迷路のような迷宮の奧、何処か切ない声が響きわたっていた。
 その声の主は一匹の魔物。
「ふごっ、ぐぅむっ、げほっ。あぁぁぁ! いや、さけ、ひっむぐうううう!」
 目隠しをされ、四肢を屈強な男に拘束された女の体を持つ魔物。女であるが故に男達の慰み者にならざるを得なかった。
「なかなかイイもん持ってんじゃないか」
「本当ですよ。この舌の動きなんて、うぅ」
「尻穴もええぞぉ」
 前と口と後ろ。通常なら使わない不浄の場所すらも狂った冒険者達にとっては穴であれば関係なかった。
 口を犯され、両手にも握らされた彼女の顔には苦悶の表情が浮かぶ。
 そして、股に群がった冒険者は三人。前と後ろの穴の間を六人目が犯していた。
 メデューサである彼女は蛇に近い体をしていた。複数の雄と交わる為に膣が二つあったのだ。
「二つ目の穴もいいっすよ!」
「俺らは手なんだからな、早く変われよ」
 手に握らせている二人が茶化すように次を催促する。
「しかし、言った通りだな。メデューサは穴が二つだってのは。さすが僧侶、博識だ」
「そう思うなら口じゃなくて、そっちでヤらせて下さいよ」
「がはは、違いない」
 豪快に笑い合いながら一人のメデューサを犯し抜く六人の冒険者達。だが交わる事に夢中で迫り来る気配に気づけなかった。
 ひたり、ひたり。静かに歩み寄る巨大な影は、口を犯す僧侶の真横まで迫り、跳躍して六人へ一気に襲いかかる。
「へ? げひあ!」
 何かに首を噛まれ、血を吹き出しながら倒れる者。
「うわっ! びゅひゅ」
 凶悪な足に踏みつけられ、頭を潰される者。
「ひぃ……ぐびっ」
「あっ、ごばっ」
 足と噛みついた口を支点に体を回転させた何かは、その巨体に見合った尻尾で後ろの穴と二つ目の穴を犯す者の首をへし折る。
 ごきりっと嫌な音が鳴り、ようやく周囲の異変に気づいた両手を使う男達。だが時既に遅し、だった。
 大きな巨体が再び舞い、一人の男の胸を切り裂く。残った最後の一人も巨体が押し潰すように着地し、圧死した。
「ぎゃああぉ」
 おおよそ蜥蜴には相応しくない鳴き声をあげ、魔物が勝利を叫ぶ。
 魔物の名はバジリスク。



「あぁ、あああ! 私、人間に!」
 嘆くメデューサにバジリスクは近づくとその頬を舐めた。
 それはまるで愛しい者を慈しむかのようだった。
「あなた、私を……許してくれるの?」
「ぎぃや」
 言葉が通じるのかバジリスクはメデューサの問いに頷いた。その返答にメデューサの瞳から涙が零れる。
「あなた、あなた! 私あなたの妻で良かった! 愛してるわ」
「ぎゃぉう」
 メデューサはバジリスク、夫の首に抱きつくと嗚咽するように歓喜の涙を流す。
 と、急にバジリスクの体が動きメデューサを押し倒す。
「ぎぃあああぉ!」
 その体からは二本の棒がそそり立っていた。雄の生殖の為の欲望が。
 何の愛撫も無しにバジリスクは二本の棒をメデューサの体に突き入れる。
 前と二つ目の穴に。
「んぁっ、あなた。あっ、大きい、太くて堅くて、あああ! あなたのがイイの! あああ!」
 人間とは比べものにならない長大な物を飲み込んだメデューサは快楽に打ちひしがれる。
 バジリスクも興奮しているのかメデューサを喰らうかのように顔を寄せ涎をまき散らした。
「あはぁ、ふふっ。あなたのその顔可愛くて好きよ?」
「ぎゃっ、ぎゃっ」
 メデューサの声に照れたのか、バジリスクは首を曲げ顔を反らす。その仕草にメデューサは笑い、優しく頬を撫でるのだった。
 ここは迷宮の奥深く。
 男女の睦美ごとも、何もかもが神秘に包まれた世界。
 自らの欲望で動く弱き、浅はかな冒険者達は時に肉片と化し、時に石となる。
「さぁ、あなた。たっぷり、くっ付いていましょ?」
「ぎゃぅぎゃぅ」
「時間はたっぷりあるんだから。ふふっ。楽しみね、あなた?」
 今日も迷宮は平和、かもしれない。