「どうかなブリちゃん。納得したかな? これが武器じゃなくて、気持ちよくなる為の棒だって事……。」
「……さあ、な。」
赤面していた。あんな様を見るのではなかった。冒険者とロビン・ウインドマーンが演じた痴態から、何故
自分は目が離せなかったのであろう。成程、かの棒の実体が張形と呼ばれる性具であるというのは、一
定それは真実かも知れぬ。だが真実を知って何になるというのだ。そもそも尻穴や陰門を慰める用にし
か立たぬ棒なのだ。何とまあ、嫌になるほど罪深いのだ。不潔極まる棒なのだ。
汚された、と感じた。その様を知ってしまった耳と、目と、心が、どうしようもなく己を堕落に呼ぶような心地
がした。身体に触れられる事も無いというのに肌は火照り、息さえも僅かに乱れ、股からは陰水がつと漏
れて、腿をいじ汚く濡らした。あの魔術師の娘と見えない線で接続されてしまったかのような、不愉快な感
応が、彼女を苛むのだった。尻穴すらも疼くのである。あろう事か、全身が、この淫乱なエルフが触れて
来ることを待っていた。理性だけがそれを拒もうと、ごまかしごまかし、心に幾度も鞭を入れて道を正そう
とするが、ああ、憎い魔術師よ、間断無い嬌声に、心ならずも惹かれるのである。無意味な筈の言葉が呼
び声のように、慰めへの憧れを煽るのである。
「ふふ……。まだ分からないなら、ボクがちゃんと教えてあげるからね」
童顔の狩人は服を脱ぎ捨てた。頭巾を取って、真っ直ぐな亜麻色の髪を、ニンフのような青白い肌に垂ら
す。墓穴の暗がりの中では、少女の身体は殆ど無毛のように見えた。胸は小さいどころか、まっ平らで、
鍛え抜かれた筋肉は何処へ隠れているものか、玩具のような肩に、折れそうなほど細い足、蒼ざめた矮
躯には肋骨が浮き出ていた。白い腹ばかり滑らかに艶めいて、凄愴なほどの美しいのである。その優しげ
な顔に、まるで慈愛のような……反面、どこまでも淫靡な微笑みを湛えて、彼女はブリガード・ウォルタン
の方へ、一歩一歩、踏みしめるように迫った。
――嫌だ、来るな。ただこれだけの事が、何故言えないのだろう。この卑怯なエルフめに、心領域の魔法
にかけられてしまったのであろうか。幾ら美しいと言っても、裸体の少女に魅了されるような趣味は自分に
は無い。……無いはずなのだ。少なくとも、これまではそうだった。だが彼女が近付くほどに、その身体の
細かな肌理が明らかになり、ああ、触れてみたい。しゃぶり付きたくなってしまう……とんでもない事だ。こ
の娘に絡み付く自分を想像しただけで、震えるような性感が体を駆け上ってくるのである。鼻の奥が痛む
ほどに、のぼせが上がった。
いけない。このままでは。本当に。あの魔術師と同じ目に合わされてしまう。でも、それはきっと気持ちが良
いことなのだろう。――ああ、喘ぎ声が五月蠅いのだ。静かにして欲しい。考えに集中できない……。そうだ、
暗夜卿。あの方であれば、私を救けてくれるのではないか。私の代わりに、この淫乱娘めを叱り飛ばして、
私の貞操を守ってくれるのではないだろうか――?

視線を泳がせると、黒の騎士は微動だにせず、置物のように立っていた。エルフの娘も神女の様子に気付
き、彼の方を見た。
「……ねえ、黒兄さん?」
先手を打たれた、とブリガード・ウォルタンは思った。
「何だ?」
可笑しい程に平静な声だった。黒の騎士が首を回すと、珍しい事に、がしゃり、と鎧が音を立てた。
「すっかり黙り込んじゃって。勃ってるんでしょ?」
「……。」
下品な娘だ。純血の森エルフであるロビン・ウインドマーンの実年齢は、人間を基準に考えた外見とは相当
に食い違っており、彼女は実は暗夜卿や神女よりずっと歳を取っている。しかしそれでも、彼女の肉体と精
神は、理屈の上では、確かに未だ年端もゆかぬ少女のそれである筈なのである。それが、一体どうした事
だ? この慎みの無さときては。酒保の年寄りが、閣下のお好みの娘はいかがで御座いますかと、本陣に
まで訊ね出る時の無神経さに通じるものがあると、彼は感じた。同族の内ではゆるやかに熟成される筈の、
長命種の精神も、こうして長く人に交われば、それなりの有様へと擦り切れてしまうという事か。全く、この娘
と来ては、嫌になるほど人間じみている……。
――何の事はない、誤魔化しに余所事へ頭を巡らせたものの、事実彼の男性は起立していたのである。
「だったら、どうだと言うのだ?」
黒の騎士は虚勢を張った。
「勃ってるんだね。ふふ。」
いやらしい事をしてるカレンちゃんかな。それともブリちゃんが心配で勃起しちゃったのかなぁ。もしかして、
ボクに興奮してくれたのならすごく光栄だけど……でも、今はダメだよ。と、少女は言葉を続けた。
「……出しちゃいなよ。それ」
「……?」
「ペニス」
全くもって、品の無い事であった。一糸纏わぬ裸身の娘は、ご丁寧にも右手を軽く握って筒を形作り、左手
を添え、虚空にソレを表現した。
「今からボク、ブリちゃんと遊ぶから、黒兄さんはカレンちゃんを使って良いよ?」
呆れるほかは無い。魔術師の娘は自分の名前が呼ばれた事に驚いて顔を上げたが、ロビン・ウインドマー
ンはそちらを顧みなかった。
「なんだと?」
「好きにしていいって事」
「お気持ちは有難いが、当人が望まないだろう? 何せ彼女の指を切ったのは、他ならぬ私なのだからな」
「気にする事ぁ無いよ。だってカレンちゃんは、ボクの物なんだもん」
「それに強姦は趣味ではない、ウォルタン殿が見ている前で、そんな事など……とてもとても、な」
「あっそう。それならいいよ。そうやってオチンチンをがちがちにしたまま、ボクがブリちゃんを滅茶苦茶にし
ちゃうのを、じっと聞いていればいい。でも、邪魔だけはしないでね」
小憎らしいエルフめが、尻を向けたのがわかる。性臭に混じって菓子のような良い香りがした。少女の体臭
に違いない。歩調から尻の形が手に取るように分かるのだ。固く勃起したそれが、少女の事を考えれば、な
おも強く反応するのである。……ふと、この娘を後ろから引き倒して、種を付けたい衝動に駆られた。今に
も溢れそうな精を心ゆくまで吐き出したい。この娘を孕ませば、長く生きる子孫を得られるだろうか。何より
も、この生意気な小娘を屈服させてみたいのだ。いかにも誂え向きの女ではないか。その小さく引き締まっ
た尻は、お前を誘っているのだ。犯してしまえ。思うさま腰をぶつけて、その最奥に全てを解き放ってしまえ。
――いや、騎士にあるまじき感情だ。二婦に心を動かすなど。そもそもお前は、なぜこの玄室に来たのだっ
たか? あの、不器用な娘だけを、薔薇の神女と呼ばれるブリガード・ウォルタン殿だけを慕って、影日向に
守ってさえいれば満足だった筈だろう?
自問して心を鎮めようとする。だがその思考を妨げるかのように、神女の嬌声が耳に飛び込んでくる。あの
エルフめが、彼女の身体に触れているのだ。これは彼女が危ういと見るべきなのだろうか。……いや、ロビ
ン・ウインドマーンは彼女のことを、常から大切に扱っていた筈なのだ。きっと悪くはすまい。ならば、私が二
人に介入することで要らぬ火種を撒く事もあるまい……。
臆病なのであろうか。機を見てなおも、何もせぬ事を、さも賢しげに理由を付けて肯定しているだけに過ぎ
ないのではないか。いっそあのエルフ娘を背後から打ち据えて、二人とも己の物にしてしまえば良いのだ。
ああ、汚いことだ。そんな事が出来たならば、かつての己の生涯はどれ程安楽であったろうか。決して二人
とも、己を赦すまい。ウインドマーンの娘は勿論のこと、きっと身に纏う武具の名に「蟷螂」と負う通り、ことの
後で彼女も私を引き裂くのだろう。
「……娘。」
黒の騎士は呟いた。
「……ぁっ、あっ、あ……は、はい!?」
慰めの手を止め、魔術師は顔を上げる。苛立ったように鎧をずらし、黒の騎士は性器を露出した。この一点
物の極上鎧は、戦場で滞り無く排泄する為に、股の辺りの装甲が取り外し易く出来ているのである。
「私に奉仕しろ」
そう言って祭壇へ、傲岸に腰かけた。蒸し風呂で汗を流すような風情で、腕を組み、じっと魔術師が起き上
がるのを待つ。
「……お待たせいたしました。って、うわ……おっき……。」
世辞ではなかった。それは張形にも勝るとも劣らぬ巨根であった。血管が浮き出て隆々と節くれ立ち、膨れ
上がった欲望に限界まで張り詰めて、鈴口からは透明な汁が垂れている。
「……えっと、手とか、口とか、どっちですれば良いのでしょうか」
「両方使えばいい。黙ってやるんだ」
「……はい」
魔術師はそれを両手でさすり、口付けした。射精を促すものとはとても思えないような稚拙な愛撫であった。
ただ手が竿に触れており、亀頭に舌と唇の感触があるというだけの事で、しごく動きではなかった。
「ほう……。」
むしろ興奮を覚えた。目の見えぬ暗夜卿にとって性欲というものは、何よりも触感が優先する。その稚拙な
技前を、神女の清純と重ね合わせたのである。想像の中で、彼はブリガード・ウォルタンの奉仕を受けていた。
初めて扱う男根に戸惑いながら、それでもなんとか快楽に導こうと、ぎこちのない動きで、せいいっぱい撫で
さすっていた。あの気位の高いブリガード・ウォルタンが、このように可愛らしく、懸命に、己の逸物へ奉仕し
ているのだ。ああ、そうだ。そのまま続けてくれ……。肉体の歓び以上の、計り知れぬ満足感があった。
「おおぉ……。」
思わず声が漏れる。
「……よろしいのですか?」
魔術師の声に、世界が破れた。幻の神女は消え失せ、黴臭い玄室の中で、見ず知らずの娼婦が己の股間
に不快な息を吐きかけていた。
「黙れ、と言っただろう。殺すぞ」
「ひっ……はい!」
崩れてしまった世界をもう一度構築し直そうと、男はまた行為に集中し始めた。――いや待て。何か聞こえる。
何処かで、小さな音がする。
彼は聞いてしまった。……エルフの少女が、彼の思い人である神女に、彼女の処女を貫いて良いかと訊ねる
という……その密やかな声を。ぞっと全身から血の気が引く。くだらぬ女にかかずらっている間に、状況は既
にのっぴきならない事になっているらしい。
しかし彼は萎えなかった。むしろ激しい怒りに、逸物は猛り狂った。何故お前は彼女ではないのだ? 彼女
でないのに、どうしてそうも下手なのだ――。先には言い尽くせぬほどの充足を与えてくれた行為も、今はた
だの紛い物に過ぎなかった。何もかもがひどく癇に障った。
彼は突然立ち上がった。ひざまずく魔術師の頭を掴み、剛直を口中に突き立てる。
「私が動く。歯が当たらないよう注意しろ」
そのまま口中を犯し始めた。ざらざらとした天井に亀頭を擦り付け、巨根を喉奥へと滑りこませてゆく。魔術
師にとっては堪ったものではない。喉を塞がれ息が詰まる。あまりの大きさに顎が外れそうになる……。
口腔を性器に見立て、黒の騎士は再度幻影を追って激しく腰を振った。挿入の感触こそ肉の詰まった雌穴
とは似つかなかったが、口中の粘膜への蹂躙は、先程の拙い愛撫よりずっと強い快感が得られる。それに
喉奥の弁が微震しながら亀頭に絡み付くのだ。長い幅を突き込むより、むしろ深い場所に擦り付けたほうが
具合が良いと分かった。快楽は勿論のこと、喉奥に深く挿し入れれば、魔術師は咥えたままえずき、肉穴が
細かに痙攣するように反応して……それが何とも面白いのだ。初めからこうしておけば良かった。奉仕させ
る為でなく、突くための穴なのだ。腰を使って味わうための構造だ。こうやって! こうやって! ……さて、
この穴は、あの無作法な魔術師の口であったか、それとも、かのブリガード・ウォルタンの無防備な膣であっ
たろうか? 耳には確かに、あの強情な神女の、押し詰めた様な可愛らしい喘ぎが聞こえるのである。そうだ、
愛しの神女殿よ。快感が腿の辺りから込み上げてきた。もう少しだ……振りたてる! 振り立てる! この奥
に射精しなければ気が済まない!
「いくぞ……ッ!」
一方的に宣言して咽頭を犯す。暖かく煮えた胃の吐物が、亀頭に酸の刺激を与えて、むず痒く……雁首で
内壁をひっかき回す。擦り付ける事で、夢中のように痒みを癒す。突き入れを止める事など今更出来はしな
い。挿入したが最後、中断を許さない肉穴とは。とんでもない名器ではないか。
常ならず昂ぶっていた。それはまさしく射精のための穴なのだ。ぶる、と一際大きな快感が腰を痺れさせる。
咽頭に巨根を全身で叩き込む。濃厚な精液の塊が、幾つも幾つも、尿道を押し広げながら通り、魔術師の
体内に向けて吐き出される。
――たまらぬ。
空想の中で、放たれた彼の子種はブリガード・ウォルタンの子宮を泳いでいた。顎が外れそうなほどの巨根
による深い挿入に、気道はぴったりと塞がれて、魔術師は呼吸が出来ずに、既に気絶していた。ずるり、と
肉棒を抜き出すと、魔術師の肉体は、喉奥に絡み付く粘液に反応し、ひどく咳込みながらもぼんやりと、目
を覚ました。どうやら気管にこびり付いてしまったらしく、咳が止まらないようだった。
「まさか、一度で終わるとは思っていまい?」
彼の逸物は萎えなかった。それどころか、魔術師が咳込む様子に、むしろひどく欲情してしまっていた。己は
今、この娘を“精液で溺れさせた”のだ。この娘がブリガード・ウォルタンで無かろうと、もはや関係ない。雄と
しての征服の喜びが脳を麻痺させていた。
ふと、ロビン・ウインドマーンの凶行が脳裏をよぎる。私も、あれと同じ穴の狢、か。面白からざる気持ちで、し
かし彼は嗤った。治まらぬ粘膜の痒みは、更なる快楽を求めている。早く粘液に浸さなければ包まなければ。
この雌の中に入って、粘膜を守らなければならない。快感を求める気持ちばかりがやたらに急いて、殆どそ
れは心細いほどだった。

……突然、背筋が凍った。彼の比類なく鋭敏な四感が、こちらを狙う敵の存在を察知したのである。決してそ
れは、今まさに唇を再度犯されようとしていたこの儚い魔術師の事ではない。そもそも敵というのは。彼を脅
かしうる存在を指す言葉である。この未熟な冒険者達の様な手合いでは、とても彼の敵とは呼べなかった。
ならば、それは何者なのだ? 一体この空間の、何処からこちらを窺っているのだ?
――これは恐怖か。尻穴から臓物を全て引き抜かれたかのような、凄まじい空虚感に襲われていた。体中が
冷えて、逸物が萎えていく。彼は「復讐者」の柄に手をかけた。
その瞬間、彼の背に向かって剣が振り降ろされる。肩に斬り込む寸での所で、彼は刀身で斬撃を防ぎ、かつ
その勢いに逆らわず、くるりと絡めて衝撃を受け流す。
「……グ。ハハハハァーッ!!」
先程までの静けさとは打って変わって、襲撃者は狂気じみた笑い声を爆発させた。ああ、この声は、あいつだ。
「ダイクタッ!」
「……まさか止めるとはな、然らば貴殿は本物か……? くひひ……。」
それは何やら鱗めいた、珍奇な防具を身に付けた大男であった。長身のブリガード・ウォルタンより、なおも大
柄な黒の騎士に比べても、その男はさらに一段と背が高く、殆ど巨人のような体躯である。そびえる様なその
紅い面は鬼の形相を表わし、兜には隆々と一対の金色の角が生えていた。刃の立たぬ瓦屋根のような鎧の
関節には髑髏をかたどった甲羅が被せられ、両の手には大小二本の刀を握っていた。暗夜卿の背を割ろうと
した右手の大刀は、刀身から間断無く冷たい妖気を吐き出している。先程襲撃に気付く事が出来たのは、そ
の冷気による所が大きかった。暗夜卿は己の不甲斐なさに歯噛みする。
「ふざけるな! 私を殺す気か!?」
「ハハッ! ハハハハァー! そうとも! 殺るともさ、暗夜卿! この様はどうした事なのだ? つい先程まで、
拙者はひとり殿の御寝所へ侍っておった……。拙者の挙げた首を土産として、殿のお目醒めを待ってな。だが
殿はちっとも動こうとはせなんだ……。何故だ? 何故お目醒めにならぬのだ? ……拙者は思ったよ。即ち
……殿は、まだ敵が存命であると仰せなのだと。褒賞の時にはまだ遠い、戦場に立ち戻り、それを討ち取れと。
左様にお身体でお示しなのだと!」
「遅すぎるな。とっくに戦いは終わっている」
「ヒヒッ! そして拙者は見出したァァアーッ! 神女の聖域に蔓延る悪徳を! 見るも浅ましい淫魔の宴をォッ!
見やれよ暗夜卿、この拙者ハイヤト・ダイクタと同じく、かの栄えある四天王ブリガード・ウォルタン! 並びに
ロビン・ウインドマーン! 二名が無体にも、墓所の床などで玉の肌を晒す! そのような事が在り得るか!?
否ァぁ! つまり貴殿は、今まさに! 淫魔にたぶらかされておるのだよ、暗夜卿! 即ちそれが我らの敵よ……。
敵は殺す!」
「莫迦か! 淫魔など! そんなもの、この世界におるものか、あの二人は本物だぞ!」
「なんだと? 本物とな? では百歩譲って本物であるとしよう。然らばその娘は何者であるか? 拙者には、
そのような顔に見覚えは無いぞ!? 貴殿ともあろう者が、その娘を無我夢中で貪っておったではないか!
淫魔でなければ何者と言うのだよ!」
「ただの臆病な冒険者だッ!」
「ほざけよ、哀れ者の黒騎士。貴殿程の男さえ、操られている事に気付かぬからこその魔物の手管ということよ!」
「本当に、本当に……お前という莫迦者は……! どこまで人の話を聞かぬのだ!」
破綻した会話に、むしろ黒の騎士には巨漢の考えが読めた。この者は事実がどうあれ、ただ戦いたいのだ。ど
のような言い分も、人を斬るための方便に過ぎない。とても共感は出来ないが如何にもハイヤト・ダイクタらしい
歪みだと、暗夜卿は思った。
「ハ! 何れが正しいかはすぐに知れるッ! もっとも貴殿は、その前に輪切りと散る定めであるがなぁあーッ!」
「戯けるなッ! 節度も知らぬ戦争屋が!」
二人の剣が突き出され、示し合わせたように交差する。開戦の合図に他ならない。

「うるっさいねー」
……もうちょっとで、ブリちゃん陥落ちそうだったのにぃ、と。不機嫌そうな声がして、ゆらり、と全裸の少女が弓
を手に立ちあがった。
「はいはい、淫魔一号でござい、なんちゃって。ダイクタ兄さんってば、何をそんなに息巻いてるわけ?」
彼女の方に目もくれず、無言で巨漢は黒の騎士に斬りかかった。大きく踏み込んで大刀による右の大振りを、
暗夜卿は距離を取って避けたが、即座に左から小刀を返し、さらに半回転して背面を向けた姿勢から、ぐるり
と太刀を突き伸ばす。黒の騎士は反応して魔剣を打ち降ろし、刀身にぶつけて突きを叩き落とした。しかし巨漢
は刀を取り落とさず、ならば平衡を崩して前に転ぶかと思いきや、そのまま宙返りしながら全体重を乗せた左
腕からの回転撃、さらに直後、右腕から同様の一撃を打ち降ろして、ずかりとしゃがみ込むように着地し、両腿
を伸ばして飛び掛かり、また左右からの連撃、連撃、距離を取ろうとする暗夜卿を追い詰める。
(まずい――!)
「ヒハハァーッ! どうしたよ暗夜卿ォ! お主の剣はそんなものかね!?」
勝ち誇って、巨漢が刀を振り上げる。そして、ドウッ、と肉を打つ音がした。
暗夜卿が斬られたのではない。ハイヤト・ダイクタの背に、矢が突き刺さっていた。
「無視しないでよねぇ」
「成程。ロビン・ウインドマーン……。」
確かに矢は彼の鎧を貫いている。だが、まるで痛みを感じていないかのように、鬼面の武者はゆっくりと振り返
った。
「拙者の火金胴の裏を抜くとは……貴殿が本物である旨、確かに理解した。しかし、だからと言って斬らぬとい
う訳ではないぞ! 全裸で矢立ても持たぬ弓使いが、この拙者を仕留められる心算でいるのかよ!? 愚か!
実に愚か、愚か愚か愚かァァ!!」
叫びながら走り出した巨漢に、やれやれ、と少女は首を振った。
「矢の数はハンデだよ。……なんせ、三対一なんだから」
少女が言い終わらない内に、巨漢の身体が宙に浮かぶ。
「何!?」
自ら跳んだ先程とは訳が違う。巨漢は背中を強かに打ちつけ、自重によって矢が深く突き刺さる。筋肉で止まっ
ていた矢尻が内臓を傷付け、ハイヤト・ダイクタは血を吐いた。天井を見る視界の端に、槍を構える全裸の神女
が見えた。成程、長物で足を払われたらしい。
「仲間割れなど……全く、馬鹿馬鹿しい。大丈夫か暗夜卿?」
神女は吐き捨てるように言うと、あわてて乳と股を隠した。彼には視力が無かったが、それが揺れる気配に、ほう、
と嘆息を漏らし――やや、神女殿に助けられてしまった、これではまるきり、私の望みと反対ではないか――。
そう思った。
「惜しかったな、ダイクタ。私一人では、きっとお前に負けていただろうが。……このような決着は、私としても不
本意であるのだが……まあ、今回はお前の負けだ。取りあえず武器を取り上げさせて貰う」
暗夜卿が右手首を容赦無く踏み付けると、さしものハイヤト・ダイクタも愛用の村正から手を離した。仰向けに
制圧されてなお、彼は左手の小太刀で抵抗したが、そんな攻撃が黒の騎士の鎧に通る筈もない。暗夜卿は左
手も同様に手放させると、ブリガード・ウォルタンの方へ蹴って寄越した。神女は石突きを回してひょいひょいと
床の刀を跳ね上げて、それらを掴むと、蓋の重い石棺の中に、両方とも厳重に片付けてしまった。
「……殺せ。もはや生きている意味も無い」
丸腰となったハイヤト・ダイクタは泣き言をいった。
「莫迦を言うな。はっきり言ってお前は苦手だが……それでも、主を同じくする者である事に違いは無い。王が
目覚めるまでは……それが何日か、何カ月後になるか知らないが……生きていてもらうぞ」
「戦いこそが拙者の存在意義なのだ……。殿が目覚められるまで、一体何をすれば良いのだ? 忠義の足り
ん骸骨どもに躾をするか? 人魚どもでも狩りに行くか? ……いや、刀はお前たちに取り上げられてしまった。
……拙者には、もう何も残されてはいない」
先程までと同一人物とは思えないほど、ハイヤト・ダイクタは消沈してしまっていた。黒の騎士は、戦闘に脅え
て部屋の隅で小さくなっていた魔術師をみつけ出すと、強引に腕を引っ張り、巨漢の方に蹴り出した。
「大事に使え。暇を持て余すよりは良かろう」
「この娘は――。」
「戦いとは、剣の交わりだけではあるまい?」
そう言って、暗夜卿は総面の下でにやりと嗤った。魔術師の娘は名残惜しそうに――彼には随分酷い扱われ方
をしたというのに――暗夜卿の方を振り返ったが、彼の側に未練の無い事を察すると、三つ指をつき、ハイヤト・
ダイクタの傍に、静かにはべった。

「……黒兄さん、良かったの? カレンちゃんをダイクタ兄さんにあげちゃって」
全裸の少女が、黒の鎧を指でつつく。成程、あの咽頭の味わいを手離す事は確かに勿体ないと言えなくもない。
「ああ……良くはないな。だが――。」
暗夜卿は、面の下で悪戯げな笑みを浮かべた。流れのまま魔術師の口を犯していた折から、状況は大きく変わ
った。ならば、もう、これを言ってしまっても良いのではないか?
「ウォルタン殿。かねてより……いえ、生前より長きに渡り、貴女の事をお慕いしておりました。先程もあの魔術師
と戯けていた私ではありますが、それでも。一時たりとも、貴女の事を思わなかった時はありません。この折につ
いて。僭越ながら、私に――貴女を抱かせては頂けませんか?」
「――な!?」
「なな、な、な!?」
目を丸くする二人の美女に、ああ、たまには奇襲をかける側に回るのも悪くないものだな、と黒の騎士は思った。
これだけ驚かせば、ちょっとした嘘も――いっとき、魔術師の娘の口淫に全く夢中になっていたという――気付か
れないものであるらしい。
「ダメだよ! 却下!」
そう叫んで、ロビン・ウインドマーンは腕を振り回した。
「……なんでお前が私の代わりに断るんだ?」
「だって、もうちょっとで、ボクがブリちゃんの処女を貰える所だったのに……ずるい! ずるいずるいッ! あり得
ないよ黒兄さん、そんな、横からかっさらうような真似、ボクが許さないよ。まさかブリちゃんも、いいなんて言わな
いよね?」
「……ほう」
意外だった。彼女の純潔は、まだ貫かれてはいなかったのか。
「卿にしては、随分手こずっていたようだな」
「そうだよ! ブリちゃんが訳わかんなくなるまで、めろめろにしようって頑張ってたんだから!」
「本当に難儀したよ。抵抗しようにも……ロビンめ、上手いのなんの、あと少しで、私も堕ちてしまいそうだった」
随分腹を割った述懐であった。立て続けに起こる異常事態に、潔癖な神女も正常な判断力が妨げられてしまっ
ているらしい。全裸である事の羞恥も、半分がた忘れかけているようだ。
「ならば、ウォルタン殿よ。この私が相手ではどうかな?」
好機とばかりに畳みかける暗夜卿を、ロビン・ウインドマーンは睨みつける。ブリガード・ウォルタンの美しい困り顔
の下方といえば、あの魔術師や、このエルフ娘当人とは、比較にならぬ立派な乳房がそびえているのである。見
る者に甜瓜を連想させる程の、殆ど球体と言って良いような誇らしげな大きさでありながら、処女らしい攻撃的な
までの張りを備え、乳輪も控えめであった。槍術の達人である彼女の腕は、すらりと長く一片の脂肪も付いてい
ない。いつもは鎧や布に隠されていた、くびれた腰や、重そうな尻と言えば、模範のような姿の良さで、その裸体
の艶めいた稜線を、舐めるように眺めれば……ロビン・ウインドマーンはあらゆる意味で溜息をついた。そして、か
たやの黒の騎士の逸物は、交戦を望んで猛り立っている。この場の何もかもが、彼女には目に毒であった。
「うう……でかい。えぐい。本気だよこの人……ブリちゃん、見ちゃダメ! 犯されちゃうよ!」
エルフの少女は両手を広げ、彼女を背中に庇った。
「む? あの張形とやらもこの位だったと思うが……これで普通ではないのか?」
だが長身のブリガード・ウォルタンは、ひょいと小柄な娘の頭越しにそれを見る。まじまじと観察される興奮に、彼
はそれをぴくぴくと震えさせた。
「そんな訳ないでしょうが! あれは空想! つくり物! これは……これは、うん、その、アレだよ! つまり……
ずるいって事!」
何が言いたいのかさっぱり分からないといった表情で神女は首をかしげ、訊ねるように彼の顔を見る。
「……どういう事なのだ?」
「まあ、そういう事らしい」
「だから、どういう事なのだ?」
残念ながら疑問は晴れなかった。
「兎にかく私が言いたいのは、これを貴女の中に入れさせて貰えないかという事だよ……私とて無理強いはした
くない。ウインドマーン卿との戯れが気に入ったのなら、続きをなさるがよかろう。だがきっと、私の逸物であれば、
あの張形より、気持ちよくして差し上げる事ができるのではないか、と……そして私も……お互いに、気持ちが良
くなるのではないかと思うのです、ウォルタン殿」
「却下ァっ!」
暗夜卿の頭に少女の拳が走った。それは素晴らしい速度の一撃で、がんっ、と良い音がし、少女は痛そうに手を
押さえた。勿論のこと、その衝撃は彼には届いていない。
「ダメダメダメぇっ! ブリちゃんダメ、耳を貸さないで! どんな凄いチンチンでも、持ち主が下手ッ糞なら粗チン
以下の役立たずなんだよ!? ……それにブリちゃんは初めてなんだし! 大きいぶん、そんなの痛いだけなん
だから!」
「確かにウインドマーン卿と比べれば、確かに私の技は劣るかもしれない。だがウォルタン殿を慕う事にかけては、
引けを取るつもりはない……貴女の痛みを和らげるよう、淑女への礼を失わぬよう、いたす所存ではある」
「そんなのボクもだよ! ……ぶ、ブリちゃあーん? 黒兄さんの言う事なんか信用しないでね? ボクに気持ち
良くさせて?」
全裸の神女は二人の言葉を受けて、しばし腕を組んで考え込む。
「それなら、お前と暗夜卿の二人で技比べをすればいいんじゃないか?」
つまり模擬戦だな……と、さも名案を思いついたといった顔で、手もみしながら裁きを待つ二人に向かって、彼女
は凄まじい提案をした。

大した奇襲であった。流石はブリガード・ウォルタンと言うべきであろうか。戦況の混乱にあって、なおも戦意を失
わず、むしろ乗り気になっている所がまた良かった。好ましいと言うか、気に入った。ここまで彼女を整えてくれた
ロビンには感謝しなければならない。想い人からこのような言葉を聞いて、ここで退き下がる男など、世界の何処
を探してもおるまいて。
提案の内容も望む所だった。いわゆる恋愛感情とは少し違うが、正直に言えば、かねてからロビン・ウインドマー
ンのしなやかな身体についても……まあ、一度は試してみたかったのだ。それに彼女の提案であるのだから、こ
れは浮気でもない。実に“おいしい”状況である。
「ほう……。どうするね、ウインドマーン卿よ」
そう言って、エルフの少女に挑発的にペニスを向ける。暴力的ですらある逸物の有様に、ロビン・ウインドマーン
は反射的に一歩後ずさった。
「ブリちゃんのアホぉー!」
ほとんど泣きだしそうな顔で叫ぶ。
「私とブリちゃんに近付くな、このバカチン! デカマラ野郎! ホラスマス! 淫獣! 夜のボーパルバニー!」
「……それは罵倒か?」
「うるっさーい! フニャチンっ! アホ虫っ! 肉のクリーピングバイン! 股間がモンストラススネーク!」
「やれやれ。卿にやる気が無いのであれば、私の不戦勝という事かな?」
暗夜卿のふざけた言葉に少女は突如表情を強張らせると、彼に向かって小動物のように飛びかかった。
「うオっ!」
いきり立ったペニスを小さな両手で握られる。想像以上に温かく柔らかい感触だった。腰の引けた彼の反応に、
少女は悪戯げな表情を浮かべる。……全くころころと表情のよく変わる娘だ。
「先にイった方が負けってルールでいいね?」
「くッ……! おおぉ……!」
返答とも嘆息ともつかない声が漏れる。
「悪いけど、このまま勝たせてもらうよ……!」
竿を強烈にしごき立てる。楽しませる為ではなく、ただ絶頂させるための動きだった。機械のように冷酷に、精を
搾り出そうとする。
「流石に初心な魔術師とは少しものが違う、よう……だなッ」
「早くいっちゃいなよぉ?」
逸物を握る少女は、男に上目を使い、亀頭に頬ずりするような動きをした。
「ほらほら、もう切なそうにぴくぴくしてる。ボクの顔に、かけちゃってもいいんだよ? それとも飲んであげようか?
すっごい気持ちーよぉ?」
そう言って亀頭に舌を這わせ、左手で陰嚢を揉む。快感の壺は今にも溢れそうに水位を増した。だがそれは罠だ。
こんなもので射精してしまう訳にはいかない。この後にも、まだまだ甘美な体験が待っているのだから。
「はははッ! っく、こんなものか!」
虚勢を張る。いや、虚勢ではない――此処からが反撃のしどころだ! 暗夜卿は低く腰を落としていく。少女も陰
茎を握ったまま、その動きにに従って姿勢が下がってゆき……。足の裏を床に付けたまま、膝が曲がり、上半身
は水平に、後頭部がほとんど床に付きそうになる。
「……くうっ、柔術、かッ!」
無理な姿勢を取らされ、少女は苦悶の声を出した。こうなっては、逸物を扱くどころではない。転ばぬよう、反射的
に両手でそれに掴まってしまう。
「その通りだ」
下方に引っ張られるペニスを腹筋に力を込めて支え、暗夜卿は兜を投げ捨てた。彼の顔は、鼻筋の通った少し
面長のごつい髭面で、目の辺りは幅広の鉢巻きに隠されていた。そのまま、黒の騎士たる象徴とも言うべき重厚
な鎧を、中腰のまま、ひょいひょいと器用に脱ぎ捨てていく。
瞬く間に黒髪の丈夫が鎧の中から現れ、しかしロビン・ウインドマーンも心得たもの、肉棒からの支配から逃れ
るため自ら手を離した。床に背をつき、両手を広げて床を擦り、身体を回転させて逃れようとする。
「させん!」
すっかり裸体となった男は少女の胴に覆いかぶさり、肩と腋に腕を絡み付かせた。
「捕まえたぞ……。」
「うぐッ! やるねぇ、黒兄さん……。」
さて、どうしてくれようか――。組み敷いた少女の肉体は、小動物のように温かい。首筋と肩甲骨の辺りから、汗
とは違う説明不能の甘酸っぱいにおいがする。いい香りだ――髪の匂いは、より甘い。
固めていた腕を解き、まっ平らな胸に口付けする。仰向けに寝る少女の白い腹を撫でる。身体に触れるたび、手
練の娘は可愛らしく震える。
「ん……ぅくっ」
鈴のような声だった。しおらしくして居れば、こうなのだ。ひとまず愛しの思い人の事はさて置いて、素直に、この
少女の華奢な裸体を美しいと思った。幼すぎるほどの肢体が敏感に身悶えする様子に、どうにも肉棒が反応して
しまう。腹から肩甲骨にかけての筋肉の流れが美しい。骨ばった腰回りが美しい。折れそうに細い脚が、美しい。
固めを解かれ、エルフの自由になった手は、男の肉体をしずしずと這う。先のような精液を搾り出す動きではない。
男の情を昂ぶらせる愛撫であった。――この娘は、私を何に導いているのだ?
ブリガード・ウォルタンは二人が絡み合うのを、目も離さず見ていた。玄室の暗がりに、白い肌がきらめいて浮か
び上がるのだ。成程、妖精の眷族に相応しい幻想的な風景であると彼女は感じた。無骨な男が小さな身体にのし
かかっている様子さえ、何やら古めいた御伽話のようで、彼女はそれを、とても、素敵なことだと思った。
「抱くぞ」
「はいはい。どうぞ」
「随分と余裕だな」
「……ふふ。ヤメテ、って言ったらやめてくれるの? それとも、ただ紳士ぶってみたかったのかな?」
「……。」
「なんて、ね……。さっき、ちょっとだけカッコ良かったから……がんばる黒兄さんへの御褒美だよ。ボクの事、抱
かせてあげる」
悪戯げに耳元で囁き、細い足を男の胴へ軽く絡める。
「ね? お姉さんの中に来ていいよ? 」
「よく言う。この歳だけくった餓鬼が……。自らの有利を手放すような事を、これが勝負だと忘れた訳でも無かろう
に……。」
圧し掛かったまま、熱く充血したペニスを彼女の腹に圧しつける。
「何をやった所で、勝つのはボクだもん」
少女は、男の背を優しく撫でると、余裕綽々といった顔でうそぶいた。
「ふん。」
暗夜卿は不機嫌そうに口元を歪める。
「勘違いするな。卿が私を招き入れるのではない」
巨根を狭い穴に突き入れる。
「私が、お前を犯すのだ」
男は濡れそぼる少女の粘肉を裂いて、強引に最奥に到達した。
「……いきなり、深いッて、ばぁ……。」
少女は鼻にかかった声を漏らす。
「それにしても迷いが無いね。でも、ふふふ、思い切りの良い子は好きだよ……。」
減らず口を無視し、腰を振って膣壁を味わう。これが――念願の、あの下品で小生意気なエルフ娘の味か。
温かな穴は、まるで折り重なったぬめる絹に包まれているようだ。何より、素晴らしくきつい穴だ。巨根の侵入
に反応して誂え向きに広がり……元の口径に戻ろうと締め付ける。浅い位置の子宮口は、飛び込んだ亀頭に
熱烈な口づけを返してくる。膣全体で咀嚼するように吸い付く、途轍もない名器であった。
たまらぬ――腰を振り立てる。これでは振らぬ訳にはいかぬ。
「ぐっ、ぐっ、はは、ははは! ひぃっ、はははっ! ひひっ! やっぱ何か敷かないとダメだね、背中、ちょっと
痛いよ! ひははぁっ!」
喘ぎ声までが下品な娘であった。
「……言ったろう? 犯すと。」
「それにしても黒兄さんはおっきいね! すっごくおっきいッ! ひっ、しかも滅茶苦茶腰振ってるし! んは、
ははは、ははははッ!」
そうとも。振るのだ。これを何度も突き入れてやる。お前がぶち壊れるまで何度も何度も突き入れてやる。この
気持ちのいい裂け目に。私の肉棒で快楽を刻み込んでやる。
無我夢中で突き立てる。粘液まみれのビロオドのような襞がペニスを握り込む呼吸に合わせて、自分の一番
気持ちのいい角度で、奥までぐいぐい抉りこむ。
「はははっ、ひっ、ひっ、あはっ! そうそう! もっとだよぉ! もっと激しく来てよぉ!」
「言ったなっ」
男はさらに動きを速める。豪快に、強引に、突き込み、未熟な子宮を何度も押し上げてゆく。それに応えて、娘
もまた締め付けを強めた。亀頭を擦り上げる狭穴の壁は、ぐちゃぐちゃに分泌された淫液が熱く絡み、逸物の
先が蕩けるようだ。
「いいよ、いいよぉッ! ははあっ、あはははは!」
「こんなやり方が好みか! この物狂いめ。淫乱な雌餓鬼め!」
さながら獣のまぐわいである。男は自らの快楽を追求し始め、娘も快感によく応えた。膣内に瘤肉を叩きつける、
捻じれる腰遣いで迎える。
「どう? どうっ!? あははは、あはぁッ!」
「何が、どう、だッ!?」
「気持ち良くてスッゴイでしょ? ボクの中をがんがん突いて、ドピュドピュいっちゃいたいでしょぉっ?」
淫らな物言いで情を煽り立てる。この小柄な娘が、丸々とした孕腹を撫でている様子を想像してしまう。まるで
皆無の乳房の下に、不釣り合いなぼて腹を備えた彼女が、天使のように微笑むのだ。それは、この幼姿の殺
戮者にはあり得ないような、それでいて、むしろ最も相応しいような、頭を痺れさせる想像であった。
「ああ、孕ませてやる……!」
口から願望が飛び出した。
「アハハッ! はははははっ! それ、本気? あひっ、ひひっ、さっすが黒兄さん! ホントいい、男っぷりだ
っ、ねっ! へぇっ!」
細く小さな肉体を、くねくねとよじらせる。狭い膣の形が変わり、突く度に、擦れる部分が変化する。これでは、
膣壁からもたらされる快感が予測できない。――素晴らしい。
ともすれば男の独りよがりと成り得る、強引な姦淫であった。だが、ロビン・ウインドマーンはそれを能く悦ぶの
である。己の快感を目指す事が、ひとりでに相手の快楽となる。何にもまして、都合のよい事ではないか。
「そうだよッ、黒兄さん! そっ、そおっ! その調子だよー! がんばれ、がんばれー! あはぁっ、あははッ!
気持ちいーい?」
良からいでか。何か莫迦にされている気もするが、確かに快感は高まってきていた。少女の言うように、今こそ
まさに頑張り所なのだ。射精に到る好機であった。休みない突き込みで体温は異常に上昇し、呼吸は乱れて
いた。返事が出来ない。声を出す代わりに腰遣いで応える。まるで限界を示すように、腰が前後する間隔は短
くなっていた。
「本当に、いくぞッ……。」
「中出ししていいよ! ボクの膣内に、たーっぷり精液出して!」
まったくもって良い女だ。身体のつくりこそ幼いものの、心憎いほど男の射精を煽りたてる、この上もない極め
つけの雌だ――望みの通りにしてくれよう。肉棒の全てを娘の浅い胎内に埋め込んでしまうほどに、一際深く、
胎の臓物を喉まで押し上げるほどに、突き入れる。そして……解き放つ。本日二度目の射精ではあるが、精
液は彼の睾丸から過剰なまでに汲み上げられ、巨根に相応しい尋常ならざる量が噴き出た。
――あっ。
「うふっ、あははっ! ひひひっ!」
沸騰する精液を膣に受けて、少女は満悦の笑いを漏らす。――しまった、と思った時はもう遅かった。臨界を
越えた快感は決壊し、もう射精は止まらない。少女の膣に包まれながら、肉棒から象牙色の先端が暴れ狂う。
胎内の最も奥をびちゃびちゃと叩いている。子袋に精を受ける快感に顔を赤らめ、猫のように舌舐めずりをし
……そっと男の唇に口付けた。
「はーい、んふふっ。すっごい量……ご馳走さま。いっちゃったねぇ、黒兄さん……いくらエルフが妊娠しにくい
からって、こんなに出しちゃホントに出来ちゃうよぉ?」
あまりにも具合が良すぎた。まだ腰と射精を落ち着ける事ができない――。圧し掛かって突き込みを続ける盲
目の男に、エルフの少女は愛しげに頬ずりして、淫靡に嗤った。
「んっ、うっ……すっかり夢中みたいだけど……そろそろどいてよ、黒兄さん。ブリちゃんの処女……貰うから
っ、ね」
この時、暗夜卿の頭の中で回っていたものは、ロビン・ウインドマーンの最深部を征服した満足感などではな
い。もはや決してしまった「模擬戦」の勝敗の行方と、既に一仕事を終えて萎えつつある、彼の不肖の息子の
事ばかりが気にかかり、目の前の女体から離れるどころではない。――ならば、私よ。どうするのだ? この
まま、この娘にブリガード・ウォルタンを奪われてしまって良いのか? ――否。否だ。絶対に認める事はでき
ない。
「……さっきから、卿は何を言っているのだ? 私はまだ絶頂などしていないぞ……。」
囁いたのは、大嘘であった。幸い、巨根は栓となって完全に穴を塞ぎ、精液はまっしぐらに子宮に滑り込んで
いたので、結合部から漏れ出る白濁によって真相が露見する事は無い。その状態を保つためにも――何より
今は、肉棒の起立を維持することだ。何を置いても、これを奮い立てねば。
「なっ……何言ってるってのはこっちの台詞だよッ!」
小さな両手で男の胸元を突き、押しのけようとする。しかし暗夜卿は意に介さず腰を振った。この狭い内部に満
ちた精液を、捏ね上げて形と為すかのように。
「ブリちゃん、見てたでしょ!? この人さっき、イッてたって、見てたらわかるでしょ!? 黒兄さんにどけって
言ってやってよ!」
「……あー、ロビン。悪いが、な、よく分からなかった。すまん」
神女は情け無く首を振った。成程、審判が初心というのは、とても便利なものだ。先の模擬戦の勧告といい、
今回の事といい、この気高くも美しい神槍の乙女は……時折……いやむしろ、度々、頭が弱いのではないか
と思われる発言をする事があった。潔癖過ぎるが故の無知によるものであろうが、彼は神女の性質に感謝し、
そして愛した。彼女は信念によって意思を固めているのではなく、ただ純粋に臆病で、頑迷で、固陋なのである。
先にロビン・ウインドマーンが、熟達の指先技でもって、彼女の股ぐらに張った氷を見事に溶かして――もはや
処女を失う事さえ脅えぬように――しまった事からも、それは明らかだった。ああ、その愚かしさが、また可愛ら
しい。ロビン・ウインドマーンの細い両足を抱え上げ、柔軟な身体を逆手に取り、脚にVの字を描かせる。
――すぐ片付けてやる。暗夜卿はエルフ娘に肉棒を突き入れながらも、既に神女に心を馳せていた。
「こっ、おっ、のぉ! 卑怯ものぉ! 卑怯ものッ!」
エルフの少女は組み敷かれ、膣に逸物を擦り付けられ、涙声に近いような、掠れた声で抵抗した。――これが、
あのロビン・ウインドマーンか。なんとも不様な事だ。一度は見事、自分を絶頂に導いておきながらも、その意味
は果たされず、今となっては可愛らしく罵声を浴びせる事しか出来ないのだ。笑みがこぼれる。性感の波涛はま
だ遠く、先に己を打ち負かした敵は、もはや為すがままに横たわっている。此度こそ、とくと、楽しませてやるぞ。
「ぐっ、くふ……ふぅ、うんっ……、んうっ!」
「笑わないのか? それが、卿本来の喘ぎ方なのかね?」
海老のように屈曲させられた少女は、男をきつく睨みつけた。
「許せないよッ……あとで、あんたの金玉、あはっ、ひっ、引きちぎって、ゾフィさんとこのバケ猫に喰わせてや、
るぅっ!」
「おお、怖い怖い」この娘の事だ、本気で言っているに違いない。なんとも恐ろしい宣言であったが、ならば事に
当たり如何するかと言えば、今の暗夜卿に出来る事と言えば、ただ肉棒を突き入れるのみ。
「きぃ、んうっ、きっ、聞こえてるの!? こんなっ、馬鹿ちんちん、まぐわう事しか考えてないんだからッ、タマ
を引きちぎって、えへぇっ!」
お前を絶頂に導くために、抱いてやっているのに――即ち懸賞であるブリガード・ウォルタンを抱く為でもある
が――それが、私を脅すとは何事だ。この生意気な小娘に、少し罰を与えなければ。限界まで突き込んだま
ま、亀頭で子宮をぐりぐりと圧迫する。
「……ならば尚の事、途中で止めてやる訳にはいかないな。精を放てるのも、これで最後となれば……次に放
つ精で、必ずやお前を妊娠させなければ」
「何を言って――あ、あはっ! あははぁっ! えへへ、あはぁ!」
男は少女に痛みを与える心算であったが、その口からは久しぶりの笑い声が洩れるばかり。どうやら本当に具
合が良い時も、その反応を表わすものらしい。
「……まさか、イったのか?」
「ち、違うぅっよぉっ! いきなり気持ちいー事するから、吃驚しただけ!」
「それは良かった。」
この程度で気をやるようでは戦い甲斐が無いぞ――という意味と、愉しんでいただけて光栄だ――という、両方
の意味を込めた言葉であった。ロビン・ウインドマーンともあろう者が、敵対している筈の相手に、迂闊にも悦び
を自白したのである。手の届く所まで降りてきたどころではない。もはや伝説の暗殺者は、隙だらけの、単なる
小柄な裸の少女であった。
「んん、んぃ! なに、笑ってるのッ! 黒兄さんだって、さっき、ボクの中で、あーんなに! たーっぷりイって
た癖に!」
それでもやはり、気だけは強い。
「記憶に無いな。まあ、卿もそのような事は忘れてしまえ。……何もかも、快楽の内に溶かしてしまえ。このまま――。」
巨根には、もう萎える気配など微塵も無かった。限りなく張りつめて、しかも己の快楽には確と手綱を付けて、
雌穴を優しくさすり、時には押し潰すように圧迫し、屈服へ導いていく。
「うひぃ、あは、あはは! ひっ、もうっ、やめて……! あはっ、うっ、ひい!」
「随分……良くなってきたようだな?」
「気持っ、ち、良くなんか、ないよっ! やめ、っは、うあぁっ!」
快楽に耐えようと苦しげに身悶えする。
「いい声だ。卿は感じている時の方が可愛らしいぞ」
「く、ふうぅ、ぅぅ、こんな事しながら、口説くなあッ!」
くしゃくしゃに乱れた可憐な顔を、小さな両手で隠す。男は無抵抗な身体に覆いかぶさり、腹部同士を擦り合わ
せるように、胎を深く突き上げる。少女は甘い声を返す。勝負などではないごく普通の睦事のように、肉体の内
から噴き上げる快感を浴びて……それでも少女は持ち堪えようと、しかし力なく、身体を震わせた。口の端か
らは、だらしのない涎が垂れ始めていた。
「あっ、は、っう……あはぁッ、あはは。ぅん、んいっ、ダメぇ……。」
「……ウォルタン殿」
「っ、はい!? 如何なされた、暗夜卿!」
全裸の神女は二人の濃厚な交合を目も離さず見ていた。自らを慰める事もなく、しかし、しきりに太腿を擦り合
わせて、未知なる何かを待っていた。
「貴女にも、じきに同じ事をして差し上げよう。貴女の膣を私の肉棒で満たして……何も考えられなくなるまで、
何度も何度も、何度も何度も何度も、性器を擦り合い、互いを貪るのだ」
「お、お待ちしております」
「やだ、ダメぇっ! んぅ、ブリ、ちゃんっ! そんな事、言っちゃダメ!」
勝利の宣言は彼女たちに受け入れられた。掻き回す腰を止めず、横たわる少女を抱き抱える。耳元に顔を
寄せ、白い頬に舌を這わせて、彼は囁く。
「お前の大事なブリガードに、男女の契りの愉しみを、自らの身体を用いて、確と目に見せ、教えてやるのだ。
一興と思わんか?」
「何、ぃ、をッ! ひっ、ひいっ! ひいいっ!」
「子袋を圧されるのがお気に入りのようだな。お前はいい母親になるぞ」
「やめてよぉ! もう、やめてぇ! も、もう、もお……。」
いっちゃう、と少女はか細く言った。
「ああ。それで良い。私の子を孕むようであれば、尚の事よい」
「あはは、あへっ、ふ、や、だよ、やぁーだよっ……。」
喘ぎながら笑った。何時もの、笑いに似た喘ぎではなく、確かに今は笑いと喘ぎを一度に表わしていた。男
は彼女の薄い胸にしゃぶり付き、少女は緩みきった顔で、彼の頭を優しく撫でる。
「ダメなのに、こんなぁ、っこ、ん、な! ぅああ! あはっ、はは! ひっ、き、来てる、いっちゃう、いっちゃ――。」
「良いではないか? いってしまえば――。」
その言葉を受けてか、少女は男の首ったまを抱きかかえた。互いに深く絡み合いながら、それでも腰は止
まらずに快感を紡ぎだす。
「んいぃぃぃぃ! いぃぃぃいいいっ!」
少女の筋肉が強張り、全身が肉棒を締めつける。その瞬間、精液はまた奥に向かって飛び出していた。快
楽に正気を惑わされたか、それとも自ら身籠ることを望むのか、少女の脚は男の腰に絡められ――子宮口
が貪欲に精を飲み干していく。
「イかされちゃった……。はは。ごめんねブリちゃん、ボク、負けちゃった、よ……。」
その細い右腕で顔を隠し、少女は震えて呟いた。端から見える口元は嗤っている。
「私も射精してしまったのだがな」
「二回もね。ふふっ。中にばっかり……光栄に思ってよ?」
「ああ。卿の蜜壺に敬意を表そう。貴女と一戦交えられた事は、この迷宮で、自らも死者でありながら墓守
りを始めて以来か――久方ぶりに愉しかったよ」
「……ああ、でもイヤだな、ブリちゃん取られちゃうの……。でもイかされちゃったんだから、しょうがないか
ぁ……。タマは……ひとまず、黒兄さんに預けとくよ。初めての殿方が玉無しっていうんじゃ、ブリちゃんが
可哀相だもん」
彼女の腕の下から、ちらりと拗ねたような目が見える。涙目のような、微笑みのような、満悦しながら悔しが
り、暗夜卿と神女のこれからを祝福しつつ、悲しみと恥辱に耐えている。そんな表情だと、暗夜卿は思った。
「可愛いな」
そう言って、暗夜卿は萎えたペニスを彼女の膣から抜き出した。エルフの少女は目を見開く。
「卿の事が、本当に好きになってしまいそうだ」
「……した後で、ふざけるの禁止」
「いや、私は本気だぞ? お前の事を孕ませると言ったのも、な。今回の事で、もしも命中していなかったら
……また、抱かせてほしい。卿の腹が私の子で丸々とする様や、私との間の子を、卿があやす所を見たい
のだ」
――まるで、いや――これは愛の告白そのものではないか。兜が素顔とまで評された、私にまつわる、冷
たい仮面のイメージはどこに消えた?
「バカ、本命を抱く前から、いきなり浮気するもんじゃないよ?」
「本気だと言っているだろう。私は背徳と峻烈で知られた、黒の騎士だぞ。二婦に情を寄せたとて、それを
誰が咎めるというのだ?」
「ほんと、調子のいい子……。」
少女は慈しむように微笑んで、暗夜卿の唇に、また軽く口付けした。暗夜卿は、彼女をその逞しい腕に抱
き、くくく、と、いつものように嗤った。
「どうか、今後とも宜しくお願い致しますよ……ウインドマーン卿」

ぱち、ぱち、ぱち、と、ブリガード・ウォルタンは手を叩いた。二人が顧みると、傍にしゃがみ込んだ彼女は、
目を輝かせて二人のほうを見ていた。
「すごいな。うん、すごい!」
豊かな胸をぷるぷると揺らして大喜びであった。先の、ロビン・ウインドマーンの愛撫によって、とうに彼女
の心の殻は破れていたのだが――図らずも、拒否される事が無いどころか、性交に、前向きな興味を持
たせる事に成功してしまったらしい。
「いやー、二人がこんなに仲が良いとはな。それも本当に生き生きと、楽しそうで……感心したよ、私は」
「元はと言えば、ブリちゃんの提案で始まった事なんだけど」
「いやいや。何も、ここまでして見せろとは言わなかったが?」
頭と両手をひらひらと振ってみせる。
「……確かにな。あの時、ウォルタン殿は、技比べ、としか言ってはいなかった」
「いや、でも。……うう、ボクは黒兄さんから中出しまでされちゃったのに。釈然としないよー」
「誘ったのは卿の方だろう?」
「ボクの事をめちゃめちゃに犯しておいて、黒兄さんはこの言い草だし」
栓を失った少女の股からは精液が垂れている。彼女はそれを指で拭うと、すん、と臭いを嗅いだ。
「責任は取るさ」
「それで、結局、どっちが私に“して”くれるんだ?」
「そりゃあ、やっぱり……。」
自らの敗北を宣言しようとした少女を、男は手を伸ばして制する。
「ウインドマーン卿。実を言うと、私は少し疲れてしまった」
こうも、続けざま射精してはな――。回数を言わなかったのを、彼の小狡さであると見抜き、少女は苦笑
する。
「もちろんウォルタン殿への思慕にかけては、誰にも後れを取る心算はない。決して、もはや逸物が立た
ぬとか、抱かぬと言っている訳ではない。貴女の事は、今からもちろん抱くわけだが……。」
少女の白い手を取り、男は跪いた。
「はっきり言って、精力を消耗しすぎてしまった。今の私一人ではウォルタン殿に最大の満足を与えられ
る自信が無い。――そこで卿にも、ご助力を願いたいのだ」
「……あらぁ。」
それは、神女と弓士の、どちらが発した声だったろうか?
「ボクは、別に良いんだけど。ブリちゃんは?」
視線を向けると、長身の神女は、顔を赤らめて身を震わせていた。――この二人の責めを受ける? あ
の長竿に貫かれる私の身体を、ロビンの手が這うというのか? 戦いに敗れたにも関わらず、自分の奉
仕を期待している神女に、少女なにやら安心したような、嬉しいような残念なような、奇妙な気持ちになった。
「……訊くまでも無いかな。意外だねぇ、黒兄さん。ボクに手伝えだなんて」
「ダイクタの剣技も、卿の性技も、間違いなく私より優れていた……だが、そのどちらにも、最後には私が
勝った。つまり、それと同じ事だ。私は運が良く、それでいて勝ち汚く、常にやり方が卑怯なのだよ」
「それって、付け込まれたって事?」
「人聞きが悪いな。私はウォルタン殿の処女を頂く、卿も彼女を抱ける、そしてウォルタン殿は天国を味わ
う。誰も損はしないだろう?」

三人がしばし黙ると、玄室には、あーっ、という嬌声が響いた。以前ダイクタが詠んでいた句を思い出す。
迷宮にて――闇深し、隣は何を、する人ぞ――。なかなかどうして、向こうも愉しんでいるようではないか。
ロビン・ウインドマーンとブリガード・ウォルタン、これらの極上の娘たちを、続けざまに味わう悦びには、と
ても及ぶまいが……ね。