迷宮最下層の第二の玄室へと続く地下道。歩を進める五人の冒険者の中で、女忍者だけが他のメンバーに少し遅れて歩いている。 
(うーむ。どうしたものだろう。リーダーとの営みには満足しているが、性の高みを目指す者として、果たしてこのままでよいものだ 
ろうか。彼は行為自体はもの凄く激しい時もあるけど、やっぱり私に対しては優しいんだよなぁ、えへへ。っと、そうではなくて) 
「忍者ちゃん?」 
司教が隊列を離れて下がってくると、忍者と手を繋いで定位置へと戻る。司教に手を引かれるまま、彼女はまた考え事に没頭する。 
(それは時々、アンちゃん達とあの張り型で楽しんではいるけれど、やっぱり彼女達は幽霊だからか、なにか違うのだ。入れるとちょ 
っと冷たいし……まあ気持ちいいけど。でも、一度はただ性のはけ口として扱われる、獣欲にまみれた行為も経験してみたいなあ。 
最近はベッドの上でリーダーに押され気味だし、新たな経験を積めば、彼との行為にもまた違った世界が−−) 
「忍者ちゃん。また遅れてる」 
「ん?あ、うん。ごめん司教ちゃん」 
「どうしたんだお前?さっきの戦闘でも注意力が散漫だったし、ここにも慣れてきたとはいえ、気が緩んでるんじゃないか?わかっちゃ 
いるだろうけど、迷宮じゃ人の命なんて軽いぞ。蘇生できるとはいえ、それも絶対じゃないんだからな」 
「なんだ、体調でも悪いのか?ははーん。夕べはお楽しみでしたねってやつか。それとも月に一度の女の……おゥっ」 
終わりまで言わさず、ドワーフの戦士の膝裏に司教が爪先で蹴りを入れる。不意を付かれた彼が、バランスを崩して片膝突いたところ 
に君主が足を乗せ、そこを支点に逆足で顔面に膝蹴りを叩き込んだ。仰け反って司教の足下に倒れ込む戦士。 
* おおっと *
「まさか、下は穿かずに純白のガーターだけとは……」 
「穿いてる。下着も純白だしレースで透け透け」 
司祭は、戦士を踏みつけようとした。そして、三回あたり三十四のダメージ。 
(うーむ。いっそのこと街で男を七人ほど漁って、まとめて相手に……いや、それはないか。これまで異性との経験はリーダーだけだ 
が、どうも彼以外の男とする気にならないんだよな) 
「そこ。カシナートを回すんじゃない。それから、お前も考え事なら街に戻ってからにしろよ」 
「ああ、うん。気を遣わせてしまったな。もう大丈夫だ」 
「そうか。おい、君主。止めは刺すな。じゃれてないでさっさと次の玄室に行くぞ。」 
* * *
次の角を曲がれば第二の玄室というところで、侍と忍者はほぼ同時に異変を感じ取った。 
「この感じは、妙だな。誰かが戦っている気配がする。しかし、数は多くないな」 
「うん。濃い血の臭いがする。それに……?」 
「余所との取り決めじゃあ、今日、最初にここを回るのは俺達だったはずだよな?」 
「そう。九階に戻って交代するか、もし全滅しても二時間経つまでは、他のパーティーは下りてこない……はず」 
「まあ、考えても仕方無い。とりあえず扉の前まで行こうや」 
パーティーは程なく第二の玄室の入り口へと辿り着く。鋼で出来た分厚い扉の向こうからは、確かに戦闘の音が響いている。 
そして、かすかに聞こえるのは低い唸り声。それは獣じみてはいるが、獣のそれとは明らかに違う禍々しい殺気が籠められており、扉 
の向こうにいる存在の異質さを物語っていた。 
「気を発しない不死者がいれば別として、とりあえず中から感じる生気は三体、か」 
「その中に、俺達にも強烈に殺気を感じさせるような奴が最低でも一つ」 
「この獣気は十中八九レイバーロードだと思うが、それにしてもこの嫌な圧力はなんだ」 
「どっちにしろ行くんだろ?相手がなんにせよ、負けてもせいぜい死ぬだけさ。ほら開けるぜ」 
「血の臭いに紛れてるけど……これはやっぱり」 
「忍者ちゃん。どうしたの?」 
戦士が扉を一気に蹴り開け、間を置かずして一行は玄室内に躍り込んだ。玄室の左手には、横にほぼ一文字に絶ち割られた二体のファ 
イージャイアントが、血溜まりを作っている。 
そして、部屋の中央。闇の中に浮かび上がるは、大きな二本の角の間に真紅の両眼を輝かせる、黄金色の甲冑を身に纏った大柄な男。 
ワードナ無き今もこの迷宮を守護する狂気に憑かれた君主、レイバーロードである。 
その視線の先には、二人のハイプリーストが腰を抜かしてへたり込んでいる。 
「なにがあった。魔物の同士討ちとはな」 
「細けえことはどうでもいい。ただ、あれが普通じゃないってことは確かだ」 
「ああ、いつものとは感じる気の質が違う。呪文は出し惜しみするな。距離があるうちに先制するぞ!」 
「そのつもり」 
戦士と君主が壁を作り、侍と司教は核撃の呪文を詠唱し始める。しかし、同時に呪文を唱えるはずの女忍者は、あろうことか、二人の 
口をすっとその手で塞ぎ、詠唱を遮った。そしておもむろに仲間達に頭を下げる。 
「待ってくれ!ここは私に任せて欲しい。私が一人でやるから、みんなは先に次へ行ってくれ」 
「はぁっ?なに言ってやがる。この妙な威圧感を感じてねえのか!あれはなにか違うってのが−−」 
「だからこそだ!だからこそここを一人で乗り切らねばならぬのだ」 
「どうした。そんな場合じゃねえのはわかってるだろ。すぐに来るぞ。おい、リーダー!」 
侍は顔を上げた女忍者の目をじっと見つめると、軽く頷いてから仲間達に言った。 
「こいつの好きにさせてやってくれないか」 
「お前までなに言ってやがる」 
「……それでいいんだな?お前がいいって言うんなら、今のリーダーはお前だ。俺は従おう」 
「すまんな。これではリーダー失格だろうが、こいつなりに思うところがあるようなんだ」 
「ったく、しゃあねえな。でもいいか。お前がいないと宝箱が開けられねえ。さっさと追いついてこいよ」 
「いや。ここで待ってろ。俺達は六番目の玄室まで突破してから、テレポーターで階の起点に戻ってもう一度回ってくる。その後で、 
もう守護者のいない玄室の宝を回収した方が手間がいらない。それに……もしお前が死体になってたとしても合流できる」 
「ありがとうみんな。出来るだけ生きて待っている」 
「そろそろ、来る」 
司教がそう言った矢先。レイバーロードがその右手の長剣を一振りすると、そこに貫かれていたボロくずのような僧服姿は石壁に叩き 
付けられ、巨人の血溜まりの中に沈んでいく。 
そして、狂君主はゆっくりとこちらに向き直ると、大きく一声咆哮した。 
それを切っ掛けに、玄室の中の全員が行動に移る。前衛三人は司教をガードしつつ、第三の地下道に続くテレポーターへと走った。 
その動きに反応したレイバーロードは、彼ら目掛けて唸りを上げつつ最短距離で突撃するが、その線上に女忍者が割って入り、手甲を 
巧みに使って力の方向を逸らし、その凶剣の矛先を受け流す。 
だがその勢いを殺しきれず、脇を掠めた剣は女忍者の胸当ての留め具を砕き、狂君主と彼女の顔がぎりぎりまで接近する。その刹那、 
女は耳打ちするようになにごとかを囁いた。 
すると、それを聞いた狂君主は、その巨躯に似合わぬ速度で大きく後ろに飛び退いて女との距離をとる。 
その間に、他の四人はテレポーターの中へ姿を消していたのだった。 
「どういうつもりだ。人の娘よ」 
喉の奥から獣に似た唸りを鳴らしつつ、レイバーロードは低い声を発した。その体は血の衝動を抑え切れぬように時折震えている。 
しかし、それを意に介さぬ風に、女忍者は留め金の壊れた胸当てを外し、脇の破れた鎧下も脱ぎ捨てる。次に下半身の装備をも外し、 
最後に転移の冠を床に置く。そうして、見る間に黒い下着と忍びとしての動きを阻害しない手甲のみの姿になった。 
先程の激突のためか、そこに詰め込まれた胸を戦闘中に固く締め付けるはずの、鋼繊入りのチューブ状の下着からは、はち切れんばか 
りの乳房が上も下も幾分かはみ出してしまっている。 
「答えぬならそれでよい。だが、一人で鎧も無しに戦おうとは、己の実力も弁えぬ愚かな忍びよ」 
そう言うと、狂君主はその衝動を解放し、甲冑の重さなどまるで感じさせない加速で女に迫った。その広刃の剣の切っ先は真っ直ぐに 
彼女の顔に向けられている。 
と、暢気にたわわな胸を下着に収め直そうとしていた女忍者は、いつになく凛々しい顔で狂君主をキッと見やり、鋭く叫んだ。 
「私は女の子が大好きだ!いや、正確には男も大好きだから、両刀なのだ!!」 
「なあぁっ!?」 
その突然の告白に狂君主はつんのめり、自らの突進の勢いで転がりそうになるのを、高位の魔物の意地でなんとか踏み止まった。 
そして、先程とは全く違う透き通った声色と口調で、若干裏返り気味に言葉を返した。 
「な、な、なにを言っているのじゃうぬは!戦闘の最中に戯言をほざくでないわ!!」 
「なにをと言うならそちらの方もだ。そんなに下の口から涎を垂らしながら戦いもなにもあったものではないだろう。血を以て性の衝 
動を贖おうなどと、そんな不純な動機で戦闘をするなど、性に対する冒涜ではないか!」 
「たわけ!儂はそのような欲求など持っておらぬわ。不死の魔人とさえ呼ばれる儂を愚弄するか!」 
「なら、なぜさっき、その体の火照りを私が慰めると囁いた時に動きを止めた。あなたは未だあまりにも女ではないか!!」 
「そのようなことを戦いの最中に囁かれたら、誰でも引くわ!大体、なにを根拠にそんな世迷い言を」 
「血の臭いに紛れてしまっているが、私にはあなたの蜜壺から滴る蜜の匂いがはっきりとわかる。それと……別のもう一つの匂いも」 
「己の嗅覚を証拠じゃと言うか」 
「それに、私の師が昔言っていた。レイバーロードはその肉体と心に宿す獣欲を厭い、それを厭うがため高潔であろうとし、その高潔 
さ故に狂気に落ちた女君主であると。そして、自分を救ったワードナに忠誠を誓い不死の魔人と化すも、その獣欲が満ちるたびに、他 
者の血を以て衝動を散らしている、とも」 
「ふん、驚いたの。大雑把ではあるが、大体合っておるわ。じゃが、それがどうした。儂は己の獣の欲を厭うておる。そして、それを 
浅ましい肉欲として発散することを恥じ、血の匂いでそれを癒す。これはこれで狂気の君主に相応しいとは思わぬか?」 
「思わない。だから、さっきも言ったとおり、私の身体を使えばいい。私があなたの肉欲を全て受け止める」 
「理解できんの。なぜ、そうまでする」 
そう言ってしばらく黙った後、レイバーロードは自らの兜に手を掛けた。そして仮面と一体化したそれを脱ぎ、外気に素顔を晒す。 
「……まずい。なにがまずいのか自分でもよくわからないが、とにかく滅茶苦茶可愛いではないか」 
両拳を力一杯握りしめて、女忍者はつぶやいた。彼女自身も美人だと自負していたのだが、それは自惚れだったのではと自問する。 
黄金色の兜の下から流れ出てきたのは、肩のあたりで切りそろえられた銀白色の髪。前髪は眉にかかる長さで整えられている。 
その髪の色と対照的な艶やかな茶褐色の肌が、彼女が南方の出身であることを示している。やや吊り気味な大きな目には翡翠色の瞳。 
それを縁取る濡れたような長い睫毛。前髪から透けて見える、目と同じくやや上がった弓形の眉が意志の強さを感じさせる。 
顔の中心には、高過ぎず低過ぎない筋の通ったやや小さな鼻。上唇よりやや厚い下唇を持った小振りな唇。 
狂君主の禍々しい兜の下には、同性もが見蕩れるであろう美女の顔があった。 
「よかろう。じゃが本当に儂を受け入れてくれるのじゃな?肉欲でこの飢えが満たされなければ、今の儂は躊躇無くうぬを殺すぞ」 
「ああ、あなたの全てを受けきってみせよう。もし敵わなければ、殺せばいい。それはそれで本望だ」 
「よう言うたわ。せめてうぬの仲間が拾って帰れる程度で済むよう祈っておくがよい」 
言って、狂君主は全身の甲冑を脱ぎ始めた。どういう手際だろうか、瞬く間に鎧の各部位が外されていく。彼女は鎧下も脱いでしまう 
と、白絹に金の縁取りの施された裾の短いスリップと脚ぐりの浅いレギンスだけの姿になった。 
(これはまた、ずる過ぎる。なんといういやらしい身体なんだ。だが、やはり……) 
鎧を脱いでいくらか低くはなったが、それでも185cmはあるだろう茶褐色の長身。胸は女忍者ほどの大きさでこそないものの、先がつんと 
上を向いて綺麗な丸みを帯びており、見るからに素晴らしい張りと弾力を感じさせる。その身体には筋肉がところどころに浮いてはいる 
が、その膂力から想像されるほどではなく、張り出した尻もしなやかな足も、多分に女性らしさを残した柔らかなシルエットを保っている。 
女に求められる膨らみ、くびれ、柔らかさが見事に一体となった、世の大概の男を狂わせるだろう身体がそこにはあった。だが、その 
股間には薄手の衣類を押し上げて、女には不似合いなものの形がはっきりと浮き出ている。 
狂君主がレギンスを脱ぐと、女忍者の目はその一点に釘付けになる。かろうじて秘所を隠すだけの小さな下穿きからは、硬く隆起した 
凶悪なものがそそり立っていた。その大きさと太さは彼女の連れ合いのものには及ばない。だが、茶褐色の肌よりやや色濃い錆色の 
肉茸は波打つように曲がっており、なにより傘の高さが尋常ではなかった。 
残りの衣類も全て脱ぎ捨てると、その滑らかな肌はすでに汗ばんで上気し、しっとりと濡れていた。いやがおうにも存在を主張する怒張 
の周囲には極薄い銀毛が生えるだけで、その下の秘唇はほとんど丸見えになっている。わずかに開いたそこからは濃厚な匂いの濁った 
体液が滴っていた。 
(うっわー。凄いおちんちん。あれ、カシナートみたいに回転したりしないかな。ううっ。なんだか背筋がぞくっとした。しかし割れ 
目の方はそれに比べて随分と可愛らしい。ぷにっとしてて、あんなにやらしい汁を垂らしちゃって」 
自分の股間に完全に魅入っている女忍者に対し、レイバーロードは少し恥ずかし気ではあるが、堂々と尊大に言葉をかける。 
「むう。あまりまじまじと見つめるでないわ。儂は己のこれが嫌いなのじゃ。しかし、うぬはまったく驚かぬのじゃな」 
「……えっ?ああ、女の匂いに混じって濃密な男の匂いがしていたから予想はしていた。しかし、これほどとはさすがに想像外だ」 
「だから、いつまで見ておる。さっきからどうにか堪えておったが、儂ももう衝動を抑え切れぬ。ほれ、尻をこちらに向けい」 
「ああ、そうだな。まだ当分大丈夫だが、あまりぐずぐずしてると仲間達が戻ってきてしまうな。あ、ちょっとだけ待ってくれ。いま 
全部脱いでしまうから。それから、今更なのだが中には出さないでほしいのだ。さすがに間違いがあっては困る」 
そう言うと女忍者は壁の方を向き、腰骨で穿いた股上の浅い小さな黒布を脱ごうと前屈みになった。しかし、すでにレイバーロードの 
耳にその言葉は届いていない。女が腰紐に指をかけたところで、その尻を両手で掴み、下着の股の部分をずらして、まだわずかに濡れて 
いるだけの肉壺に一息に挿入する。 
「かはあぁっ!」 
歪なごつごつした熱い塊が、女の膣壁を容赦なく擦り上げる。単純な動作でそれが抜き差しされるたび、張り出した傘の部分がひだの 
豊富な洞内を刺激し、引き抜かれる直前で返しとなって入り口に強烈に引っかかり、肉杭が完全に抜け落ちるのを留めている。油断し 
ていたところを貫かれたことで、一瞬意識が飛びそうになった女忍者だが、狂君主の怒張の先が早くも膨れ上がり精を放出しようとし 
ていることに気づき、意識を取り戻す。 
「……んッ。うっ、ううッ……。えっ、もう?うあっあっ、ちょっと待って----」 
彼女の言葉を待たず、ほんの十数突きで、尋常ではない量の精液が彼女の膣内に吐き出された。 
「やっ!ちょっと。なかっだひっ……は駄目らと言ったではな、んはぁっ!!」 
しかし精を吐き出しながらもその腰の動きは止まらない。翡翠色だったはずのその目は、今は爛々と紅く輝いており、口からは低く獣の 
唸りがもれていた。射精しながら彼女の中を突き続けるそれの固さは一向に衰えず、初めての感覚に女忍者の欲情も一気に高まる。 
狂君主は立ったまま後ろから貫かれる彼女の左膝を抱え上げ、片脚を高く持ち上げると、大きく開いた脚の間に自分の脚を割り入れ、 
より深く腰を密着させる。腰が引かれるたびに高い傘が膣内の精液を掻き出し、女の秘裂からは大量の白濁液がこぼれ落ちた。彼女の 
膣口はそのたびに意識することなくキュッと窄まり、体内の精液を逃がすまいとする。 
先程よりは幾らか時間がかかったものの、程なくして怒張は再び大量の精液を排出した。一回目よりも互いの腰が密着していたため、 
それはより胎内深くまで注ぎ込まれる。しかし、今度は途中で彼女が崩折れたため、陰茎は膣内から抜け、まだ出続ける精液の大半は 
彼女の白い背中に降りかかった。 
「はあっ。まさか出しながらも抜かずに突き続けるとは。それにしても凄い量だな。なあ、もういい加減に中には----」 
そう言いながら顔だけ振り向いた女忍者の目の前には、未だ衰えないそれがそそり立っていた。床に伏した時に半脱げになっていた彼 
女の下穿きを無造作に脱がすと、狂君主はへたり込んだ女の両脚を後ろから抱え上げて、そのまま体ごと軽々と持ち上げる。そして、 
その傘高の先端をまだ口を開けたままの秘唇にあてがうと、抱えた腕を下げ重力に任せて真っ直ぐに貫いた。 
「あっんひいぃぃ!深……いッ」 
背後から抱え上げられたまま、彼女の体を支えるのは脚を持ち上げる腕と股間に突き刺さった肉杭のみ。彼女にかまわず狂君主はただ 
無言で腰を強く動かし続けている。獣のような性交とはよく言うが、本来の獣のそれは決して荒々しいものではない。獣はただ種を残す 
ためにシンプルに行為を行う。この場合の狂君主の行為はそれとよく似通っていた。 
しかし、決定的に違うのは、それが子を成すためではなく、ただ己の衝動を満たすために行われていることである。行為は獣のそれな 
れど、その目的は人のそれそのもの。肉の打ち付けられる音がただ響くだけの、獣でもなく人でもない交わりが繰り広げられている。 
「はひっ!?ふぁああっ。この突き上げは、気を抜くと意識が保てなぁっ!く、なるな。しかし、さすがにこのまま犯られっ放しではい 
られない。だいたい、そちらが気持ちよくなるばかりで、私はまだ一度もイカされていないではないか。私も楽しませてもらうっ」 
そう言いつつも、滾る獣欲を思うがままにぶつけられる快感に目覚め始めた女は、時折艶っぽい嬌声を上げていた。だが、技巧と快楽 
に満ちた侍との交歓を散々経験してきた彼女にとっては、ただされるがままの行為に物足りないものを感じていたのも確かである。 
とは言え、両脚を抱え上げられた、この体制では出来ることは少ない。そこで女はまず己に突き立ったものを千切り落とそうというほど 
の力を込めて、その膣口と内壁を限界まで絞り上げた。突然の反撃に狂君主が一瞬動きを弱めると、脚を抱える両手を払い落とし、 
上体を前に倒して石床に両手を着く。すると己のものに喰い付かれている狂君主の体も自然と前のめりになった。 
そこで股間に籠めた力を一旦緩めると、繋がったままのそこを支点として体幹を捻り、両脚を真一文字に広げて体の向きを素早く反転 
させ仰向けになる。そして、再び膣口を極限まで引き絞ると、引き締まった腹筋と両腕の力を使って一気に上体を起こして、狂君主と 
抱き合う形になり、そのままの勢いで両手でその肩を強く突き飛ばした。狂君主は石床に尻餅を着く形で仰向けに倒れ、その上に馬乗 
りになった女忍者は、ようやく事の主導権を握ることに成功した。 
そして、括約筋を絞めたり緩めたりすることで内壁を動かし、腰を動かさぬままその肉杭に刺激を与える。さらに上から覆い被さる体制 
になって腰を回すようにグラインドさせると、はや三度目の射精の気配が感じられた。 
「なんだ、またイってしまうのか?どれだけの量を出せば気が済むのだ。しかし、もう膣内には出させてあげないぞ」 
そう言って、腰を浮かしかけた女忍者だったが、突然その尻をがっちりと掴まれ、力任せに下から突き上げられた。それと同時に大量 
の白濁液がまたもや彼女の膣内に迸る。その放出が止まった頃には彼女の下腹はややぽっこりと膨らんでしまっていた。 
「いやぁっ、また中で出したなっ!?もしものことがあったらどうするのだ!私には愛する男もいるのだぞ。責任として愛人になってもら 
うにしても、初めての子ぐらいは彼の子を産みたいではないかっ」 
「……なにをたわけたことを言っておる。いらぬ心配をせずとも、儂のものに子を作る種は無いから、女を孕ませて子を成すことなど 
ありゃせんわ。まあ、女として子を成せるかどうかは試したことがないからわからんがな」 
「あ、自我を取り戻したのか。しかし、それなら一安心だ。彼にどう紹介と説明をしようか本気で悩んでいたのだぞ」 
「たわけ。じゃが、人心地着いただけで、まだ獣欲は治まってはおらんぞ。どれ、では憂いも無くなったところでまた始めるかの」 
「早いのは回数でカバーだな。あ、でもちょっと待ってくれ。他にも言いたいことが----」 
しかし、一時は翡翠色に戻っていたレイバーロードの瞳にはまた紅い光が差し、獣の唸りが一声大きく響き渡った。狂える君主は上体 
を起こすと一旦膝を突き、正面から女忍者を抱きかかえる姿勢を取った。白と茶褐色の裸身とが互いに絡み合う様は、実に淫靡な光景 
である。そして、単純だが力強い突き上げがまた再開された。子を孕む心配が無くなったことでその情欲に遠慮が無くなった女も、そ 
れに合わせて腰を上下に振り、相手の反応する部分を探してくびれた腰をくねらせる。その柔壁は彼女が意識せずとも自然と躍動し、 
くわえ込んだ逸物に絡み付く。間を置かずして四度目の射精に導くと共に、彼女自身もやっと絶頂を迎えることが叶ったのであった。 
胎内に収め切れない精液が逆流し、女忍者の秘所から溢れ出してくる。しかし、ようやくの絶頂の余韻に浸る間も無いまま、狂君主は 
また腰を動かし始めた。絶頂に至るまでが長かった事もあって、女の体は敏感になっており、その一突きごとに新たな歓喜が立ち上っ 
てくる。イキ狂った経験はあっても、攻めがいつ果てるとも知れず続くのには、彼女としても危機感をおぼえずにいられなかった。 
「あひっ!?んっぁ、ひっ、やらっ。こ、この」 
(さ、さすがにこれはまずい。いくら搾り取っても終わらないのでは、さすがに勝ち目が無いではないか。獣欲を満たせずに殺される 
どころか、その前にこっちで死んでしまいかねないぞ。冗談ではない) 
女は嬌声を上げながらも、頭の片隅に冷静さを取り戻して考える。まだ四回しか射精しさせていないとは言え、これまでのことを踏ま 
えると、いくらイカせようと限りが無いように思えてくる。そうして、再度絶頂に至り背を反らした彼女の目の前に、まるでそこだけ 
別の生き物のように揺れる茶褐色の乳房が飛び込んできた。 
これまでは向かい合わせで抱き合っていたため、二人の乳房同士が密着して押し合っていて気付かなかったが、肌とはやや色の異なる 
赤褐色の乳首は浅ましいまでに隆起している。普通ならこの姿勢だと彼女の眼下に来るはずのそれは、頭一つ違う身長差のため、思わ 
ず吸い付きたくなるような位置で存在を主張していた。 
(ああ、身体に似合わず可愛らしい乳首だなあ。……そうだ、彼女はこんなに可愛い女の子じゃないか。男の部分ばかりではなく、女 
としてもいただかないと死んでも死にきれない。しかし、こうなるとこの自慢の胸がむしろ邪魔だなあ) 
少しぽーっとする頭でそんなことを考えつつ、女忍者は相手の乳房を下から持ち上げて、張り出した自分の胸の上に乗せる。そして、 
目の前に収まったその乳房の先端の蕾を口に含んだ。 
「ふぁあっ」 
「えっ?」 
なんだか予想外に可愛らしい声が聞こえた。声の主は誰あろうレイバーロードである。女忍者が乳首を唇ではさみ、音を立てて吸い付 
いた途端、その動きがぴたりと止まった。 
「ふむ」 
そこで次はもう一方の乳頭を指で摘んで扱きつつ、こちらの乳房は柔らかく揉みながらさらに強く吸ってみる。 
「ひぃゃあぁぁぁぁぁんっ!?」 
「ふがっ」 
今度は可愛らしくも艶っぽい悲鳴だった。女を乳房に埋めるようにぎゅっと抱きしめてかすかに震えている。しばらくそうしていたか 
と思うと、胸に彼女を埋めたまま脱力してぽてんと仰向けに倒れた。女は弛んだ腕から抜け出してまじまじと相手の顔を見つめた。 
(これは。彼女って女としてはもの凄く弱いのではないか。あまりに感じ方が派手すぎる。ならば) 
「じゃあ、これならどうかなお嬢ちゃん。ヘッヘッヘー」 
エロ親父感満載の台詞を吐きつつ、女忍者の左手がワキワキしながら自分の尻越しに狂君主の秘所に伸びる。そこに触れた瞬間彼女の 
身体が一瞬強ばったが、気にせずに二本の指を第一間接まで押し込むと、指はすぐに穴を冠状に囲む粘膜のひだへと行き当たった。 
「んきゃぁぁっあっぁぁぁぁぁっ!!」 
そのひだに触れた途端だった。甲高い響きと甘い音色を持つよがり泣きに近い咆哮をあげながら茶褐色の肢体が痙攣した。その振動は 
下半身で繋がったままの女忍者の体内にも直接伝わり、膣内で未だ熱く滾る肉杭からは、これまで無いほどの大量の精液が注ぎ込まれ 
る。勢いよく吹き出す精液に子宮の奥壁を絶え間なく打たれ、敏感になっていた女忍者の身体もわなないて、一瞬頭が真っ白になる。 
一方の狂君主は初めて見せる恍惚の表情を浮かべて放心していた。 
* * *
その後もお互いに何度かの絶頂と射精を迎え、ようやく二人の獣の熱は治まりを見せ始めていた。今は膝立ちの狂君主のそれを、女忍 
者が体液にぬめり輝く大きな乳房で挟み込んでいる。その乳肉で揉み込み、擦り上げ、完全にくるみ込んで扱き上げた後で口に含み、 
その先から迸る白液を飲み下すと、残った体液をも丹念に舐め取って綺麗にした。そして、互いにようやく満足する。 
「これが人の営みというものだ。愛情をもって相手のものを慈しむ」 
「余計な世話じゃ。ふう、まあいいじゃろ。まあ、これは余計ではなく世話になったの。約束どおり生かしたまま返してやろう」 
「それはありがたいな。いや、こちらもいい経験を積ませてもらった」 
そして、女忍者は床に正座すると、ぽんぽんと自分の膝を叩いた。狂君主が怪訝な顔で眺めていると、彼女は満面の笑みを浮かべて自 
分の膝を指さした。 
「ほら、遠慮することは無いぞ」 
「……なんのつもりじゃ」 
「なにって膝枕も知らないのか?ここに頭を乗せて横になるのだ」 
「そのくらい知っておるわ、たわけ。なぜ、儂がうぬに膝枕されねばならんのだ、と聞いておる」 
「いいではないか。可愛い女の子に膝枕をするのは私の夢のうちの一つだ」 
「そんな下らん夢などウサギにでもくわせてしまえ。大体じゃ。儂はもう百数十年も存在しておるから女の子と呼ばれてもな」 
「……どうしても、駄目なのか?」 
女忍者の目は本気で潤んでいた。今にも声をあげて泣き出しそうな雰囲気に、レイバーロードはかなり渋々ながら従った。 
「な、ほらいいものだろう?それにこの方が話がしやすい」 
「あえていうなら体格から言っても立場が逆じゃろうに。で、なんの話じゃ」 
「単刀直入に聞こう。レイちゃんは処女なのだな」 
「……」 
「なに、恥ずかしがることはない。女として子作りしたことがないと言っていたし、さっき触って確かめたから間違いないだろう」 
「……これは突っ込んでいいところか?」 
「突っ込むってまだ犯り足りないのか。私は後ろの穴もいける口だが、レイちゃんのを入れるにはゆっくり慣らさないと痛そう----」 
「違うわっ!突っ込みどころを無駄に増やすでない。まあ良い、答えてやらんでもない」 
そう言うとレイバーロードは人であった頃を懐かしむように、また少しもの寂しげに語りだした。 
「察する通り、儂は男との経験が無い。まだ人だった頃に、機会は無くもなかったが、なにせこの身体じゃ。元々人に晒したいもので 
も無い上に、少々嫌な思いもしたからの。その頃の儂が清廉で廉潔たる君主を志したのもこれのためじゃ。儂の獣欲はそもそもこれに 
起因するものじゃからな。まあ結局は、君主になった後に墜ちてしまったがの」 
「ごめん。悪いことを聞いてしまったようだ。しかし、男に興味がないわけではないのだろう?その……ワードナとは?」 
「ふん。ワードナ様とはそのような関係ではないわ。あの方は魔に墜ち、殺戮の限りを尽くしておった儂を救ってくれたのじゃ。呪法 
により儂の精力を生命力に置換する術を施し、その代償として守護者たらんことを望まれた。元を辿れば、精力とは子を成す力。生命 
力そのものでもあるからの。もっとも、それもあの方がこの迷宮を去ってからは、効力が少し弱まっての。発散し切れぬ獣欲が溜まっ 
た時は、今回のような有様になるわけじゃ」 
と、彼女は顎で玄室の片隅の表面だけ乾いた血の海を指し示す。 
「まあ、我ながら馬鹿げた生命力じゃ。おかげで今では儂は半不死の存在じゃからの。おう、そうじゃ。精力を出し切った今の儂なら 
案外簡単に殺せるやも知れんぞ。うぬ、やってみる気はないか?」 
「悪い冗談だ。私は可愛い女の子を犯ることはできても、殺ることはできない。ところで、余計なお世話ついでだが、レイちゃんに是 
非引き合わせたい人がいるのだが」 
「待たんか。まず突っ込むべきだったが、そのレイちゃんというのはなんじゃ?」 
「ん?レイバーロードだからレイちゃんなのだが、いけなかったか?」 
「ふはっ。はは……はーっははははははッ」 
それを聞くとなにが可笑しいのか彼女は急に笑い始めた。それは今日初めて見せた彼女の本当の笑顔だったかも知れない。 
「えっと、私も笑った方がいいのかな?」 
「……ははっ。いや、すまぬ。まさか二十年ほども前に聞いたのと全く同じ台詞を言われるとは思わなんだでな」 
「と、言うと以前、誰かが私と同じ事を?それはいいセンスの持ち主だな」 
「言っておれ。……昔、この迷宮に来たエルフの戦士の姉妹が同じことを抜かしおっての。儂と体を交えた者もあやつら以来じゃな。 
そう言えば、あやつらめ、ここ数年は訪ねて来んのう……。ま、それも含めてなにかの縁じゃ。うぬの好きに呼ぶがよい」 
「エルフの戦士の姉妹……?」 
「おおっとそうじゃ。また忘れんうちに聞いておこう。儂に紹介したい者というのは誰じゃ。先に言っておくがお断りじゃぞ」 
「先に断られては立つ瀬が無い。あーいや、その前に確認しておきたいんだが、レイちゃんは迷宮の魔物でその精力を発散はしないの 
か?ここにもプリーステスとかいるだろう?」 
「あやつらが儂の相手をして少しでも保つと思うか?それに甲冑の中身が実は女で、あまつさえ股間に一物が生えていると知っておる 
者自体が至極稀じゃ。知った者の大半は儂自信が始末しておるからの」 
「うーん。始末されては困るな。いや、相手というのは私の恋人の侍なのだが、これがまたなかなかの逸物を持っている。さっきの交 
わりで思ったのだが、レイちゃんのこのいやらしい女体を放っておくのは、あまりにも勿体ないと思うのだ。この容姿に、あの感度。 
これを私だけのものにしておくのは、さすがに気が引ける。レイちゃんも喪失は男との方がいいだろう?」 
「待て。儂はいつの間にうぬのものになったのじゃ」 
「え?まあ、些細なことはどうでもよいではないか。いや、真面目な話、女と男の部分の両方で発散出来れば、獣欲が溜まることもそ 
うは無くなると思うのだ。それに、女の喜びを知れば、なにか新しい道が開けるかも知れないではないか」 
なんの疑いもなくそう言う女忍者の笑顔を、レイバーロードは眩しいものでも見るような目で眺めていた。 
「はん。まあそのうち気が向けばの。ところで、うぬよ。この腹はどうするつもりじゃ。たぽんたぽんじゃぞ」 
「むーう。これは全部レイちゃんのせいではないか。なんで陰嚢も無いのにこんなに出るのだ。これ、膣圧で押し出せるだろうか」 
「儂が知るか。どれ、それならちと手伝ってやろう。ほれこのあたりをぐっと押せば----」 
「やあんっ。押しちゃ駄目。自分でやるから、ちょっ、ちょっとレイちゃんっ!」 
* * *
その後、括約筋やら骨盤底筋やらの内部筋肉をフル稼働し、外部からの後押しもあって、なんとか女忍者の胎内に溜まった精液を排出 
することはできたようである。ただ、その有様は、文章で表現することは憚られるものであったとだけ記しておく。 
「ううっ。レイちゃん。お嫁にいけなくなったらどうしてくれるのだ」 
「ふむ。なんなら、儂がもらってやろうかの?って冗談じゃ。擦り寄ってくるでないわ」 
「ぐすっ。今度はリーダーも連れてきて、レイちゃんが足腰立たなくなるまで、あんなことやこんなことをしてやる」 
「ほう。少しうぬの恋人とやらに興味が湧いてきたの。それほどの男なら儂が寝取ってやってもよいかの。ってだから冗談じゃ。そん 
なことより、あまりのんびりしてもおれんじゃろ。その、うぬの仲間共。第六の玄室まで突破しておれば、そろそろ戻ってくるころで 
はないか?その格好の言い訳をどうするつもりじゃ?さ、儂はもう、ねぐらに帰るかの」 
そう言うと、彼女は自分の衣服と鎧を器用に一纏めにして軽々と抱え上げ、テレポーターに向けてすたすたと歩いていく。女忍者は挨 
拶も無く去っていくその形のいい尻をぼんやりと眺めていたが、ふと我に返って彼女の後を追うと、その裸身に飛びついた。 
「レイちゃん、ちょ、ちょっと待ってくれ。もうこれっきりではないのだろうな?あれだけのことをしておいて遊びだったのか?それ 
と、私はこの格好をどうしよう。なんかもう色々な汁まみれだし、さすがに言い訳するにもなにも思いつかない」 
「ああ、もう五月蠅いのう。己のことは己でなんとかせい。それに、遊びもなにも最初から命がけの火遊びみたいなものじゃ。まあ、 
また迷宮で顔を合わすことぐらいはあるじゃろ」 
「って、それではまた、ただの冒険者と迷宮守護者の関係ではないか。ええい、こうなったら仕方ない。既成事実をつくって、逃げら 
れないようにしてから、宿までお持ち帰りしてやる」 
「……うぬよ。さすがに混乱しすぎではないか?意外とアドリブに弱いやつじゃのう。それよりも、耳なり鼻なり利かせてみよ。どう 
やらそこの地下道まで何者かがやってきたようじゃがの」 
「うわぁっ!ど、どうしよう……こうなったらもうどうでもいい。私達の乱れた関係を見せつけてやろう!」 
「ああ、もう面倒なやつじゃ」 
レイバーロードは空いた片手で女忍者の頭を鷲掴みにすると、その艶やかな唇で女忍者の口を塞いで強引に黙らせる。一瞬驚きの顔を 
浮かべた女だが、我に返ってすかさず舌を差し込もうとする。すると狂君主はすっと唇を放し、耳元でなにかを囁くと、女を力任せに 
半乾きの血溜まり目掛けて放り投げた。しかし、そこは変態でも忍者。華麗に着地した……のだが、血に足を取られて盛大にこける。 
たちまちその体は巨人達の血に浸かって真っ赤に染まってしまった。 
「ほれ、それだけ血塗れなら、見た目も臭いもどうとでも言い訳ができるじゃろ」 
「あ、うん。でも非道い」 
「あと、今囁いた文言はおぼえておるな?それを一階のマーフィーズゴーストの部屋の隣にあるテレポーターで唱えるがよい。儂の私 
室に直通じゃ。またそのうち儂を慰めに来てくれるのじゃろ?せいぜい期待しておるぞ」 
「うん!すぐに会いに行くから。レイちゃん、自分で慰めちゃだめだからなー」 
「ふん。たわけが」 
そしてレイバーロードはテレポーターの中に去っていく。しばらくすると、彼女の言葉どおりに、女忍者の仲間達が玄室へと駆け込ん 
できた。そして、全裸で全身血まみれのまま、こちらに向けてぶんぶん手を振っている彼女を見つけて絶句する。 
「……」 
「……ああ、おい。とりあえず生きてるみたいだが、これは一体どういう状況なんだ?」 
「ああ、こけた」 
「多分、俺の求める答えはそれじゃねえ。レイバーロードはどうした?生きてるってことはまあ負けてないことは確かだが」 
「んー。負けてもいないが勝ってもいないな。まあ、よいではないか。ともかくは生きている」 
「まあ、なんでもいいや。しっかし、その格好をどうするかな。そこまで血塗れじゃあ服を着てもな……」 
「なら裸でいいではないか。忍者だから全裸でも怪しまれない。ほら、さっさと宝箱を回収しに行こう」 
「忍者ちゃん。血でボディペイントした忍者はいない。これを着て」 
いつの間にか司教が自分のローブを脱いで差し出していた。そのため、今度は司教が純白の透け透けレースの下着姿になっている。 
そのローブを君主がさっと奪い取ると、何事もなかったかのように、司教の頭からすっぽりと被せて軽く頭を小突く。 
「なんなら俺も脱ごう……おゥっ」 
戦士を逆さまに担ぎ上げた君主が、後ろに倒れざまに体を巻き込むように浴びせ倒し、戦士を背中から石床に叩き付ける。 
「おい、適当なとこでやめとけよ。とりあえず鎧下だけでも着てろよ。脇が破れちまってるけど、どうせもう着られないから、血で汚 
れても構わないだろ。しかし、髪に付いた血はさっさと落とさないとな……」 
「なあ、リーダー。突然なんだが、今度紹介したい人がいるんだが」 
「ん?なんだよ。本当に突然だな。どこかのいい男にでも窮地を救われたか?」 
「いや、これが滅茶苦茶可愛くて、肌も綺麗な女の子なのだ。それも処女。まあ、ある意味ではいい男とも----」 
* * *
迷宮最下層の第三の玄室へと続く地下道。歩を進める五人の冒険者の中で、女忍者だけが他のメンバーに少し遅れて歩いている。 
彼女は、今日得たエロ経験値を彼との閨にどう生かそうかなど妄想している。その妄想は次第に、侍と狂君主の強み弱みを検討し、頭 
の中で二人に模擬戦を行わせ、自分がどこでどう参戦するかと、あらぬ方向へと展開していく。彼女の妄想が現実のものになるかどう 
か、それはまた違う物語である。 
〜 了 〜