ここはエル・ケブレスの迷宮。ここにローブを身にまとった少年と少女がいる。
先を行く少女が扉を開けると、そこには鎧を着た男達、マンアットアームズの群れがいた。
「あ、お疲れ様でーす」
少女が挨拶すると、その中の一人が右手を上げて反応する。
「よう、ウィッチの嬢ちゃん。今日は夜勤か?」
「ええ、どこの玄室開いてます?」
「北の小部屋が開いてるぜ」
「ありがとうございます」
少女が扉を閉めようとすると、男は尚も言葉を被せてくる。
「しかし女の子が夜勤じゃ危ないだろ。どれ、おじさんがボディガードをしてやろう」
「あ、大丈夫ですよ。今日はフレイヤ君をコンビ組むんで」
「ん?なんでえ、既にいたのか」
少女の陰に隠れて、顔を伏せたローブ姿の少年、フレイヤの姿を捉えた。
「嬢ちゃんもやっぱりおっちゃんなんかより若い子の方がええんか」
「あははは。それじゃ失礼しまーす」
誤魔化しの愛想を浮かべながらウィッチは去った。
軽く振られたマンアットアームズはそのまま同僚の元へ戻ろうとし、ふと疑問が頭をもたげた。
「あれ?ウィッチとフレイヤってチーム組んだっけか?」
「うん、やっぱり大丈夫。怪しんでなかったでしょ」
北へ進みながら少女が聞くと、俯きがちのフレイヤが遠慮がちな目で反論する。
「でも、今は大丈夫ぽかったけど、他の人も騙せないかもしれないし」
「大丈夫よ。私達が敵の顔を覚えてないのと一緒で、向こうも一々冒険者の顔なんて覚えてないもん」
「それはそうかもしれないけど」
そう、実はこの者達、本物のウィッチとフレイヤではない。
普段は冒険者として探索を進めているギルドの若きメイジとプリースト。
それが何故敵に変装して迷宮に潜り込んでるかというと。
「だって他にエッチできそうな場所無いじゃん」
「それはそうなんだけど」
逢引の場所を求めてである。
「冒険者に見つかったら、こんな格好してる僕達を敵と思うかも」
「大丈夫よ。友好的って言えば戦わずに済むし。そもそも2階に冒険者そんな来ないし」
ここは迷宮の2階。悪の者の進入を拒むフロア。
「だいたい留守番の間にエッチしたいって言ったのそっちじゃん」
「うん、したいよ。したいんだけど」
本日は中立の仲間が聖水補充の為に3階を探索中。善の戒律の2人は暇を持て余していた。
「だったらほら急ご。早くしないと帰ってきちゃう」
「うん」
まだ何か言いたげだったが、それでも少年プリーストは後に続いた。
「おじゃましまーす。あ、やっぱり誰もいない」
目的の小部屋につく。マンアットアームズの情報通りそこは無人だった。
少女はテキパキと作業を進める。扉に鍵を掛け(冒険者は蹴破るので気休めだが)、ローブの下に巻きつけてたバスタオルを外して床に敷
く。
「なんか、凄い堂々としてるね」
自分の分のバスタオルを渡しながら、感心したようにプリーストが呟く。
「モタモタしてらんないし」
答えながら準備を進めるメイジの少女。
「それに、するの嫌いじゃないし」
「え?」
「なんでもない」
メイジは振り返り、そのままプリーストと舌を絡める。
「んー」
顔を離すと、分かりやすく幸せそうな少女の笑顔がそこにある。
「だいすき」
そのままもう一度キスをする。
少女はキスが大好きだ。愛されてる実感が沸くから。
少年はそれに応えて沢山してくれる。普段はおどおどしてるけど、2人きりの時は望めばいつでもキスしてくれる。
だから少女は少年の事が大好きだ。
「あ、脱がさなくていいよ」
「え?」
少年がローブを外そうとすると、少女が止める。
「下、つけてないから大丈夫だし」
「でも下着は?」
「つけてこなかったの」
「ええっ!?」
確かに少年の方も裸の上からバスタオルを巻き、更にローブを羽織ってここまで来た。服の上からだと嵩張ってしまうからなのだが、それ
でも少年はパンツくらいは履いていた。
「ほら、ね?」
少年の右手がローブの中に誘導される。そこにはあるべき布地の感触が無く、代わりに、
「うわっ」
独特の暖かさと、独特の滑りと、独特の感触がまとめて伝わってくる。
「このまま、ね?」
恥ずかしそうな表情に、少年の性もこれ以上の抑止は効かなかった。
焦りがちに自分もパンツだけ脱ぐと、そのままがっつくように少女を抱きしめ、もう一度キスをする。
「んんっ、んーん、んっ!」
そのままそっとバスタオルの上に押し倒すと、手探りで宛がい、
「んんんんっ!」
沈めた。
「あ、あったかいのきた。はいってきた」
「うん、はいったよ。すごいきもちいいよ」
唇を離し、互いに耳元で囁くように感想をもらす。声色から正常さが薄れ、興奮の度合いが感じられる。
「ねえ、キスして。もっとして」
「うん」
また重ねる。望めば少年は、繋がってても少女の欲求を優先してくれる。この優しさが体を許したきっかけだった。
彼ならちゃんと愛してくれそう。彼なら後悔しないだろう。その決意は正しかった。心からそう思う。
まだ快感は薄い。でもからだ以上にこころが満ちる。だから日を追う毎に少女もはまっていく。
「ありがと。だいすき」
「ぼくもすき。あいしてる」
少年は行為だけじゃなく言葉でも欲求を満たしてくれる。我ながら単純かなと少女は思うが、それでも少年の口から愛情の証が紡がれると
自分の中で満たされていくのが実感できた。
「うん、わたしもあいしてる。もっとしていいよ」
「うん、するよ。もっとする。もっとしたい」
「うん、いいよ。すきなだけして。きもちよくなって」
「うん、する。あいしてる。ずっとあいしてるから」
少年の動きが早まる。限界が近い。若き性にはじっくりと味わう余裕が無い。常に全力で快楽を貪ろうとする。
「あ、だめでそう。もういっちゃう」
「いいよ、そのまま。きて」
「うん、だすよ。このまま、あ、だめ、でる!」
抱きしめる力が一層込められ、一瞬震えた後に少年の動きが止まる。
「あ、あ、」
「あ、でてる。あったかいのきてる」
「あ、きもちいい。ほんとうきもちいい」
「うん、わたしもしあわせ」
「ぼくも、しあわせ。あいしてるよ」
「わたしも、あいしてる。ずっとずっとあいしてるから」
抱き合ったまま再びキスをして、二人はしばらくそのままでいた。
「大丈夫?」
「うん、殆ど出てきたと思う。少し残ってるかもしれないけど、帰ったらシャワー浴びるから」
ようやく繋がりが解かれた後、股間を拭って後処理中の少女。
「ごめんね、一杯出しちゃって」
「いいよ別に。それだけ気持ち良かったんでしょ?」
「うん」
「それに、私も出されてる時が一番幸せだし」
「あ、ごめん聞こえなかった」
「何でもない」
ゴミ入れ用の袋に布を放り、少年の方に向き直る。
「ねえ、もっかいキスして」
「ん、いいよ」
今日何度目かの欲求に応える。少女が幸せを身一杯に感じる瞬間。
ガタンッ!
「「!?!?」」
その時、空気の読めない音が扉から発せられた。
視線の先には戦士と侍。盗賊もいるようだ。
そう、冒険者達だ。
「!」
少年は慌てて少女の前に庇い出る。強襲に備える意味と、幾らローブを着てるとはいえ裸の恋人を晒したくない意味と。
「フライヤと、ウィッチか?」
「珍しい組み合わせだな」
「とりあえず奇襲はしてこないようだが」
冒険者達は、当たり前と言えば当たり前だが、二人を敵として警戒している。
お互いに奇襲は無いと判断。少女が少年の影から手を振って愛想を振りまく。
「あ、あたしら友好的でーす。ここは行き止まりだし何も無いですよー」
友好的。その言葉に冒険者達は話し込む。
「友好的だってよ。どうする?」
「この後ポレ控えてるからな。余計な体力消耗したくねえな」
「2階の敵じゃ経験値も宝箱もしょぼいし、引き返すか」
あれ?
少女は気付いた。
このパーティ、僧侶がいない。
加えて全員が聖水を身につけている。
更には善の匂いがしない会話内容。
「いや、待てよ」
盗賊が話を遮りこちらを見やってきた。
「こいつら、ひょっとしてセックスしてたんじゃねえか?」
「「!!」」
気付かれた。
「ああ、言われてみれば、そういう痕跡あるな」
「俺らが日照ってるってのにムカツクな」
「迷宮内で致すとかいい度胸じゃねえか。やっぱり殺そうぜ」
「だな。戒律変わる訳でもねえ」
少女は確信した。
こいつら、全員中立だ。
しかも普段は悪フロアを探索していて、今日はポレを倒しに中立メンバーのみでやってきた。
つまり、それだけ熟練の冒険者である。
少年少女の表情に緊張が走る。
「まあ待てよ」
一触即発。その空気に待ったを掛けたのは、戦士の影でよく見えなかったメイジからだった。
「殺すんじゃなくて俺らもまぜてもらおうじゃねえか」
「「!?!?!?」」
別種の緊張が走る。
「それはいいな。何も八つ当たりする必要はない。仲間にしてもらえばいいんだ」
「こんな所でするくらいの痴女だ。喜んでしゃぶったりしてくれるだろ」
「でも穴が足りねえぞ。口加えても3つだ。1人は手で我慢しろってか?」
「それは嫌だな。だからって順番待ちも御免だぜ。そもそも時間もそんなに無い」
具体的な計画が持ち上がるにつれ、少女の顔色がみるみる青くなり、代わりに少年の表情が憤怒で赤くなっていく。
護身用のメイスを握る手に力が入る。
「ああ、そりゃ大丈夫だ。ケツならもう一個あるじゃねえか」
「えっ?」
侍の言葉に少年が硬直する。
「よく見りゃこっちも可愛い面してる。俺はこっちでいいから残りをお前らで分け合え」
「流石は侍。男色も心得てるとは」
少年プリーストの表情がリトマス試験紙よろしく酸性からアルカリへと変貌する。
「そういう事なら口の奴は2枚使ってもいいんじゃないか。Wフェラとかロマンだろ」
「お前もイケるんかい」
「でも、確かに女みたいな面してるな」
「Wフェラの魅力を考えると、全く無いとは言い切れんかも」
「いっそ男のケツまで含めてジャンケンするか?」
言葉で既に凌辱され、少年は意識がだんだん遠のくのを実感していた。
「し、しっかりして!ここで気絶とかしないで!私もピンチなんだから!」
この後の物語は誰も知らない。
一説にはロクトフェイトの存在を思い出して逃げ切ったとも、壮絶6Pの目撃情報があるとも言われているが真相は定かではない。