城塞都市の路地の奥にある袋小路。二人の冒険者の男女が絡み合い、行為に耽っている。男に馬乗りになって腰を動かすのは
裸の女。顔に紫黒の口当てと頭巾だけを着けた姿から察するに、そのクラスは忍者であろうか。
下になっている男は、その鍛えられた筋肉から、なんらかの前衛職だと予想することができる。
「あはぁっ、んくぅ。一度、こうして街中であなたを犯してみたかったのだ。昔、あなたが私にしたように。なに、こんなところに来
る者などそうはいない。それに顔は隠しているから、誰かに見られようと構わないだろう」
「ぐっ、お前――」
「まだ逝かせてはやらないぞ。あなたには私の想いをたっぷりと受け止めてもらわねばならぬからな。そう、たっぷりと……な」

二人は滾る情欲を押さえきれずにこんなところで行為に及んだものだろうか。だが、男の腕と脚が革紐と鉄の棒を使って巧みに
拘束されていることが、その考えを否定する。――なにより、その場には睦事に不似合いな濃密な血の臭いが漂っていた。
男は手首や太腿など数カ所を切り裂かれ、その傷口からは真っ赤な血が流れ出ている。まだ意識はあるようだが、命を失うのも、
もう時間の問題だろう。そんな彼の状態に構わず、女は荒々しく腰を使ってその肉杭を貪り犯し抜いている。
その血と共に流れ出す、わずかに残る生命力を使い、恋人であったはずの女に向けて男は疑問を投げかけた。

「お前。な、なんで……こんな、ことを」
「なんだ、聞かねばわからないのか? もちろん――復讐、だ。忘れてはいまい。私の目の前で師である母を犯したばかりか、どこの
ものとも知れぬ男達を引き込んで嬲らせたことを。そして、犯される母の前で私の処女を奪い、彼女をゴミのように殺した。その後も、
街の広場で公衆に見せ物にするように嬌態を晒させ、路地裏では施しだと言って物乞い共に私を投げ与え、迷宮で獣人や生ける屍
共に蹂躙される様を眺めて嘲り笑った。なぜ命を奪わぬまま、あなたが消えたのか不思議だったよ」
「あの後、完全にイカれちまったと、思って、たんだ……がな。この街でお前を、見かけた時は、驚いた、もんさ。復讐しに追って来
たのなら、また、可愛がってやるぐらいのつも……りだったんだ、が」
男は口の端に陰惨な笑みを浮かべ、声を絞り出して強がりを口にする。
「それだけ口が動くのなら、まだ楽しめそうだな。……なに、イカれてなどいないさ。女として売れるものは全て売り、パーティーを
渡り歩き、役立つのならそれがなんであれ利用した。私が生き延びたのは、あなたのおかげだよ。女が如何に卑しく、淫猥で、悪辣に
なれるのか、私に気付かせてくれたのだから。そして、生きるための目的をも与えてくれた。忍者に転職したのも、全てはあなたを殺
すため、だ」
「……なんで、この街に来て、すぐに、俺を殺さ、なかった」
「簡単に殺しては面白くないだろう?それに、今の私の力ではハイマスターの侍を確実に殺せる術など無かったからな。しかしお笑い
だ。そんな仕打ちを受けた女が仲間になりたい? ましてや自分を好いているだと? そのようなこと、あるわけが無いではないか。
あまつさえ、甘言に乗って自分自身がその女を愛してしまうとはな。どうやって籠絡してやろうかと考えていたが、これほど容易くい
くとは、さすがに欠片ほども思っていなかったぞ。こんな無能で下衆な小者に執着していた私自身を許せない。まあ、それも終り。お
前は自分を憎む女を愛し、その女によって惨めに殺されるのだ」

男はすでに意識朦朧とし、もう言葉が聞こえているのかもわからない。もう直接手を下すまでもないと見て取った女は、一方的な陵辱
を休止する。そして、男の右腕の拘束を解くと、その手を取り自分の下腹部にあてがった。
「もう聞こえてもいないだろうが、最後に一つ伝えておこう。私のこの腹にはお前の子が宿っている。いずれ骨となったお前と引き合
わせてから、共に石の中へと転移させてあげよう。私は優しいからな。一人で寂しくロストせずに済むことをありがたく思うがいい。
せめてもの手向けだ」
女は男の顔を優しく撫でると、上体を倒して彼の顔に手を添え、甘くキスをする。

最後の一息を吸い取るかのような長い口づけ――だがその時、女の左胸に熱い物がズブリと食い込んできた。彼女が体を少し起こして
ゆっくりと目を下に向けると、その豊かな乳房の下から短刀の柄が生えていた。そんな力が残っているはずのない男が、いつの間にか
握っていたそれを下から深く女の胸に突き立てている。
女の体は崩れ落ち、自らの体重によって短刀はより深く胸に突き刺さる。そして、その切っ先が心臓に届こうかという瞬間。口から大
きく血を吐いて女は呟いた。
「なんで……私は本気で、あなたを愛し、てしまった……のか、な――」

* * *

その二日前のことである。迷宮の玄室に設置された宝箱を前にして、一組の男女が口論していた。他のメンバーは少し離れたところで、
そのやりとりを思い思いに眺めている。
「頼む。今度こそ大丈夫だから、私に任せてくれ。もう要領は掴んだし、このまま宝箱ごときに負けっ放しではいられない」
「いや、駄目だ。お前は前にもそう言って、テレポーターの時に限って立て続けに七回も解除に失敗してるだろ。こいつだけは暴発した
時の危険が大き過ぎる。パーティーを預かるリーダーとして、お前の保護者として、認めるわけにはいかない」
現在、彼らのパーティーに盗賊はおらず、忍者である彼女が宝箱の罠の解除を任されている。アイテムで転職した彼女だったが、訓練所
で手解きを受けてみると、元魔術師の面目躍如かその知識の吸収は驚くほど早かった。そして今では、実践を積み重ねることにより、
盗賊の手並みには及ばないながらも、まずまず信用の置ける罠の解除率を誇っている。
しかし、これまで罠をテレポーターと判別した七回に限っては成功が無い。ただの一度も、である。

「では、賭けをしようではないか。これを解除できたら私の勝ち。その時はそうだな、リーダーに私の言うことを一つだけ聞いてもらおう。
で、私が負けたら、金輪際テレポーターには触らない。と、いうのでどうだ?」
「それって、なんだか俺にはあまりメリットがないんじゃ……? 基本的にお前は損をすることが無いし、こっちが負けた時はなにを要求
されるか知れたもんじゃない。てか正直怖い」
「まさか、リーダーの口からそんな言葉が出ようとは。数年私と合わない間にそんな尻の穴の小さい男に成り下がってしまっていたとは。
ああ、道行く人々に見せつけるように私の初めてを無理矢理奪った時の、あの荒々し――」
「勝手にありもしない鬼畜なイメージを上乗せしてんじゃねえよ! あー、面倒だし、とりあえず多数決だ。それに文句があるなら、全身
縛り上げて箱詰めにしてでも師匠の元に送り付けてやる」
「う。縛られて箱詰め……それはそれで魅力的だが……いや、縛られるのはともかくそれは困る。不本意ながら従おう」
「じゃあ、俺は開けるのに反対、お前は賛成でそれぞれ一票ずつ。で、お前らはどうする?」
そう言って侍は残りの三人に賛否を促した。

「俺は賛成。ただし、解除に立ち会うのはお前さんと忍者の二人だけにしてくれ。あと、念のためムラマサは置いてけよ」
ドワーフとしてはやや大柄な戦士は賛成。まあ、概ね予想通りの返答である。
「私は、反対。石の中も空の上も嫌。それに……」
司教は淡々と反対。そして隣の君主の顔をちらっとうかがった。
「――任せた。好きにしろ」
これは侍にとっては誤算だった。君主に限っては必ず反対するだろうと踏んでいたのだが、どういう心境の変化だろうか?……と訝し
がる暇もあるや無しや。女忍者はすでに罠の解除を済ませて、宝箱の周りを跳ね回っていた。
「うひゃっほーうぃ!ほら、ほら!! 見てくれ、テレポーターごときが私に挑もうなどと、身の程しらずが!さあ、賭けは私の勝ちだ」
「いや、待て! なんでもう開けてんだよ!! それにテレポーターさん舐めんじゃねえ。勝率で言えばまだテレポーターさん圧倒的優位に
立ってるよ。そもそも、そいつは本当にテレポーターさんだったのか!? 第一、俺はまだ賭けを受けたおぼえは――」

* * *

女のお願いを聞き、男は耳を疑った。彼女が賭けの代償として望んだのは「服を買って欲しい。そしてそれを着た自分に街を案内して
くれ」ということ。一つだけのはずの要求がいつの間にか微妙に増えている気はしたが、彼女自らが服を着たいという成長を目の当た
りにした男にとって、そんなことなど問題では無かった。
いや、昔は彼女も普通に服を着ていたので、正確には少し社会復帰しただけなのだが。
そうして迎えた探索の休養日。朝食を済ませた二人は、一般向けのちょっと高級な服を扱う店へと出向いたのであった。

あーだこーだ考えた末に男が選んだのは、東方風の袷の衣を右前に重ねて腰の帯で留めた、袖無しの装束である。脇の部分は大胆
に縦に開き、前後に分かれた腰布には腰骨のあたりまでスリットが入っていた。服の色は黒に近い紫。
もっとも、本来ぴたりと重なるはずの上衣の襟元は、押し上げられた胸を収めきれずに大きく開いており、中に着ている黒いホールター
トップに包まれた胸が半ば露出している。腕には中指のリングで止めた、肘より長い黒手袋。足下には服と同色のショートブーツ。
背中まで伸びる長い黒髪は、あごの先と耳をつなぐラインの延長線上の高い位置で、紫紺の布を巻いて一纏めに括って垂らしてある。

「んー。生地がやや厚手なのが残念だが、このそこここに感じるチラリズムが、そこはかとなくエロスを感じさせる。さすがリーダーだ。
なかなかのエロ見立てではないか」
南門から街の中心へと繋がる大通りを逸れ、街の南西の広場へと向かう道すがら。道行く人々を器用に躱しつつ、真新しい服を着た女
忍者は上機嫌で跳ねるように歩いている。彼女が元々着ていた服は侍が包みにくるんで抱えている。彼は薄く髭を伸ばした顎に手を当
てて、満足そうに女を眺めつつそれに答える。
「エロス言うな。でもまあ、とりあえずは喜んでくれたようで嬉しいよ。闇に紛れればそれなりに目立ちにくい色だろうし、その服ぐらいなら、
いつかお前が鎧無しで迷宮に潜れるようになった時でも、問題無く着ていけるだろ」
「ふふんふふーん、ん? いや、それでは私はまだ当分この服を着られないでないか。それに、リーダーが初めて私のために選んでくれ
た服なんだ。迷宮で破けでもしたら勿体ない」
「ふふん。嬉しいことを言ってくれるじゃないか。でも迷宮ってのは気が早かったな。そんな先のことまで言ってちゃ、せっかくの服も着ら
れないか。またそのうち買ってやるから、それは普段着として着てくれたらいいよ」
「そうか! なら今夜はこれを着たまま色々と試せるのだな。この服なら破かなくとも捲ったりずらしたりすれば挿入には問題ない」
そう言うと、女は自分の腰の前に垂れた布を太腿のあたりまでぴらっと捲り上げた。せっかく喜んでいるのだから、今日ばかりは小言も
言うまいと、彼女のさせるままにして男はそれを眺めている。
(まあ、俺自身、服を選ぶ基準にいやらしい気持ちが全く無かったってわけじゃないしな。いや、全くどころか、結構想像しながら服選ん
でたよなあ。うーん、今夜か……)

と、妄想に陥りそうになる中、彼は不意に違和感を感じた。それは練達の侍の勘が告げたものであろうか?
(……なにか忘れてるんじゃないだろうか?)
なにかが違う。いや、確かに何かが足りない。今一度、女の格好を上から見下ろした男の視線は、彼女の腰で止まった。そう、腰骨まで
切れ込んだスリットの裂け目からやむを得ず見えてしまうであろう紐の結び目が無い。
むしろ、見えてはいけない薄い淡草が、横の隙間からちらりちらりと見えたり見えなかったり。

「……ところで、なにか忘れてるんじゃないかい?」
「ん? おはようのキスはしたし、朝ご飯も食べた。あれか、朝のご奉仕か。こんなところで求めるとはリーダーもなかなかどうして大胆
だな。でも、さすがに衛兵が飛んでくると思うのだが……。まあその時はその時か。じゃあ、脱いでくれ」
「違えよ! そりゃ時々は朝からすることもあるけど、俺が強制したことは一度も無いし、街中でするなんてあり得るかっ」
「なんだ違うのか。じゃあ一体なんなのだ?」
「お前、それってもしかして、下にはなにも穿いてないんじゃないのか? 宿を出るときに穿かせたはずの下着はどうした!」
「ああ、試着の時に脱いだままうっかり忘れていた。まあ、そんな些細なこと、どうでもよいではないか」
「っておい! その腰布をおろせ××――ンガフッ!?」
女忍者の名を呼ぼうとした男の口に、女が懐から出した純白の薄手の布がその指ごと押し込まれる。気を読むことも許さぬ素早さに
状況への対応が遅れた男を、彼女は凄い目で一睨みして黙らせ、しばらくの沈黙の後に低い声で呟いた。
「今……なにを言おうとした」
「……に、にんふぁふぁん?」
「ああ、このままでは喋れないか。では、手をゆっくりと抜くから、質問したことにだけ答えてくれ」
男がうなずくと、女は彼の口に突っ込んだ布を抜き取り、改めて同じ質問を繰り返した。
「で、今なにを言おうとした?」
「ケホッ……。ああ、その下は丸出しなのかよ、この露出狂。と」
「いや、その前だ」
「その前……?」
「私の名前を呼ぼうとはしなかったか?」
「ああっ。おう、呼ぼうとしたがそれがなにか――」
「この、愚か者ぉっ!! お、女将を呼べ!」

女はバンシーの泣き声もかくやという大声を通りに響かせる。周囲は一瞬静まりかえった後、にわかにざわつき始めた。だがそれも、
声を発したのが冒険者だと気付くまでで、街の人々はすぐに興味を失って元の日常へと戻っていった。
「えっ、えぇっ!? 俺はそんなに怒鳴られるようなことをしたのか? それに女将ってのは一体誰だ!?」
「ふーぅ……。なにを言っているのだ。リーダーにどのような深謀遠慮があっての試みだったか私には計り知れないが、これを読んでいる
人に名前が知れると、それに引き擦られて私に対するイメージが固定されてしまうではないか。私達がなんのためにこれまでクラスや代
名詞で互いを呼び合ってきたと思っているのだ」
「あ? 読んでる人って、なんのことを言ってるんだお前は? それに、もしそんな人がいるってんなら、名前云々じゃなく、お前のイメージ
なんてのは、もうこれ以上ないぐらいに固まっちまってると思うんだが――」
「っ!」
女はその左手を男の首の高さに振りかざす。しかしそこまでして毒気が抜けたものか、その手はすぐ力無く下に降ろされた。
「ああ、わかった。どうしても私を名前で呼びたいと言うのなら、その代わりにリーダーの名前は今後ずっと "ああああ" だ」
「俺は装備と端金を奪われるために生み出された存在の、しかも四番手の扱いかよ! あーもう、わかったよ。今後は外でお前の名前を
呼ばない。二人きりの時なら別に構わないんだろ?」
「本当にわかっていないな。二人きりだろうと他の人に私のことを話す時だろうと駄目だ。誰が読んでいるかわからないのだぞ。呼んでも
いい時には私が合図する。それから、私の名前に限らず、人の名前を呼ぶこと自体が厳禁なのだからな?」
「はいはい、それでお前の気が済むんなら従うよ。……ところで、お前がさっき俺の口に突っ込んだ、その右手に握りしめている布。
俺はよぉーく見覚えがあるんだが、それがなんなのか改めて教えてもらいたいもんだな」

女の右手には、男の涎でしっとりと濡れた、意匠に凝った絹織りの小さな下着が握られていた。
「ああ、私の下着はこんなところにあったのか。いつの間に懐に入り込んでいたのだろう? しかし、これだけ濡れてしまうと、そのまま
穿くわけにもいかないな。感触が気持ち良――いや、気持ち悪いだろうから。では、仕方が無いのでこのまま行くとしようか」
「濡れたままで構わないから穿け。いや、ここじゃなんだから路地裏に行ってモーリスぐらいは唱えてやる」
「おおっ! 路地裏で行為に及ぶのだな。それも濡れた下着を身に着けさせてからとは、リーダーもなかなかわかってきたではないか。
だが、モーリスはいただけないな。闇に包まれてしまっては、街中でする醍醐味が無くなってしまう」
「……お前な」
「やだっ!! 誰かに見られちゃう!――あるいは、こんないやらしい私をもっと見て!――と、いうのが正しい街中での性行為だろう。
唱えるにしても、せめてソピックぐらいにしておかないか?」
「俺は今、マハマンを唱えてでもお前を黙らせてやりたい気分だよ……。はあ、これじゃ師匠に合わせる顔が無い。いや、こいつがこんな
になったのは、むしろ師匠のせいなんだよな……」
「ん? 路地裏に行くのではないのか? 早く早くっ。ふーんふふーんふふーんっ」
「スキップはやめろ、裾が捲れる。んー。この際、店まで戻って新しいのを買った方が早いか。ほら、路地裏はやめだ。行くぞ」
「なんだ。この恥ずかしがりさんめ。あっ、でもそれなら下もリーダー好みのを選んでもらおうかな。どうしても人目が気になるのなら、
ついでに覆面でも頭巾でも買えばいい。よし中立は急げだ」
「路地裏は諦めてないのかよ。こら、走るんじゃない! 今度は後ろが捲れてるだろうが……そうか、わざとか。わざとなんだな!!
おい待てって。おーい、忍者ちゃん!……リーダーしまいにゃ声をあげて泣いちゃうよ?」

* * *

そして時は昼下がり。数多の商店が建ち並ぶ目抜き通りを侍と女忍者が連れ添って歩いていく。腰に刀を携えた男は半ば諦めた表情。
その左腕を胸の谷間に埋めるように挟み込んで歩いている女は彼と対照的に鼻歌交じりのニコニコ顔である。
「なあ、忍者ちゃん」
「なんだ? 侍さん」
「上機嫌のところ非常に申し訳ないんだが、ちょっと歩きにくい」
「そうか。で、服も買ったし、いやらしい下着も穿いた。次はどこを案内してくれるのだ? 私はそろそろお腹も空いてきたぞ」
「いや、案内はするが人の話を聞け。それから少しは恥じらいを持て。天下の往来でその凶器みたいな胸をそんなに押しつけるな」
「なんだ、注文の多い男だな。しかし今日は私の言うことに従ってもらうぞ。賭けに負けたリーダーが悪いのだっ」
「賭けって言ったってな。どう転ぼうと俺に得の無い選択を賭けと認めた気はない」
「済んだことを悔やんでもなにもはじまらないぞ。リーダーにはもっと未来を見据えて――ん、この匂いは」

急に会話を中断すると、女はすんすんと鼻を鳴らして臭いを嗅ぎ、耳を澄ませて雑踏の中から聞こえてくる音を選別する。
「血と体液の臭い……に、あえぎ声、かな? えっと……ちょっと覗いてくる!」
男の顔をちらっと上目遣いに窺ったものの、彼の言葉を待たずに女は駆けだしていく。全力で疾走しているため、後ろに垂らした腰布が
大きく捲れ上がり、黒い下穿きに半分ほど隠れた尻がほぼ丸見えになっていた。腰骨へと伸びる横紐と、肌に密着した布地が、丸く形
のいい尻から腿にかけての一体感を強調し、腰の位置に半月型に空いた装飾的な隙間からは、尻の割れ目が半分がた見えている。
「うーん。それなりに高い買い物だったが、我ながらいい見立てだな……じゃねえ! おいっ。覗きとか普通に言ってんじゃねえよ。
……しかし、なんだか嫌な感じがするな。なんだか街中には不似合いな気配だ。……俺も行ってみるか」
男はそう言うと、女の尻を目印に、その後を追って走り出した。

* * *

「ふええええぇぇん。えぐっえぐっ。うわあぁあんっ」
夕闇の迫る中、冒険者の宿へと引き返す路の途上。女忍者は人目も憚らず声をあげて泣きじゃくっていた。侍はその背中をぽんぽんと
叩きながら、すがりつく彼女のさせるままにして歩いている。

路地裏に入った女忍者を一旦は見失ったが、なんとか気の流れを辿って侍が追いついた時には、すでにそこは血の海だった。裸のドワ
ーフの男女が抱き合ったまま事切れ、その脇に彼女がへたり込んで泣いていた。
その二人の冒険者のパーティーは三日前に迷宮に入ったきり戻って来ておらず、この街では久しぶりの高レベルパーティーの全滅かと
冒険者の間では噂されていたはずだ。彼ら自身、直接の交流はあまり無かったものの、迷宮や街中で幾度と無く顔を合わせた相手だっ
た。もっとも、その中の侍と忍者が恋人同士だとまで知りはしなかったのだが。
女忍者は、ただでさえ研ぎ澄まされた忍びの聴覚を、密かな趣味の聞き耳でなまじ磨き上げてしまっていたため、死んだ二人の会話の
大半を聞いてしまったらしい。侍は泣きに泣く彼女から事の次第をどうにか聞き出すと衛兵を呼び、遺体を発見した状況を詰め所で聴取
された後、日も暮れかかる頃になってようやく彼らは解放された。街はやけに赤い夕日に血の色に染まっている。
当初、死んだ二人の亡骸はカント寺院に運ばれる予定だったが、侍が衛兵に金貨を掴ませて、街の共同墓地に一緒に埋葬されるように
取り計らった。

宿の前に着いたところで、男は涙やら鼻水やら唾液やらでぐしゃぐしゃになった女の顔を布で拭ってやり、ようやく話が出来る程度に
落ち着いた彼女に、諭すように言葉をかける。
「なんだかんだ言ってもお前は冒険者になってやっと半年過ぎた程度だからな。人の死に慣れちまったとはいっても、今回のはちょっと
重かったか。しかも、それがよりによって侍と忍者とは、な。正直、俺でも少し滅入るさ。こいつは悪い意味で出来過ぎだ」
「……」
「でもな、この世界には悲劇や惨劇の類なんていくらでも転がってるんだぜ。まあ、悪いことじゃないんだが、この街やここにいる冒
険者ってのは、やっぱり "ゆるい" んだよ。異変の兆候があるらしいリルガミンなんかとは違ってな」
「ゆ……るい?」
「ああ。俺もここに来る前に少しいただけだが、あの街はなんと言うか、まだ現役だからな。暗いものや重いものが色々と澱のように
深くに溜まってるし、それは目に見えるほど表にも滲み出ている。そりゃあ、この街にもまだ冒険者は多い。けどその大半は、本物の
ワードナがいない今でもなぜか召喚され続ける魔物が持つ財宝目当てか、名前を売って仕官の口を探そうって連中だ。まあ、ここで力
を付けてから、もっと危険な迷宮が幾つもあるリルガミンに行こうって考える、俺達みたいのもいないじゃないけどよ。だが、今回のこと
はともかく、ここにもそういう生臭いのが無いわけじゃないから、お前を冒険者にはしたくなかったんだけどな」
「えぐっ……でも、私はもう冒険者なのだ。世間を知らない小娘じゃない」
「そうだな」
「……なあ、リーダー。賭けをした時には一つだけと言ったけど、もう一つお願いを聞いてもらえないだろうか?」
「ん? いいぞ、なんでも言っ――いや、聞いてからにしよう。とりあえず言ってみろ」
「その、えっと、今夜は私にキスをして欲しい。あ、頭を撫でながらしてくれると嬉しいかな」
「は? そんなのいつもしてるだろ。まあ、それぐらいお願いしなくてもしてやるよ。ん、もう大丈夫だろ。お前、先に部屋に上がってろ。
俺は酒場の連中に声だけかけてから、なんか適当に料理を見繕って持って帰るよ。昼は食えなかったし、腹空いてんだろ」
「うん。わかった」

* * *

男はギルガメッシュの酒場にいる仲間に軽く事情を説明してから、酒場で包んで貰った料理を持って宿へと戻り、女忍者と二人で夕食
を取る。そして、食事の後、ベッドに寝転がって満足そうにお腹をさする彼女の、大きく開いた胸元に手を差し入れようとした――。
「こら」
ぺちっと手をはたかれた。もう一度試みて、また手をはたかれる。男が釈然としない顔をしていると、可愛く小首を傾げて女が言う。
「キスは?」
「ああ、そうだったな。ほら」
男は女を抱き起こし、座ったまま正面から抱きかかえると、そのさらさらの髪に片手を添え優しく撫でながら、いつもより長めに丹念に
口づけをする。二人の体の間で豊かな双丘が押し潰され、硬くなり始めた先端が布地を押し上げて男の体をくすぐる。侍は抱きしめた
手を緩めると、その浮き出た突起に親指を当て、きゅっと押し込んだ――瞬間に、竜の首をも跳ばす手刀が脳天に振り下ろされた。
「うわらば!?……な、な、なにをするだァーー! 本当はお前も復讐を狙って俺に近づいたとか言い出すんじゃねえだろうな!?」
「キス」
「は?」
「だからキスをするのだ」
「それは今たっぷりねっとりとしてやっただ――」
「今夜はキスをすると約束してくれたではないかっ!」
「……なあ、まさかとは思うが "今夜は私にキスをして欲しい" ってのは、一晩中、朝までキスだけしろってことなのか?」
「なにを言っているのだ。そうでなければわざわざお願いなどしないだろ? それに朝までというわけではない。私が眠くなるまでだ」
「はああぁあぁぁっ!? なんだよそれ。じゃあ、その服を着せたまま楽しもうと思ってた俺の欲望はどこに向けりゃいいんだよ」
「大丈夫。キスだけでもリーダーを気絶するほど満足させてみせよう。それに、私はキスをしている時が、―番愛されていると感じるのだ。
しかし、どうしてもリーダーが嫌だと言うのなら……。うん、わかった……諦める」
「お前……。ああもう、わかったよ。一度は約束したことだ。今日はお前の気の済むようにしろっ」
「おおっ、本当だな。では続きといこうではないかっ」
女忍者は有無を言わさず唇を押しつける。舌で歯をこじ開けて、頬の内側に舌を這わし、侍の口中の粘膜を余すところなく舐め回す。
そして次には、舌を絡ませて男の舌を自分の口の中に引き込み、唇で味わい、歯で柔らかく噛み、じっくりと舐って舌に乗った唾液を
吸い尽くす。侍は自分が口腔から犯されているような感覚をおぼえていた。

そうして、もう二時間は経過しただろうか。まだ女忍者の熱烈なキスは続いている。その熱に当てられ、最初のほうこそ同じように彼
女の唇を求めた侍だったが、いつ終わるとも知れないあまりに情熱的な口づけに、下半身も含めてもう色々と我慢の限界だった。
(まずい。なんかこのままじゃ喰われそうな気がしてきたぞ)
本能的にそう思った侍は、女忍者の肩を掴んでその顔を引き剥がす。離れた唇の間には唾液がつぅっと糸を曳いている。
「な、なあ忍者ちゃん? さすがに一晩中キスをするってのは無理がある。それにその、やっぱり下の口も満足させたいかなぁって」
しかし、聞いているのかいないのか、女はとろんとした目で男の方を見つめるばかり。――いや、その目の奥にはちろちろと、獣性を
感じさせる赤く燃える光が宿っているのが見えた。彼女は侍を押し倒すと、右手を彼の頭の後ろに回して、その手で自分の左腕の長
手袋をしっかりと掴み、左手は手刀の形にして喉元に強く押し当てた。そうしてがっちりと男の頭を固定すると、彼の唇を貪るように
激しくキスをする。手刀が男の頸動脈を圧迫しているのだが、そんなことは当然お構いなしである。
(ああ、これ多分違う意味で逝く。こういうキスは愛のあるキスって言っていいのかな。どうせなら胸に埋もれて死にたかっ……た)

* * *

まだ朝日も差さぬ早朝。侍は目覚まし代わりに使っているカエルの置物の「イエィ!!!...」という声で目を覚ました。赤と青のケープ
を羽織り、前足を左右に振りながら甲高い声を発して踊る金属製のカエルに、手探りで掴んだ枕を投げつけて黙らせる。
(ったく。まだ暗いじゃねえか。時間間違えてんじゃねえよ……。あれ? 俺、昨日はどうし――)
「痛ッ」
やけにひりひりする唇の痛みに、男ははっきりと目を覚ました。瞼を開くと目の前には白くほっそりとした女の首筋。女忍者は服を着た
まま、侍を胸にかき抱く姿勢で眠っている。
男は昨夜のことを思い出し、自分を抱きしめる腕をそっと解くと、視線を少し上に移して女の顔に目を向ける。くくった髪も解かずに眠る
彼女の唇は赤く腫れ上がっていた。おそらくは自分の唇も同じ様なことになっているのだろう。また少し泣いたのだろうか、彼女の瞼は
やや腫れてむくんでいる。
侍はベッド脇のチェストに手を伸ばし、傷薬の瓶を二つ取り出した。その中身を指に少し取って唇に塗り、残りは口の中に含んで、十
分に口内に行き渡らせてから飲み込んだ。そして、もう一瓶の中身も口に含むと、まずは舌を使って丹念に女の唇に塗り、口移しで彼
女の口腔内に流し込む。そして、やや腫れた目元にも舌で優しく舐めて薬液を染み込ませておく。

「んん……りーだぁ?」
敏感な目元への刺激で目を覚ましたのか、女忍者が目を擦りながら、もにょもにょと呟いた。
「あー、起こしちまったか。おい、あんまり擦るなよ。口も目元も腫れて酷い顔になってるぞ。まあ、傷薬を塗っといたから、朝には腫れも
引くだろ。んーうぅ〜っ、今日の探索までまだかなり時間があるし、お前ももう一眠りしとけよ」
女忍者は寝ぼけ眼で侍の顔を眺めている。しばらくそうしていたかと思うと、男の体を越えてチェストの上の水差しに手を伸ばし、それに
直接口をつけて水を飲み始めた。横から覆い被さる体勢になったため、彼女の胸は男の鼻先に触れんばかりになっている。黒い布地に
包まれた迫力のある胸が、喉を水が通るたびに男の目の前でたふんたふんと揺れ動いた。
女は水を飲み終えて水差しを元の位置に戻すと、また眠るのかと思いきや、上体を男の下半身の方に向き変えておもむろにそのズボン
の紐を解きにかかる。
「おい、なにしてる」
それに答えず、女は慣れた手付きで紐を解くと、ズボンと共に下穿きを太腿までずり下ろす。そうして、両手を合わせてから、ぽろんと
飛び出た男のそれをくわえようとした。男は後ろから女の両腕を掴んでそれを引き留める。
「いただきますしてんじゃねえよ。今夜はキスだけじゃなかったのか?」
「んー? 私がぁ眠るまでとぉ言っただろー。めいんでぃっしゅを読者も望んでるぞー」
「寝ぼけんな。人を生殺しにしといて、よくそんなことが言えたもんだな」
上腕をがっしりと掴まれた女は、首と舌を伸ばして、なんとか男のそれの先っちょだけでも舐めようと頑張っている。数時間前には胸を
触ることすら拒んだ女のその態度に、男は理不尽さを噛みしめていた。

(これは、ちょっと立場ってもんをわからせないといけないな。あれ、やってみるか。さすがに少し思い知らせてやらないと)
男は女の上体を強引に引き戻し、顔を両手で挟み込んで自分の方に向けさせる。
「なあ、ちょっと待て。さっきは人の頭を叩き割ろうとまでしておいて、その変わり身は無いんじゃないか? ごめんなさいは?」
「……ごめんなさい」
まだ寝ぼけ顔ながらも、女ははっきりとした口調で謝った。素直ないい子だった。
「じゃあ、罰として腕だけ軽く縛らせてもらおうかな。お仕置きだ。ほら、背中向けて腕を後ろで組め」
「ん……しばりゅ……おしおき……縛る? そうか縛るのだな! う、腕だけでいいのか? 縛り方なら私が色々教えるぞ!」
その言葉が切っ掛けとなって女ははっきりと目を覚ます。その目はキラキラと光り輝き、さっきまでの寝ぼけ眼が嘘のようだ。
「いきなりどこまでを求めてんだよ。いいんだよ腕だけで。ほら」
「うん。そうだな。物事には順序というものがあるからな。さあ、縛ってくれ。そして縛られた私を蔑んでくれっ」
「蔑むと喜ぶから嫌だ」

侍はベッド脇に置いた刀の鞘から下げ緒を抜き取ると、互いを掴む形に背中で組んだ女の両腕を、容易には解けないように縛る。
「ん、そんなのでいいのか。まあ初縛りだからしょうがないだろう。……では、もういいのかな? なんだかんだ言ってリーダーのこれも
だんだんとおっきくなってきてるぞ」
「ああいいぞ。存分にご奉仕してくれ。ほら、俺もしてやるから。尻、こっちに向けろよ」
寝そべった男の頭に逆向きに跨る形になった女は、腕の支え無しに上体を倒して、口と舌を使って男のそれをくわえ込もうとする。
「……む。この体勢はなかなか大変そうだな。でも忍者となった私にとって、これぐらいの負荷は大した罰にもならないぞ」
「そりゃさすがだな。ああ、内股の筋が張って股にいい感じの窪みが出来てる。ほら、買ったばっかりの下着が濡れちまうから脱がすぞ。
片脚だけでいいからちょっと浮かせてくれ」
「うん。しかしこれはちょっとバランスが。それなら、ここを支点にすれば……はむっ」
男の一物を根元まで口に加えて、それを支えにしながら女は右膝を浮かせ、片膝の体勢で器用にバランスをとる。男は彼女の後ろの腰
布を捲り、黒い下穿きを膝までずり下ろす。そして布をあまり伸ばさないように気を付けつつ、それを彼女の右の足から抜き取った。

そして今、男の目の前には隠すもの無く女の白い尻が突きつけられている。彼女が体勢を維持するのに脚から背中の筋肉に力を込めて
いるので、押し上げられた尻肉は張りつめて持ち上がっている。しかし、それに男性的な硬さは感じられず、筋肉の上に程良く付いた肉と
滑らかな肌によって、女性らしい柔らかく美味しそうな尻が形作られていた。
男がためしに平手でぺちんと叩いてみると、ぶるんっと元気に柔らかく尻肉が震える。男は尻の丸みを両手で撫で回し、時にはしっかりと
掴んで肉の感触を楽しむ。合わせ目をすーっとなぞり、その奥の皺の集まったすぼまりの際をしつこく揉み、指の腹で細かくほぐしたかと
思うと、縁に両手の親指を押し当てて大きく押し開く。
「うんっ、くぅ。んんぅっ」
ようやく口にした獲物に夢中の女忍者だったが、尻穴に触れられそうになるたびに、そのむず痒い感触に声を漏らす。

侍の指先はしだいに下へと這い降りていき、その秘唇を根元から摘むと、大きく左右に割り開いた。陰唇を捲り返されてあらわになった
女の粘膜は、ひくひくと蠢いてこそいるが、まだそれほどには濡れていない。男は指先だけを差し込んでその穴の縁をなぞり、指が小陰
唇の合わせ目にあるまだ小さな陰核に辿り着くと、その包皮をやや強引に剥き下ろした。空気にさらされた剥き出しの女芯の先を指で
つっつき、指の腹で優しく撫でたかと思えば、指先にやや力を加えてキュッと摘む。
「んんんぅふっ!んー、んんーうぅっ」
そこを強く摘まれるたびに、痛みと快楽で女の尻は跳ね、体勢のバランスが崩れそうになる。彼女は全身の筋肉を引き締め、肉杭を含
んだ口を強くすぼめることでなんとかバランスをとって体勢を保つ。男は垂れ下がって邪魔になりだした女の腰布を捲り直し、彼女の帯
の間へ挟み込んだ。そして新たな部分の責めにとりかかる。
片手はそのまま女の敏感な部分をいじりつつ、もう片方の手は尿口に指を押し当て、細かく振動を加えて揉み擦り始めた。そこを指先で
ほじくられた女は、尻を揺すって逃がれようとするが、そのたびに女芯を強めに摘まれ抵抗を封じられる。
「リ、リーダー。そこは、おしっこの穴はやめてくれ。も、漏らしてしまう」
とうとう口に含んだ男の一物を解放し、女は頬を赤らめて懇願する。
「ふーん。ほら、口が休んでるぞ」
「か、顔に漏らしてもいいんだな? そんな趣味まであったとは……これは、尊敬の念を禁じ得ない」
「そんな趣味ねえよ。尊敬すんな」
それに取り合わず、男は責めを再開する。が、さすがに尿口をいじる指は動きを緩め、その矛先を女唇の方へと向け直す。それに伴って、
女の尻の揺れが男の指から逃れるためではなく、快感に体が反応しての反射的な動きになっていく。
指先だけをその膣孔に突っ込み、肉ひだの裏側から縁をまさぐり、時には二本の指を素早く交互に抜き差しして女の腹を内側から刺激
する。膣孔からはぴちゃぴちゃと濡れた音が漏れ、その内部はもうじっとりと潤んでいる。膣口は指が出入りするたびに収縮し、きゅっと
絡み付いて指を逃すまいとする。膣孔と子宮は熱を孕み、潤んだ粘膜から漏れ出た蜜が一滴、男の胸元に滴り落ちた。

「お前、漏れてるぞ」
「う、んふぅ。ち、違う。それはただのはしたない汗だ。わかってるくせに意地悪はやめてくれリーダー」
女が十分に潤ったと見て、侍は責めの手を強くした。柔らかく湿った膣口を指先でえぐりまわし、秘唇を押し広げて剥きだしになった尿口を
押して揉みこねる。勃起した女蕾の先を弾き、時には摘んで扱き上げる。師匠の元を旅立った後、数年の空白があるものの、彼女の
初めての男になってから、これまで幾度となく抱いてきた肢体だ。女の体で男の舌と指先の触れていない部分は無く、その弱いところは
知り尽くしている。女の膣孔から、さっきまでとは違う白く濁った汁がとろりと流れ出してきた。匂い立つ愛液はもう止め処無く溢れて、
腿を伝って膝まで流れ、垂れた滴が男の身体を濡らしている。

侍は腹筋に力を込めて上体を起こし、膣孔に舌先だけを差し込んで、そのとば口に溜まった汁を舐め取る。もう肌を触られるだけで激しく
感じる牝の肢体は、その柔らかく繊細な刺激だけで絶頂に導かれようとした。
だが、不意にその舌を抜き取り、男は女への責めを止めてしまう。指は膣口の入り口浅くまでしか入ってこず、陰核にも触れるか触れない
かの微妙な部分を這い回るばかり。絶頂の直前で引き戻され、発情した女は半ば無意識に腰を落とし、指を求めてよがりながら腰をうねら
せる。しかし、男はその動きに伴う気を察知して、すっと手を引いて熱く高ぶった女の淫欲の矛先を逸らす。
「な、なんでやめるのだ。もうイキそうだったのにぃ」
「ふっふ〜ん。だからだよ」
そして男は秘唇への陵辱を再開する。指を動かし舌を使って女をまた歓喜の際まで持ち上げる。女の体のわずかな動きや反応をも鋭敏
に感じ取り、彼女が快楽に果てそうになると愛撫の手を止める。男はそれを幾度となく繰り返し、昇り詰めそうになるたびに、また引き戻
されるという快楽の波に女は気も狂わんばかりだった。自分の手で慰めることも出来ず、それならと男の身体に股を擦りつけて快感を得
ようとするが、その気配を察した男に縛られた両腕を掴んで持ち上げられ、それすらも叶わない。
膣孔と子宮はやるせない肉欲にわななき、彼女はもうとにかく早くイカせて欲しい、この生殺しの状態から解放して欲しい、ということしか
考えられなくなっていた。発情しきった牝はもうどうしようもなく男の責めを求めている。
「リ、リーダー早く、早くくれ。もう、もう頭が変になりそうだ。そこに触れてくれないのなら尻穴でもいいから。そ、そうだ、胸を触っていない
ではないか。リーダーは私の胸が大好きだろう? ほら、もう乳首も痛いほどに張っているのだ」
女忍者は上体を起こして後ろを振り返り、横から見た時の厚みを意識して、布地の中ではち切れんばかりの胸を見せつける。
「うっ……そりゃあ大好物だが、さっきはそれのせいで頭をかち割られそうになったからな。あんなのはもうごめんだよ」
「な、なんで今日に限ってそんな意地が悪いのだ。この鬼畜ぅ」
「言ったろ? "お仕置き" だってな。文句ならこのやり方を仕込んだ師匠に言うんだな」
「頼む、後生だ。お願いだから……ああ、もう……どこでもいい……なんでもいいから早く私をイカせてくれ!!」
「じゃあ、そうだな。……あ、ここで名前で呼んでもいいってんなら、すぐにでもよがり狂わせてやるぞ」
「うぅっ……それは、駄目だ。設定は変えられない」
「そうか、別に俺は何時間でもこうして焦らしてあげてもいいんだけどな。ほらほら、また口がお留守になってるぞ」
男は女の尻の穴に指を這わせる。だが、その中心には決して指を触れない。膣口も陰核も際ぎりぎりをなぞるだけで、女を期待させては
裏切り、あくまでもお預けの姿勢を貫いている。女の美しい白い肌は湯気が上りそうなほど桜色に上気し、見開かれた目には霞がかかり、
もはや視点も定まっていない。
「リーダーっ、ごめん。ごめんなさいぃっ。もう、駄目……狂ってしまう。こんなの続けられるぐらいなら、いっそ殺ひてぇっ!」
その叫ぶような懇願が、なぜだか男に昼間見た路地裏の光景を想起させた。状況こそ全く異なるものの、あの二人の冒険者の最期の姿
が脳裏にまとわりつく。ふと我に返った侍は、目に涙を浮かべて懇願する女忍者の様子に、さすがにその心身の限界を感じ取る。
「ごめんな。ちょっとお仕置きが過ぎた。ほら、ちゃんとこれを入れてやるから、口で大きくしてくれ。もう少しだけ頑張れるな?」
男は下腹に力を込めて、少し萎えた一物をひくひくと動かして女に指示をする。
「あ、ああぁ……やっと、やっとこの切なさから解放されるのか」
そう言うと女はまた上体を倒し、硬さの衰えた男のそれを口にくわえる。そして、なりふり構わずとにかく早く、早く大きく硬くなってくれと
必死の奉仕をする。男は指先を女の股間に這わせているが、もう敏感な部分に直接触れずとも、どことはいわず肌に触れているだけで
女の快感は急激に高まっていく。その女芽は早く触れて欲しいと懸命に膨らみ自己を主張する。膣口はひくひくとひだを動かして、
開き閉じするたびに濃い愛液の涎を迸らせる。その浅ましい股間のいやらしさに女の口淫の効果も相まって、男の一物は見る間に硬さと
大きさを取り戻した。反り返った肉杭は、まるで膣に挿入するかのように、ごつごつと女の喉の奥深くまで貫いている。

「うっ、くう。もういいぞ。今日は一回切りだけど、しっかりと一番奥まで突っ込んでやるから、たっぷり味わうんだぞ」
もう自身も限界に近づいてきた侍は、女の腕を縛る下げ緒を掴んでその体を起こすと、彼女を抱きかかえてベッドから降りる。その手が
触れると女の身体はそれだけでびくびくっと震え、切なそうに息を荒げた。
「ふあぁ。は、早く。約束したではないかぁ。もう真剣に駄目なのだ」
「ちょっとだけ我慢しろ。ここで入れたらお前、本当に漏らしちまうだろ」
侍は女忍者の足に引っかかった下着を取り去り、前の腰布も邪魔にならぬように後ろと同じく帯に挟み込む。そして自分の下半身にまと
わりつく脱げかけの衣服を蹴り捨て、彼女の太腿を持ってその身体を後ろから抱え上げた。股を大きく拡げられ、隠すものの無くなった
女の股間は無防備にその全てを晒している。男は肉杭の切っ先を秘唇の真下にあてがうが挿入はせず、女を抱えたまま中庭に面する
窓際へ向けて歩き始める。男が歩くたびにその先端がわずかに女の秘口を撫で、それだけで彼女はいきそうになるが、この後に待つ
歓喜を思って、ぐっと目をつぶって懸命にそれに耐えている。

男は抱えたままの女の足先で鍵のかかっていない窓を押し開けた。二階にあるスイートルームの窓の外には小さなバルコニーがしつら
えてある。男は意識を集中して素早く外の気配をうかがった。さすがにまだ夜も明け切らぬ時間帯のこと。中庭に人の気配は無い。いざと
なればマモーリスで闇に閉ざしてしまおうかと思っていたのだが、取り越し苦労だったようだ。
男は低いバルコニーの手すりから乗り出すように女の体を持ち上げる。
「あぁ……あぁ……もう、駄目。おちんちんくだひゃいぃ」
「俺ももう限界だ。よく我慢したな。イッていいぞ」
 ぬぷっ、ずぶ、ずぶり。
「んはああああぁぁぁぁぁぁっ!」
 ずぶずぶっ……ずぬんっ。
充血し膨らんだ亀頭が女の膣内の粘膜の襞をかきわけて天井を荒々しく擦りながら押し入ってくる。女の上体が不安定に前に倒れ込む
のを、腕に縛った下げ緒を男が歯でがっちりとくわえて引き留める。女の上体が前傾したことで挿入の角度がより深くなり、潤沢な愛液に
満ちた膣壁がぬるぬると肉杭を飲み込んで、根元まで一気に埋まった肉の先端が最奥にある子宮口を突き上げた。
「あ、あっひぃぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜ぁっあ、あっ、あっああがあぁぁぁぁぁぁ〜〜〜」
その瞬間に女は待ちに待った絶頂を迎え入れた。女の子宮は男を受け入れようといつもより下に降りてきており、そのとば口を強烈に
押し上げて形を変えてしまわんばかりに男の肉杭が打ち込まれる。最奥に到達すると同時に男の肉棒も限界に達して脈動し、その亀頭の
割れ目から熱い白濁液を吹き出した。
 びゅくっ、びゅっ、ぶぴゅ……びゅぴゅっぴゅっ…………。
「で、出てりゅっ。っあ、熱ぅっ! お腹の中熱いよぉぉ〜〜。あああああ、もう死んじゃう、死んじゃうぅっっ!!……!?…………」
勢いよく吹き上げる精液が子宮の奥の壁を叩くたび、女は断続的な絶頂に襲われる。限界まで焦らされた彼女の身体は、ただの一突きで
何度もの絶頂を迎えてしまう。すでにその目はなにも見ておらず、舌はだらしなく垂れ下がって、目から涙が、口元からは涎が垂れて
いる。男が出せる限りの精液を子宮内に放出し終えると共に彼女は失神し、その全身が弛緩して尿道口がゆるんだ。
 ぷっしゃぁぁぁーっ……しゃしゃゃしゃぁぁ……ぁっ……。
尿口から中庭の草木に向けて勢いよく液体が噴き出し、女忍者はお漏らしをしてしまう。その奔流が止まったところで、侍は締め付けの
ゆるんだ肉壁からずるりと逸物を抜き出した。女の股間からは、胎内に収まり切らずにあふれ出る精液と愛液が混ざり合って滴り落ち、
バルコニーの床を濡らし続けていた。

* * *

「はあ、マモーリスよりもモンティノが必要だったか。こりゃ沈黙の杖でも部屋に置いとかないと駄目かな」
濡らした布で自分の体を拭き、女忍者の股間も丹念に拭い終わると、水差しを取って中に残った水を一滴残らず飲み干す。それでよう
やく侍は人心地ついた。思ったより早い時間だったのか、一戦交えた後でもまだ日は昇る気配がない。気を失っていた女忍者は、今は
ベッドでこの上なく幸せそうな寝顔で眠っている。買ったばかりの真新しい服は、飛沫を少し浴びただけで奇跡的にほとんど汚れてお
らず、着せたままで寝かしておいた。
床に転がるカエルの置物を拾い上げて合い言葉を唱え、起きる時間に動き出すよう魔力を調節し直す。それをチェストの水差しの脇に
置くと、服を脱ぎ捨てて裸になり、女を起こさないように注意してベッドに潜り込んだ。枕元に落ちていた彼女の下着きを弄びながら、
侍は可愛く愛しい女忍者に添い寝する。間近に眺めるその顔はいつ何度見ても見飽きることがない美人でありながらも、妙に可愛らし
さを感じさせる。
今更ながら、男は自分の恵まれた状況に感謝する。彼自身はそういう風に仕付けてきたつもりは無いのだが、まだ小娘の頃から、彼女
が彼を慕う気持ちは不思議なほど強いものだった。まあ、控えめに言っても彼女は変態だし、最近は、裏で色々と妙な関係も持っている
様子だが……。
(なんだかんだ言っても可愛いなあこいつ。……にしても、あの胸がよくこんなに綺麗に服の中に収まってるもんだよな)
昨夜は結局触らず仕舞いだった圧倒的な質量を持つ胸に顔を埋めて、男は二度寝を決め込んだ。張りと弾力に富みながらも柔らかく包
み込む乳房を堪能しつつ微睡み始めた時、普段は赤子のように熟睡する女が、珍しく小さな寝言を呟いた。

「私は……小娘じゃないぞぉ。もう成人ひた大人だぁ」
(……ああ、この乳は立派に大人だ。もうこれ以上ないくらいに育ちきってる。でもな、お前自身は小娘ぐらいでいいんだよ。変わるなとは
言わない。……けど、あまりこちらの世界には染まってくれるなよ)
「……だぁは駄目だなぁ。そん……っ派な大人になれないぞぉ」
「ん?」
「ほらぁ、まだ縛られてぇ三日…………簡単には殺さ……」
「……なに物騒な夢見てんだよ、こいつは」
悪魔的な乳の誘惑に抗って、男は女の顔に目を向ける。その目に映ったのは、さっき見た心温まる寝顔ではなく、この上なく邪な笑みを
浮かべてにやついた寝顔。
「――復讐、だ。イキそうでぇイケないのがぁどんなに……まだだぁ〜。まだたったの三十五発ぅ…………むにゃ」
男はベッドから落ちた。
「うっわー。こいつ滅茶苦茶根に持ってるよ。案外執念深い女――」
「でも、でも……死んでも生き返らせて絞り尽くしてあげりゅからなぁっ!!……ふふん」
「記憶を失えぇーーーい!!!」
鞘に納められたままの村正が女の脳天に振り下ろされた。


侍自身がゆるいと評したこの城塞都市だが、それでもこの街は否応なく生と死を内包している。冒険者達は今日も迷宮で傷つき死んで
いき、彼らを抱える街自体にも死の影はまとわり付いている。しかしそれはどうあれ、これからもこのスイートルームはゆるくて平和で
あればいいと、再び気絶した女忍者の胸に埋もれて眠る男は願って止まなかった。



〜 了? 〜




* おおっと 後日談!! *

城塞都市の路地の奥にある袋小路。二人の冒険者の男女が絡み合い、行為に耽っている。男に馬乗りになって腰を動かすのは裸の女。
顔に紫黒の口当てと頭巾を着けてはいるが、その見事な肢体は紛れもなく件の女忍者。下になっているのは彼女の恋人の侍である。
「あはぁっ、んくぅ。一度、こうして街中でリーダーとしてみたかったのだ。なに、こんなところに来る者などそうはいない。それに顔は隠して
いるから、誰かに見られようと構わないだろう」
「ぐっ、お前――」
「まだイカせてはやらないぞ。リーダーには私の想いをたっぷりと受け止めてもらわねばならぬからな。そう、たっぷりと……な」

二人は滾る情欲を押さえられずにこんな場所で行為に及んだものだろうか。だが、男の腕と脚が革紐と縄を使って巧みに拘束されている
ことが、その考えを否定する。もう何回射精させられただろうか。男の体力も最早限界だった。そんな彼の状態に構わず、女は荒々しく
腰を使ってその肉杭を貪り犯し抜いている。遠くなる意識をなんとか繋ぎ止め、男は女に向けて疑問を投げかけた。

「お前。な、なんで……こんな、ことを」
「なんだ、聞かねばわからないのか? もちろん街の中でしたかったからだ。あなたが悪いのだぞ。私がどんなに誘っても、やれ青姦は
嫌だの、街中だと人に見られそうだの、細かいことばかりにこだわって」
「細かい事ってな……。しかし、だからってこれはないだろう。薬まで盛りやがって。な、せめて縛るのはやめないか? もう逃げよう
なんて思わないからさ。どうせするなら俺も楽しみたいなあって」
男は同情を引くように弱々しい笑みを浮かべ、なんとかこの状況を脱しようと彼女に懇願する。

「それだけ口が動くのなら、まだ楽しめそうだな。なに、私が動くから、あなたはそうして転がっていればいいのだ。ほら、さぼっていると
誰か来てしまうぞ。私はむしろ見て欲しいぐらいなのだが、これでもリーダーに遠慮しているのだ」
「くそっ。どうあっても逃がすつもりはないってことか」
「ん? なにか言ったか?」
(これはまたお仕置きが必要だな。次は記憶から消し飛んでも身体は忘れないぐらいに徹底的に辱めてやるから覚悟してろ)
「ふふん。むぅ、しかしさすがに私ももうお腹一杯かな。ほらもうこんなに下腹がぽっこりしてしまっているぞ。子宮がリーダーの子種で
一杯でたぷんたぷんだ。これだけ中に出されたのだから、今日こそ子を孕めたかなぁ。……でも念には念を入れて、私も限界に挑戦
するから、もう少し頑張ろうではないか」
「死んでしまいますよ」


〜 了 〜




…ところで、何か忘れてるんじゃないかい?
冗談! 冗談! これで全部だ。

”また後でな(ニヤリ)”