「お姉ちゃん、ちょっとこちらへ。大事な話が」
「どうしたのフロー、そんなに真剣な顔をして」
「一生のお願いです、パーティを抜けさせてください」
「え……フロー、どうしたの?シャイア姉さんにいびられたの?
 それともおバカノームにセクハラされたの?」
「そうじゃなくて、お姉ちゃんの…その、格好が」
「コホン、フローレンス、これはニンジャの伝統装束…」
「い、いい加減にして下さい!この間、ガウンを羽織っているニンジャの方を
 お見かけしました!そんな破廉恥な格好のどこか伝統衣装なんですか!
 いざという時、他人のふりをできない私の身にもなって下さい!」
「フローレンス、人生には苦痛に耐えなければならない時があるの」
「わけがわかりません。今日、シャイアと一緒に街で服を買いに行きました。
 明日の探索には、これを着て下さい。お姉ちゃん、私は本気ですよ」
「……わ、わかったわよ」

 *  *  *

「パーティを抜けさせていただきます…」
「どうして?お姉ちゃんちゃんと着てきたでしょう?」
「篭手と脛あてつけただけじゃないですか!」
「ヘッドバンドもつけてるじゃない」
「肝心のKIMONOはどうしたんですか!」
「あれ服だったの?包装紙かと思ってクズカゴに…」
「お、お姉ちゃんは服と共に品格まで捨ててしまったんですか!!」
「じょ、冗談よ。だって…せっかくフローがプレゼントしてくれた服なんだもん。
 着たらすぐにボロボロになっちゃうでしょ?」
「もう結構です!あなたのような危険意識の無い人とは二度と話をしたくありません!」
「………………」
(あ、あれ、なにか反論してくるかと思ったら急にしおらしく…)

「あの…お姉ちゃん、わ、私、ちょっと言い過ぎたかも…」
「…フローレンス」
「は、はい?」
「あなたは迷宮だけが危険地帯だと思っているの?」
「え…えええ…?」
「ここは街ですら安全な場所ではないのよ。だからこそ、私は武装を解かないの」
「武装ってその痴女みたいな…」
「メイジのあなたにはわからないでしょうけど、前衛職の者は普段の装備以外では
 本当の力を発揮できないの。あなたの言う通りアイテムの規定から外れたもの
 ならばニンジャ職の恩恵にあずかれるわ。でもね、私にとって全力をだせる装備は
 この装備なのよ」
「たしかお姉ちゃんレベルは三桁…」
「ええ、私にだって羞恥心はあるわ。でも、ニンジャとして、冒険者として、手を
 抜いたがために後悔をするなんてことは絶対に許したくないの」
「あの…」
「フローレンス、お願い、わかって。あなたから貰った服、お姉ちゃん大事にするわ」
「……は、はい」


「シャイア、二人、なに話してる?」
「スカラ・ブレのニンジャがトレボーと会議室でバーベキューをしたとかんなんとか」