宿の一室、ベッドが二つに小さなテーブルと椅子だけというシンプルな部屋……ここはレリ
スタとフィルリスが拠点としている部屋だった。当初は二人とも別のエコノミールームに宿泊
していたが、どうせ夜はどちらかの部屋ですごすのだから、と別の大きな部屋で一緒に寝起き
するようになっていた。
「うっ…………」
「レリスタ、気分は……?」
 昨日までは楽しかった、一緒に起きて、食事をとって、探索して、帰ってきたら……死がす
ぐそばにありながらも、恋人同士としての安らぎに、フィルリスは女としての幸せを見出しつ
つあった。
 しかし、レリスタが何者かに襲われたことでその生活は一変した。幸いにも命に別状は無
かったみたいだったが、どんな傷薬でも、回復魔法でもその傷はふさがらなかった。
「最悪だよ……頭が重い……身体も動かないみたい」
 このことに興味を示したある高レベルの魔術師の話が、強い呪いが込められた武器で傷つけ
られると、何をしても傷は治らず、最後は死んでしまう……それも、ただの死ではなく、その
魂は永遠に消滅してしまうとも……
「心配するな、私が、きっと何とかするから」
 頭に包帯を巻いたレリスタ、その顔色は青白くなる一方で、唇は痙攣し、目もうつろだった。
明日にでも彼がいなくなってしまいそうで、いてもたってもいられなくなったフィルリスは、
冷たくなった頬にそっとキスをして、新しく調達した外套を布服の上から身に纏った。
「……どこに、行くの?」
「もう一度酒場に行く。直す方法を知ってる人がいるかもしれないから」
「…………ありがとう、フィルリス」
 ありがとうという声に力は感じられない、その悲しい響きに涙で目が潤む、泣き出したい気
持ちを笑顔で封じたまま部屋を出た。

 何とかレリスタを助けたい……その一心で酒場での情報収集を続けていたが、収穫は皆無
だった。陽気に騒ぐ中、自分ひとりだけが気持ちを沈ませている、それがたまらなく嫌だった。
商店や寺院に行っても、何度もしつこく足を運んでいるからか、今では露骨に煙たがられてし
まっている。
「どうすれば…………」
 日も暮れて静まり返った道をとぼとぼと歩きながら宿へと向かう。レリスタの具合はどうだ
ろうか……もし、彼が死んでしまったら……次から次へと嫌な想像ばかりしてしまった。それ
でも、自分が泣いていたら余計にレリスタを落ち込ませてしまうと、フィルリスは涙を拭いた。
「おかえり、どうだった?」
 部屋に入ると、レリスタの顔色がさっきよりいいような気がした。動けないと言っていたに
もかかわらず、ベッドの上に座っていた。
「治った……のか?」
 レリスタは首を振る、それならどうして……言いかけたところで、薬の包みを差し出された。
「ジェイクバレットが、持って来てくれたんだ。解呪薬とか何とか……よくわからないけど」

「あいつが……?」
 信じられなかったが嘘をつくとは思えない。だがこれでようやく何とかなる……ほっと息を
ついたところで、レリスタの表情がまったく浮いていないのに気がついた。
「でも、一回飲んだだけじゃだめみたいなんだ。それで、まだほしければフィルリスに取りに
来させろって」
 何か嫌な予感がした、以前ジェイクバレットが水浴びをしているフィルリスを覗こうとして
いたのをレリスタから聞いていたからだった。今度は何を要求されるかわからない、彼に顔向
けできないほどの辱めを受けることとなるだろう。それでも、選べる道は一つしかなかったが。
「…………わかった、ちょっと待ってろ。すぐに……」
「だめだよ、フィルリス……」
「心配するな、何かあったら大声を出す」
 薬をもらってくることが第一の目的なのだから、拒絶の声を上げることはできない、レリス
タを心配させないための嘘だった。ジェイクバレットに抱かれるなんて想像しただけでもおぞ
ましい気持ちになる。

「……レリスタには、死んでほしくないから」
 心なしか足の運びも遅い、重りでもつけたような……それでも、彼を守りたいという気持ち
で自分を奮い立たせ、ジェイクバレットの部屋へと向かった。
「おう、早かったな」
 自分たちより数段豪華な部屋は酒の臭いでいっぱいだった、鼻を押さえたくなる気持ちにな
りながら、ベッドに横たわるジェイクバレットのそばに駆け寄った。
「薬だ……それをもらいに来た」
「解呪薬のことか?」
 装備品やら金貨、宝石が乱雑に散らばっている、うっかりコインの束を踏んでしまい慌てて
足を上げた。早く出て行きたかった、レリスタと違ってジェイクバレットは男臭く、近づいた
だけで鎧を思わせる筋肉から発せられるむっとこもった臭いに顔をしかめそうになってしまっ
た。

 ジェイクバレットは散らかった部屋の中で歪んだ笑みを浮かべる、舐め進む視線は顔から首、
胸へと進み、張り出し、服を突き破らんとしているふくらみの上で停止した。
「もちろんくれてやるさ、金もいらない……ただ、わかってるよな?」
 後は自分で察しろといわんばかりの投げかけ、もちろんフィルリスもジェイクバレットが何
を求めているかは十分理解していた。爪が食い込むほどに握り締めたこぶしに、立ち上がった
ジェイクバレットの節くれだった大きな手のひらが覆いかぶさった。レリスタと同じ人間とは
思えないほど、その指は硬くて太い。
「…………ああ」
 こぶしを開かされると指が絡みついてきた。指の腹から関節、そして水かきへと壊れ物を扱
うように、それでいて模様を隅々までなぞる陰湿さすら感じるゆっくりとした動きでジェイク
バレットの指が這い回った。
「んっ……」
「ドワーフで戦士か……この手からは信じられんな」
 レリスタとは違って遠慮のない手つき、気持ち悪さで背筋がぞくりとしてしまう。すぐにで
も逃げ出してしまいたかった……目を閉じて彼の顔を思い浮かばせ、陵辱に耐えるだけの心の
強さを保とうとする。
 だが、這い回る指先がレリスタの顔を拭い消していく。目を瞑っていても開いているときと
同じように、ジェイクバレットの手の動きを感じ取ってしまう。人差し指、中指、薬指と順番
にさすったかと思うと、今度は指の付け根の膨らんだ部分に円を描き……くすぐったさと不快
さが入り混じり、フィルリスはその手を振り払ってしまった。
「やっぱり、最初はこれだよな……」
 気にするそぶりも見せず、ジェイクバレットは身体をかがめ顔を近づけてきた、酒臭い息、
荒れた肌、無精ひげ……五感に与えられる負の刺激に顔を背けたくなったが、二度目の拒否は
許さないということか、顎を指で持ち上げられるとそのまま唇に吸い付かれてしまった。
「ん、んっ…………」
 うなじをくすぐられる、その指は後れ毛を弄んだかと思うと耳の近くまで這い寄り、耳裏か
ら頬、あごへと蛞蝓のようにゆっくりと進む。触れられた部分からもたらされるむず痒さに身
を捩っていると、ジェイクバレットは自分の唇で上唇、下唇と交互に挟みつけ、表面を舌でな
ぞりながら、唇裏から歯茎のあたりまで舌を侵入させてきた。
「はう、うっ……ぅ、ん…………」
 レリスタのぎこちないキスとはまったく違う、自在に動く舌はフィルリスの口内でも、そこ
が真の居場所と言いたげにつるりとした粘膜の上を撫で抜ける。そして口の隅で縮こまり、こ
わばった舌に狙いを定め、外堀から埋めるように内頬、歯茎、上顎、喉の手前と外から内へ舌
が動き出した。
「んんっ! ん、あぅっ……ん、ふ…………」
 最初に感じたのは流れ込んでくる唾液の、アルコールとタバコの臭い。レリスタのそれとは
違う、粘ついた液体が口の中を覆うだけで吐き気がこみ上げてしまった。相手の胸板を押して
気持ち悪さから逃れようとするが、ジェイクバレットはフィルリスの身体を抱きすくめ、今度
はじゅる……ぴちゃっと大きな音を立てて自分の唾液をすすり始めた。這いまわる舌が唾液を
掬う粘っこい音、それを口の中で味わう音、喉を鳴らして飲み込む音、全てが記憶の中に強烈
に焼きついた。
「はあ、う、んんっ、やあぁ、ん、んぐ……っ」
 丸みのある頬を包んだ手指は、肩から腕へと下り、裏に回ると背筋を線に沿ってなぞり上げ
た。引きつる背中、固くなる肩、不意の刺激に驚いていると、ざらざらとした大きな舌がフィ
ルリスの小さくて柔らかい舌に絡みつく。蛇のように伸びた舌が巻きつくと、今にも食べられ
てしまうのでは……と錯覚し、肩を震わせる。
 降り続けるキスの雨は、レリスタがしてくれなかった、自分もしようと考え付かなかったも
のだったが、相手がいい印象を持っていないジェイクバレットということもあり、拒否感ばか
りが内心で大きくなっていく。

――――――――――――――――――――――――
「んぅ、ぷはっ……はあ、はあ…………」
 唇を離す、息を荒くしたフィルリスの顔は赤い。口の中に残った唾液をゆっくりと喉に流し
込み、ほんのりとした甘みを楽しみつつ、彼女の唾液で照り光る唇、唇の端から伝って顎へと
向かう光る糸をじっくりと舐め見る。
 睨み上げるフィルリスの目の光の底には、吹き荒れる嵐が潜んでいた。弱い魔物なら逃げて
しまいそうなほどの気迫に満ちたそれを軽く流しつつ、ジェイクバレットはベッドに寝転がっ
た。
 もし、レリスタを襲ったのが自分だと知ったら、どんな反応を見せるだろうか、あの薬も魔
力がこもっただけの単なる痛み止めで、飲ませたところでいずれレリスタは死ぬ……さすがに
この事実を明るみにはできない。そうなればフィルリスをものにするどころか自分もただでは
すまないだろう……
「気持ちよかっただろ? 愛しのレリスタちゃんとはどんな風にしてたんだ?」
「……そんなこと、お前には関係ない…………嫌な気持ちになっただけだ」
 あんな弱弱しい雑魚がここまでのキスをするとは思えない、せいぜい舌を絡ませるくらいだ
ろう。小さな勝利を積み重ねていけば、嫌悪は諦めに、諦めは受容に、そして媚びへと変わる。
気の強そうな目尻、きゅっと噛まれた唇……マイナスの感情ばかりが浮かぶ顔がどうやって蕩
けていくか……考えただけで竿が小さく跳ねた。
「へっ…………次はチンポでもしゃぶってもらうか、こっちに来い」
「………………」
 むき出しにした巨大なペニスを見た瞬間、フィルリスの顔が凍りついた。
「どうした? このくらい普通なんだけどな……レリスタのはもっと小さいのか?」
 うなずくフィルリス、その目は肉の凶器に注がれたまま離れようとしない。赤黒く膨らんだ
先端は、フィルリスの舌や唇を今か今かと待ちわびるように小刻みに震えた。
「待ちきれないってよ……早く薬を飲ませたければ……」
「わかっている、くっ…………何でお前なんかに」
 フィルリスがベッドの上に乗り、四つんばいになった。目線を動かせば丸々としたお尻が突
き出されることで形を浮かばせていた。フィルリスもその視線に気がついたかお尻を手で隠そ
うとするが、それは許さない。手足の行き届いた襟足やすんなりとした首つきを撫でてやりな
がらフィルリスの顔をペニスに寄せようとする。
「両手で扱きながら舐めて咥えるんだ、いいな」
「………………レリスタ……すまない…………」
 顔を横に向けながらわずかに声を発したあと、天井を向いた肉竿に、ゆっくりと顔が近づく。
限界まで近づいたところで、小さな舌が鈴口に押し当てられた。敏感な亀頭を舌の表面が埋め
尽くす小さな突起がくすぐる。同時に、竿には小さくてふかふかした手のひらが添えられた。
「うっ…………」
 初めてなのか、指も舌も動きはぎこちなかった。白い手は忍びやかに伸びて怒張を握り込ん
でいるが、動きはゆっくりとしたもので、心の中で三つ数えても、まだ根元から先端まで往復
すらしていなかった。
 舌は舌で、ちろちろと尖らせた舌が切れ目の周囲をなぞるだけだった。初々しさが心地よく
もあったが、優しい感触を差し引いても余りに生ぬるい刺激だった。
「もっとちゃんと動け、そんなんじゃ終わらないぞ」
「わか、ってる…………したことないんだ……」
「もっと口の中で咥えて、舌も激しく動かせ。手もな、もっと握るように……」
 レリスタには舐めてやったことがないらしい、優越感に浸りつつも口淫の方法をレクチャー
してやる。フィルリスも早く終わらせて薬を手に入れたいのだろう、広げた舌がカリ首のほう
まで届き、ぷにぷにとみずみずしい桃色の唇も切っ先に押し付けられた。
 察しのいいフィルリスは、さらに手にも力を加え、上下の速度を速める。柔らかな五指が固
いそそり立ちを締め付けていく。それはまるで頼りない真綿で包み込まれるような感触だった。
「口に頬張れ、歯を立てるなよ」
 口だけで許すつもりはない、ジェイクバレットは舌を上下させるたびに大きく弾む巨尻に手
を伸ばし、指先を押し沈めつつまさぐり出した。非難がましい目ではないものの、くりくりと
した黒目がちの瞳が潤み、曇り、視線が反らされ、激しい羞恥と戦っているのは丸わかりだっ
た。
「ん、あっ…………」
 散々妄想してきた尻の感触は、大きさに見合った指を蕩かせるほどの柔らかさだった。普通
の商売女や冒険者の乳房でさえも、ここまで柔らかくむっちりとした触り心地のものは無かっ
た。どこまでも続く広大な尻山はジェイクバレットの大きな手でも掴みきれず、こぼれた肉は
指の隙間からはみ出ていった。
 このまま脱がして生尻を堪能するのも手だが、スカートをめくると黒いスパッツの上からお
尻を揉みくちゃにしてみると、ざらついた手触りが妙にくせになりそのまま弄繰り回すことに
した。尻山の頂点が毛羽立ち、生地が伸びて少し薄くなっているのもたまらなかった。
「へえ、ずいぶんとエロい眺めだな……」
 食い込んだ指を気にして、フィルリスは口の動きを止める。軽く巨尻を引っぱたくと慌てて
動き始めた。叩いたときの大きな波打ちの余韻を手のひらで感じつつ、口を大きく開き膨らみ
きった亀頭を頬張る光景を楽しんだ。口の中にねじ込まれた鉄兜に、ぬめり、温かさ、そして
お尻とは違うぷにぷにとした柔らかさが伝わった。
「んっ、ふう……っ、く、ぅ…………」
 ここまで口を大きく開けたことなんてないのだろう、桜の花びらを思わせる淡い桃色をした
小さな唇をいっぱいに広げて、顎も外れんばかりに開けて……息苦しいのか、鼻息が荒くなり、
ジェイクバレットの肉槍をくすぐった。
 ここまで苦しめられても、不満を口にすることなく舌をせわしなく動かし、快楽をもたらそ
うとしているのはレリスタを助けるため……小柄なドワーフの少女を蹂躙する征服感に酔いつ
つも、心の中に最愛の人がいるというのはどうにも気に入らなかった。
「あいつのことなんて、すぐに忘れさせてやるよ……」
 摩擦を弱めるローションとしての唾液と先走りが、口内での抽送をよりスムーズにした。
フィルリスのほうも苦痛が和らいだか、呼吸も落ち着き、首の上下運動にも引っ掛かりが無く
なった。恥ずかしさを前面に出した吊り上がった目つきはかわらずそのままだったが。
「ん、ふっ……そんな、こと…………んんっ、く、ぅ……」
 口内粘膜を突き捏ねられ、唾液が撹拌される粘っこい音がさらに大きくなった。尻を揉みつ
つ、人差し指を谷間に挟みこむと、深い切れ込みのせいで奥までたどり着けなかった。スパッ
ツも破けてしまいそうな豊満な尻がかすかに揺れると左右の山が寄り、指を押しつぶす。フィ
ルリスの尻は大きいながらも前衛職だけあって引き締まっており、むにゅむにゅと指を圧迫し
つつもたっぷりとした凝脂の先にある弾力が反発となって心地よく跳ね返してきた。
「うっ……なかなかやるじゃないか、レリスタにしてやれば喜んだかもな……」
 お尻に夢中になっていれば、窄まった口に意識を集中させられる。頬張った口は喉奥や頬の
内側で亀頭を擦り立てていくと、射精感の訪れを遠くで感じた。フィルリスの口戯は拙いもの
だったが、口を犯したのは自分が初めてであること、彼女には思い人がいること、指にまとわ
りつく極上の桃尻……さまざまな要素が一つとなり、大きな気持ちよさとなってジェイクバ
レットの興奮を煽っていた。
 また、うまい具合に裏筋に指を引っ掛けてくれた上、だんだんと握力が強くなり、扱かれる
刺激も強くなっていた。これが他の女の手なら痛いだけだろうが、ふんわりとクリームを乗せ
たような肉付きの手のひらということもあり、狭い輪に押しつぶされた根元はうれしい悲鳴を
上げていた。
「んぅ、ふ、あっ……く……レリスタ、んんっ……」
 あの男の名前を聞いたことで嫉妬心が渦を巻く。腰を前に出し、のどの方まで突き上げれば、
フィルリスの苦痛の色はいっそう濃くなる。お尻を触る手も荒々しくなり、爪を立てるほどに
強く揉みしだいたかと思えば、今度は指を深くねじ込み、くねらせた指を窄花向かってくぐら
せた。
「う、ぐっ……ううっ……やめ、んああっ!」
 お尻を振り立てて、フィルリスは指を追い払う。そうすれば首が微妙に傾き、押し付けられ
た粘膜がカリのほうにまで入り込んで、特に敏感な部分を集中的に責められ、興奮のあまりぬ
るぬるとした口の中でペニスを暴れさせてしまう、彼女からすれば最悪な循環だろう。
 不快感から眉をひそめ目を細める、普段の強気で快活そうな表情が歪むのを見ると、もっと
追い詰めてやりたいという気持ちがこみ上げてきた。

――――――――――――――――――――――――
「はあ、うっ、んん……ぅ」
 ぐちゅ、ちゅぷっという水音は、口の中に溜まった唾液と、鈴口から滲む生ぬるく、苦い液
体が混じり合い、舌の上を満たすことで、いっそう大きなものへと変わった。ぎりぎりのとこ
ろまで広げられた口では呼吸も満足にできず、あえぎ立つ吐息を必死に整えながら、太竿に舌
を絡ませ、生臭さを残しつつ前後に突き動く剛直を口の中で受け止めた。
「……今度はこっちも触ってやるよ」
「っ……!!」
 お尻を揉みたくっていた手が腰から脇腹を滑り、乳山へと忍び進んだ。お尻よりも敏感な膨
らみに指が沈む不快感で、眉をしかめ、目をぎゅっと閉じる。四つんばいになっていることで、
胸は重さに耐え切れず釣鐘状に形を変えており、舌を律動させるだけでも軽くゆさゆさと揺れ
ていた。
「でけーな……中に何詰まってんだよ」
 嘲りを浴びると、さらなる羞恥心が身体全体を駆け巡った。今の自分はペニスを咥えている、
それも大好きなレリスタではなく、自分を物としか思っていないジェイクバレットのペニスを
……強い刺激が分散されることで、かえって思考が冷静になってしまい、現状をきっちりと把
握してしまっていた。
 さらに、口を大きく開けるのにも慣れてしまい、顎の痛みは薄れ、上顎、喉、内頬の粘膜を
擦られるくすぐったさもだんだんとなくなってきた。竿裏に尖らせて丸めた舌をちろつかせ、
両手は縦笛を持つように優しく握り、口から漏れた先走りと唾液を塗しながら手のひらを何往
復もさせる。
「ん、ふうっ……ああ、っ、んぁ…………」
 いつの間にか一方的な蹂躙を許容してしまっていることに、フィルリスは内心で愕然とした。
もちろん口での奉仕を望んでいるわけではない、レリスタを助けるために仕方なくやっている
ことだ。しかし、鉄肉に舌弄と指戯を送り込んでいるうちに逃避と憎悪の心がなくなり始めて
いた。
「へっ、どうした……? でかいチンポが気に入ったか?」
「はうっ、んっ……そんなはず、ない……っ」
 理性ではそう思っていた、だが舌の動きは器用になる一方で、フィルリスは口の中でカリの
周りをちろちろとこすり、広げた舌をエラの内側まで届かせる。中で海綿体が大きく跳ねた、
やはりここが弱いのだろうと、舌先や舌側を駆使し、カリ首をなぞり、円を描きつつエラ、鈴
口へと向かわせる。
「おうっ……そ、それだ……もっと続けろ…………」
 ジェイクバレットが満足そうな声を上げながらたぷたぷと震える乳房を揉み上げる。レリス
タみたいな単調な触り方ではなく、たわわな果実を先端の方に向かって搾り上げ、すくった乳
肉を手の中で弾ませながら頂点にある乳首を指で引っかく。服とブラを隔てているとは思えな
いほどに指歩を敏感に感じてしまった。
 早く終わらせたい……この気持ちに変わりはない、だが、レリスタとはあまりに対照的な、
糸が曳くのではと思ってしまうほどの触り方に、身体が戸惑いを示し始めているのも事実だっ
た。決して気持ちいいというわけではない、ただ、レリスタでは届かない心の奥までわしづか
みにされて、指先から身体の芯までざわめくような不思議な感覚に襲われたことで、フィルリ
スに小さな波紋が投げかけられた。

「ん、くっ……う、ふああっ……!」
「……休むな、しっかりやらないと、いつまでも終わらないぞ」
 終わらない……この言葉にレリスタの顔がはっきりと浮かぶ。そして、ジェイクバレットの
指やペニスに心が揺さぶられた事を強く恥じた。少し器用に指が動くからなんだと言うんだ、
自分を大切にしてくれるレリスタに抱かれる方が、ずっと満たされるし気持ちがいい……余裕
は羞恥を生んだが、同時に心を守る鎧を身につける猶予も与えてくれた。
「わかってる、これで……ん、っ……いいんだろ?」
 握る力を強め、口をさらに窄める。圧力を強めれば長竿の味、臭い、脈動、固さ……何もか
もがよりはっきりと頭の中に流れ込んでくる。特に、先走りのすえた臭いが胸にむかむかした
ものを残していた。
「そうそう、その調子……っ」
 ジェイクバレットの声がわずかに上ずる、そのタイミングで豊乳を揉み搾り、ふっくりと起
き上がった小粒を指で転がした。乳房を揉む手は壊れてしまうのではと思うくらいに荒々し
かったが、はかなさすら感じられる淡い突起を触る二本の指は、この上なく優しく動いていた。
「んぅっ、は、ふう……触る、な……」
 肉棒をしゃぶるのに一生懸命になっている間に、上着は半分脱がされており、親指と人差し
指はブラ越しに乳輪をなぞり、乳首を緩やかに摘み立てていた。くすぐったくも無ければ痛く
もない、ちょうどよい指加減……レリスタだと痛みを覚えることもあったが、苦痛はまったく
感じられない。それどころか、痒いところに手が届くような……全身を包むむずむずとした気
持ちが全て発散されていく。
「んあ、ああんっ……! こ、こんなの……」
 深くにも芽生えた快楽を彼方に追いやろうと、フィルリスは口を激しく動かし、口淫に没頭
した。口の中に突き刺さったペニスを歯を立てるぎりぎりのところまで頬張り、にちゃぬちゅ
と粘り気のあるぬめりに覆われた太い竿を握り締めた手のひらで扱き続ける。
「……ここまでしてくれるなんてな、チンポが気に入ったのか?」
 頭上に聞こえる忌まわしい声、勘違いするな……と心の中でつぶやいた。さっさと済ませて
レリスタに会いたいだけだ……こんな真似までして、汚されて、受け入れてもらえるかどうか
はわからないが……彼の事を考えていれば、自分のままでいられる、それが救いだった。
「くぅ、んっ……ううっ、はあ、ああぁ」
「ううっ、やるな……顔といい、身体といい……エロすぎなんだよ」
 王冠からずりゅずりゅと肉棹を扱く、舌を吸い付かせ、絡ませ、舐らせ……攣ってしまうの
ではというくらいに、必死になって口と舌を動かした。その甲斐あってか、ジェイクバレット
のペニスはひくひくと射精の兆候を見せる。ここで、レリスタならすぐにいってくれるのだが、
脈打ちが大きくなるだけで、なかなか射精まで進まない。
 発射が遅れれば、その分だけ身体が愛撫に晒される。薄手の、カップの大きいブラの上から
乳首をこね回され、半分くらいはみ出た乳房には直接指が届いていた。飲み込まれた手のひら
は乳肉の中で暴れて、たぷたぷと重さに耐えられず下に垂れている胸山をたわませていた。
「ああ、ああんっ……ん、ぐ……んふ、ぅ……」
 蛞蝓のようにゆっくりとまとわりつく動きだったが、指が通った後は甘く痺れ、火照りを帯
び始めていた。身体の熱は膨らむ一方で、気がつけば額や腋の辺りが汗ばんでいた。気持ちよ
くないと言い聞かせれば少しは落ち着いたが、頭をぼんやりとさせる熱さからは逃れられな
かった。
「ん、あうっ……ひ、い…………っ、だめ……」

 くわえ込んだ亀頭が角度を変えて前後に動くと、喉奥まで切っ先が進み、危うく呼吸ができ
なくなりそうだった。上目遣いのまま非難の意思を込めて睨み付けると、ジェイクバレットは
意趣返しといわんばかりに乳首を強く抓りながら前後のストロークを早めた。
「そろそろいくぞ……全部飲めよ!」
 ペニスの往復運動が激しくなり、手や舌で追いかけることができなくなってしまった。ぐ
ちゅ、じゅぷっという淫らな音とともに、味の濃くなった我慢汁が尖端の小さな切れ目から吐
き出される。口の中がねばねばしてしまうくらいに粘度を増したそれは、太く膨らんだ亀頭に
よって粘膜を覆う唾液ごと喉の方まで運ばれる。味は薄まったが気持ち悪いことには変わらず、
嫌悪に咽びながら必死に飲み下した。
「うっ、く……誰が、んああっ」
「嫌なら別に構わないぞ……薬はやれないけどな」
 胸も理性を失いかけているであろうジェイクバレットに散々揉みくちゃにされ、ブラもめく
れ上がり、たっぷりとした雪白のふくらみが露になりそうだった。
「そらっ……出すぞ! 全部飲み込め……っっ!!!」
 その瞬間は急に訪れた、ひときわ膨らんだ亀頭から苦く、生臭い液体がほとばしる。切り口
から噴き上がった精液は、一回の抽送のたびに口の中を汚し、しかも吐き出された精液が大量
ということもあり、頬袋や舌奥、歯茎まで白濁で満たし、収まりきらない残りは口の端から
ゆっくりと這いこぼれていく。
 量も、濃さもレリスタのものとはまったく違う、ジェイクバレットの執拗さを表しているよ
うだったが、ここにあの男の力強さを感じてしまった。レリスタが決して持っていないもの…
…服にまでしみこみ、肌を汚す牡液に高まる興奮、これは理性ではどうすることもできなかっ
た。
「ん、っ……はあ、う……くぅ…………」
 ゼリーのように濃厚な液体は、肌にべっとりと張り付いたままなかなか落ちようとしない。
その一方で喉まで進んだ樹液はそこで引っかかってしまい、フィルリスはむせながらそれを飲
み込み続けた。
 引っかかり、粘りつくそれの喉ごしは最悪だったが、いつまでも口の中に溜めておきたくな
くて、意を決してそれを全部飲み込む、レリスタのためなら、と思いはしたがあまりの屈辱に
目頭が熱くなった。

――――――――――――――――――――――――
 薬を取りにいくだけ、たったそれだけのはずなのにフィルリスはまだ戻ってこない。ジェイ
クバレットの部屋はそれほど遠くないはずだ……何か嫌な予感がしていた。一緒に探索に行っ
た時、ジェイクバレットはフィルリスをあからさまに性の対象として見ていた。薬を渡す代わ
りに何か要求していても不思議ではない。
「………………」
 もしそうなら止めなければ……立ち上がろうとしたところで、レリスタの脳裏にもう一つの
考えが浮かんだ。薬を飲まなければ近いうちに自分は死んでしまう、短絡的な行動を起こして、
フィルリスをもっと悲しませることにならないか……立ち上がっては座り、彼女を助けに行く
べきか……物音一つしない部屋で一人悩み続けていた。
「フィルリス…………」
 レリスタにとって、フィルリスはかけがえのない仲間で、最愛の恋人だった。結ばれた後、
自分だけのものになると約束してくれた。そのフィルリスが、ジェイクバレットに汚されよう
としている……浮かぶ想像はどれも身震いしたくなるようなものばかりだった。きっと乱暴に
扱うだろう、自分だけが気持ちよくなればそれでいいという荒々しいセックス、裏本でしか見
れないような無茶な行為も要求するだろう。
「どうしよう、くっ……何でこんな怪我なんか……!」
 自分の油断がフィルリスを辱めることにつながった、悔やんでも悔やみきれなかった。だか
らといって助けに行けば、そもそも返り討ちになるだろうし、うまくいってもフィルリスが喜
ぶとは思えない。堂々巡りの思考に、ジェイクバレットがフィルリスを犯す妄想が横槍を入れ
る。
「…………」
 焦りばかりがレリスタの心中を占めていた、ぬぐってもぬぐっても額に嫌な汗をかいてしま
う。身体の奥底まで冷えたような緊張感に思わず肩が震えた。楽しかった思い出が浮かべば浮
かぶほどに手足の先までこわばっていく。探索中も、そうでないときも常に一緒にいた……彼
女がどこか遠くに行ってしまう、それだけは嫌なのだが何もできない、自分が情けなかった。
「……そうだ、様子だけでも」
 無力だとしても、様子を見に行くことはできる。何も無ければそれに越したことはない……
いてもたってもいられなくなり、重たい身体を引きずりながら、レリスタはジェイクバレット
の部屋に向かった。

――――――――――――――――――――――――
「っふう……なかなかうまかったぞ」
 これで終わりにしろと目を送るフィルリスだが、たった一回の射精で満足するはずも無く、
太棒は相変わらず斜め上を睨み続けていた。
「……お前だってわかってるだろ? ここからが本番だって」
 逆に睨み返すが、気丈さはまったく失われておらず視線をそらしたりはしてこない、それが
腹立たしくもありうれしくもあった。にやりと口の端を歪ませながら、ジェイクバレットは
ベッドの上に座っているフィルリスをうつぶせに押し倒した。
「あっ……な、何を…………?」
 脱がすのが億劫で、質素な布服に指をかけて一気に引き裂いてしまう。裂け目から覗くブラ
の紐と色白の匂やかな肌、すらりとした背中のライン……つい生唾を飲み込んだ。背骨に沿っ
て指をなぞらせつつ、肉はついているものの細身の腰周り、そこから急な盛り上がりを見せる、
蜂の胴体を思わせる大きなお尻へと指を走らせた。
「ひゃあ、んっ……!」
 不意打ちに引き出された珠転の美声もジェイクバレットの興奮に追火をつけ、一気にスパッ
ツも脱がしてしまった。巨尻は伸びる布地に押し込められており、ぴっちりと肌に食い込んで
いたが、力任せに引き摺り下ろせば生尻と、あまりに大きなふくらみを支えきれずこぼしてし
まっている下着が見えた。花柄のレースが施された水色の下着、装飾の精緻さ、布地の質のよ
さ、冒険者というよりは貴族が身につけていそうな下着だった。
「すごいな、この尻は……」
「やめろ、見るな……」
 あまりに悩ましいカーブは、フィルリスが身を捩るたびにゆさゆさと大きく揺れた。この大
きな尻もコンプレックスなのか、視線を送り込むだけでひどく羞恥の表情をしていた。さらに、
顔だけではなく、身体全体が恥ずかしがっているようで、しっとりとしたきめの細かそうな皮
膚はぼおっと内部から薔薇色を帯び始めた。
 また、柔肌はうっすらと汗ばんでおり、貝殻じみた艶が照明をわずかに反射している。早く
も我慢の限界に達し、指を尻山に宛がうと自重だけで指が中に沈み込もうとした。スパッツ越
しよりもさらに柔らかさを感じることができ、手も自然と荒っぽくなり、力任せに豊満な尻山
を揉み潰してしまう。
「ふっ……くぅ、んあああ、はううっ!」
 むっちりとしているだけあって、もともと鈍感なのだろう。人間やエルフとは違い、力任せ
の愛撫であってもフィルリスは痛がるどころか、顔を高潮させて、目を細め口を開いたまま甲
高い喘ぎすら発していた。それをいいことにいっぱいに広げた両手でお尻を揉み荒らす。バブ
リースライムを少し固くしたような、どこか脆さを感じさせる柔らかさに、すっかり夢中に
なった。
「こんな身体してたら、あいつもしつこいんじゃないか?」
「……レリスタは、んぅ、っ……お前とは違う、こんな……いやらしく…………」
 内心でレリスタを思い浮かべ、物の価値がわからない奴だと思いっきり馬鹿にしてやる。愛
情だけが取り得の単調な愛撫しかできない男を見下しながら、そろそろ次だと、フィルリスの
身体を反転させ、仰向けにさせた。大きな桃尻に手のひらが押しつぶされるが、小柄なドワー
フということもあり、たっぷりと絡みつく肉の割に重さは感じなかった。
「それじゃあ、今日は死ぬほど気持ちしてやる、入れて出すだけの粗末なセックスなんてした
くなくなるくらいのな」
 不安そうに見上げてくるフィルリスに嗜虐欲を掻き立てられ、首筋に顔をうずめながら呼吸
のたびに弾む乳房と下着の奥で震えているであろう縦筋に手を伸ばした。清潔感溢れる石鹸の
匂いを楽しみつつ、左右の手に伝わるそれぞれの柔らかさを確かめた。
 まず乳房は、お尻よりはるかに大きいだけあって、その感触も目が覚めるほどに素晴らしい
ものだった。指を飲み込み、埋もれさせるのはもちろん、肌はわずかに水を含んだビロードを
思わせる細かな潤いを帯びており、指に引っかかりはまったく感じられなかった。薄いゴムに
水を詰めたような弾力と重たさもたまらなく、乳搾りの要領で根元から先端にかけて思いっき
り揉み扱いてしまった。
 乳首は服やブラに隠れていたところで摘んで小ささはわかっていたが、改めて見ると、その
淡く控えめなたたずまいは爆乳とはあまりに対照的で、色の薄いそれを指腹で抓ってみると小
さな女の子に悪戯をしているような、少し後ろめたい気分にさせられる。
 桜色の先端はすでに固くしこりを持っており、指で転がすと中に芯を感じた。指腹で擦り、
突起の頂点を軽く指で押しつぶし、指の側面で挟みつけたりと刺激を加えていくと、指を歩か
せると消えてしまいそうな薄さの乳輪もぷっくりと膨らんで持ち上がり始めた。
「ん、やめろ、ああんっ、く、う……こんなの、気持ち悪い、はああんぅ」
 やはり痛いくらいがちょうどいいのか、フィルリスのあえぎは大きくなり続け、安部屋なら
外にまで聞こえてしまう可能性が高い。室内に響き渡る嬌声はどんな楽器よりも清らかで、そ
れでいて淫らがましい音色だった。
 それをもっと大きく、華やかにするために、ジェイクバレットは土手に宛がった指をうっす
らと透けて見える筋の形に合わせて擦りなぞらせる。こちらも胸やお尻同様柔らかいが、さら
に頼りなく傷つきやすそうだった。ふっくらとした割れ目の縁肉を外から内に、円を描いてい
くと、亀裂の周りは早くも潤いに包まれているようだった。
「なんだ、もう濡れてるのか……? 身体と同じでスケベなんだな」
 下着もずり下げてしまうと、細かな産毛しか生えていないフィルリスの土手が射視に晒され
た。背丈には見合っているが身体つきにはまったく見合っていない、ほころびも見えない一本
の縦筋がそこにあるだけだった。
「……こっちは身長相応ってわけか」

――――――――――――――――――――――――
 見られるのは至上の屈辱で、死ぬほどの恥ずかしさをフィルリスに与えるが、快楽を与える
ためだけの道具として扱われて、牝として征服させられるたびに、心の中に植えつけられた違
和感はだんだんと大きくなった。それは、下着を脱がされて未成熟な割れ目をジェイクバレッ
トに見られたのをきっかけに、外に追いやれないほどに内心を埋め尽くしてしまった。
「ん、見るな……だめだ、明かりを……」
「消してほしいか? ふん……そいつは無理だな、こんなもの見せ付けられたら……」
 下着は足首の辺りまで丸まっていた、身体を起こし、パンツを手にとりたかったが、ジェイ
クバレットがそれを許すはずも無く、太く長い指を第一関節の辺りまでねじ込みながら、薄皮
に包まれた小さな尖りを指で摘んできた。クリトリスをゆるく摘まれるのが一番弱かったが、
レリスタだと力の入れ具合が難しいのか、痛みを感じることも多かった。だが、ジェイクバ
レットは理想どおりに圧力をかける、背中とあごが反り返り、少し天井が近くなった。
「ひいっ! あ、ん……ぁ、っ、くうう」
 多少の痛みはあったが、どちらかといえば疼きや痺れに近く、苦痛はほとんど感じなかった。
それどころか、レリスタと行為に及ぶときよりも、はるかに深いレベルで女の悦びを覚えよう
としていた。レリスタは乳首もあまり触ってくれないし、言っても我慢できないようですぐに
入れたがる。一つになることで得られる安らぎはあったものの、スイッチの入った身体を中途
半端に放置されてしまうことも多く、必ずしも満たされているとは言いがたかった。
 一方、ジェイクバレットは前から自分の事を知っているのではないかと思ってしまうほどに
的確な指弄を繰り出してきた。クリトリスだけではない、蜜に塗れてほころびかけた花穴も、
胸も、お尻も、不思議なくらいに神経が集まっているところに触ってくる。
 レリスタの稚拙な前戯では到底届かない高みまであっさりと引き上げられてしまう、身体が
感じ入るほどに腰は泳ぎ、指がベッドのシーツをきつく掴む。
「……こっちか、弱いのは?」
「く、ああぁっ……はあ、ん、ふあ…………ああああっ!」
 気持ちよさを覚えたこと自体が何よりも恥ずかしく、そしてつらかった。フィルリスに快楽
を送る相手は、弱みに付け込んで身体を求めてくる軽蔑すべき男だ、感じてはいけない、レリ
スタの顔を必死に思い浮かべて、浮き立つ心を押さえ込もうとする。それもうまくいかなさそ
うだった。ぬかるみで足を引っ張られているような……気がつけば甘ったるい匂いと味わいを
発する部分をかきくつろげられられ、恥ずかしい芽を摘まれてと意識がジェイクバレットの方
に引き寄せられてしまう。
 火を噴かんばかりに赤くした顔を右に左にねじり、高ぶる羞恥の中でフィルリスは自分の弱
さを恨み続けた。
「っ、さっさと……終わらせろ、お前と、っ……んあっ、遊んでる暇は……んひ、いぅっ、な
いんだから」
 鋭敏なクリトリスは愛液を滲み出させるスイッチだった。しかも、同時に捩れあう合わせ貝
を捲り開いて、襞の起状に合わせて中をくじってくるので、秘肉が爆ぜることで淫らな音が辺
りに跳ね立ち、ジェイクバレットの指までべっとりと白蜜で汚れてしまっていた。
「ああっ、くぅ……ん、んふ、ひあ……っ」
 フィルリスは切なげに息を吐き、火照った顔を背けながら、胸の中から最後の空気を吐き出
すようにつぶやいた。切羽詰った声を放つことで余裕の無さを示してしまい、調子付いたジェ
イクバレットはますます抽送の速度を上げて、秘唇のあわいをせわしなく掻き分ける。

 目の前の男は無表情のまま、口元だけを歪めながら、胸山の上で休んでいた片手を動かし、
爆乳の上にぽつんと孤立した乳暈と乳頭をくすぐり、軽く捻り上げる。陰部に気が向ききった
フィルリスの背筋に強い電撃が走った。器用に片手ずつで性感帯を責め、乳首を引っ張ったか
と思うと、今度は狭間の肉を摘む指がうっすらと蜜で覆われ始めた花筒の中にゆっくりと入り
込み、狭隘な穴を掻き広げ、粘り気のある液体をかき混ぜた。
「レリスタ、んんああっ……はあ、はあぁ……やあ、うううぅ」
「ちっ……あいつのことなんて忘れちまえよ、粗チンで早漏で……どこがいいんだ?」
 手足を走る震えに、顔を立てて悦を吐いてしまう。それでもレリスタの事を考えれば……浮
かび上がる顔は少しずつ薄れていき、ジェイクバレットの太い指、熱い胸板、傷だらけの顔ば
かりが自分の心を占めていく。
 意識の方向を変えられれば、頭に響く淫らな音はさらに大きくなり、コップから水が溢れる
ような、何かが内から外に漏れ出す感覚に襲われた。指が蠢く襞をゆっくりと押し撫で回すと、
果肉の芯から熱を湛えた液体が、じっとりとこぼれ始めた。それは出口を見つけたといわんば
かりに滴り落ち、ねっとりと伝って会陰部を濡らし、窄まりの方にまで届き、シーツにも大き
なしみを作る。
「言うな……! レリスタは……あいつは…………んんっ!」
 指は曲げて伸びてを繰り返し奥までえぐろうとしている、最初は爪の辺りまでしか入ってな
かった指もいつしか第二関節の辺りまでもぐりこんでおり、狭く入り組んだ洞窟の中で蠢動を
繰り返した。レリスタの指よりもずっと太いはずなのに、なぜか肉鞘はやすやすと受け入れて、
荒々しくなりがちな指先の前後運動も気が遠くなるほどの陶酔感を生むだけだった。
 身体の熱に追い立てられて腰を持ち上げてしまうと、ジェイクバレットの指をさらに深くま
で導いてしまう。汗はさらに噴き出し、呼吸も弾む、どうしてこんなに興奮してしまうのか…
…理解したくなかった。動機はどうあれレリスタを裏切り、二度と会いたくなかった男に抱か
れている……薬を持って帰ったとしても、二度と顔向けはできないだろう。
 内心のざわめきとは裏腹に、潤み開いた赤い亀裂は、ぬちゃぬちゃと口を開け、外側に飛び
出して屹立している対の肉びらを指で弄ばれるたびに、呻きをもらしながら両手でジェイクバ
レットのの肩を掴んでしまう。
「どうした……もっとしてほしいのか?」
 もちろんそんなはずは無かった、だが左右のびらつきは収縮と弛緩を繰り返し、野太い指を
奥へと招き続ける。身体は歓迎している……どれだけ心で拒んだとしても、稼動する指が両者
を分断させ、フィルリスを翻弄する。
「あいつのことは忘れろ……その方が気持ちよくなれるし、楽にもなれるぞ?」
「……っく、あああんっ、だ、誰が……んうううっっ、はあぁ」
 本能が示す歓迎の意思が、理性を侵食する。羞恥心は変わらずに激しかったが、恥ずかしく
思う気持ちが性感をことさら敏感にさせていることにフィルリスは気づきつつあった。さらに、
レリスタの事を考えるとこみ上げてくる後ろめたさ……愛する彼とは違う男に抱かれている、
これを意識するほどに、奇妙な情欲のうずきが総身を走り抜けた。自分が恐ろしかった、ずっ
と拒み続けていれば心が壊れてしまう、だから肉体はジェイクバレットの醜撫を受け入れよう
としているのだろう。いっそ壊れてしまった方が楽なのだが。
 フィルリスの気持ちとは関係なく、指は息づく襞の起伏を、尖り立った赤いくちばしを、押
し揉み、撫で転がし、引っ張り上げと指の動きを複雑にすることで、なおも快楽を注ぎ続けて
いた。
「んぁ、く、っ……はあ、んふ……っ」
 次第に考える力も奪われようとしている、レリスタへの申し訳なさも思考能力を奪う後押し
にしかなっていない、下腹部の奥、子宮のあたりがじわりと反応するのを感じ取った。そこか
ら痺れに近い波紋が広がり、全身を駆け巡る激しい羞恥、恐怖、快感と一つに混じり合い、大
きな混乱を生み出そうとしていた。それは、肉という肉が全て溶けてしまうほどの灼熱でもあ
り、髪の毛まで凍りつくような冷気でもあった。痛くもあり、くすぐったくもあり……ありと
あらゆる感覚が束となって性感を煽り、頭の中に眩い光を浮かばせる。
「……まだ、こんなもんじゃないぞ」
 秘裂に食い込んだ人差し指が、別の生き物を思わせる回転を見せると、昂ぶりは一気にピー
クに達し、フィルリスの肉体は、本人の意思とは無関係にメラメラと欲望の炎を燃えあがらせ、
心の奥までとろけさせた。見下した笑いを見せるジェイクバレット、惨めだった……たかが指
一本に、心を狂わされ、それを受け入れようとしていることが。
「ん、はあっ、だめ、ぇ……! そっち、はあう、んっ!」
 喘ぎつつも魔指を追い払おうと腰を動かす、天井はぐるぐると回り始め、明かりは涙で滲む
……腰をくねらせるほどに、指は先へと進み、知らないうちに人差し指だけではなく中指まで
愛汁にまみれた肉襞の間を解し進んでいた。ねとついた淫蜜は、指をとろとろと流れ、ジェイ
クバレットの手を白く濁った液体で汚してしまっていた。
「あいつのときも、ここまで濡れるのか?」
「……っ、ああぁ…………」
 くの字に曲がって粘液を掻き出す指が入り組んだ模様を強く擦り上げると、投げ出された両
腿に、さざなみのような震えが走った。レリスタに抱かれたときに心をいっぱいにしていた穏
やかな満足感はカケラほどもない、その代わりに心を支配するのは後ろ暗い肉欲だった。レリ
スタへの愛を、ジェイクバレットへの嫌悪を確かめるのだが、それすらも、好きな人がいるの
に……こんな男に……と思うほどに身体のコントロールを失い、こらえていた喘ぎも、大きく
漏れ始めてしまう。
「これは、違う……っ、私が…………んああああっ!」
 浮き上がる身体に、ついしがみついて行き過ぎた快楽がもたらす恐怖や不安から逃れようと
してしまう、ジェイクバレットが笑う、手は吸い付いたように離れない、それどころか入口上
部の壁を、強く刺激されると、子宮から壷口までむず痒さがせり下がり、脳裏に火花が飛ぶよ
うな強烈な気持ちよさを浴びてしまった。

――――――――――――――――――――――――
 ジェイクバレットの部屋の前まで来たレリスタだったが、ノブに手をかけることさえできな
かった。ここから先には、きっと見たくないものがある……逃げ出してしまいたかった。それ
でも引き返さなかったのは、悶々とした思いを抱えたままフィルリスの顔を見ることができそ
うになかったから、例えつらくても、何もかもを知っておきたかった。
「…………」
 悪寒も、傷の痛みもさっきよりひどくなっている、ドアに近づくと、男の荒い息遣いと、女
の甲高い喘ぎが聞こえてきた。いつも聞いている、上質な楽器の音色を感じさせる、涼やかで、
それでいて穏やかな……フィルリスの声だった。こんな声を出しているのは初めてだった。い
つも自分とするときは、もっと密やかな押し殺した声を上げている……あまりのギャップに、
部屋にいるのは彼女ではないのかもと思ってしまった。
「……何が違うんだ? 感じてるんだろ……さっさと認めちまえよ」
「うるさいっ……はあ、あああんっ! こん……なの、おかしい……んああぁ」
 フィルリスはジェイクバレットを拒んでいた、しかし途切れ途切れの声は上ずる一方で、嫌
そうにも、気持ちよさそうにも感じられる。ここまで来ると、中でいったい何があるのか気に
なって仕方が無かった。
「よし…………」
 手の震えを押さえつけ、ドアノブをゆっくりと回す。鍵はかかっていなかった。2人に気づ
かれないようにそっと扉を開くと、大きなベッドの上で、大きな男が小さな少女を押し倒し、
節くれだった指で秘所を撹拌していた。少女はそれを嫌悪し、腰を泳がせる一方で男の両肩を
掴み抱き寄せようとしていた。やはり、フィルリスとジェイクバレットだった。

「んふっ、あああっ……や、め……ろ、んんっ、はあぁあっ!」
「そろそろか……」
 何がそろそろなのかまったくわからなかった。ただ、指の動きはますます激しくなり、ぐ
ちゅぐちゅという水飴をこね回すような音がレリスタにまで聞こえてきた。生まれついての目
と耳のよさを呪いたくなるほどに、膣内を突き捏ねる動きも音もはっきりと感知してしまう。
自分があそこまでしたら痛がられるだろう、それなのに二本の太い指でも痛がるそぶりを見せ
ないことが不思議だった。
「ん、くっ、あああん、はああんっ、レリスタ……ぁ」
 名前を呼ばれた、気づかれたかと身を隠すが、フィルリスの目は虚空をさまよっていた。身
体中から汗を噴き出し、口の端から涎をたらし……身も心も弛みきった中でひたすら快楽を
貪っているようだ。
「俺とあいつ、どっちが気持ちいいんだ?」
「んぅっ、そんな、あああんっ」
「……あいつはどこまでしてくれる? どうせすぐ入れてすぐ終わりだろ…………言いたくな
かったら無理強いはしない、断れる立場とは思えないがな」
 答えは決まっている、ような気がした。フィルリスの目を見ればわかった。問いを投げかけ
たジェイクバレットの指は小さな割れ目をいっぱいに広げ、根元までねじ込まれようとしてい
た、指はすでに三本に増えているのだが、それでも惚けた瞳は妖しく輝き、さらなる悦びを求
めていた。そこには狼狽も、嫌悪も、諦観も何もない、あるのは、慕いと媚びのきらめきだっ
た。
「…………お前だ、お前の方が、ずっと……はあああっ、でも……んっ、私は、レリスタが…
…だめ、だ、身体が……はあう、っ……」
 レリスタにとっての唯一の一つの救いは、まだ自分のことが心に残っている……それだけ
だった。しかし、フィルリスは愛撫を受けるたびに腰をくねらせ、ジェイクバレットにかぶり
つき、潤んだ瞳であの男の顔と指を交互に見つめていた。彼女の変貌振りに、いつかは自分の
ことも忘れてしまう、と確信じみたものさえ抱いてしまう。
「はあ、あっ、すまない……レリスタ、んっ、いっちゃう……ふああっ、ああ、ああああ
あっ!!!」
 指が何往復かしたところで、フィルリスが大きく痙攣した、脚が宙に浮き、空を切る。口は
だらしなく開き涎をたらしたまま、ひとしきり大きく喘ぐ。ここまで乱れ狂う彼女を見るのは
当然初めてだった。気持ちよかったと言ってもらえたことはあったが、あれはきっと嘘だった
のだろう……目がしみて、見えていたはずの二人の姿がぼやけ、分裂する。
 心に浮かぶのは、ちょうど3日前、フィルリスとデートしたことだった。小さな金細工の店
で、首飾りを買ってあげた……似合ってるよと言ってあげたら、顔を真っ赤にして、それがす
ごく可愛かったのを思い出した。その後は少し高めのレストランで食事をして……あのときは、
こんなことになるなんて思っていなかった。考えるだけで胃の辺りが締め付けられ、こめかみ
が痛くなる。
 首飾りは、フィルリスの身体がひくつくたびに小さく揺れた。あしらわれた宝石に、鎖に汗
が飛び、部屋の明かりを反射して小さく輝いた。
 最後に白い喉がはたかれたように反り返ると、焦点の合わないまなざしで真上を睨んだまま、
ベッドに倒れこんだ。

――――――――――――――――――――――――
 肉体が絶頂を迎え、裁きの雷ほどの衝撃を味わっている間、フィルリスの心は激烈な恥辱に
苛まれていた。あるとあらゆる感覚が自分の小さな身体に流れ込み、それらは何倍にも膨れ上
がり指の一番先まで瞬時に染み渡った。肌は直火で炙られているように熱く、風の流れだけで
肌がざわつき鳥肌が浮かび上がった。
 頭の中では火花が飛び続け、視界は真っ白にぼやける。引き裂かれんばかりの切なさで気持
ちがいっぱいになったかと思うと、それを打ち消すように恍惚とした多幸感が芯からこみ上げ
る。生まれて初めての感覚にただ戸惑うばかりで、余韻が引いて行く中でも、煮えたぎる気持
ちの中での混乱は残り続けていた。
「どうだ、よかっただろ?」
「……っ、最悪だ、お前なんかに……」
 レリスタとの行為とは、全てが違っていた。受け入れがたい何かを感じるとともに、ねとつ
いたパールピンクの器官は、今にも蕩けそうで、ぱっくりとくつろげ広げられた壷口は貪欲に
ひくつき、淫猥な輝きを放っていた。
「素直じゃないな。でも、身体は違うみたいだけどな……我慢しても、つらいだけだろ?」
 ジェイクバレットの言う通りなのかもしれない。溶けてしまいそうな快楽を伴った淫靡な誘
いを断り続けるのは苦痛ですらあった。レリスタを裏切りたくないという気持ちだけが今の
フィルリスを支えていた。
「………………ひうぅっ」
 いったばかりの膣奥に再び指が入り込んだ、下腹、そして胃と衝撃が突き抜ける。身体が溶
けてベッドに沈みこみそうな感覚に襲われる、形を覚え、それに合わせようとしているのか肉
の筒は動き回る指にぞよめき、一定のリズムで収縮を繰り返した。
「おっと、指じゃなくてこっちか……悪い悪い」
 一気に指が引き抜かれる、圧着した襞が擦られ、子宮に甘い痺れが走った。白く濁った液体
で汚れた指を眼前に突きつけられていると、くちゅりと音がした。赤みを増した花びらに押し
当てられたのは、さっきまで頬張っていた肉亀だった。
「ここまで濡れてくれるとはな、よっぽど溜まってたんだな……」
「ひゃあっ、あんっ、やめろ……はあぁ、ぅっ……!」
 粘膜同士の触れ合いは、身を焦がすような気持ちよさだった。器用さでは指が勝るが、亀頭
独特のつるりとした感触、脈動と熱、尿道から吐き出される我慢汁の匂い……生々しい男性器
の感触に、フィルリスの体内では子宮が下り、受精の準備を始めていた。それが疼きとなって
一匹のメスと化しつつある彼女をいっそう貪欲にさせる。
 ねとついた肉花が咲きほころぶことで、肉の祠が形作られ、巨大に膨れ上がった肉槍を受け
入れようとしている。これを見てしまうと、レリスタの肉棒は子供それと同じだと錯覚してし
まう。
「力抜かないと、痛いぞ……痛そうにしてたら、あいつにもばれちまうかもな」
「…………っ! こんなの……んふううっ」
 尖端がわずかに進入を果たす、軽い痛みとともに蜜口が楕円形に広げられると、淡紅色の媚
肉は争うように男性器に絡みついた。膣内も指との違いを察知したか、襞は早速噛みつき、胎
内への経路も同じく蠢きを繰り返した。さらに、竿肉が前後に軽く動き出し、凹凸に富んだ膣
前壁を、手前に引っかいたり、後ろに押し込んだりと、微妙な加減で刺激と振動をもたらして
くる。フィルリスの腰も自然と動いてしまうが、嫌がっているのか求めているのか……自分で
もわからなくなってしまう。
「入れてほしいか……?」
 すでに肉裂の中は熱く溶け出しており、シロップにでも漬けたかのように、ぬるぬるになっ
ていた。濡れているという実感が、フィルリスを思考を乱す。中に受け入れたいのはレリスタ
だけだと思いながらも、あんなに太いペニスが挿入され、指と同じく巧みに動いたらどれほど
気持ちいいだろうか。
「そんな、ああんっ、うう……ぅ、私、は……」
「強情だな、お前はレリスタの粗チンじゃ満足できてなかったんだよ。男ってのは女を気持ち
よくするためにできてるんだ」
 そうなのかもしれない……思考の撹乱は、支えを容赦なく突き崩す。あとは坂を転がり落ち
るように考えは塗りつぶされ、それを理性で止めることはできなくなっていた。薬がほしい、
だからジェイクバレットに抱かれる、気持ちいいのだから気持ちいいと言って当たり前、いつ
までも嫌な気持ちでいたくない、だから………………この瞬間だけはジェイクバレットを、彼
を受け入れよう。薬を手に入れるまでの辛抱だから、レリスタのためなんだから、自分だって
気持ちよくしてもらいたい、一つの理由が別の理由を作り、確固としたものへと変えていく。
「後ろからしてやるよ、こっちにケツ突き出せ」
 すでに心は決まっていた、だから、レリスタの前でもしたことのないはしたない格好であっ
ても躊躇することは無かった。彼に背中を向け、コンプレックスだったはずの大きなお尻を強
調させ、深い切れ込みの奥で、匂い立つ牝液をゆっくりと伝わせている桃肉の狭間を見せ付け
る。
 気持ちが楽になるのをフィルリスはしみじみと感じた、しかし、なぜ嗚咽がこみ上げてくる
のか、脳裏は変わらずに混沌としているのか、瞳は熱に燃えているのか、まったくわからな
かった。

――――――――――――――――――――――――
「………………」
 多少素直になったフィルリスを怪訝に思いながらも、ジェイクバレットの目は巨大な桃尻に
固定されていた。ほんのり桜色に色づいた双臀は左右に震え、細い腰からきゅっと盛り上がっ
た、豊穣さが目立つ美しい曲線は何とも悩ましいものだった。指を尻肉に宛がい、左右から巨
大な饅頭が二つになるように谷間がゆっくりと広げる。ふくらみは手に余る大きさで、柔らか
な肉の塊が指先に食い込んでいった。
 奥にあるのは無毛のスリット、外の唇はふっくらとしているが、中の唇はわずかに開くのみ
で色も薄く、しこり立った女核も小さく、背丈の低さに似合う楚々とした割れ目だった。しか
し次々と吐き出される蜜液と呼吸をするように開閉を行う膣孔は、すでに成熟した女のそれで
あり、そのギャップがジェイクバレットを燃え上げさせた。
「んぅっ…………」
 桃白い皮膚と鮮やかな赤の対象、平凡ではあるが否定することのできない美の形の一つであ
る、精緻な細工を思わせる淫裂に怒張を挿入することができる……言い知れぬ充実感と征服感
がジェイクバレットを包み込んだ。
「行くぞ…………」
 怒張を宛がい、左右の巨尻を下から持ち上げながら支えながら腰を突き上げる、巨根がひっ
そりと閉じているピンクの扉をこじ開け、歓迎の意を示す前に一気に竿を半分くらいまで押し
込んでしまった。前後の押し引きを繰り返すだけで、襞蟲は波打ち、くねり、ささやかなたた
ずまいからは信じられないほどの食い締めを見せてきた。
「はああっ! ん、痛い……っ、もっと、ゆっく、り……んんっ!」
 悲痛な叫びを上げるフィルリス、しかしそれはどこか愉悦に彩られていた。ジェイクバレッ
トは非難の声を軽く流し、豊満な胸をわしづかみにしたまま、快美な肉筒と化した膣壁をこれ
でもかと穿りにかかる。四方八方から迫り来る柔肉、ぶつかるたびにたぷたぷと揺れて、腰の
辺りで弾む大尻、ピストンの振動に耐え切れず、重たそうにたわむ釣鐘状の乳房……どれもこ
れも、レリスタにはもったいない極上の一品だった。
 特に、複雑に襞が入り組んだ膣壁の締まり具合は素晴らしかった。長大な鉄竿ですら押しつ
ぶすほどの狭隘感をもたらすと同時に、柔らかなゼリーをゴムで縛ったような、例えようのな
い快楽をもたらしてくれる。さらに、動くたびに肉ゼリーは亀頭に追いすがり、ふんわりと包
み込んでくれる。
「へっ……やっぱり痛いか。心配するな、そのうち慣れる……慣れたら、あいつのじゃ物足り
なくなるだろうな」
「はあっ、んぅっ……お前なんかに、あああああーっ!」
 ぬるぬるにとろけた肉壁が、吸い付き、絞り上げる感触に、早くもぶちまけたい思いがもた
げるが、まだ早いと腰の動きを弱め、衝動が収まるのを待った。動きを止めている間も、フィ
ルリスの搾精穴はローションをぶちまけたと勘違いするほどに白く濁った蜜を吐き出し、ぐね
ぐねと襞を蠢動させていた。膣壁には蚯蚓のような模様がみっちりと埋め尽くしていたが、そ
れだけではない。天井の一部分だけ妙につるりとしているが、ここをエラで軽く擦ってやれば、
たちまち起伏が発生し、強い圧力で亀頭を押しつぶして射精を誘発する。
「こいつはすごいな……名器ってやつか」
 多少落ち着いたので抽送を再開する。切っ先に感じる悦びのしるしは量を増し、グラインド
をより容易にする。最初は浅く、だんだんと深く……フィルリスの深みにのめりこめば、その
分だけ圧迫が返ってきた。それは、包み込んだ手のひらが握るような強烈なもので、今までに
抱いた女とはまた異なる突き心地だった。
 肉門を潜り込ませた剛直はそのままに、乳房を手の中で揉み潰し、桃尻に平手打ちを食らわ
せる。
「んうううっ! あぁ、ああんっ!!」
 声の調子はいよいよ悲鳴じみて、苦痛から逃れんとした動きが熱く濡れた柔肉をより蠕動さ
せカリ首が奥へ奥へと吸い込まれてしまう。そしてさらに声は高くなる。縮こまる襞が熱くぬ
めり、竿を舐め回す気持ちよさに、たっぷりとした果実を揉む手は加減を忘れていく。
 手のひらに吸い付く、固めのゼリーを思わせる弾力、そして餅のようなきめの細かさ。頂点
で愛撫をせがむ小さな突起はさしずめグミだった。甘い汗の香りを発散させる肌に鼻を寄せつ
つ、あっさりと形をひしゃげさせるフィルリスの乳房に、興奮はとどまるところを知らず、手
を叩きつけるように揉みくちゃにしてしまっていた。

――――――――――――――――――――――――
 野卑さの塊だと思っていた彼がここまで繊細で器用に腰を動かしていることが、なんとなく
信じられなかった。レリスタの、精を吐き出し愛の言葉をささやくだけの営みはもはや子供の
飯事でしかなかった。
「一人でよがりやがって、俺のチンポも気持ちよくしてくれよ」
 硬くみなぎりたったものは蜜温む場所で悠々と泳ぎ、柔らかく解れた粘膜は、ついにジェイ
クバレットの鉄竿を付け根の辺りまで飲み込んでしまう。子宮に近づくほどに敏感になる粘膜
は、嬉々として咀嚼をし、意識しなくても亀頭を押しつぶし、握り扱いてしまう。
 気も空ろになる中で、考えてみればレリスタのペニスはこんなところまで届かなかった。太
さも、長さもそれほどではない男性器は手前か、よくても真ん中よりやや先あたりでストロー
クを繰り返し、しばらくすると痙攣したまま射精を開始する。あまり奥まで行くとすぐに出し
てしまうからだと言っていた。
「ん、ぁっ……はああ、ああ、そんな、奥まで……っ、あああん!」
 一方のジェイクバレットは、暴発とは無縁の怒張を奥まで穿ち込む、そこに躊躇は無かった。
遠慮も何もないストロークに、胎内は痺れ、膣壁は孕まされるのを望むかのように前後に荒々
しく動く竿に食いついた。もっとも、ただ乱暴にするだけではなく、不意に突き込みが穏やか
なものに変わり、ざわめく襞をゆっくりと這い撫でてきた。激しい突き上げで感度を引き上げ
られた肉の筒は、総身を一気に弛緩させるほどの快楽を駆け巡らせる。それは、憎いはずの彼
を愛しいとさえ勘違いさせるくらいの悦楽だった。
「あ、はぁっ…………だめ、なのに、はあう、だめ……だめぇ…………!」
 その上で、双球に手をにじり寄らせ、左右の大きな球を交互に揉んでくる。乳山が分裂する
くらいに指が食い込み、普通なら痛いはずなのだが、それすらも気持ちよさに置き換わる。お
尻も、肌が赤くなるまで何度も平手打ちを食らい、その後は高価な陶器を愛でるように優しく
撫で回してきて……愛撫に翻弄されたフィルリスは、背中を震わせ、何本もの光が視界を埋め
尽くす法悦に、一人酔いしれていた。
「言えよ、気持ちいいって……そうすればいかせてやるよ」
 後れ毛が何本かほつれた耳元に口を押し付けるようにして、彼がささやきかける。振り向い
た先にあったのは、勝利の色に輝く目だった。気持ちいいことには変わりない、嘘をつくのは
よくないことだ……不思議だった、望まない行為のはずなのに、ジェイクバレットの言葉一つ
で心中では、それをしたという理由を次々と探し出し、恥辱に塗れた行いでも喜んでなそうと
してしまう。
「……気持ち、いい……です、あああんうっ、おちんちん……気持ちいいのぉ!」
 素直な気持ちを吐き出すことで、身体が少し軽くなった。同時にレリスタの顔が頭の中から
少しずつ消える。

「あっ、はああぅ、んああ……あっひいっ!」
「やっと言いやがったな、それじゃあ、もっと奥まで入れてやるか……」
 まだ入るという言葉を聞いて、言い知れぬ期待と恐怖を覚えた。これ以上気持ちよくさせら
れたらどうなってしまうのか、レリスタの事を好きでいられなくなってしまうのでは……戸惑
いながらお尻を引こうとしてしまう。だが、彼はそれを許さない。純粋なドワーフとは異なる
細めの腰から急激に張り出した豊臀を勢いよく抱え持ったかと思うと、雪白の山の狭間にある
結合部向かって、これまで以上に激しく肉竿を打ち込んだ。
「んふっ、あああああっ! 一番奥っ、ごりごり、しない……でぇ!」
 身を泳がせ、顔を左右に打ち振って、高い声を上げるフィルリス。自分の顔が緩んでいくの
がわかった。何が起こったのかわからないまま、顎も背中も反り返り、開ききった口から熱い
吐息と唾液をこぼす。喉から発せられるのはすすり泣きに近い、かすれた声だった。
「っ……大した締め付けだな、奥までされたことないんだろ?」
「あ、ああっ、あうぅ! レ、レリスタは……もっと、手前で……あはああっ
!」
 胎内に爆発の魔法を食らったような快楽の正体は、膣孔と子宮を隔てる行き止まりに亀頭が
ぶつかり続ける衝撃だった。これまでのピストン運動に比べればはるかに弱い刺激にもかかわ
らず、一度のノックで身体が身体が浮き上がってそのまま高く飛び上がってしまいそうな五感
への訴えかけを浴びせられてしまう。
 どこか遠慮がちな前後の揺れはだんだんと大きくなり、今度は飛んだ身体が勢いよく地面に
叩きつけられた。もちろん錯覚だから痛くはない、ただひたすらに気持ちよかった。
「ひうっ、はあっ、あああん……ふう、ぅ、だめ、そこ、はああああっ!」
 突き捏ねる動きはまっすぐから微妙に角度を変え始める。肉の洞穴への摩擦が強くなり、そ
れが余計にフィルリスをエクスタシーに溺れさせた。雄々しいペニスは我が物顔で右に左にと
角度をずらし、襞も起伏もさまざまな方向からかき乱されてしまい、走る電撃に身体の震えが
止まらなくなってしまった。
「はうっ、んああ、ひあああぅ! 気持ちいいの、奥まで、はああああんっ!」
「たっぷり楽しめよ……あいつの傷が治ったら、それで終わりなんだからな」
 熱い吐息、肌のぶつかる音、結合部のぬめる音、それらが交錯し、広い室内を猥雑な空気で
取り巻く。めくるめくような快感の矢に全身を射ぬかれることで、体液でぬめ光る肌はがくが
くと激しく波打ち始め、いたたまれないような情欲の念が身体の中心から流れ出た。それと一
緒に、レリスタへの罪悪感も、ジェイクバレットへの拒否感も薄れていく。レリスタの事を嫌
いになったわけではない。ただ、一度たりとも与えられることの無かった快楽に、肉体も、精
神も屈してしまっただけだった。
「……終わ、り? そ、そうだ……お前なんか……んはああっ! 奥までぇ、されたっ
て……ああ、ぁ!」
 どれだけ言葉で抵抗したところで、快感の矢が全身を貫けば、花芯が切なく疼き、最奥の扉
を押し叩く先端を痙攣しながら締め付けてしまう。
「わ、私は……こんなんじゃ、んふああっ! ああああ!」
 全身が引きつる、胸を反らせて眉を寄せ、艶やかさを増した喘ぎを漏らしながら自分からも
腰を振り始めてしまう。結合が深まれば肉鞘の先にある行き止まりを強く突かれ、歓喜の声を
上げる。レリスタと初めて結ばれて以来、ずっとくすぶってきた官能の炎は一気に燃え広がり、
フィルリスの理性も、良心も、倫理も全て焼き尽くそうとしていた。

――――――――――――――――――――――――
「おっと、勝手にいくなよ……」
 レリスタのためといいながら、まぐわいに溺れようとしているフィルリス、喉の奥で笑いな
がら堕ちゆく彼女を尻目に、そう簡単にはオーガズムを与えるつもりはないと、腰の加速を抑
え、秘奥ではなく、膣口の辺りをピンポイントで責め始める。
「あぁん! くっ、誰が、いったりなんて……ひあああっ!」
 ゆっくりとした抽送であっても、耐性のない彼女にとってはまだ強烈なのか、蚯蚓の洞肉は
ひしめき合い、前後する肉の槍を舐め、噛み、飲み込もうとする。特に、奥に進むときの収縮
は絶品で、ぴったりと吸い付くことにより襞が蠢き、カリ首やら裏筋やらをこれでもかと締め
付けてくれる。
 締め付けは激しいが痛いわけではない、牝の柔口は、たくましい牡の象徴を引き入れる作業
を自然と行っており、さらに桃色の輪が蜜を爆ぜさせることで粘膜の圧着はより窮屈になり、
蚯蚓が這い締めているのでは、と錯覚するくらいだった。
「だらしない顔しやがって……レリスタに見られたらどうすんだ?」
 フィルリスの肉円環は腰の動きを緩やかにしたところで手を抜いてくれるわけではなく、
もっと暴れろと言いたげに前庭部から狭くなった奥まで蠕動を繰り返し、気がつけばジェイク
バレットの巨根は3分の2くらい入り組んだ芯穴に沈み込んでいた。どこまでも貪欲な下口に、
つい笑みがこぼれる。
「ひいぅっ、あああん! レ、レリスタ……? はあ、っんんんうっ!」
 あの男の事を思い出したか、わずかに背中がこわばる。しかし、大波のような震えを走らせ
て、眉間に皺を寄せたまま頭の天辺まで飲み込む悦楽に身をゆだねてしまったようだ。どこか
冷たさがこもる普段のそれとはあまりにかけ離れた嬌声……最初こそ恥じらいや拒否が見え隠
れしていたのだが、初めて与えられた快楽に自分をコントロールできなくなったのだろう、
すっかりあられもない声を出し始めていた。
「そうだよ……もう、どうでもいいか?」
「……ん、うっ! ち、が、う……んぁああっ!」
 あどけない顔の下にある二つの巨大な丘をやんわりと揉みこんでいく、手のひらを軽く添え
ると、グラインドのたびに乳房が手の中で大きくバウンドした。大きなお尻も同様に、腰を打
ちつけ、膣奥を穿ち込むと弾力のある肌と、その先にある引き締まりながらもとろけそうな肉
がたぷんっと震える。
「…………? まさか……」
 ここで、扉の向こうに気配を感じる、フィルリスに気づかれないよう視線を移すと、レリス
タが覗いていた。その目は敗北感に満ちており、今にも泣き出さんばかりだった。打ちひしが
れた少年を見ると、ジェイクバレットに言い知れぬ達成感、充実感がこみ上げてきた。
「……おい、あいつ覗いてるぞ。いいのかぁ、そんなに気持ちよさそうで」
「んう、ぅっ、はあ、あんっ、ひう、ううっ、んん……!」
 蕩けきったフィルリスの顔が真顔に、何かに耐えるような顔に戻ろうとしていた。しかし、
二つ目の扉を軽く突いてやれば、たちまち目尻は下がり、だらしなく飛び出た舌からは唾液の
糸が伝っている。ジェイクバレットにとっても、これほどの愉悦に満ちた体験は初めてで、五
感は恍惚で痺れ、意図していたよりもずっと性感は高ぶってしまっていた。
「レリスタの奴……泣きながらオナニーしてるぞ、何か言ってやれよ」
「う、嘘……だっ、レリスタが、ここに……んはああ、ああぁ!」
 見られることで羞恥心が蘇ったか、折り重なった襞がさらに縮こまり、ぬめりながらもうね
くることでペニスに躊躇なく食らいつく。もう我慢する必要はない、レリスタの目の前でフィ
ルリスをいかせてやり、牡としての力の差を見せ付けてやろうとも思ったが、もう一つ、やっ
てみたいことがあった。
「ふえっ………? ど、どうして…………ん、っ」
「何がどうしてだよ。レリスタがかわいそうだと思わないのか? 彼女に目の前でやられて…
…薬はやる、もういいぞ、帰れ」
「え、あ、っ……」
 淫液と先走りに塗れ、白く汚れたペニスを引き抜く。レリスタの安堵した顔とは対照的に、
フィルリスは何か言いたそうな、落ち着かない顔をしていた。いく手前まで引き上げておいた
のが功を奏し、視線は明らかに屹立に注がれていた。
「……俺とするのは嫌なんだろ?」
 もう一押し……天を突く剛直は、フィルリスの襞肉が名残惜しいか一定の間隔で跳ね回って
いた。せめてもの慰めと、後ろから小さな身体を抱き寄せ、巨大な桃の割れ目に棒を挟み込む。
汗やら愛液やらでぬめる谷間で、亀頭を扱きつつ、彼女の返事を待つ。

――――――――――――――――――――――――
 もう帰れる……嬉しいはずなのになぜか気持ちは沈んでいる。自分を苛んだ肉棒は膣穴から
離れ、お尻に押し付けられている。桃割れを上下するそれの脈動が気にならないわけではな
かったが、気持ちよさはそれほどではなく、すぐに振りほどくことができる……はずだった。
「んっ…………そ、それは……」
 扉のほうを見る、そこには誰もいなかった。本当にレリスタがいたのだろうか、いたとした
ら全てを見られてしまったはず、今すぐ戻って謝らないといけない、きっと傷ついている……
ここまで考えても身体が動かなかったのは、きっと本能がジェイクバレットのペニスを求めて
いたから。
「……ここで、見逃すふりをして……偽物の薬を渡すんだろ? そんな手に引っかかったりし
ない、最後まで、しろ…………」
 何を言っているんだ……口をついた言葉にフィルリスは愕然とした。ただ、直後にこの男な
らやりかねない、行為を強いておきながら、今更やめるなんてありえない。騙されるな、と自
分の発言を正当化してしまう。
「…………まあ、そこまで言うなら仕方ないか。チンポがほしいなら素直に言えばいいんだが
な」
 ジェイクバレットが扉のほうに視線を外し、嘲笑を浮かべた。わかっていた……自分が続け
てほしいだけだということは。どれだけ言い訳を並べても、結局は淫欲に耽りたいだけ、ただ、
何か理由がないとレリスタを裏切ったという事実に耐えられなくなってしまいそうだった。
「ふああああぁ! 入って、入ってくるう!」
 満足げにお尻を叩くと、ジェイクバレットの太刀が媚肉を掻き分け、穴を奥まで満たした。
遠慮もためらいも何もない腰の動き、心まで彼でいっぱいになる気さえした。おびただしいま
での法悦の波に身は浚われ、絶頂までの階段を一気に駆け上がっていく。レリスタが見ていよ
うがいまいがもうどうでもよかった。
「はあ、あああっ、だめ、いっちゃう、いっちゃう! レリスタぁ、すまない……堕ち
るぅ! レ……リスタ、いくうぅ!」
 くすぶった火が再び燃え盛る、乱れ方はひどくなる一方だった。肉槍は大きく張り出したエ
ラで、膣の内壁をえぐり、感じる部分を擦り立てて刺激し、子宮口をノックし、フィルリスに
最後の一撃を加える。いってしまうという恐怖と期待が入り混じり、哀切な悲鳴を上げ、ぶ
るっと豊満な肉を打ち震わせるとシーツに顔を埋めた。

「くっ……出すぞ!!」
 くしゃくしゃになったシーツから顔を上げた刹那、そのときは訪れた。内部に迸る熱い精汁
の噴出……嫌っている男の子種などおぞましいはずなのに、襞肉は一滴も逃さないといわんば
かりにきつく圧搾を返した。射精は勢いも量もレリスタとは比べ物にならなかった。胎内に降
り注ぐ生暖かい雨が否応無くフィルリスを狂わせ、激しいエクスタシーを与える。
「あ、んううっ、いっちゃう……んあああああっ! ああ、はああああぁ!」
 身体の芯からあふれ出る波、寄せては返すそれはだんだんと大きくなり、気がつけばフィル
リスの肉体は呑まれてしまっていた。目を閉じればそこは白い世界、時折きらきらと大小さま
ざまな星が瞬き、爆発する。忌まわしいオーガズムは、同時に至上の幸福でもあった、総身に
纏われた欲情のヴェールが、身体中のすべての機能を停止させるほどの快感を送り込む。肉穴
だけではなく、肌も、指先も、何もかもが性器となったように快楽を浴び続けた。
「ううっ……ああぁ、いい、いいぃ……!」
 上半身が弓なりになったまま、コントロールを失った四肢は壊れた人形のようにあちこちに
跳ね回る。ジェイクバレットが抱きすくめていてくれるおかげで、転んだり倒れこんだりしな
くてすんだ。
「こいつはすごいな……潮まで噴くのか」
 何を言っているかわからなかったが、気がつけば淫裂から噴き出した液体が自分の下半身ど
ころか、シーツも、彼の太ももまで汚してしまっていた。しかし、そんなことはどうでもよ
かった……情感が崩れゆく中、心にあるのは牝としての悦びを貪るあさましさだけで、レリス
タのことさえ、内心からは追い出されてしまっていた。
「ふう……それじゃあ、二回戦といきますか」
 理性も回復する間もなく、身体を反転させられる。上体を起こされると、さらに右を向かさ
れた。ごぽごぽと結合部から溢れる精液を押し戻さんばかりに、彼の太刀がねじ込まれる。
切っ先の形に鞘も合わせようとしているのか、挿入はさっきよりもずっとスムーズで、苦痛は
まったく無かった。
「ああぁ! 入って、来る……! おちんちん、んぁあっ!」
「いいのか? 薬持って帰ってもいいんだぞ?」
「んあぁ、いいのぉ! そんなの、後でっ! おちんちん、いっぱい……ほしいから
!」

――――――――――――――――――――――――
「フィルリス…………」
 頬が濡れた感触で、自分が泣いていることに気がついた。あの男とのセックスなんて嫌がっ
てくれるはず、終わったらすぐに戻ってきてくれるはず……そう信じていた。しかし、今の
フィルリスは、威圧感すら感じる逞しい牡の象徴を自分の中に招き入れて、愉悦に飲み込まれ
たまま腰を捻り続けていた。
 むっちりとした太ももを絡ませ、両腕を背中に回し、爪を立てたままよがり泣いている彼女
を見ていると、自分が今までしてきたことはまるで無意味だったと思い知らされてしまう。
「へへっ……俺のチンポ、そんなに気に入ったか?」
「はああん、違う、でも、気持ちいい……! 一番奥までぐりぐりされるとぉ、んああ
ああぁっ!」
 深い悲しみの中、レリスタは最後に彼女と結ばれたときのことを思い出す。終わった後、彼
女は穏やかな笑みを浮かべて頭を撫でてくれた。性的な貧弱さを気にしているのを察したのか、
優しく慰めてくれた。もっといいところがたくさんあるんだから気にするな、と。
「はあっ、んあああっ! もっと、もっとぉ! おっきなおちんちんで、あああ
あんっ!!」
 腰の位置で身体を固定したまま、絡まった脚は背中にまで回り、フィルリスの右手は男の後
頭部に伸びて頭髪をかきむしっていた。気持ちはともかくとして、彼女の肉体はジェイクバ
レットのペニスを求めている、これだけは確かだった。

 圧倒的な敗北に打ちのめされつつも、絡み合う二人から目を離すことはできなかった。
「んぅ、んっ! はう、ん、んっ!」
 肉を打ち付ける音、蜜路を突き捏ねる音とともに、唇を吸い合う音まで聞こえてきた。ず
ずっ……ずずっという唾液を吸い合う音が少し離れたレリスタのところまで届くほどの大胆な
キス。盛り上がったり窄んだりを繰り返すフィルリスの頬を見れば、それがどれだけ激しいか
わかってしまう。
「んぁ、っ……ふう、う、んむっ……ぅ!」
 自分がジェイクバレットに勝っているのはなんだろうか、お互いを思う心のつながり……こ
れくらいしかなかった。そして、心もあの男に奪われようとしている。ジェイクバレットはレ
リスタがいる扉のほうに視線を運んでは勝ち誇った笑みを全面に出していた。覗いている自分
に気がついているのだろう、憤りも感じるが、心に開いた大きな穴を埋めるほどではなかった。
 フィルリスは、レリスタを気にするそぶりも見せず、ひたすら口を寄せ、キスを繰り返して
いた。こぼれた涎が顎から落ち、汗に混ざる。自分はどういう風にしていただろうか、少なく
ともあそこまで激しくはなかった。見せ付けるような口付けにいたたまれなくなり、とうとう
目を反らすが、ジェイクバレットの見下した表情と、フィルリスの快楽だけを追い求める弛み
きった顔は頭の中からこびりついて離れなかった。
「……最初はあんなに嫌がってたのにな、俺のが一番いいだろ?」
「ふあっ……!」
 目尻を下げ、頬を赤く染めたままフィルリスは小さくうなずいた。レリスタの中で何かが崩
れる、信じたくなかった、身体に力が入らない、身を裂かれるような思いだけがそこにはあっ
た。ぼんやりとしながら最初に会ったときのことから順番に思い出していく。もう、あのとき
のフィルリスはどこにもいない、いるのは官能を引き出され、生まれ変わろうとしている一匹
の牝だけだった。

 再び、腰の動きが荒ぶりだす、持ち上げられたフィルリスは揺さぶられ、宙を舞いそうにな
る。開いたままの口から艶やかな喘ぎを発し、その小さい身体で巨大なペニスを受け止め、貫
かれることにこの上ない快感を覚えている。動きが激しくなるにつれて、フィルリスの嬌声も
甲高くなり、気持ちよさそうな顔をして目の前の男にきつくしがみつく。
「は、はっ、ああんっ、あはあぁ! いっちゃう、またいっちゃうぅ!」
「そうだ、どんどんいきまくれ! レリスタの粗チンじゃ何も感じなくなるくらい、たっぷり
と可愛がってやる!」
「あ、っ! 広がっちゃう、あああ、っああぁ……!」
 抱えられたまま、再び絶頂を迎えるフィルリス、その直後にジェイクバレットが射精……つ
ながった部分から溢れる大量の白濁液、自分のときは中に出そうとするとあまりいい顔をしな
いのだが、今は喜んで孕もうとしているようにも見えた。
「ひうっ、オマンコの、形……変わっちゃう……ああっ、ぁ、んふううっ!」
 今度こそ終わるかと思ったが、満足するには程遠いか、深く、速いストロークがまた始まっ
た。離れて見ているだけでも、その雄々しさと巧みさがわかってしまう。勝てる可能性など、
万に一つも無かった。
 もういいだろう、これ以上見ていても仕方がない……よろめく足を引きずりつつ、レリスタ
は終わる気配のない淫らな宴から、その場を後にした。

 部屋に戻り、ベッドに横になる。いつの間にか夜になっていたようで、部屋は真っ暗だった。
「…………フィルリス、どうして……」
 さっきまで見ていた光景が、本当に現実のものなのか、信じられなかった。薬のために一度
身体を許すだけではなく、終わったはずなのに、何度も何度も気持ちよさそうに抱かれて……
絡み合う二人を思い出すだけで、泣きそうになってしまう。
 あれは仕方の無かったこと、覗いた自分が悪いのだから忘れよう、傷さえ治れば元の二人に
戻れる……ずいぶんと楽観的な考えだが、そうでも思わないとおかしくなりそうだった。
「俺のせいだ、全部…………」
 元をただせば自分が誰かに襲われたことが原因だった、不用意に出歩いたりしなければ、
もっと周囲に気を配っていれば……浮かぶのは後悔ばかり、そして、もう一つ浮かんだのは
フィルリスとあの男のまぐわい続ける姿だった。
「…………………」
 どのくらい経っただろうか、薄い扉の向こうから人の気配を感じた思考の渦巻きは止まる。
フィルリスだとすぐにわかったが、どうやらもう一人いるようだった。
「んっ……やめ…………」
「……いいだろ、誰も…………」
 あの先で繰り広げられている光景は、レリスタにとって一番見たくない光景だろう。しばら
くの押し問答の後、沈黙が二人を包む、直後にくちゅくちゅと粘っこい、唾液を交換する音が
……いつまで続くのだろうか。レリスタは息を潜めながら様子を窺い続けた。
「ん、っ…………く、いい加減にしろ!」
「おお、怖い怖い。さっきまで好きだのいかせてだの言ってたくせによ」
「あれは…………っ、と、とにかく帰れ……レリスタが起きてるかもしれないんだぞ!」
 小声で話しているつもりだったのかもしれないが、耳のよさが災いした。フィルリスは嫌が
りつつも息を荒げ、声の調子もどこかとろんとしていた……キスで感じてしまったのだろう。
「ただいま…………レリスタ」
「………………」
 身体だけ起こす、そこにいたのはいつものフィルリスだった。
「すまない……別の用が入って遅くなった。ほら、薬だ」
 手渡された包み紙を見ていると、悔しさ、怒り、悲しさ……さまざまな感情がこみ上げてく
る。激情に駆られたまま、レリスタはフィルリスの手をとり、ベッドに押し倒す。
「ど……どうした……?」
 それから後のことはよく覚えていない、気がついたら彼女の膣内に精を吐き出していた。信
じられないほどゆるくなっていた花孔に……がむしゃらなピストン運動でフィルリスが感じる
はずも無く。わずかに潤んだ瞳からは同情や哀れみの光が見えた。レリスタが見たかったのは、
感じ入り、とろけた表情だった。改めてジェイクバレットとの差を思い知らされ、二度目の準
備をしようとした細竿も萎え始めてしまう。
「まったく……帰ってきていきなりそれか?」
 ジェイクバレットに身も心も染め上げられてしまったのだろう、以前なら多少は気持ちよさ
そうにしていたのに、今はそれすらもない。もう、自分ではどうすることもできない、できる
のは彼女にすがり付いて傷ついた心を癒すことだけだった。
「………………」
 胸に顔を埋めたところで後頭部に柔らかい手のひらを感じた。
「…………心配するな、私はどこにも行ったりしない、絶対にな……」
 しっとりとした、しかし何かを決意するような声。信じたかった、だが、こんなに近くにい
るのに、妙に彼女を遠くに感じてしまう。とても信じることはできなかった。疑心暗鬼に陥っ
たまま、それでもレリスタはフィルリスの心を手繰り寄せようとさらに強くしがみつく。
 その気持ちはすでに離れかけているということも知らずに……