかなか簡潔に表現しきれない。目の前にいる少女もそうだ。
背丈は人間の女性に及ばないが、体つきは確かにオンナのそれであり、顔立ちにしたってあどけなさを残しながらも
ホビットよりはずっと大人びている。まあ美人というより可愛い部類に入るが。

「お客様、腕の方はどうでしょうか?」
「ああ、いい感じだ」
腕を擦りながら訊ねた少女に答える。
少女の纏う薄布はすっかり湯気と少女の汗で濡れて肌に張りついており、布越しに透けた肌はもとより
乳房の膨らみと形、乳先の色までくっきり見てとれた。
それは下腹部も同様で、太ももの間に布はピッチリ張りつき、秘所の姿をチラチラ覗かせている。
布に覆われていない素肌は剥いたゆで卵のように瑞々しく、風呂場の明かりに艶めかしく照らされ輝いていた。

「ねぇお客様、ちょっと聞いていいですか?」
ノームの少女が媚びるような上目使いでシンクロウに話しかける。
「なんだい?」
「お客様って冒険者ですよね?」
「ああ、リルガミンには今日着いたばかりだよ。前はトレボーの城塞都市にいたんだ」
「へぇ、じゃあそれなりに強いんですね」
「リルガミンじゃどうかな。これから試してみないとわからないよ」
「じゃあ、あの迷宮はこれからなんですね。もう仲間は決まりました?」
「いや、プリーストはいるけどあと4人足りない……って、ちょっとにしてはよく聞くね」
「うふふ、冒険者に興味があって、強そうな方を見ると色々聞きたくなっちゃうんです。気に障ったらごめんなさい」
少女は詫びると同時にシンクロウの腕を胸の谷間に挟み、ギュッと擦り付けた。
「あまり大きくないけど、そのぶん気持ちよくしますから、ね?」
布越しに当たる乳房のムチムチとした肉感はなんとも心地良かった。
が、少女の行動はこれだけでは終わらなかった。

「!……」

シンクロウの股間に入り込むしなやかな指。
それは彼の一物に絡みつき、優しく握ってきた。
「あら、もうこんなに……私で勃ってくれたんですね、嬉しいな」
ノームの少女は上気した顔をほころばせ、一物を握る手を使い始める。

「でもいいのかな、こんなことしてもらって……」
「大丈夫ですよ、お客様が女王に言わなければ、ですけど」
「なら問題ないな、俺は女王の御用聞きじゃないし」
「じゃあ決まりですね♪」
少女の手の中で一物は更に大きさと固さを増していった。
指はただ握るだけでなく、幹を根元から先端まで刷り上げながら、肌を爪先でかすっていく。
その動きは先ほど背中を掻いた時の指使いと同じで、背中から受けた快楽を
今度は一物に受け、シンクロウは思わず呻きを洩らした。

「うう、う、っく、むむ……」
「別に我慢しなくていいんですよ、出したくなったら出していいんですから」
「なあに、まだ始まったばかりだ…!」
「強がりなんですね。でもスッキリした方が気持ちいいですよ…クスクス」
一物を扱く手さばきが一段と早くなった。
限界までみなぎった一物は腰に巻いたタオルを押し上げ、凛々と天を指している。

(さて…どうしたものか……)
ノームの少女に一物を扱かれ、えもいわれぬ快楽に堪えながらシンクロウは思案した。
サービスなのだから抗う必要などないのだが、このままで終わるのはどうも面白くない。
眼下を見れば少女は床に膝をつき、シンクロウの足を横から乗り越えるように手を伸ばしている。
屈んだ体勢で重力に引かれた乳房はタユタユ揺れて、ピッチリ張り付いた布越しにその存在を見せつけていた。
その時ふと、シンクロウの脳裏にある考えが浮かんだ。
彼は少女の側の手を伸ばすと、おもむろにある部分に触れた。

「ひゃッッ?!」
突然、少女の軽い悲鳴が上がる。
「お、お客様…」
「どうした、何かあったか?」
「何かって……その…」
「ほら手が遅いぞ、これじゃ萎えてしまうじゃないか」
「で、でも、ひィん!」
「…やれやれ人を勃たせておいてなんだ、さっさとスッキリさせてくれないかなぁ」
「そ、そんなあ…ッひぃ!」
驚き、うろたえ、困惑し、少女のペースはたちまち乱れていく。
しかし、少女の手はまだシンクロウの一物を扱き続けていた。

ヌチャ…ヌチャリ……

指先をこねくり回すとヌルヌルと熱いぬめりが絡みつく。
少女の尻たぶに添えられた手は尻の谷間に指をすべらせ、その奥の閉じた花弁に入り込んだ。
(もう濡れているのか…)
肉の花弁を弄りながらシンクロウは、少女も官能をくすぶらせていたのだと察した。

「ッッ…!…んぅ…ぅぅッ…!」
「さっきから様子がおかしいな、やはりここじゃスッキリさせられないか」
「いえ…やります…やりますからご心配なく…!」
「そうかい。それは楽しみだ」
「ひゔゔッッ!!」
中指を少女の中にねじ込んだ瞬間、少女は驚愕の表情とともにピンと仰け反った。

「あッ、あッ、ああッ、あッッ、」
シンクロウの指が少女の中でチュクチュクと音を立て、巧みに肉洞をかき回す。
少女の手は相変わらず一物を扱いていたが、その指使いはシンクロウをたじろかせるほどではなかった。
(もうここまでにするか…)
これ以上少女に徒労を強いるのも気の毒だ、そう思ったシンクロウは中指に人差し指を添えると2つの指で一気に貫いた。

「ッッ―――!!」
声にならない悲鳴を上げて少女の身体が跳ね上がる。
2つの指は肉洞にこの上なく締め付けられ、熱いほとばしりが少女の股間から滴り落ちた。

「……ハァッ…ハァッ…ハァ…ハァ…」
ノームの少女が荒く息をつきながらシンクロウの腕にすがり、うなだれる。
絶頂の余韻に打ちひしがれる彼女の手はもう一物を扱くのを止めていた。
「どうやらここまでのようだな。スッキリしたか?」
「ひどいですよお客様……まさか、こんなことするなんて……」
「悪いな、途中で抜くのがもったいなくなってね」
「もったいないって…」
「出し始めたら一回や二回じゃ治まらないんだよ。だったら、誰にも気兼ねなく楽しみたいんだが、どうかな…?」
「あ…」
周りを見回すと、シンクロウと少女以外にも、何人かの客と流し女が戯れていた。

「ふぅ…それじゃ仕方ないですね……で、続きはどこでするんです?」
「リルガミン公認の冒険者の宿は知ってるかな?」
「ええ、」
「そこのスイートに部屋を取っている。カウンターでシンクロウの部屋はどこか尋ねたらいい」
「……シンクロウ……それがお客様の名前ですか…」
シンクロウの名前を確かめ、少女はニコリと笑みを浮かべた。

「そういえば君の名前を聞いてなかったな」
「私、ミンシアって言うんです。部屋に着いたらいろいろシてあげますね♪」
「ああ、楽しみにしてるよミンシア、」
「じゃあ先に垢を流してあげますね♪」
逢瀬の約束を交わすと、ノームの少女は再びシンクロウの垢を擦り始めた。
そのきびきびとした動きに、先ほどまでの絶頂にうなだれていた様子はもう、なかった。


「まいどありー!」

 風呂屋を出ると、呼び込みのドワーフ女が愛想良く声をかけてきた。
シンクロウは手を振って応えると、宿屋に向かって飄々と歩き出す。
人が行き交う道の両側はどこもかしこも風呂屋の列だった。
本来なら娼館が並んでいるはずが、なぜかリルガミンでは風呂屋ばかりが歓楽街にひしめき合っているのだ。
しかし、これらの店がただの風呂屋でないことは下々の誰もが知っている。
もちろん、背中を流す“流し女”が娼婦だということも。
何故に風呂屋で娼婦が背中を流しているのか、それは現在リルガミンを治めている女王の施策に関係していた。

ダバルプスの滅亡とともにリルガミンは再び王家の統治下に置かれたが、アラビク王子亡き今、生き残った王族は
マルグダ王女のみとなり、かくしてマルグダが女王としてリルガミンを治めることとなった。
マルグダ女王はリルガミンの再建にあたり、ニルダの杖の奪還の為に冒険者の誘致を進めていたのだが
その際、ある事が彼女の不興を買った。それは歓楽街と娼館の存在だった。

マルグダは無能な為政者ではなかったが、その頃はまだ少女だった彼女にとって、金で性を売り買いするなど
甚だ許し難い行為であり、リルガミンにそのような場所を置くのを認めなかったのだ。

女性の感情ほど御し難いものはないというが、そのとばっちりを食らう方はたまったものではない。
リルガミンに娼館を置こうとしていた事業主らは途方に暮れ、女王の配下やブレーンたちはどうしたものかと頭を抱えた。
いつの世も冒険者の多数を占めるのは荒くれの男どもであり、冒険者を誘致するには彼らの欲求に応える施設がなくてはならない。
性欲の発散も冒険者にとっては欠かせない欲求であり、歓楽街から娼館を無くすなど、それこそ全裸の女忍者集団が
世界中で冒険者の男どもを皆殺しにして女性だけの冒険者ギルドをおっ立てるくらい、ありえないことなのだ。



女王を説得することもできないまま、時間だけが過ぎていったある日、ふと誰かが思いついた。

(娼館でなきゃ大丈夫なんじゃないか?)

その考えはやがてあるアイデアとなって、娼館の事業主の間に広まっていった。

(娼館じゃなく風呂屋にしよう!これなら女王を納得させられる!)

彼らはさっそく役人に掛け合い、風呂屋の設置を審議に上げてもらった結果、ようやく女王の認可を得られたのだ。

こうして歓楽街には多くの風呂屋が軒を並べることとなった。
表向きは入浴を楽しむ風呂屋であり、ヘルパーが入浴の手伝いをするというが、実際は風呂に入るだけではなく
ヘルパーに扮した娼婦と交渉する場所なのだ。
風呂場では性行為は禁じられているが、大っぴらにやらかさない限りは特に咎められもせず、娼婦と交渉が成立すれば
風呂屋の外で待ち合わせて何処かでしっぽり楽しめばいいのである。
風呂に入りながら娼婦を吟味するもよし、背中を流してもらいながら適度なスキンシップを楽しむもよし、この方法は
意外にもあっさり客に受け入れられた。
それにともない、新たな宿屋も続々と設置されていったが、そここそ風呂屋から出た客と娼婦が楽しむ場所であった。
女王もさすがにこれはおかしいと思ったようだが、周囲の者によって何とか説き伏せられたという。
役人の方とて知っていたとしても決して女王に報告することはなかった。
賄賂を貰っているせいでもあるが、何より性風俗の必要性を認識していたのである。
かくしてリルガミンの歓楽街は、どこよりも風呂屋と宿屋がやたらと多い風俗スポットとなったのであった。


「お帰りなさいませ、お客様」

 宿に着いたシンクロウをカウンターからの声が出迎えた。
「だいぶさっぱりなされたようですね、見違えるくらいですよ」
「そりゃどうも。ところでケレルはこっちに来たか?」
「いえ、まだ来られてませんが…」
「そうか。しばらくしたらノームのミンシアって娘が俺を訪ねてくるはずだから通してやってくれないか」
「わかりました、シンクロウ様」
カウンターの店員に些少のチップを渡すと、シンクロウは自分の部屋に戻っていった。
リルガミンで迎える最初の夜、ベッドに横たわりながら、シンクロウは高鳴る期待を静かに感じていた。