「さて、それではコレで改めて、カイ、貴様と姉妹の契りを交わさねばならぬ」

 シミアは今だ硬さを保ち続けるジョウの肉鑓をゆるやかに扱(シゴ)く。横目にカイの昂奮しつつ接吻を飽きることなく続ける紅潮した
顔を見遣る。自分と寸分違わぬそっくり同じ顔をした女が、己の色情の飢えを満足させて蕩けてしまっているのは、かなり照れ臭い。

「……非常に忌々しい事だが、一番鑓(ヤリ)は譲って遣わすぞ、カイ。貴様の主君たる妾(ワタシ)の雅量と度量に泣いて感謝するが良い」
「先を譲るのは至極当然のことにございます、シミア様! 私はまだ【後ろ】からしか番(ツガ)って貰って無いのですからっ! 」
 
 接吻を止めたカイは陶然とした表情を引き締め、シミアに喰ってかかる。想い人に己がどうして欲しかったか、ここで知らしめる
ことが出来るのだから。普通に想い人にそれを要求したら、この意地の悪い主君から淫乱女の烙印を捺(オ)されてしまうのは必至で
あった。ここは相手の失策に乗って「同じことをして」と要求するのが最善の策、とカイは判断し、即座に実行に移す。シミアの
身に纏う雰囲気から、ピリピリした緊張感が消え、ぱぁっと霧が晴れたが如く明るくなる。……カイは必死に舌打ちを堪えた。

「そうなのか、ジョウ? やはり、そうだったのだな! やはり妾は特別なのだな?! 」
「カイに嫌がられているとばかり、思っていたからな。俺のせめてもの……償いだった」

カイ自身がそう思わせていたとは言え、やはり想い人の口からは聞きたくはない言葉がカイの尖った耳先から耳たぶまでを直撃する。
その「償い」がどれほどカイの思慕や横恋慕を倍増させたかなど、今のジョウならばきっと理解しているはず。だからここは……!
カイは素直に言葉にすることにした。表情も、素直に感情のままに顕わすことにした。泣き出しそうに。楚々として。弱弱しく。

「……だって……だって……そう振舞わないと、私は貴方に抱いて貰えなかったから……」
「では閨のアレもコレもソレもナニも全て、まだ妾しか知らぬのだな!? く〜っ、これは愉快痛快っ! 濡れるゥっ!」
「曖昧な(ブチ)指示語(殺)のみでは(されたい)何も(のか)解らぬのですが(この糞アマ)、シミア様(淫乱女ァ!)」
 
 カイは表情を瞬時に冷徹にしながら、言葉に憎悪を乗せて放つ。この己第一の君主には通じなくても、姫の御付きの侍従こと
サムライのジョウに通じるのを目的とした発声である。その敵意に敏感に反応して、期待に応えてジョウは嗜めてくれるだろう。

「あのなぁシミア、姉妹の契りを結ぶと言ったその口で、どうしてこう、カイに突っ掛かる真似ばかりする?」

 ……結果は理解してはいるのだが、やはり、それもカイの嫉妬の対象になってしまう。この関係に食い込めるだけでも今は……! 
カイは沸き上がる嫉妬と怒りを堪え、押し隠す。が……失敗した。ポロッ、と涙が頬を伝うのが解ると、もう停められなかった。
カイはジョウの胸板に顔を伏せ、顔を摺り寄せて童女に戻ったが如く泣きじゃくってしまう。

「カイ?! ……ちと虐(イジ)めが過ぎたな」
「……シミア、お前なぁ、カイにだけは容赦無いな?」
「自分と同じ顔をした者が、自分には無い才能を持っていて、しかもその才能が自分には乏しい。ジョウならばどう思う?」

 カイの髪や背を左手で撫で、宥めていたジョウはシミアの言わんとしていることに直ぐに気付く。右腕で手招きをして、近寄った
シミアを抱き寄せ、胸板に押し付ける。シミアもカイに嫉妬していたのだ。冴える観察力、巡らす策略、名を捨て実を獲る忍耐強さ。
己には無い才能と認識すると、途端にその持主を意識するようになる。対象の一挙一投足が気になる。それは憎悪ではなく、執着。
 ただ、幼き頃は極端に顕れてしまっただけのところを……1人の男、自分、ジョウの存在が憎悪にまで発展させてしまったのだ。
シミアに直ぐに胸板にカイと同じ様に頬を摺り寄せひとしきり堪能すると、尖った顎をジョウの鎖骨の下の窪みに当て、顔を起こす。

「顔どころか、男の趣味まで似てしまうとは、これも業だな。この文句は父上と母上達に言うしかないな」
 「? 母上……達?」
 「……シミア様の母と私達、三姉妹の母は……双子の姉妹なのです……」

 ジョウの頭が家系図を展開する。国元では必須の能力だった。血統は何せ己自身の【死活問題】に関わったこともある重要課題だ。
実の姉が総本家の名跡を継ぐのに、幼少とは言え実弟のジョウが邪魔になった。だから放逐同様に、姉の派閥の有力家臣団の手により
拉致同然に、他家の武士団に預けられた過去がそうさせた。暗殺者も仕向けられ誘拐もされたし捕虜にもなった。……が、生き延びた。
 父系では確かに異母姉妹。母系では従姉妹。爛(タダ)れていると言えばそれまでだが、自分もそうなりかけただけ、身に沁みるものがある。
武士団の長からジョウの元服後には実の姉を娶るのだ、と言う話を聞いた瞬間、そのおぞましさに出奔同然にヒノモトを出て海を越え、
はるか彼方の西方を目指したのは、決して間違いでは無かった。仕えるべき君主に巡り逢え、今、エルフ姉妹をこの両手に抱いている!

 「こ、こらジョウ、どうした? 妾はどこにも逃げぬし行かぬぞ!」
 「逃げて行っていいのですよ、シミア様。……もう私が、いますから」

突然ジョウに力強く抱きしめられた姉妹は、各々の性格に応じた反応を返してくる。シミアはカイに一瞥(イチベツ)をくれると、フン、と
鼻を鳴らしジョウの体から下りる。どうやら、約束を守る気になったらしいとカイは判断し、急いでジョウの体を1人で独占し、擦り寄る。

 「おうおうこの淫乱娘め、いよいよ恥じらいの仮面を捨て去り、その本性を隠さなくなったか?」

 腕枕をして傍に寝転びながら悪態を吐くシミアには目も呉れず、カイは己の五感を最大限に使ってジョウの体をただひたすら、堪能する。
視覚・嗅覚・触覚・味覚・聴覚……! そのどれもが、新鮮かつ甘美な官能に満ちた刺激をカイの脳に齎(モタラ)してくる。自慢の理性が
どこかに素っ飛びそうになるのを恐れつつ、カイはジョウを貪ることに没頭する。秘所が大洪水どころか、間欠泉のように汐を噴いている
のが解るのがまた、カイには誇らしく、また、恥ずかしい。

 「なんとまあ呆れたこと。舐めて吸って擦り寄って、フがフが匂いを嗅いだだけで、節操のない姫所から女汁がダダ漏れか?」
 「ひぅ……あ……あぁぁぁあンッ!」

 シミアの悪意に満ちた揶揄も、カイの心地良さを加速する大きな要素だった。言わば煮え滾(タギ)る嫉妬の裏返しだ。憎き恋敵の前で、
恋人を独り占めするこの誇らしい悦びは、いろいろと心の内面が屈折したカイにとって、至上の快楽を味わせる要因となった。つまり……

 「カ、カイ……?」
 「フン、早々に気をやったか。この設楽(シダラ)も無い奴め。もう満足したろう? 早く妾と替われっ」
 「!! ィ……嫌ァんっ! 駄目ぇっ! まぁァだぁァんっ!」 

 軽い快楽の極みを迎え、ジョウに身を任せていたカイが、【替われ】と聞いた瞬間、迷宮内で罠を引っ掛けた宝箱、チェストの蓋の如く
勢い良く跳ね起きる。その余勢を駆って、屹立するジョウの帆柱に跨り、迎え入れる。手で支える必要のない立派過ぎる猛りに、カイの
恥蜜が垂れ、ランプと燭台の灯りを反射し滑り光る。何度も迎え入れたこの肉塊だが、自分からこうして迎え容れるのは初めての経験だ。

 「本当に、入るのか……? ちと、入口が狭すぎやせぬか……?」
 「それを言うな、シミア。俺の罪悪感を呼び起こしてくれるな……」

 他人の閨の営みなど、詳細仔細に見るのはこれが初めてのシミアにとって、男根が女陰を割り開く様は驚異の一言に尽きた。自分の時は
無我夢中で羽化登仙で、容れた様を見て昂奮はしたが、他人のモノを見るとなるとまた話が違う。……裂けやせぬか、と不安になったのだ。
何せ異母妹は魔道士、メイジであり、鍛えぬ、か弱い肉体しか持たぬ存在なのだから。しかし……

 「……ッ!! ……!! ……ンぁ……あッ!! ……ッ!! ……ゥッ!」

 カイは違う意味で裂けそうになっていた。ジョウの肉鑓を全て容れたのは初めてではない。だが、恋敵の目の前で、それを独占している。
これは初めてだ。しかも騎乗位で、己の痴態の全てを見られている。引っ切り無しに、快楽の高波が押し寄せている。容れているだけで、
意識が押し流されそうになる。顔が、表情が、蕩けそうになる。憎き恋敵に、その弛緩した表情を見られるのは屈辱的だが、同時に誇らしく
もある。蜜壷がジョウを勝手に絞めて逝き、弛緩して、また締めるのが解る。鍛えた魔道士としての脳は、冷静に肉体の齎す快楽を分析して
行く。ひとつひとつがカイの意識、理性の領域を削って行く。決してこの快楽に溺れてはならない。が……!

 「きゃひィ……ン!」
 
 ジョウが下から、腰の入った一突きを放った。自ら動かなくても、極上の快楽を味わっていたものを、ジョウが動くことにより、さらに
強化された刺激がカイの脳を焼いた。カイは最早、体を支えて居られなくなり、ジョウの胸に倒れ臥す。咥え込んだ女陰は締め付けの緩急を
繰り返す。が……! 

 「ひッ……ィンっ、いっ……やぁぁぁンッ!」
 「ジョ……ジョウっ! それはちと、酷すぎるぞ!」

 ジョウは無慈悲にもガッチリとカイの柳腰を両手で保持すると、奔馬の如くカイを突き上げる。カイが悶え始め、無意識のうちに逃れようと
手で突き放そうとすると、今度はその手首をガッチリと掴み、責め狂わせる。その激しさはカイのきっちり結い上げた髪が解けるほどだった。
それが契機だったのか、ついにカイの理性は……「決壊」した。

 「イイっ……! いいのォ……ンッ! もっとぉ、もっとしてぇ! カイを、カイをくるわせてェ!」
 「……なんと……」
 「ほらほらほらぁ! どうして欲しい! どうして欲しいんだっ!」

 ぐん、とカイが仰け反り、倒れそうになる。引き込もうとしているのだ、とジョウは気付き、カイの為すがままに、そのまま上に覆い被さる。
――シミアに気付かれぬよう、横目で小屋の壁を見遣る。この角度ならばまだ――思考を瞬時に、カイに戻す。まだ、気付かれてはならない。
少なくとも、カイを気絶に陥らせねば、このプライドの高い魔道士は「羞恥を隠すために何をするかわからない」。何せ、灰燼姫の妹なのだ。
カイの長い両腕と両脚が、ガッチリとジョウの背と腰の後ろに廻り、組み合わされる。逃がしはしない。口を使わずとも、その一挙動で雄弁に
宣言していた。

 「うえに……うえになってェェぇっ! わたし、ずっと、ずっと、ジョウにそうしてほしかったのぉぉぉっ!」

 理知的な仮面をかなぐり捨てて、顔中を口にして、絶え間無く続く快楽の責め苦で、涙も鼻水も涎も垂れ流しのまま叫ぶカイの切なる訴えに、
ジョウは胸を衝かれた。本気で求められていたのだ、と。嫌がっていたのはカイのただの演技に過ぎなかったのだと、この瞬間、やっと気付いた。
それほどまでに、組まれた腕と脚は、【魔道士にしては】力強いものだった。――シミアの息遣いが解る。嫉妬で怒りつつも、昂奮している。

 「くちぃ……くちを……すってぇ……ジョウのつばぁ……のませてぇン……んッ……ンぅ……」

ここまでカイが【乱れる】とは、想像の外だったろうが……今は、カイだ。しがみ付き、腰を駆使するカイに合わせたり拍子を外したりして、
ひたすら分身を突き込む。痛いぐらいの亀頭への吸い付き、柔らかな胴締め、適度な根元の絞め。雁首への心地良い摩擦。どれもが絶品だった。
姉妹は抱き心地でも似る、と言う俚諺はあるが、この姉妹の場合、膣の締め具合は似なかったようだ。まるっきり締め具合もなにもかも、違う。

 「ころしてっ……ころしてぇ……カイをぉ……カイをぉ……しあわせなままぁン……ころしてぇんっ!」

 正直に言って、出来る。快楽の極みを幾度となく迎えさせた、今ならば。理性を気力で保っていた状態を続けさせていたカイは、相当な体力を
消耗させていた。今はそれも出来ずに【正直に】なっている状態だが、もう【脳が快楽に耐え切れない】状態に近いはずだ。このまま中に射精を
してしまえば、多分……! 突然、何かが背中に覆い被さる。背中に柔らかいが芯の残るものが、二つ当たる。シミアだった。首筋を、噛まれる。
嫉妬で我慢が出来なくなったのだ。その衝撃で、ジョウは必死に耐えていた衝動――【射精欲求】を呆気無く、カイの膣内で、解き放ってしまった。

 「う……ああ……あ」
 「………ッ! ………! ・・・……………! ……………………! 」
 「あ……ああああああああ?! 中に、中にだとぉッ!? ジョウの、ジョウの、この……裏切り者ォォ!」

 膣内で射精の衝撃を受けたカイは、強烈な締め付けとともに「果てて」しまった。……幸いなことに呼吸は止まっては居ないが、無残にも白目を
剥いて失神している。女ならば絶対に「想い人」にも見せたくない、見っとも無い弛緩した表情だ。だがジョウはそれもただ、美しい、と思った。
壮絶なまでの「痴呆美」。これ以上は無い、と言った風情の、幸せに満ちた顔だった。カイの手足もやっと弛緩し、ジョウはカイの蜜壷から己を抜く。
きゅポン、とガラス瓶から栓を抜くような軽妙な音がする。音。そう、違和感はこれだった。――これは、シミアに即刻、問い質さねばならない事だ。

 「ジョウの……ジョウの裏切り者っ……! 何故……カイの中に出したっ……何故っ!?」

 しどけなく横たわり痙攣するカイの裸体に、寝台の掛け布を掛けたジョウに、シミアが涙ながらに武者振りつく。お前が首筋を噛んだからだろうが、
危うくカイを殺しかけたのだぞ、と腹の中で言葉を熔かしながら、寝台に立てかけた置いた村正を鞘ごと取る。刃を向けるのは、シミアにではない。

 「俺の国元ではな、閨(ネヤ)の覗きをやる者を【出歯亀】と言っている。今から壁を【斬る】。聞こえているだろう?」

 シミアの顔色が変わる。マズイ、何故バレた?! と言う、狼狽した顔付きだ。今までもジョウは何度も見てきた。隠し事をして結局、露見したときは
いつも正直に、こう言った【愛嬌】のある所を見せてくれるのは可愛いが、今度の【悪事】はちと、カイには酷だった。ここで問い質す必要があるが、
【確固たる証拠】が必要だ。今回は都合が悪くなり、旗色が敗色濃厚の時の戦術の『妾(ワタシ)は知らんぞ!』の一点張りで逃げられては非常に困るのだ。
【宴の出し物、見せ物にされてしまったカイ】が、あまりにも可哀想だ。場合によっては【初めて】の【お仕置き】や【罰】を与えねばならない。

 「嘘では無いぞ? 俺の気斬なら出来るんだ。離れていろ。今は大変、虫の居所が悪いから一緒に斬ってしまうかも知れん」
 「わ、妾が悪かったジョウ、やめ――」

 シミアが口を開いたときと、板壁が刳(ク)り貫(ヌ)かれ、外に向かって倒れたのは同時だった。――居合。抜く手も見せず斬り、納刀する。刃では無く
【斬ると言う意識の延長:気】で斬る。斬れぬものなど無いと豪語する、サムライの自信の礎とも言える技だ。が、それを苦も無く使えるサムライは、
あの精鋭を誇る、狂王の親衛隊の中にも僅かしかいない。練達の末に身に付ける技であり、気を伝達する武具の質も遣い手によっては重視されるのだ。
国元ではその切れ味や数々の逸話から【妖刀】とも冠される【村正】ならば、申し分無い武具だ。……そして遣い手は、決して己の腕を過信しない。

 「シミア――【気配】は、音のみじゃないんだ。決して、静寂(モンティノ)で殺せるものではない。覚えておくといい」
 「……ち、違うのだ……ジョウ……これには理由が……」
 「話せ。場合によっては俺はお前を許す。――見せ物にされたカイはどうか知らないが」

 壁の外には、大人の開拓村民達が鈴なりになっていた。個々に喋ってはいるが、全く聞こえない。シミアの静寂(モンティノ)の効果が発動していた。
最初にシミアが浴槽を抱えて入ってきた時に掛けた静寂(モンティノ)は、村人に掛けたものだったのだ。静寂(モンティノ)のスペルを範囲で掛ける
などと、ジョウは後にも先にも聞いたことは無かった。静寂は『対象や集団に対して掛けるスペル』であり、その場の範囲に掛けられるほど融通の利く
ものではない。主に空気を操るプリーストスペルだから【遣い手・達人】ならば可能だろうが、万事『細やかなことが苦手』なシミアには難しい事だ。

 「ジョウが男色家ではないかと疑われたのだ。それに異種族のエルフ女を好んで抱くとも思えん、とも言われた。ならば……」
 「『貴様等の目の前でこの妾(ワタシ)シミア自らがこの身を以(モ)って証明してやろうではないか!』と胸を張ったと。そこまではいい、だが何故――」
 「妾がカイに出し抜かれたのだ! 頼むから――頼むからそこまで妾に恥を掻かせるな! 惨(ミジ)めに過ぎるではないかっ……」

 一度ならずも二度までも。ミオの件を入れたら三度目の失態だ。ジョウは村正を下げ緒で己の背に結わえると、泣き出したシミアの顎を右手で持ち上げ、
噛み付くような接吻をする。舌で思うが侭にシミアの蹂躙し、応えて来るシミアの舌と絡める。抱きつくために首に伸びてきたシミアの両腕と入れ替わり
シミアの顎から手を離し、接吻の快感だけで腰が抜けそうになって、膝がかくかくと体重を支えられなくなって来ているシミアの腰に手を廻し、支える。
 呼吸を忘れたかのような長い接吻を終わらせたジョウは、上気し、泣き顔にも似た、蕩けた表顔を見せるシミアに確認した。耳の先が昂奮に尖っている。

 「済まないがもう少しだけ、皆の前で、大恥を掻いてもらうぞ、シミア。……俺のためにな」
 「……ああ、存分に掻いてやる! いと惜しきジョウのためならば、いかようにで……もぉぉぉぉんッ!」

 ジョウは予告無しに、村人達によく見えるよう、両膝を抱えて、抱き上げたシミアの女陰に己の屹立を割り込ませた。同時に、小炎(ハリト)で倒れた
壁材と篝火台に火を点す。炎がシミアとジョウの裸体を照らす。宴の雰囲気のままに、淫蕩極まりない、破廉恥な【男の証明の儀式】が始まろうとしていた。