壁の染みを数えればこの恐怖も薄らぐかもしれないな。 
 ただ一人で迷宮にいる恐怖を忘れられるなら何でもしよう。 
 最後に残った僧侶もさっき死んでしまった。 
 残されたのは棺桶が五つ。それも二つは灰になっている。 
 最初に死んだ司教を復活させようとして失敗。灰を復活させる勇気はでなくて戻ろうとしていたらこの有様だ。 
 本当はロスト覚悟で復活させるべきだったのかもしれない。 
「ふふ、一人で寂しそうね」 
 声に反応して顔をあげると、俺の周りに並んだ棺桶の上に女がいた。 
 どうしてこんな迷宮に一人でいるのだろうか。高レベルの女忍者ならば確かに一人もあるかもしれない。 
「羽?」 
 だけどその見目麗しい女には蝙蝠のような黒い翼が生えていた。 
 迷宮に存在するモンスター、淫夢を見せると言うサキュバスだった。 
「はは、そうだよ。一人だよ」 
 俺は力なく笑う。強がった所で意味はない。どうせ体力の残り少なくなった俺では一人で迷宮をでる事はできない。 
 このまま迷宮で死を迎えるのみだ。 
「ふぅん、達観者って事ね。ねぇ、最後の楽しみ、欲しくない?」 
 目の前のサキュバスが薄切れと同じだった衣類を投げ捨てる。途端に香る淫靡な香り。 
 どうせ助からないのなら極上の快楽で死ぬのも悪くない。 
「ワタシね、一度人間の男とちゃんと楽しんで見たかったの。ふふっ、おかしいでしょ?」 
「あぁ、そうかもな」 
 棺桶から立ち上がり扇情的な身体を惜しげもなく俺に見せつける。いや、コイツらにとっては普通の行動だろう。 
 否応なしに男の部分が反応してくる。 
「優しく、してね?」 
「最後の女だからな。乱暴にはしないさ」 
 倒れ込むように俺にしなだれかかる彼女を優しく抱きしめて桃色の唇に口づけをする。 
「ロイド……」 
「え?」 
「俺の名前、呼んでくれないか」 
 彼女がフワフワした優しい笑顔見せてくれた。 
 それはまるで迷宮に舞い降りた女神のようだった。 
「ふむっ、ん……ちゅ」 
 柔らかな舌を絡ませあい互いを貪る。濃厚な甘い蜜のようなサキュバスの唾液が俺の口内を染めていく。 
 息を継ぐ暇を与えずに角度をかえ、深さをかえ彼女の唇を汚す。 
「んっ! ちゅぅ、ん、っちゅ。んんっ! はぁ、ちゅっふむ」 
 彼女はまさに極上の食べ物だった。今まで食べた何よりも美味しい彼女の唾液に酔い痺れる。 
「ね、こっちも……」 
 サキュバスに取られた俺の手は掴みきれない程の双乳を掴み、ぐにゃりと彼女の形を変えさせた。 
 手のひらに当たる小さな突起を潰すように、手で双乳をこねていく。 
 俺の手の動きに合わせて双乳は淫らに形を変えていく。 
「んっ、あ。はぁ。イド、あん」 
「もう濡れたんだな」 
 空いた手を蜜口にそえると、零れでるように愛蜜が溢れ手を濡らす。 
 恥ずかしげに身をよじる彼女を見ていると更なる意地悪を思いつく。 
「へぇ、サキュバスのは甘いんだね」 
「あっ、やあぁ、そんな事しないで」 
 掬い取った彼女の愛蜜を見せつけるように舐めると、濃厚な甘い蜜のような不思議な味がした。決して不味いなんて事はない。むしろ幾らでも舐めていられそうだった。 
「んぁ、やんっ、ああんっ」 
「ぐちゅぐちゅ言ってるね。そろそろ……いいだろ?」 
 朱く染まった頬が静かに動いた。 
 着ている物を放り投げて、彼女に覆い被さる。 
 魔物相手に何をしているのだろうと今更になって思うが、今更すぎてどうでもよくなっていた。 
 蜜口の中は驚く程に柔らかく俺を迎え入れてくれる。 
 ぐちゅぐちゅと蜜を鳴らす彼女の中は男を満足させる為の名器だった。 
「うくっ、はぁ。すごいんだな。はぁ、動く度に肉が吸い付いてくる」 
「あっ、あっ、ああっんっ、んんぁ、やんっ、ああんっ!」 
 無駄に体力のあり余っている戦士だったおかげで、疲れる事もなく突き続けられる。 
 もっとも名器が相手ではすぐにヤられてしまうだろうが。 
「あんっ、やっ、そこ、あっ駄目っそこは、あああ」 
「へぇ、弱い場所もあるんだ」 
 相性がいいのか俺の一番気持ちのいい動かし方をすれば、彼女はどうしようもなく喘ぐだけの獣になっていく。 
 淫らな魔物の代表とも言われるサキュバスを喘がせている快感に酔いしれていく。 
 果てるのもすぐかもしれない。 
「ぅあ、ああああ、あはあ。あああ! あっふああっ、あっあんんぁ!」 
「っく、もっと、したいんだが、っくぅ」 
 吸い付く肉が俺の脳髄をとろけさせる。 
 彼女の唇に吸いつき嬌声も快楽も全てを飲み込んだ。 
「んむぅぅぅぅう!」 
「んぐっ、ん、んむ、ん」 
 どくりどくりと白濁した欲望が彼女の中へ迸り飲み込まれていく。 
 サキュバスの中で勢いよく果てたのだ。 
「はぁはぁ、あっはぁ、凄い、イドの気持ちいいわ」 
「はぁ。悪いまた大きくなっちまった」 
 出したばかりだと言うのに我慢の効かない身体。彼女はにっこりと微笑んでくれた。 
 それはまるで迷宮に舞い降りた女神のようだった。 
「いいよ。好きなだけ。イドの好きにして」 
「ありがとう」 
 いつの間にか孤独の恐怖は消えていた。 
*後日談* 
 迷宮の奥地で全滅したパーティが発見された。蘇生に失敗したのか、灰になった遺体が二つ。そして死体が三つだった。 
 あとの一人は既にロストしたのか、仲間を捨てて帰還したのか見つかる事は無かった。