誰も滅多に近づく事の無い地下8階の闇の中、一つの影が魔法光により浮かび上がる。ロミルワの光だ。
視力強化を行なう補助スペル的な使用方法もあるが、こうして任意に燐光を発生させる使用方法もある。
 完全にヘルム・シールド・ガントレッツ・プレートメイルに包まれた姿は、城塞都市の堅固な城壁を
思わせた。右手に回転する刃先を持たぬ、名匠が鍛えし普通の剣の形状をした名剣、【カシナートの剣】を
構え、左手にシールドを掲げつつ進む勇姿からは、防具達の立てる擦過音や金属音が最小限にしか
発生してはいない。
 手練の者の証だった。スクロールの類を使ったわけでは無いのか、ヘルムから垣間見える目元からは
若干の疲労が窺える。

 「残るはあと一人。――無事で居れば良いが……」

 君主職、ロード。この闇を追う光は善の戒律しか転職が許されぬ、この場のロードが成せる奇蹟の業だった。
弛まぬ修練を積むと、プリーストスペルを4レベルから習得し始め、9レベルからは邪悪なる者どもを退ける
ディスペルすら使えるようになる、選ばれし、神の奇蹟の担い手。それが君主職・ロードの特性だった。
 その行いは常に正しく無ければならず、また品性をも要求される。……若干、修練の足らぬ不心得モノもいるが。
ロードは人目を憚るように素早くヘルムを被った頭を左右に動かし、そのスリットから周囲の様子を窺った。
 サムライの『気』やニンジャの『感覚』を使った察知があまり得意ではないロードにとって、視覚と聴覚と
嗅覚を使った索敵は最優先事項なのだ。増してやこのパーティを組まず、たった一人きりの無謀な単独行ならば。
 ――怪物どもは居ない。幸運なことにキャンプの結界陣を張る時に使う、聖水の匂いと効果がまだ残っていた。

 「――来て――くれたのか。こう成り果てては、憎い憎い競争相手とは言え、哀れなものだろう?」

 消えかけた結界陣の中心で、すらりと立つ人影がロードの視界に入った。ロードは腰に下げた雑嚢から
手馴れた様子で聖水の小瓶を取り出す。結界陣を描き直すためだ。安全なキャンプを設営する作業の一つだ。
 迷宮に潜む怪物どもは陣の効果が持続する限り、キャンプを設えた空間のの中には入れない。心得の無い
普通のパーティならば、白墨か消し墨で簡単な結界陣を描くか呪言による強化を申し訳程度に行なうのみだ。
 ロードが周囲をせっせと引っ切り無しに動いていると言うのに、当の人影は何故か、身じろぎひとつしない。
後頭部で高く結い上げ一纏めにして、馬の尾のように垂らした髪束が時折、迷宮の中を対流する風に揺れる。
ロミルワの魔法光はロードの吐く息に揺らめきもせず、人影を煌々と照らし出す。

                ……それは【石化】していた。

 ロードは目線を石化したその者から意識的に逸らし、結界陣を描く作業を継続する。一度目を向けたならば、
きっと正気を保てなくなる。どうそ、未熟なる下僕たるこの私めに今一度の助力を! ロードは真摯に神に
祈りながら、作業を黙々と続けていた。

 「どうした? 見ても……良いのだぞ? 何を遠慮している? 」

 石化状態にも色々ある。ただ全身が石になるもの、幸運にして四肢の一部のみが石化するだけになるもの。
下半身だけが石化するもの。魔法光が陰毛の蔭りすら無慈悲にも照らし出す。……声を放った主は、全裸。
何も武具を身に附けぬ状態こそが最高の能力を発揮すると言われる東方の神秘の職業――ニンジャの流儀だ。
ニンジャ装束のみを身に附ける流儀の者も居れば、こうして全てを曝け出して闘う者もいる。声の主は後者だ。

 「措け! 恥を知る善の君主たるものが、赤裸々な、それも妙齢の女性の裸体を堂々と直視出来るものか!」
 「汚い裸を、とは言わぬのだな。存外貴公は優しいと見える。お堅い善の連中にしては珍しい。見直したぞ」

 ロードとニンジャは、善と悪の戒律の両極端を象徴するクラスであった。ロードはこのニンジャと顔を合わせる
度に「装束を着ろ」「性器を隠せ」「せめて乳首と陰部を隠せないか?」「顔だけは隠せ、恥の概念があるなら!」
とほぼ日課のように苦言を呈して来た。互いのパーティの仲間も加わり「臭マンどもめ」やら「童貞集団」やらの
悪罵の応酬を繰り広げて来た。一度関係がこじれてしまうと収拾がつかなくなるのが、戒律の対立する者の常だ。

 「それにしても……何故一人でここまで……」
 「今は話し掛けるな! 結界が不完全になる! 動ける私はまだ良いが、今の貴女を危機には晒せぬのだ!」
 
 なにせ最後の一人の救出だ。この石化した女ニンジャを除いた、全滅した悪のパーティ全員の死体を……回収して
蘇生させるまでにどれだけ苦労したかは筆舌に尽くし難い。何故そんなことを思い至ったのか? 不思議でならない。
 全員が全員、憎かったはずだった。童貞だの包茎だの男色だの、女だけの悪のパーティは自分たち、男だけで構成
された善のパーティを悪し様に罵って止まなかった。全滅の一報を耳にした仲間は「そらみろ神は見て御座った」やら
「穢れた女達についに天罰が下された」など、僧侶や司教ですら憚らず、酒場で祝杯を挙げっ放しにしていたほどだ。
それが善を奉ずる者のすることか! と怒鳴って救出を主張したが、せせら笑われ反対され、諭される始末だった。

 「己が仲間に反対されてもなお、己の信ずる道を貫くのは、善の戒律の徳性か。動けぬこの身だが、感謝する」
 「――私が好きでしたことだ。殊更、礼を言われるものでも無い。それより貴女の精神力こそ、驚嘆に値する」

 やっとの事で発見した悪パーティの生存者は……石化したこのニンジャのみだった。ニンジャはパーティの仲間を
頑強に先に回収するように主張し、ロードは折れたのだ。一人で回収出来る限度は五人。このまま自分が残ると言い、
ロードは結界陣を張り、後ろ髪を引かれる思いでその場を後にし、ここに再び来るまで、丸二日余りが経過していた。
 口は悪いが妙齢の美人揃いの悪パーティをカント寺院に放り込み、彼女等の死体に悪戯をせぬように見張りつつ
一人ずつ蘇生させたら感謝の言葉とともに一人一発ずつの計5発「拝観料よ!」と言われて何故か軽く頬を張られた。
 
 『何故この私が殴られねばならぬ?! 』

 と内心それを疑問に思いつつ、ニンジャがまだ一人で残っている、出来れば貴女達も救出を手伝ってくれないだろうかと
迷宮の一階で落ち合い依頼したが「うーむ……それはちと……」「ふーん……あたしは【ついで】だったんだ……ふーん」
「あの娘案外、男を見る目あったんだ」「もう……死んじゃえっ、ばーか! ばーかばーか!」「彼女が貴方だけを何故悪く
言わないのか…わかってしまいました」などと言いつつ、ロードを置いて5人全員が地上にさっさと上がってしまったのだ。
何と言う薄情者揃いだ! と憤慨したのはまだ記憶に新しい。

 「貴女の仲間は全員、蘇生に成功した。全く、何と言う奴等だ! 人が頭を下げて助力を依頼したと言うのに……」
 「……! それは本当なのか」
 「ああ、この目で見届けたら殴られた。拝観料とか言ってな。誰一人助力に応じぬとは一体どう言う心算なのだ!」
 「一生……このことを恩に着ねばならないな。私はとても気が利く、素晴しい仲間たちを得ていたようだ」

 皮肉でも嘆息でもない本気の口調に、思わずロードはニンジャの方を見てしまった。首から下が石化したままでも、
神が手ずから作り賜うたであろう女体の形状の見事さは損なわれては居なかった。子供の頭程の大きさはあるだろう、
、乳輪も小さく、ツンと乳首が上を向いた双乳が、腕組みをした両腕で支えられている。女王蜂のように見事に括れた
腰と、張り出した、柔らかそうだが形のよい尻。すらりと伸びて、臑のあたりで組み合わせた両脚。彼女のこの体勢は、
跳躍した後の着地とともに石化が即座に進行したことを示していた。数分の後、ロードの口から肉塊が吐き出された。
 頬の内側の肉を噛み切って、痛覚により情欲の衝動に耐えたのだ。鋼の意志の力が魅了についに勝利した証でもあった。

 「不用意に声を掛けるな! ……結界陣を描き終えその中に入って居なければ、私は死んでいるところだったぞ!」
 「何故私の仲間が、貴公の救出行の支援に一人も来ないのか、まだ貴公には皆目、全く見当も付かぬと言うのか?」
 「解らぬ! 悪の戒律の者の女性の考えることなど、善の戒律の、それも大丈夫たる男の、私の思考の範疇ではな!」

 ロードは吐き捨てるとその場に盾と剣を置いて、目を瞑ってニンジャに近寄り、ガントレットをしたまま肩に手を置き
呪言の詠唱を開始した。僧侶のスペルの6レベルに位置する、唯一石化を癒せる快癒【マディ】を発動させるためだった。
ガントレットから緑光が漏れ出し、効果が発動しつつあるのかニンジャの体が徐々に生気を取り戻して行く。呪文の詠唱が
終わって目を開けた途端に、急に光を感じるのを知覚する。頭髪がヘルムの重みから不意に解放された喜びを訴えていた。
 自由になったニンジャの両手が、ヘルムを脱がせたと理解するまでに1呼吸。――もし相手に害意があれば死んでいた。
だが、目の前のニンジャは目尻に涙を溜めて微笑んでいた。ヘルムが無造作に落とされ、くぐもった金属音を立てる。

 「貴公は、あとは蘇生させた私の仲間に私の救出をただ依頼するだけで済むのだ、と寸毫も考えなかったのか?」
 「――――――え゛? あ――――――――」

 間抜けな話だった。5人全員を蘇生させたならば、あとは座標が解っているのだから、善の戒律のロードが赴く必要は
全く無い。むしろ邪魔だ引っ込め大莫迦野郎と悪のパーティの面々から非難されてしかるべきはロード自身の方だった。
必ず救出に来るから、気を確かに持つのだぞとは言ったが、何もわざわざ危険を冒して自身が来る必要など――無かった。

 「救出を待っている間、私はひとつの賭けをした。若し私の仲間しか来なかったら……探索者をその場で引退すると」
 「だが、私が間抜けにも一人でこうして来てしまった、どうする? 私を大莫迦者だと仲間と哂いものにでもするか?」

ロードは唇の端を曲げて嘲笑して見せた。厳しげな装飾が施されたヘルムから現れた素顔は、まだ少年期の面影を多分に
残したままの、あどけなさを隠せてはいなかった。頬髯も顎髭も髭も生やしては居ないので、やけに幼く見えてしまうのだ。
 二人の身長差は拳一つ分程度、ロードが高い。ただ言うなれば、ニンジャの背が同じ人間族の女性にしては高かった。
さらに言葉を継ごうとして開いたロードの唇を、暖かくぬめったモノが塞ぐ。カチカチと歯が当たる音を骨から耳が拾う。
血の味が抜けない口腔内を、熱い何かが這い回る。

 数呼吸の後――ロードは己の置かれたこの状況をやっと頭脳で理解した。

 「ム……ふぅっ! 貴女は何を……っぷ! 」

 ロードは全力を以って、己の口に吸い付くニンジャの唇を離した。が、抵抗はあっと言う間に無力化され、また吸われる。
武器防具を持たぬ素手では、ニンジャに敵う者などなかなか居ない。腕を押さえられると器用にも小手の留め金具が外され、
脱がされて、ニンジャの背後に放り投げられ高い金属音を立てる。その下の皮手袋まで同時進行で片腕ずつ脱がされて行く。
それも接吻を続けたままで、だ。口から伝わる甘美な感覚に負けるまいと抵抗を続けるが、ニンジャの髪より発する匂いに
より脳髄の奥が情欲を喚起され、痺れてくる。いっそ這い回るニンジャの舌を噛んでくれる! と歯を噛み締めようとするが
逃げられ、歯列や歯茎を愛撫されてしまう始末だ。ニンジャの手が離れた隙を見て、ロードはまた逃れようとニンジャの頭に
手をかけ、やっとのことで引き剥がす。が、鎧を飾るサーコートとマントを奪われ放り投げられてしまう。

 「貴公は――気持ち良く――無かったか? 」

 荒い息を吐き、唇を拭いニンジャを睨み付けるロードに向かって、なんとニンジャは哀しげな表情で小首を傾げて見せた。
その唇の端からはロードの血が交じった、紅い唾液が垂れたままだった。目に焼きついたその光景を振り払おうと、ロードは
激しく首を振った。その頭脳は混乱したままだ。一体何が起こってこうなったのか? ロードはまだ理解出来ていなかった。

 「勿論気持ち良い――悪いなどの問題ではない! この接吻はどういう心算なのだ! 」
 「……貴公が童貞なのは誠(マッコト)、真実のようだな?」

 ロードの手をニンジャがその上から軽く押さえると、だらりと力無くその豪腕は垂れ下がる。瞬時に激痛が走り、無力化
されてしまったのだ。点穴を突かれたのだろうか、力も入らなくなる。ニンジャは優しく微笑むと、胸鎧の留め金に手を掛け、
器用に外して行く。ロードは歯軋りしながらも体躯をのたうたせて必死に抵抗するが、ニンジャの誇る絶妙の体術でかわされ、
また押さえ込まれてしまう。下腹部に馬乗りになられて鎧下の上半身まで脱がされ、乳首を咥えられて甘噛みされ、愛撫を
される己が男として情けなく、ロードはついに下唇を噛み破り、肺腑を絞り、嗚咽交じりに叫んだ。

 「いっそ殺せ! ここまで憎い男相手に充分に恥を掻かせたならば、もう貴女は本望だろう! 今すぐ私を殺せっ! 」
 「やはり毎夜毎夜想像していた通りだな――嬉しくて嬉しくて仕方が無い反応だ――見ろ、もう私の娘はこんなに――」

 ニンジャは腰を浮かせ、陰毛の叢の下の、形良く整い、綻んで来た桃色に色づき、止め処無い涎を垂らした陰唇をロードに
向かって、楚々として恥じらいつつも尻から手を廻した両手で大きく開いて見せた。――ロミルワより生まれし魔法光は、
透明な粘液が白濁しつつある秘部の奥まで照らし出す。見ろと言われたロードは目を見開き、思わずまじまじと凝視していた。
ニンジャの呼吸とともに、緩急をつけて秘唇や秘洞は収縮を続けている。その奥には中心に穴の空いた、襞(ヒダ)が見えた。

 「どう、だ……? これ、なら、私の、歴と、した、乙女、たる、標(シルシ)っ……見えるっ……なァんッ! 」

 ロードにそう言った直後に、拡げた秘腔から透明な潮を噴出し、頤(オトガイ)を逸らしてニンジャは極みを迎えてしまっていた。
ロードは眉根を寄せ、悩ましげな表情をする。ニンジャの身体に押さえつけられたままの下腹部の、隆起し続けたままの男根から、
ついに精を漏らしてしまったのだ。刺激を受けたわけでは無い。ただ、余りにも扇情的なこの光景に……耐え切れ無かったのだ。
 一人前と自負する、一人の男としてのあまりの己の不甲斐無さに、ロードはまた唇を噛み締め目を硬く瞑り、思わず泣いてしまう。
この場からいっそ――消えてしまいたかった。

 ふと、乳酪にも似た甘い薫りがロードの鼻腔を支配する。肌蹴られたままのロードの裸の胸は柔らかいものの感触と硬い二つの
感触を伝えてくる。頬は粘液に濡れた柔らかい女の手の感触を。そして噛み破った下唇からは、流れる血を嘗め回すモノの感触を。
 目を開くと、意識を取り戻したニンジャが、身体全体を摺り寄せていた。ロードが目を開いたのを察知したのか、愛撫に夢中に
なっていたニンジャが目を開き、視線を合わせて来る。ロードの非難と物問いたげな視線にハッと目を見開くと、蕩けた表情を
制御して、口唇を名残惜しげに離した。そのニンジャの様子は――後悔に、満ちていた。

 「ここまですれば自ずと理解してくれると信じ切り――あまりに嬉しくて――つい――行動を先にしてしまった。許せ」
 「つい――だと! つい何だと言うのだ! 許せ? 何をだ! 殺せ! さあ殺せ! さあ! さあ! どうした!? 」
 「私は貴公がいとおしい。奉ずる戒律が違っても、善の貴公が悪の私を嫌ったままでも――私は貴公を――愛している」

 言葉を聞いた途端にロードの怒りが霧散した。己の行動の理由にやっと思い至ったのだ。何故、この場に危険を冒して一人で
向かったのか? 何故、こうまでして頑なにこのニンジャを救いに来たのか? 全ての胸の中の蟠(ワダカマ)りが、氷解していた。
 簡単なことだった。好きだったのだ。とっくに愛していたのだ。だから裸体を隠そうとした。だから言い続けた。他の男などに
見せたくはなかった。いっそ殺すか、とまで宿の一室で思い詰めたのは今にして思えば憎しみからではない、汚い独占欲からだ。
事ここに至るまで、こうまでされても気付かなかった己が滑稽で、可笑しくなってきて、くぐもった含み笑いをロードは漏らす。

 「やはり……私のような、はしたない女は……嫌い……か?」
 「……そうか、そうだったのか……クッ、考えてみればおかしな話だ」
 「相済まぬが……もう、言葉と形にした私の想いは留められぬ。だから――今より好きにさせてもらうッ!」

 ロードは残った鎧の前垂とコドピースとを素早く外され、下袴(カコ)と下着をいっぺんに脱がされる。……噎(ム)せ返るような
青臭い臭いがその場に立ち上る。黄色身を帯びた白いスライムのようなモノがまとわりついた、立派な肉の槍が雄雄しく天を
突き、湯気を上げていた。その綺麗な桃色をした先端は分厚い皮にまだ、半ばが覆われている。脱がせた勢いはどこに消えたのか、
ニンジャは昂奮に鼻腔を拡げて深呼吸し、臭いを堪能する。震える手を意志の力で制御しながら、肉槍に手を掛け、皮を剥き――
そして……迷わずガポリとひとくちに咥えた。

 「ヌ……おぉゥッ!」

 ニンジャの頬が窪み、窄んだ。――尿道に残る精液を吸い出すために。ニンジャの喉が動く。溜まった精液を飲み込むために。
それも、上目遣いでロードの反応を見ながら。その淫靡で背徳的な光景にロードはまた昂り――呻くと容赦無く濃い第二精弾を
大量に噴き出させてしまう。液弾はニンジャの喉を直撃したのか、えずき、咽(ムセ)て鼻から精液を漏らして鼻水状に垂らしても
口を離さない。それどころか鼻を啜り粘度の高い鼻汁のように精液を引っ込めると、一気に飲み込んでしまう。そして口を離すと、
ロードに恥じらいつつも、典雅に微笑んで見せた。

 「男の精は初めて飲んだが……青臭く、喉に絡む。しかし貴公が私にくれたモノだと思えば、格別に一段と美味しく思える」

 そう言うと、ニンジャは陰茎や陰嚢のみならず陰毛に絡みつき付着した、ロードが初回に漏らしていた精液まで舐め取ると、
煽情的かつ熱狂的にいとおしげに舌で洗浄する。視線は飽くまでロードから外さず、目元を羞恥と興奮に染めながら愛撫を続ける。
 ニンジャは舐めている間、ひっきり無しに腰を振り、大きく張った形良い尻を蠢かせる。……片手はロードのモノをもてあそび、
もう片手は自らの股の間を濡れた音を立てながら触り続けている。ロードがこれは夢か幻覚だと錯覚してしまう、淫蕩な光景が
眼前で展開されて行く。股間を這う温い舌の感覚と冷たい手の温度、脚に乗るニンジャの心地良い重さが現実感をかろうじて
訴えている。

 「ふふふっ……やっと綺麗になったぞ? どうだ、私は偉いだろう?」

 小首を傾げ訊いて来るニンジャの頭を撫でてやると、嬉しそうに目を閉じ、陰茎に頬を摺り寄せる。まるでロードが幼き頃に
飼っていた黒毛の雌の子猫を思い出させる仕草だった。勿論、その子猫にこんな淫らで破廉恥な事をさせたわけではないが。
……たまらなく、可愛い。

 「貴公……? もしや……もう……怒って……いないのか?」
 「怒っているとしたら俺自身にだ。今の今まで何を肩肘張って意地になっていたのやら、だ。――俺も貴女を愛していた」
 「た? 今は――違うのか? キライに……なったのか?」

 ロードは陰茎を弄びながら拗ねたように訊いて来るニンジャの、後ろで結わえて一つに纏めた髪房を持って己の顔に引き寄せた。
髪を引っ張られる痛みが極力無いように、力を加減した心算だが、ニンジャの顔が少々歪んでいる。――痛みでは無く、不安に。
ロードの胸板に、ニンジャの見事な胸乳が圧し掛かり、ひしゃげる様をロードは横目で見ながら、震える耳に熱い息を吹き込んだ。

 「今は、もっともっと愛したい。貴女の全てを知りたい。浅ましくも、己のみのモノにしたい。その意味が――解るな?」
 「う、嘘……あああああ……あ―――いや、いやあ、いやああああああああぁんっ! 停めて、停めてぇ、停まってぇ! 」

 ニンジャの重なった体から、噴射音と暖かいものがロードへと流れ落ちる。迷宮で散々嗅ぎ慣れた臭いと、湯気がすぐに立ち上る。
――ニンジャが、はしたなくもロードに向かって失禁していた。急いでロードがニンジャの顔を確認すると……普段の凛とした、
一分の隙も無いと言った一種雄雄しい表情が、爆発的な歓喜に無残にも弛緩し、無防備にお漏らしをした幼児の如く蕩け切っていた。 
 
 「ろ……ろえんあはい……ぅえひうっへ……ろまらないおぉ……」

 ごめんなさい、嬉しくって停まらないの、とニンジャが言いたいのだとロードは理解する。結界陣の効果は、まだまだ消えない。
聖水に小水が混合すると悪くすれば汚濁したと判断され効果が減衰するかも知れないだろうが、広めに描いたのでまだ余裕はある。
ここで、死ぬかもしれない。
 神がくれたであろうこの奇蹟の一時を、ロードは一瞬でも無駄にはしたくなかった。ニンジャの拡げて見せてくれた乙女たる標の
証明の光景が、ロードの男たる証を鋼の如く堅くさせてくれる。ニンジャが一通り膀胱に溜まった尿を出し終わったのか、水音が
ようやく止まった。

 ロードの肩に顔を伏せ、ひたすらいや、いやンッと擦り付け恥じ入るニンジャの耳に、ロードはまた再び熱い息を吹き込んだ。

 「気持ち、良かったのか? 」
 「うん……」
 「そうだろうそうだろう? 私のような無力な気高き善の君主の身体を、故意に貴女の小便で穢した気分は最高だったろう?」
 「んヒっ?! ひっ……ひぃんッ! 」
 
 ニンジャは急に身体をのたうたせると、全身を突っ張らせて喘ぐ。己の痴態を認識しただけで、快楽の極みに達してしまったのだ。
先ずは仕返しは終了した。相手が熟練のニンジャとは言え、成すがままにされただけでは、やはり一人の男としては気分が優れない。
少々の悪戯や意地悪はお互いさまだ。何せ、突然の不意討ち――サプライズアタックを仕掛けてきたのはこのニンジャの側なのだ。
 
 「……もしかして……気を遣(ヤ)った……のか?」
 「うん……うんっ……! やったの……すごいの……きちゃったのぉ……」
 
 復讐するは我に有り、と言いたいが、それは別の機会に取っておく。だらりと力を失ったニンジャの股間をまさぐると、熱い汁が
かかる。その手を確認すると、白い粘液とさらっとした透明な液体が掛かっていた。パーティメンバーの善の盗賊だったかが確か
言っていた、本気汁と潮と言うものらしい。俺も話しに聞いただけだが、本当にイクと出すらしいんだと、と言っていた筈のものだ。
ロードは迷わず啜り、舐めて見る。

 「これは……旨いな……なかなか……? 案外、調味料に良いかも知れん……」

 悪の女パーティが喝破した通り、善のパーティは純粋な『童貞集団』だった。付着した汁の匂いを嗅ぐと、得も言われぬ香りがした。
臭マンと言うのは至極不当な悪口だった。後でパーティの皆に弁明し訂正せねば、とロードは堅く神と己に正義を成すことを誓った。
善の君主は自らと神に誓って不公正な行いは許されぬのだ。……己の我欲、欲するままに歓楽街を焼いた不心得モノも中にはいるが。

 「ひどいぃっ……はずかしい……よぉっ……」
 「……平気で丸裸で迷宮内や街中を歩いている貴女が、こんなことでか?」
 「いぢわるっ……こうしてやるぅっ!」
 「ングッ! ぬふぉッ! 」

 互いの排出した粘液に塗れた唇が合わさり、口腔内で混ぜ合わされる。ロードはロードの精液の味を、ニンジャはニンジャの愛液の
味を、相手の唾液とともに味わうこととなる。それを汚い、嫌だと思う理由など、今の二人には全く無かった。フがフがと小鼻を膨ら
ませ息継ぎをしつつ、互いの口腔に他の味がしなくなるまで唾を飲ませ、飲み込む様は真剣そのもので、甘い雰囲気が無ければ、
鬼気迫る対決を思わせた。
 そして………ついに意を決したニンジャが名残惜しげに身体を起こし、立ち上がり、ロードの下半身を跨ぐ。

 「……いいのか? 本当に……悪の……裸で出歩くようなニンジャの……この私で」
 「今更何を言うのだ? 若しや、臆したのか? ……と、女を抱くやり方すら解らぬこの私が、貴女に言う台詞では無いな……済まぬ」

 ロードの猛き昂りを片手で支え、ニンジャ歓喜に震える声で問うた。昂りの先端を自らのぬめ光る陰唇に当てて、あとは腰を下ろす
のみの状態で、訊いていた。一度暴発したのか、精液がたっぷりと茎肌にも陰毛にも付着していた。三度放出しても萎えることのない
その偉容は、耳年増なニンジャを狂喜させるに充分だった。――普通の男なら同じ女で3回も勃たないし持たないし興味無くなる――
と、パーティメンバーの同じく処女のエルフのメイジは訳知り顔で言っていたものだ。皆が皆、経験者ぶっていたが――匂いで解る。

 「い……いく……ぞっ……んん……ん゛ん゛ん゛っ……! ひンぎィッ!」
 「ぬ、ぬおっ、き、きついっ……あう゛ぅンっ!」

 ニンジャは体内から、胎内がロードのもので埋め尽くされる、肉の軋む音を聴いていた。同時に、ロードの男にしては可愛い呻きも。
己の膣が容赦無くロードのものを締め付ける感覚と、乙女の証が裂けた痛み、操をロードに無事に捧げられた喜びがない交ぜになり、
涙と呻きを漏らしてしまう。ロードのモノが脈打って、滑るようにづヌ゛ルンっ、とさらに奥へと侵入したのを感じた。……刺激に
耐え切れず、また、ロードが盛大に射精したのだ。それも、ニンジャの膣の途中で。――孕みたい。孕ませてほしい、今、ここで。
 ニンジャは痛みに構わず……己の体重を支える両脚から力を抜き、地から浮かせた。ロードのものがついに最奥を突いた、と感じた
瞬間、ニンジャは目の奥に火花が散ったと感じ、意識を数呼吸の間だけ飛ばし、膣が衝撃で勝手にロードをきつく締め上げてしまう。
 ロードがまた、射精した。これで5回目だ、と思いつつ……ニンジャは射精の脈動に身を任せ、力なく痙攣し……そして遂に失神した。