* * *

"――キあれ"
"カフアレフ ダーザンメレー ターザンメ"
"…………"

(あれ、私……)
彼女が気が付くと、そこは闇の中だった。遠くに見える柔らかい光の固まり。それに向かって彼女の意識は漂い始める。そこに近づく
につれ、その中に一つの光景が浮かんできた。そこは石造りの部屋。一見なにも無い祭壇を囲んで何人かの人影が立っている。
(みんな……? なんで泣きそうな顔してるんだろ? お姉様は……やっぱり悲しそう。あ、でも少し怒ってる。耳がいつもより上がり
気味だ。でも、誰がみんなを悲しませてるんだ。そんな奴は私が――)
突然、それまで見えていた光景は消え、彼女の意識ははっきりと覚醒する。しかしまだ、なにも聞こえず、見えず、言えず、感じず、
味わえず、ただ出来るのは少し考えることだけ。
まず最初に戻ってきたのは肉体の感覚だった。塵になっていた体組織が形を成し、自分の体が確かにそこにあるという実感を取り戻す。
再生された肉体の周囲を力場が包み、全ての器官が活動を再開する。それと共に残りの五感が急激に取り戻され、背中には冷たい石
の感触が伝わり、耳には仲間達の声が聞こえてきた。最後に視覚が回復すると、閉じられた目蓋を通してほのかな光が感じられる。

――その瞬間、灰から再生したドワーフの娘の魂と肉体は完全に結合を取り戻した。

* * *

力のコインを手に入れ、奇妙な男と出会った翌日の夜。ドワーフの女戦士は迷宮帰りに酒場には立ち寄らず、他の仲間より一足先に
宿に戻ってきた。そして、決意が変わらぬうちにと、事後のための書き置きを残してから力のコインの魔力を解放する。程なくして宿に
戻った仲間が床に倒れた彼女を発見し、その遺体はすぐにカント寺院に運ばれた。一度は蘇生に失敗し、その体は灰になったものの、
二度目の蘇生により、彼女はなんとか現世に復帰する事が出来たのだった。
しかし、命を賭した彼女の試みは失敗に終わる。力のコインで転職したはずの彼女のクラスは戦士のままだった。当然、何度も力のコ
インを使っていけば、いずれは僧侶か司教になれることだろう。だが、いくら死が身近な冒険者と言えど、無闇に命を捨てられるもので
はない。特に、一度蘇生に失敗し灰になってしまったことが、パーティーの判断を慎重なものとさせていた。
当然、現実的なことを考えると中立のまま僧職になれる力のコインの魔力は魅力的だ。彼女が勝手な行動を仲間達から責められなか
ったのも、それが、パーティーのことを考えた故の行動だったからだろう。だが、このことは一度きちんと仲間全員で話し合うことになり、
彼女の持つ力のコインは一旦、リーダーのエルフの侍が預かることとなったのである。
「これで全部ですか?」
「……あと、これも。この一枚で最後」
「どこでこんなの五枚も手に入れたんだよ?」
「まあ、話はまたでいいでしょう。では、これは私が預かっておきます。今日のところはもう遅いですから、明日の探索は休みにして一
度ゆっくりと話し合いましょう。では、それぞれ部屋にお戻りなさい」
「姉様は今日は一人?」
「ええ。あなた達の嗜好を否定するつもりはありませんが、あまり同性にばかりに興味を持っていてもいけませんよ」
「うー」
「じゃあ私達は四人一緒でいいね?」
「あ、私は今日は馬小屋にしとく。少し、あそこで反省する」
「お前こそ、今日はゆっくりとベッドで眠らないといけないじゃんか」
「まあ、本人がいいって言うんだし仕方ないわよ」
そして彼女達はそれぞれのねぐらと定めた部屋へと散っていったのだった。

* * *

夜半、日付が変わる頃を見計らってドワーフの女戦士は宿を抜け出した。鎧は他の娘達が眠る部屋に置いているため、裾の短いスエー
ド地のチュニックに、革の長手袋と膝上のロングブーツを身につけて、斧だけを背負った格好である。普段は綺麗に細かい房に編んでい
る栗色の髪も、今は肩の高さで二つにわけて無造作に束ねているだけ。
時折すれ違う酔客から声をかけられるが、彼女はそれを無視して通りを早足で歩いていく。しばらく後、ボルタックの一ブロック隣、奇妙
な男に声をかけられた路地に辿り着くと、彼女は一度、辺りをぐるっと見渡して周囲に人影がないことを確認してから、男から教えられた
合い言葉を口にした。
「えっと…… "コントラ デクストラ アベニュー" 」
だが、その時。ボルタックの向かいの路地から三つの人影が現れ、女戦士は路地の暗がりにしゃがみ込んで身を潜める。

暗闇を見通すドワーフの目に映ったのは二人の男。彼らは彼女に気付いた様子もなく、どこかこそこそした雰囲気で、足音を忍ばせて閉
店後のボルタックへと近づいていく。
(まさか、ボルタックに押し入ろうってわけじゃないよね。あの店、万引きしようとしただけで、とんでもない四人組に囲まれるって話だし、
あそこに盗みに入るぐらいなら、まだ城の宝物庫の方が簡単だって噂だもんな)
彼女はとりあえず経緯を見守ることにした。店先に忍び寄った男達が扉を何度かノックすると、程無くして店の扉が内側から開かれ、彼ら
はなにごとも無く店の中へと姿を消していった。
「あれ? 酒場帰りの店の人だったのかな。でもそのわりにはなんかこそこそしてたけど――」
「あちらは夜のボルタックのお客様ですよ」
「!!」
突然、背後からかけられた声に彼女は思わず悲鳴をあげそうになる。だが、なんとかそれを飲み込んで、恐る恐る後ろを振り返ると、予想
通り、そこには半裸でつるつるの男が立っていた。その変態的な格好こそ変わらないが、先日会った時とは違い、全身はやや赤茶けた
暗い灰色に塗り込められている。
「こ、この前の人?……だよね。今日は色が違うんだ」
「はい。夜間仕様です。こちらにおいでいただけたということは、お手持ちの品をお売りいただくご決心がつきましたか?」
「うん。あと、欲しいものが幾らぐらいで買えるかなって」
「左様ですか。では、早速店にご案内いたしましょう」
「さすがにここじゃないんだ。じゃあ、さっき言ってた、夜のボルタックってところかな? なんか噂で聞いたような気はする……」
「いえ、あちらはまた別の種類の商品を取り扱っております。お知りでないのでしたら、知らぬままがよろしいかと」
「なんだか聞かない方がよさそうかな。じゃあ、案内お願いします」
「承知いたしました。では、こちらに。今回は私がお連れします。では、少しの間、ここをお願いしますよ」
男が路地の暗がりに呼びかけると、冒険者風の男が姿を現した。彼にその場を預けて男は路地の奥へと入っていき、女戦士は遅れ
ないようにその後に続く。そして、路地をしばらく進んだところにある扉の前で男は足を止めた。
扉の前には物乞いが横臥していたが、男の姿を確認すると起き上がり、リズムをつけて扉を数回ノックする。それに答えて扉の覗き窓
から目が覗いた。しばらくの後、閂が抜かれる音がして、扉は内側に開かれる。
男に続いて女戦士が建物の中に足を踏み入れると、そこは机と椅子が一組あるだけの殺風景な部屋だった。どうみても店とは思えない
その部屋の様子に、彼女は疑いの声をあげる。
「ここが店……? やっぱりあなた達――」
彼女の背後で扉が閉じ、ゴトリと思い音を立てて扉に閂が掛けられた――。

* * *

「ようこそ、地下のボルタックへ」
「地下のボルタック……か。なるほど」
騙されて妙なところに連れ込まれたのでは、と早合点した女戦士だったが、なんのことはない、地上の建物はただのエントランスに過
ぎなかった。幾つかの隠し扉を抜けた先にある階段から地下へと下り、短い地下道を抜けると、鉄で補強された分厚い扉に行き当たる。
扉の脇には完全武装の戦士が二人立っていたが、男が近づくとすぐに扉を開いて二人を店内へと引き入れた。
店内にはまばらに客がいるだけだったが、冒険者風の者に紛れて、フードや覆面で顔を隠した客が数人見受けられる。そういった客は
一様に高価そうな衣装を纏っており、雰囲気や立ち居振る舞いに冒険者とは違うものが感じられた。
(ふーん。お供を連れてる人もいるし、あの辺は商人か、もしかしたら貴族とか――)
「あまり他のお客様に興味を示されぬよう。ここにある品がボルタックで扱っていないのには、それ相応に理由があるのですよ。勿論、
それを必要とする方々にも相応の事情がございます」
半裸の奇妙な男は、女戦士にそれとなく釘を差す。
「まず、お手持ちの品の買い取りを済ませていただきましょう。後のことはあちらのカウンターにいる店の者にお聞き下さい」
「あ、そうだね。ありがとう」
「では、私はこれで失礼いたします。次にお越しの際は、また路地の入り口で合い言葉を。今日は初めてのご来店でしたので、私が
ご案内いたしましたが、次からは別の者の案内になります」
彼はそう言って優雅に一礼すると、先程入ってきた扉を抜けて、店から出て行った。紳士を自称するだけあって、彼の対応は確かに
一流の紳士然としており、女戦士は男を散々に変態呼ばわりしたことを少し反省した。だが、扉が閉まる前に見えた、尻に褌が食い
込んだ後ろ姿を見て、紳士でもやっぱり変態は変態だと思い直す。



彼女は気を取り直して改めて店内を眺めてみた。奥に通じる幾つかの扉脇と、店の隅の目立たないところに立っている男達は、おそ
らくは店の警備の者だろう。壁際に様々な武器や防具がずらりと並んでいるところなどは普通のボルタックと変わりはないが、客と商
品の間は金網で仕切られ、直に手で触れないようになっており、 "ご入り用の際はカウンターへ" "外装の変更承ります" "これが最
後の品です" などといった但し書きの札が下げられている。
そして、その品揃えは通常の店とは全く異なるものだった。ねじれた杖やひび割れた胸当てなどの、冒険者にはお馴染みの呪いのか
かった装備が壁や鎧掛けに展示され、カエルやクマの置物に各種鍵類、ボトルに入った船などが、据え付けの棚の上に置かれている。
カウンターの方に目をやると、その奥にある硝子のケースには指輪や石などの小物から、羽の生えた靴や宝石で出来た果物のような
物まで、女戦士が見たことのないような品物も陳列されていた。
とりあえずは手持ちのコインを売って、自分の目当てのアイテムがあるか確認しようと、彼女はカウンターに歩み寄る。その向こうに
いるドワーフの店番は彼女を値踏みするように視線を流すと、商談用の笑みを浮かべてお決まりの挨拶をする。
「いらっしゃい。女戦士さん」
「まずは、これの買い取りをお願い。それから、未使用の力のコインか変化の指輪があれば、その値段を知りたいんだけど」
そう言って、彼女はコインの詰まった革袋をカウンターの上に置く。それを受け取った店員は中身を確認すると、後ろにいるローブの男
に革袋を手渡した。司教と思しきその男は、彼女から手元が見えるカウンター脇の机で、持ち込まれた品の鑑定にかかる。
そして、ドワーフの店員は引き出しから帳面を取り出すと、それをぱらぱらと捲って太い指を紙の上に走らせた。
「少しお待ちを。預かった品物の査定をする間に、ご所望の品の在庫を確認します。……力のコインは在庫が三枚。これが一枚、五万
ゴールド。それと、変化の指輪ですか……これは最後の一つですよ。こちらは三十万ゴールドになります」
「!! さ、三十万!? それって、ぼったく――りじゃないか」
告げられた額の思わぬ大きさに声を上げた女戦士だが、場所が場所だけに騒ぎを起こすわけにはいかないと、なんとか言葉を飲み込ん
で声のトーンを下げる。
「ええ。ぼったくりです」
全く悪びれる様子もなく、カウンターの向こうのドワーフはそう答えた。
「ですが、この指輪はそもそもが希少な品の上、入荷したものもほとんどがリルガミンで売れてしまうため、この城塞都市まで流れてくる
ことは滅多にありません。ですが、欲しいと仰る方はいくらでもいるので、この価格でもすぐに売れてしまいますから。それに、駆け出し
ならいざ知らず、一端の冒険者の方々にとっては、さして無茶な額とは言えないはずですよ」
「そうなんだけどさあ……」
確かに、冒険者の金銭感覚は一般的なものとは大きくかけ離れている。昨日には彼女自身が、市場価格の数倍の金額を払って、背中
にあるシルバーアックスを購入したばかりだ。だが本来、過度な贅沢をせずに普通に街で暮らしていれば、そんな金額を一度に使って
しまうことなどまずあるものではない。
しかし、冒険者は一瓶で数百ゴールドの魔法の薬を惜しみなく使い捨て、彼らにとって不要なら、それがどんなに高価な品だろうと、
迷宮のゴミとしてがらくたにしてしまう。そんな彼らは、商人が数年掛けて稼ぐ程の金額を、一日の内に遊興で使い果たしてしまうこ
とさえある。だからこそ、近郊に迷宮を抱える街の経済は異常に活性化し、街に莫大な金を落とす冒険者達は、無法者と疎んじられ、
妬み嫉まれながらも、歓迎されているのであった。

そうこうしているうちに、彼女が持ち込んだ力のコインの査定も終わったようだ。
「まずはこちらから済ませてしまいましょうか。ええっと。こちらは確かに使用済みの力のコインで……数は二十枚。買い取りは一枚が
五千ゴールドですので、全部で十万ゴールドになります。それでよろしいですかな?」
「あ、うん。お願いします」
「ではお支払いする金貨をご用意しますので、少々お待ちを。高額の金貨で揃えた方がよろしいですね?」
そう言って、奥に声をかけて金貨の手配をする店の者を横目に、女戦士は手持ちの金の計算を始める。だが、持参した金に十万足し
ても、変化の指輪を買うにはあと五万ゴールドほど不足していた。この際、力のコインを三枚買ってしまおうかとも思ったが、運が絡む
そちらに賭けるのも、いまいち踏ん切りが付かなかった。

「ねえ。変化の指輪なんだけど、しばらく取り置いてもらえないかな? 手持ちじゃ足りないんだけど、宿に戻ればすぐに代金を用意
出来るんだ」
「うーむ。取り置きは少し難しいですね。戻ってこられるまでに、こちらを欲しいというお客様がいらっしゃれば、売らないわけにはまい
りません。正直なところ、常連のお客様ならそれも無理ではないのですが」
「そこをなんとか! お願いします」
「いやあ、頭を下げられましても……。ああ、先程の買い取りの金貨が用意できました。まずはこちらをお確かめ下さい。それと、追加
料金を戴ければ、品物はリルガミンから取り寄せることもできますよ。まあ、いつになるか保証は出来ませんが。もし、早急に変化の
指輪がご入り用なら、すぐに不足分を取りに戻られた方がいいのでは?」
女戦士は金貨の詰まった袋を受け取りながら、その中身を確かめることも忘れて迷い続けていた。宿に戻って仲間に状況を説明すれ
ば、パーティー共有の資金が使える。それならば、五万といわず三十万ゴールドだって十分に揃えられるのだが……。この時ばかりは、
仲間に相談せずに出てきてしまったことを後悔する彼女であった。
だが、ここで考えていても仕方がない。やはり一度宿に戻って出直してくるかと、彼女が考えを決めたその時だった。

「――よろしければ、その不足分、私が用立ていたしましょうか?」
その声の出所がわからず、もしかしたらさっきの金持ち風の客の誰かだろうかと、女戦士は右を見て、それから左を見る。だが、他の客
が彼女の方に興味を示した様子はない。それで、強烈な既視感をおぼえながら背後を振り返ると――そこにはやはり、半裸に褌のつる
つる禿頭が立っていた。
だが、さすがに三回目ともなれば、彼女にもある程度の心の準備は出来ていた。今度は声をあげることなく、その奇妙な男に正面から
向き合ったが、その姿には若干の違和感を感じる。まず、口当てが無い代わりに、目元を隠すぴったりとした覆面を付けている。そして、
なにより特徴的だった体のペイントは無く、抜けるように白い肌がそのまま晒されていた。
(えっと。さっきの人じゃない? でもこんな格好の変態がそう何人もいるはずが……)
どう返答したものか、と彼女が躊躇しているうちに、カウンター向こうのドワーフが先に男に声をかける。
「これはマスター北風さん。今日はお休みじゃあなかったですか?」
「ええ。少し店の様子を見に来ただけですよ。ですが……ふむ、こちらのお客様は、私がお相手しましょう。変化の指輪は私名義で取り
置きにして下さい」
「まあ、北風さんがそういうのでしたら」
「え、あ、えっと、さっきの人とは違う……のかな?」
「はい。あなたを案内してきたのはマスターサウスウインド。私はマスターノースウインドです。北風とでもおよび下さい」
「あ、じゃあ北風さん。その、不足分を用立てるっていうのは、どういうことなのかな?」
「そのままの意味ですが、ここではなんですので、よろしければその話は別室で」
なんとなく嫌な予感がしないでもない。が、とりあえずは話だけでも聞いてみようと、女戦士はその提案を受け入れた。そして、男に導か
れるまま、彼女は店の奥へと通じる扉の向こうに姿を消していった。

* * *

「絶対に、ぜええぇったいに無理!!」
「そうですか。ドワーフの女冒険者はなかなかに珍しいですし、お嬢さんの器量なら、さぞいい舞台になると思ったのですが」
男が提案してきたのは、系列の店で行われているショーへの出演依頼だった。そんなもので五万ゴールドとはさすがに怪しすぎる。
そう思った女戦士に、男はまず実際のショーの様子を見てはどうかと勧めてきた。
地下の店の奥には整備された地下道が広がり、その広さは地上の建物数ブロック分にも及んでいるかと思われた。廊下は地下のボル
タック以外にも様々な部屋へと繋がっていて、男が彼女を案内したのは、壁の一面がガラス張りの小さな部屋。その小部屋からは、
真ん中に円形の舞台が設置された劇場のような部屋が見下ろせた。舞台の上では服を脱ぎ捨てたばかりの全裸のエルフの女が足を
拡げ、自分の秘所に指を差し入れて、大きく割り開いたそこを舞台の周りを囲むテーブルにつく観客達に惜しげもなく見せつけている。
観客は一様に覆面や仮面で顔を隠しており、そのエルフの痴態を眺めながら、酒を飲んで思い思いに談笑していた。

だが、それだけなら――ただ裸を晒すだけなら彼女も男の提案を受け入れたかも知れない。しかし、ショーはそれで終わらなかった。
女に誘われて観客の中から一人の男が舞台に上がったかと思うと、あろうことか二人は舞台の上で交合を始めたのである。男が達する
とまた別の男が舞台に上がって女と交わる。それが数回繰り返されたかと思えば、最後には複数の男達が舞台上で女を責め立てて、
そのショーは終わりを迎えた。
次には人間の女と二人の小男が舞台に上がったが、その男達は鼠の様な獣人に姿を変え、前後からねちっこく執拗に女を責め高ぶら
せている。観客達も当然のことのようにそれを受け入れている様子だ。
「だ、だってさあ!……それに、あれってワーラットだろ。あんな魔物が街中にいていいの!?」
「彼らのような獣人は存外に街中で普通に生活しているものなのですよ。獣人化しても知性を失うこともありませんし、そういう意味では
迷宮にいるローグなどの追い剥ぎ共とさほど変わりはありません。オークやコボルドなどの亜人種とは違いますよ」
「どっちにしろ、あんな観衆の前で男とするなんて私には無理っ」
「なら女同士ではいかがですか?」
「そういう問題じゃないってば!」
「条件としては悪くないと思うのですが。……では、これはどうでしょう。五万ゴールドで私に三晩ほど買われてはみませんか?」
「!! な……!」

断固拒否の姿勢を貫く女戦士に対し、男は新たな提案を持ちかける。実際のところ、男も彼女がショーへの出演を承諾するとは考えて
いなかった。だが、最初に受け入れ難い提案をすることで、後に持ってくる本当の狙いが、より受け入れ易いものに思えるようになる。
そこまでは折り込み済み。そして、彼女の考えが纏まる前に、男は平板な口調で静かにまくし立てる。
「別に特殊な行為を要求するつもりはありませんし、他の誰に見せることもありませんよ。ただ三晩、私に抱かれて下さればいいので
す。それで変化の指輪の不足分、五万ゴールド。むしろ破格の報酬だと思いますが」
「確かに……。で、でも私は男は苦手だから」
「街の娼館の女達が一晩にどれぐらい稼ぐか知っていますか? 性技に長けた者でもいいところが一晩に八百ゴールド程度です。勿論、
高給娼婦ともなれば万単位の報酬を得ることもありますが、彼女達は閨の技だけでなく、芸術や政治などの幅広い知識を持ち合わせ、
なによりも貴族や豪商方との繋がりが必須です。万単位の金貨というのは、あなたの域の冒険者からすれば大した額ではないかも知れ
ませんが、本来そう易々と稼げる金額ではないのですよ」
「……」
「それに、経緯はわかりかねますが、あなたには変化の指輪が必要なのでしょう? 抵抗はあるかも知れませんが、自らの肉体を三晩
委ねるだけで、それが確実に手に入るのです」
「でも、あなたは忍者でしょ。それなら悪の戒律だよね。そんな人の言うことを信じろって言うの?」
「ご不安でしたら、サウスウインドの名義で取り置かせますが?」
「って、あの人……サウスウインドなら南風さん?――も、忍者でしょ。意味が無いじゃない」
「いえ、あれも確かに忍者ですが、戒律は中立ですよ。あれはリルガミンの出で、中立の戒律ながら、生まれつき忍者を志せる程の素
質を持っていました。そこで南風の一門で預かる際に盗賊の短刀を用いて忍者になったのです」
「そうなんだ。やけに紳士然としてたし、この際、善って言われた方が納得いくぐらいだけど。あ、北風に南風がいるなら、東風に西風も
いるのかな?」
女戦士がなんの気無しにそう聞いた途端、男の雰囲気が一変した。
「その名前は口に出すな! 西風などとあのような――あのような……おおっと!……申し訳ありません。些か取り乱しました」
(なんか、聞いちゃいけなかったみたいだな)
「それで、話を戻しますが、条件の方はご納得いただけましたか?」
実際のところ、男の申し出は破格の条件と言って差し支えないものである。性に開放的な者であれば、さして抵抗無く男に身体を許す
だろう。
だが、男の言にあるのは実だけではないのも確かだった。彼女が一旦宿に戻っても、その間に変化の指輪が売れてしまうという確証は
無い。そして、次にいつ入荷するか定かでないとはいえ、リルガミンから品物を取り寄せることは可能なのである。しかし、すぐそこに
欲する物があるという事実に、彼女はすでに考えるだけの余裕を失っていた。

「…………わかった。その条件でいい。あ、でもそれなら別のことを一つ聞いていいかな。なんで、私にこんな申し出を?」
「こう言っては身も蓋もないのですが、以前からドワーフの女性を抱いてみたかったのですよ。要は単純な私個人の欲の問題です。あ
なた方はそう表に出てくることがありませんが、その肉感的な肢体の素晴らしさは噂で聞いておりました故。それが前衛職の冒険者と
なればなおさらのこと。先程申し上げたとおり、ドワーフの女性冒険者というのは希少なのですよ」
「そう。これだから男は。……私はやっぱり男は苦手だ」
「不躾な質問ですが、経験はおありで?」
「すぐにわかるだろ。抱かれてあげるけど、絶対に外で出してよ。それから変化の指輪はちゃんと取っておいて」
「承知いたしました。では、私の部屋に参りましょうか、お嬢さん」
そう言った男の目は、覆面の奥で確かな笑みを浮かべていた。

* * *

男の私室は結構な広さがあり、地下のわりには湿気もなく快適だった。床には厚い絨毯が敷かれ、調度品もなかなか趣味の良い物が
揃っている。男に誘われるままに部屋に入った女戦士は、今はベッドに腰掛けていた。効果の程は定かではないが、先程、変化の指輪
の引き渡しに関する契約書を交わし、三晩、男に自分を売る契約を済ませていた。
その後で男が飲み物を勧めてきたので、その中でも一番強い酒を貰うことにする。葡萄酒を蒸留した火酒を一息にあおると、空の胃に
流れ込んだそれは、熱となって彼女の身体に染み渡っていく。その酒もかなり質の良い酒で、普段であればドワーフの彼女にとっては
よいもてなしになったことだろう。中身の半分減った酒瓶とグラスは、今はベッド脇の小さな円卓に置かれている。
(……お腹すいたなぁ。そう言えば、今日は晩ご飯食べなかったし、そもそも灰になっちゃったから、もうなにも胃に入ってないよね)
一度覚悟が決まってしまうと、そんなことを考える余裕も出てくる。いや、それはむしろ、この先のことを考えたくない故の現実逃避なの
だろうか。
しばらくして隣室から入ってきた男は、顔に着けた覆面を外して部屋の隅の書き物机に置くと、女戦士の方を振り向いた。
「な……」
男嫌いの彼女が思わず言葉を失うほどの美形がそこにいた。想像だにしない綺麗な顔立ちに彼女はつい見蕩れてしまう。眉も髪も無い
ため、一見異様な感じこそするが、それを差し引いても、その中性的に整った顔立ちは秀でたものだった。これで、普通の服を着て体毛
さえあれば、どこの令嬢と並んでも違和感のない貴公子が出来上がることだろう。
「も、勿体ない。なんていう素材の無駄遣い……」
「褒め言葉と受け取っておきますよ」
「はぁ……。さっ、するんでしょ。私は脱げばいいの?」
「服は脱がなくて構いませんよ。そのあたりは後ほどに。なにしろ夜はまだ長いのですから」
そう言うと、男は仰向けになってベッドに寝るように指示をする。彼女がそれに従うと、男はその身体をまさぐりながら、鼻を近づけて匂い
を嗅ぎ始めた。服の上からそのはち切れんばかりの胸を揉みしだき、肉付きを確かめるように、脇から横腹、腰へと順に手を這わす。
その間にも、男はクンクンとあからさまに鼻を鳴らして彼女の耳や首筋、脇などをずっと嗅ぎ続けている。
できるだけ感情を殺して、男の行為を受け流そうとしていた女戦士だったが、これには堪らず抗議の声を上げてしまった。
「ちょ、ちょっと。そんなに匂いばかり嗅がないでよ!」
「あなたは私に買われたのですから、否やは言わせませんよ。それより、そんなに固まらずに、あなたも楽しまれたらどうです?」
「だ、誰が好き好んでっ」
「ではご自由に。それにしても、少女の様に小柄な身体に、みちっと張りつめた成熟した肉体。醜悪で見るに耐えない脂肪の塊ではな
く、豊満でありながらもこの弾力に富んだこの肉感。これは抱き応えがありそうです」

男は彼女の肉を手で味わうかのように、強弱をつけて手の平や指で胴体を揉みほぐしていく。その手の動きの心地よさに、男に触られる
緊張感で強ばっていた彼女の心身は、徐々に解きほぐされて力が抜けてしまう。男の手はしだいに彼女の腰から尻へと伝い、下腹部を
通り越して脚の方へと伸びていく。丈の短いチュニックの裾はすでに捲れ上がって、むっちりとした太腿の付け根までが露わになってし
まっている。男はその内股に指を這わせると、肌と肉の感触を指先で味わうように撫で回した。
「んくっ!」
女戦士は、しどけなく開き気味になっていた両脚を反射的に閉じ、男の手をその太腿に挟み込んでしまう。だが、男はむしろその肉感
を楽しむように、挟み込まれた手を彼女の太腿の裏に伸ばして、むちっとした肉を掴み、揉んで、撫で回す。
しばらくその感触を楽しんだ男は、ぴっちりと両脚を閉じて自分の手を拒む女に声をかける。
「ふむ。嫌がるものを無理にというのは趣味ではありませんし、ここはご自分から脚を開いていただきましょうか。両手で足首を持って
体に引き寄せて、そのまま股を大きく開いて下さい」
所詮は金で買われた身。結局のところ主導権は男にある。女戦士は言われるがままに足首を掴んで膝を折り、ぐっと大きく股を開いて
白い下着に包まれた股間を晒け出した。
「ほほう。これは素晴らしい。やはり堪らない肉感です」
縁にレースの付いた白い布地は、張りのある股間にぴっちりと密着していた。それに包まれたぷっくらとした恥丘は丸く盛り上がり、
豊かに茂った絹草が薄い生地から透けて見えて、下に隠れた肉の割れ目がうっすらと浮き上がっている。
「こ、こんな格好……これだから男は」
「性別は関係ありませんよ。どうやら、あなたは男が苦手なようですが、むしろ女性同士の方が、平気で恥ずかしげも無い行いをする
ものでしょう?」
そう言うと、男は彼女の股間に顔を近づけて、羞恥をあおるように音を立てながら匂いを嗅ぐ。先程のマッサージの効果だろうか、彼
女の秘所からは、男の欲情を刺激する独特の女陰臭がほのかに漂っている。
「おや、思ったほどに臭いませんね? もう少し体臭の強い方が私の好みなのですが」
「し、知るもんか!」
「では、こちらの方はどうでしょう。少し脚を伸ばしていただけますか?」
女戦士が言われたとおりに脚を伸ばすと、男は彼女の履いている膝上までのロングブーツを脱がしにかかる。そしてその下の長靴下も
脱がしてしまうと、おもむろに足の裏や指の間を臭い始めた。
「!!……っ」
「ふむ。こちらはさすがに臭いますが、それでもさほどではありませんね。よほど潔癖なのか、そもそもの体臭が非常に薄いのか……
まあいいでしょう。ではそろそろ、その服の下の身体を見せてもらいましょう。膝立ちになってご自分で裾を捲っていただけますか?
急がずゆっくりと胸の上まで」
女戦士は男の指示に従ってベッドに膝立ちになると、自分でチュニックの裾を掴んでゆっくりと持ち上げた。スエードの布地が捲れる
につれ、むっちりとした腿から尻のラインに、丸みを帯びた下腹部、豊満でありながらも均整の取れた腰から腹部への曲線が、しだい
に露わになる。
彼女はそのまま服を捲り上げるが、それはぱつんと張った胸に引っかかってしまう。下から持ち上げられる形になった乳房だが、更に
服を捲ると、やがては自らの重量に負けてぶるんと飛び出してきた。胸の下半分を支える白い下着からは、豊かな胸の谷間が覗き、
先程、服が引っかかったためか、下着がずれて乳房が脇から幾分はみ出し気味になってしまっている。

男はそのままの姿勢でいるように彼女に指示をすると、美術品を鑑定するかのようにじっくりとその姿を眺め、その視線を浴びる彼女
の顔は羞恥心でみるみる紅く染まっていく。彼女の肢体を視覚で堪能した男は、大きく一つ息をついた。
「ほう。ドワーフの女性の身体というのは、想像以上に素晴らしいですね。これだけの肉感を持ちながら、その曲線は崩れておらず、
メリハリが利いている。では、そろそろ味わわせていただきましょうか」
男は重たげな乳房を包む下着に手をかける。だが、一気に剥ぎ取るようなことはせず、先端が見えないぎりぎりの限界に留めて、彼女
の反応を楽しんでいる。それに耐えきれなくなった彼女は片手で下着を掴むと、引きちぎるように自らの手でそれを剥ぎ取った。
「っもう! 自分で外すよ。これで満足だろ!? さあ、好きにすればいいじゃない」
「そうまでおっしゃるのでしたら、お言葉に甘えて。ですが、これはまず、少し刺激を与えて差し上げないといけませんね」
支えるものの無くなった豊かな乳房がたゆんと揺れる。それは気持ち下がり気味ではあるものの、まだ重力に抗して張りを保ち、綺麗
な丸みを帯びていた。だが、その先端にある乳頭はへこんで乳房に埋もれてしまっている。
男は手に余る両乳房を鷲掴みにして寄せ上げると、乳輪に手を添えて絞り出すように扱き始めた。そうしてしばらく刺激を与えた後に、
まず右の乳頭を指で摘んで引っ張り出す。それを扱きながら、左の乳頭の周囲をひり出すように強く摘んで、強く吸い付いた唇と舌で
引っ張り上げた。そして左右を入れ替えて、今度は左を指で、右を口で刺激していく。

程無くして女の乳首は固く隆起し、男は再び左右の乳房をぐっと押さえて寄せると、擦り合わせた左右の乳首を同時に口に含む。男は
わざといやらしく音を立てて乳首に吸い付きながらも、その目は冷静に女の表情の変化を窺っている。
「ふぁ……あ、んぅっ!」
普段隠れている乳首は彼女の最も弱い部分であり、感じまいとしながらも、女戦士はその刺激に耐えきれずに声を洩らしてしまった。
「そちらも少しは楽しむ気になりましたか? しかし、先端が埋もれてしまっていると、衛生面でもよくありませんし、子に乳を与える
時に困ると聞きますよ。普段からしっかりと吸い出してもらっておいた方がよろしいかと」
「よ、余計なお世話だ! それに、楽しむ気なんてちっとも無いよ」
「どうせなら、快楽に身を任せた方がよろしいですのに、強情なお方だ。まあ、今日のところは私だけ好きに楽しむとしましょう。まだ
二晩残っていることですし。では、次は後ろを向いて四つん這いになり、尻だけ高く掲げていただきましょうか」

彼女が言われたとおりの姿勢をとると、男はその張りを確かめるようにぴたぴたと指先で尻を叩いたり、撫で回したりし始めた。
「これはまた、小柄な身体に似合わぬいやらしく育った尻ですね。よく鍛えてありますし張りも申し分ない。この尻には少し下着が小さい
のでは? 尻肉が上も下もはみ出してしまっていますよ」
「は、恥ずかしいことを言うな!」
「これでも褒めているのですが。まあ、恥ずかしいのなら、下着はお脱ぎ下さい。それとも、私が脱がせて差し上げましょうか?」
「自分で脱ぐ!」
「では、脱いだら、今度はベッドの縁で足を大きく拡げて踏ん張ったまま、腰を深く下ろして突き出してください。そう、膝に手を当てて
尻はこちらに向けて。ほら、もう少し大きく股を開いて」
女は指をかけてするっと下着を脱ぐと、再び姿勢を変えた。大きく股を割り開いたこの体勢では、女として秘すべき部分を隠す術は無く、
ぴたっと閉じた割れ目も、尻肉に隠れた穴も完全に男の視線に晒されている。ドワーフ女の特徴であるふさふさとしたやや長めの恥毛
には、人間の様な縮れは無く、さらさらとした栗色の毛は綺麗に整えられている。
覚悟は決めた……はずなのだが、堪えきれない羞恥心に彼女の体は小刻みに震えていた。
「これは良い眺めですね。尻穴まで丸見えですよ。では、まずはご自分の手で秘所を開いていただきましょうか。そう、肉びらをつまん
でもっと左右に大きく拡げて」
もうなにを言っても無駄だと悟った彼女は、素直に男の指示に従った。ベッドから降りた男は、息がかかる程の至近から彼女の膣孔の
中を覗いている。
「ほう。男が苦手なわりには、もう経験済みなのですか。それとも、同性に処女を捧げたのでしょうかね? まあどちらでもよろしいの
ですが。それでは尻穴の方も拡げてみていただきましょう。ほら、恥ずかしがらずにもっと大きく拡げてください」
彼女は手をずらすと、その張りつめた尻肉を掴んで、男によく見えるように割り開いた。すると、男は鼻を近づけて露わになった穴の
匂いを嗅ぎ始める。そして、そこに顔を直接押しつけて、秘所の周囲をなぞるように舌で舐め始めた。その舌はそのまま上に這い上が
って尻穴を舐り、その舌先がわずかに差し込まれる。
「ちょっ、そこは!」
無駄と思っていながらも、それに堪らず女戦士が声をあげると、予想に反して男はその行為を中断する。
「ふむ、これは?……少し、失礼しますよ」
言うが早いか、男は彼女の背中に指を当てると、その一点を見極めて指先を強く押し込んだ。すると、たちまちに全身が脱力して、女
はベッドに倒れ込んでしまう。全身の筋肉が緩み、彼女の体の穴という穴が開いて、様々な汁が湧き出てきた。男は弛んだ尻穴を更に
押し広げて、その奥をじっくりと観察し、次には陰唇を拡げて尿口に指を押し入れた。
「これは……。腸も空ですし、膀胱にもほとんど水分は無し。と、言うことは――」
と、呟いていたかと思うと、男は両手の指をそれぞれ背中の別の箇所に押し当てて、また指を強く押し込んだ。すると、弛んでいた筋肉は
たちまち元の力を取り戻し、女は体の制御を取り戻す。
「ら、らりするんだよ!?」
彼女のまだ上手く廻らない舌での抗議を黙殺して、男は逆に質問を返してきた。
「貴方……もしかして、昨夜あたり、灰から復活などされませんでしたか?」
「へ? う、うん。何時間か前に死んで、一度蘇生に失敗して灰になってるけど、それがなんだっていうのさ」
「ほほう。そうでしたか。これはなかなか珍しい相手に行き当たったものです。いいですか、灰から復活したばかりの肉体は、胃や腸
に老廃物も溜まっておらず、赤子のような――いや、ある意味では赤子以上に綺麗な体なのですよ。これは体臭が薄いのも納得がい
きました。その辺りは次のお楽しみですね」
「勝手に楽しみにしないでっ。でも、言われてみればそうなってもおかしくはない……のか?」
「そうなのです。そうなれば今夜することは決まりです。存分にあなたの尻の穴で交わらせていただきましょう」
「……ちょ、ちょっと待って! 私、お尻ではしたことないし、そんな汚い――」
「だから汚くはないのですよ。そもそも私は気にはしませんが、このような機会は滅多にあるものではないですからね。綺麗な穴で楽し
ませていただきましょう。それとも、男嫌いは口だけのことで、本当のところは前の穴に私のものが欲しいのですか? どうしてもと仰る
のなら、そちらの方を存分に開発させていただきますが」
「っ!……いいよ、後ろに入れたければ入れればいい。前よりはましだ」
「素直でいいことです。もっとも、まだ二晩ありますし、早いか遅いかの問題ですが。では、また尻をこちらに向けてください」

もう何度目だろうか。今度こそ覚悟を決めた彼女はベッドの上で四つん這いになって男に尻を向ける。男は褌を脱ぎ捨てると、彼女の
しっかりとした腰に手を当てて、自分のものをそのとば口に押し当てる。
「ねえ。せめて薬液かなにかで濡らしてくれないかな? 痛くてあまり叫ばれても嫌だろう?」
「ふむ。それはそれで私は一向に構いませんが。……まあ、そうですね。これなどいかがでしょう」
男がぐっと尻を押し開いたかと思うと、ややひんやりとした硝子の感触がして、彼女の尻穴になにかの液体が流し込まれた。
「ひゃっ! な、なにこれっ。冷たいけど、なんだか熱い!」
彼女が後ろを振り返ると、男は先刻彼女が飲んでいた火酒の瓶を手に持っていた。
「ドワーフのあなたにはちょうどいいでしょう。まあ痛みが和らぐかは保証しかねますがね。ではいきますよ。力を抜いてください」
そう言うと、男はぐっと腰を突き出して、彼女の尻穴に自分の一物を押し入れる。とたんに裂けるような痛みが女の尻に走り、彼女は
その激痛に悶絶する。戦士として迷宮で闘う彼女は当然怪我も多く、またドワーフの種族的な性質として痛みを耐える我慢強さも人
一倍に強い。だが、体の内側をえぐられるようなこの痛みには、思わず声をあげそうになる。
「!!……」
しかし彼女は声を洩らさずに必死にその痛みに耐えている。尻孔の奥も痛いが、それ以上に入り口の部分の裂けるような痛みが強い。
そして、男の方はその穴から受ける感触に驚きを感じていた。これまでも様々な種族の女の前や後ろの穴でしたことはあったが、これ
はそのどれとも違った感触を持っていた。入り口の締め付けこそ強烈だが、それは男のものを言葉通りに食い千切るような女の忍者の
喰い締めなどとも違い、穴全体が弾力を持った筋肉のような感触で、男のそれを追い出そうとするように脈動して抵抗する。その中を
無理に分け入って少し奥まで挿入していくと、内壁が亀頭をごりごりと押しつぶして快感を与えてくる。
「これは……まるで土の塊に圧迫されて押し潰されるような、圧倒的な肉感ですね。もう少し力を抜かないと、あなたの方も辛いでしょう。
どうせ出るものなどないのですから、少し下腹に力を込めてください」
すると、女がそれに従ったものか、押し潰される感覚が少し和らいだ。彼女の方はまだ痛みが治まらず、懸命に歯を食いしばってそれに
耐えている。
「ふう。では突きますよ。もう少しピンと脚を伸ばして……そうです。これならもっと奥まで。……しかしこの尻肉の弾力は堪らないですね。
この肉感はやみつきになりそうですよ」
そうしてしばらくの間、腰を打ち付ける音と、液体と共に空気が押し出される音が卑猥な響きをもって、部屋に響いていた。やがて、彼女
の尻を突いていた男は、小柄な彼女の身体をそのまま抱き上げると、挿入の角度を変えて腹の側の内壁を擦り始める。太さは並だが標
準よりやや長いおとこのそれは、女の子宮を裏側から押すように腸壁を斜めに突き上げ始めた。
「ひっ、んあぁぁぁ、あっ、あっ」
「わかりますか、背中側から押し上げているここがあなたの子宮ですよ。明日はこちらをたっぷりと突いてあげますから――」

コンッ、コンッ

その時、部屋の入り口の方から扉を叩く音が聞こえてきた。
男は一瞬、気分を害した表情を浮かべたが、その音を無視して行為を続ける。しかし、しばらくすると――

コンッ、コンッ、コンッ

また扉を叩く音がし、なにか店に異変でもあったのではと思い直した男は、抱えた女戦士の尻穴を貫いたまま行為を中断して、扉の
向こうに言葉を返す。
「……どうしました? 私は今夜は休養ですから、なにかあれば南風の方に伝えてください」
「お休みのところ申し訳ありません。少し不手際があり、問題が起こりまして。その、北風様にお伝えすべきことかと」
「仕方ありませんね。扉は開いています。入ってきて報告を――」
「駄目っ! 入ってきたら殺すから!!」
「……廊下からで構いませんので、続けてください」
「は、はい。お楽しみでしたか。……その、北風様が取り置いておいた変化の指輪なのですが……どうも手違いで売られてしまったよ
うでして」
「な……!」
女戦士の尻に刺さっていたままの男の一物がずるりと抜け、女はベッドの上に倒れ伏す。だが、彼女はすぐさまベッド脇に置いてあった
シルバーアックスを掴むと、男に殺意の目を向ける。
「騙したんだな。最初っから取引なんかする気は無かったんだ」
「お待ちなさい! 殺し合いをお望みなら後ほどお受けいたしますが、今は先にやるべきことがあります」
男は彼女を一喝し、床に落ちていた褌と、机の上の覆面を手早く身につけて、扉越しに部屋の外の男に指示を出す。
「そのお客様は今……そうですか、指輪はもう。……とりあえずは、出来るだけお引き留めしておいて、南風に連絡を。それから、店を
出られたら、誰かに後をつけさせてください。ですが、気付かれては店の信用に関わりますのでくれぐれも慎重に」
そして、部屋にある棚から小瓶を取り出して、ベッド脇の円卓の上に置くと、女戦士の方を振り返る。
「申し訳ありません。こちらの不手際です。あなたはすぐに身支度をして、ここで少し待っていてください。特効薬を置いておきますので、
痛みはこれで癒してください」
「って、どこに行く気! 大体、あなたは悪の戒律でしょ。そんな奴のいうことを信じられるもんか!」
「確かに私の戒律は悪ですが、私とこの店にとって契約は絶対です。私には契約を遂行することこそが自分のやりたいことなのです。
非道な行為を好む者に悪の戒律が多いだけのことで、自分の望むことを望むようにするのもまた悪なのですよ。まあ、信じる信じない
はあなたの勝手です」

そう言うと、男は扉を開けて早足に部屋を出ていった。仕方なく、女戦士は男の置いていった薬瓶の薬液を痛む穴に塗り込んで、体に
付いた体液をベッドのシーツで拭い、衣服を整える。彼女がブーツを履き終えたところで、ノースウインドが部屋に戻ってきた。
「準備はよろしいようですね。まずは、重ねてお詫びを申し上げます。それから、私はすでにあなたの体に手をつけてしまいましたし、
とりあえずはこれをお納め下さい」
そう言って男が彼女に手渡したのは、もう見慣れてしまった力のコインである。
「それはまだ未使用の力のコインです。これはお詫びと代価としてお受け取り下さい。三晩の契約が一度の交わりで五万ゴールドです
から、悪い話ではないでしょう。それから、リルガミンに入荷次第、優先的に変化の指輪をお取り寄せいたします。勿論、お代はいただ
きますが、追加料金は一切無しにさせていただきます」
「あ、ありがとう。でも、なんかまだ裏があるんじゃない?」
「信用が無いですね。では、これは当方の理念に反するやり方なので、今回限りの特別の措置ですが――お望みであれば、変化の指
輪を購入されたお客様とお引き合わせいたします。こちらでも買い戻せないかと交渉はしましたが、すでに断られました。ですが "偶然"
店で指輪が売られるのを見かけたお客様が、店外で直接交渉されることまでは、こちらでは関与出来かねますので。この意味は……
おわかりになりますね?」
「店は客に関してなにも話していない。その人が買った物を知っていて追いかけたのは、あくまで私がやったこと。て、ことだね」
「そのとおりでございます。いかがなさいますか?」
「駄目で元々だし、上手くすれば力のコインで十分だ。無理なら次の入荷を気長に待つよ」
「わかりました。では、ご案内いたしますが、くれぐれもこのことは他言なさいませんよう。それと、交渉の結果がどうなろうと、また店の
方に顔をお出し下さい。お取り寄せが必要なのか、必要なら連絡をどうするかという話もありますので」
「うん。わかった。……やっぱりあなたは嫌いだけど、でも少しは見直したよ」
「嫌っていただいて結構ですよ。多少狡いやり方だった上、契約も果たせなかったのは確かですから。では参りましょうか」
そして部屋を出た二人は、足早に地下の廊下を歩き去っていった。



〜またまた続く