召喚陣をくぐり抜け、俺は人間共が蠢く「世界」へと染み出す。
人間共との意思疎通のため、混沌たる己の本質を再構成し、
人間で言うところの青年の男の姿を形作る。

この「世界」も久しぶりだ。
かつて俺を呼び出し、力を求めた者達、
災いの王、その妃、ゾフィータスとかいう名の魔法使い・・・
いずれにも望みの力をくれてやった。
そしていずれも、実に醜悪な憎悪にまみれた喜劇を演じてくれた。
つまり俺としては、人間という名の奇妙な、
その脆く小さな体躯にあまりある欲望を抱え込んだ生き物に実に楽しませてもらっている。
この度はどう悶えてくれるのか、実のところなかなか期待していたのだった。

召喚陣の先は一つの部屋に通じていた。
窓一つなく、床も壁も冷たい、しかし磨き上げられた石版で覆われ、
壁面にぐるりと備えられた燭台の光が部屋の中をゆらりと照らす。

殺風景な部屋の中で俺を待っていたのは一人の女。
いや、人間の言葉で言えば「少女」というくらいか。
身の丈は160cmほど。
貌にはまだあどけなさを残すが、端正な美しさの中にはすでに艶も秘めている。
そして胸のあたりまで、軽くカールした流れるような黒髪を垂らし、
一糸まとわぬ姿で俺と対峙していた。

俺はその幼さ、つまり引き起こしてくれるであろう悲劇の小ささを予測してやや失望するとともに、
奇妙な違和感を感じた。
・・・こちらの「世界」は十数年ぶりののはずだが、この女とどこかであったことがあるか?・・・
そして、俺は少女の発した言葉によって全てを理解した。

「お待ちしておりましたわ、・・・お父様。」

なるほど、この少女・・・
かつて災いの王が力の代償に俺に差し出したあの女、その娘というわけだ。
俺の失望は期待へと変わった。
その血筋、その育った環境を考えれば、この世にどれだけの災禍を振りまいてくれることか。
まずはお決まりの問答といこう。
「名は?」

「レベッカ・・・でございます。」

「我に何を望むのか?」

「・・・力を。」

「その代償として何を差し出す?」

「・・・・私の、この躰を。」

俺と対峙したその姿から予想していたとはいえ、この受け答えに思わず笑みがこぼれる。
なんと浅はかな。
どうやらすでに”男”を知ってはいるようだが、そもそも俺は「人間」ではない。
悪魔に躰を任せることの意味を本当に分かっているのか。
しかしまあ、それはそれで一興というもの。
こちらとしては、この「世界」に混沌の種を蒔くことができれば何でも良いのだ。

俺は黙って音もなく歩み寄ると、そのまま唇を重ねて床へと押し倒した。

すでに覚悟はできていたのか、少女は濃厚なキスを抵抗なく受け入れ、
俺の背を抱いてむしろ積極的に舌をからませてくる。
だが、悪魔のキスとはそれだけで絶頂へと導くことすらできるもの。
まだ幼さが残る、それでいて形よく膨らんだ乳房を愛撫してやると、
たちまち少女の舌づかいからは意志が消え失せて快楽への本能がむき出しになる。
少女のキスは徐々に激しさを増し、それがすでに快楽への期待に溺れていることを伝えてくる。

ちゅく、くちゅ・・・
「ん、んんん、・・・・」

片手を少女の秘部へあてると、すでにそこは十分に濡れそぼっている。
俺はその割れ目を軽く指で撫でてやるだけで、濡れた手で再び乳房へと手を伸ばし
乳首へ塗りつけるように愛撫を続ける。

「んっ・・んふうっ・・・んんんっ・・・」

たちまち、少女の息づかいは荒くなり、下半身をもどかしそうにくねらせて俺を強く抱きしめだした。
それでもキスと乳房への攻めのみを続けてやる。
少女はより烈しくキスを求めながらしばらくもぞもぞと蠢いていたが、
もはや理性が快楽の本能に飲み込まれるのは時間の問題だ。
やがて快楽の誘惑に抗しきれずに少女の手は俺の背中からそろりと離れ、
自らの秘部へと伸びて手淫をはじめた。

やれやれ・・・
他の人間の女と同じでたいしたことはない。
所詮は人間の腹からでた子。
特にここで何かを期待したわけでもなかったが、こうも簡単に快楽に堕ちていく様を見ると少々興ざめではある。
自分自身の血をかいかぶりすぎたということか。
ならばそれはそれで十分楽しませいていただくとしよう。

くちゅ・・くちゅ・・
「んっんっんっんっ・・んんっ・んんんっ・・んんんんんっ」

ひとたび刺激を与えると、焦らされた少女の躰はさらなる快楽を求める。
限りなく甘美で濃厚なキスと刺激的で執拗な乳房への愛撫。
唇と胸を犯されながら、それでいて最も求めるものは与えられない。
その焦燥と渇望が欲望をさらにあおり立て、白く澄んだその手がまるで別の生き物のように自らの秘所を辱めだす。
少女はびくびくと身体を震わせながら、ひたすら快楽を求めて自分自身を陵辱する。
腰を浮かせて、淫核を擦り、膣の中へ指をしのばせて。
そして・・・

「・・・・・っっっっ」

少女の躰がひときわ大きくびくんと伸びると、大きく息を吐いて全身から力が抜けていく。
自分自身で「達して」しまったようだ。

もちろん、こんなものでは終わらせない。
俺は激しさを抑え、やさしくキス続けながら乳房を大きくゆっくりと愛撫してやる。
肩で息をしていた少女は少し呼吸が落ち着くと、再び自らの秘所へと手を伸ばしはじめた。
少女の躰が分かっているのだ。
自分自身で与える快楽が、喚び起こされてしまった自らの欲望と全く釣り合わないことを。
届かないと分かっていながら、もはやひたすらに快楽を求めるしかない・・・

そこで俺は唇を放すと、少女の手を掴んで俺の股間へと導く。
全く予想していなかったのか、少女は微かに身体を震わせると、呆然とした表情で虚空を見つめながらいきり立った俺の「それ」を両手で撫で回す。
丹念に丹念に、その形を触覚だけで存分に確かめた後、少女はゆっくりと視線を下に向け、自らの期待がたしかに「そこ」にあることを確認した。
たちまち、少女の顔に恍惚の笑みがひろがり、「それ」をいとおしげに撫で続ける。
瞳には快楽への欲望の光のみが灯り、その口からは懇願の言葉が脈絡なく紡ぎ出される。

「ああ・・・お父様・・・・・
 ・・お願い・・・・・・
 ・この大きいので・・わたしを・・わたしをぉぉ・・」

では存分に味わってやろう。
俺は腰を落とすと「それ」の先を押し当て、そのままゆっくりと挿入していった。

「ふあああっっっっっっ・・・っっっすごいっ・・・」

あられもない嬌声をあげて少女がしがみついてくる。
しかし、実のところこちらの驚きも大きかった。

「・・・っっっっっっ!???」

ねっとりとまとわりつく少女の「そこ」はただ一度の挿入で凄まじい快楽を与えてきたのだ。
挿入によって押し分けられた襞が亀頭からカリ首に、裏筋にまとわりつき、「男」の弱い部分をぞろりと撫で上げてとろけるような快楽へと誘う。
一瞬、何らかの魔力の介在を疑った。
しかし俺ほどの高位の魔の存在を、それもこのような意識レベルまで介入するような魔力がこちらの「世界」に存在するとは考えにくい。
そもそも、魔力であれば火を熱いと感じるようにその存在を感じるのであって、いまのこの少女からはそのようなものは全く感じられない。
つまり、魔の存在であるこの俺をさえもとろかせてしまうような名器、信じがたいがそういうことだった。

「ふおおおおおおぉっっ」

引き抜く動作とともに少女の膣がきゅうと締まり、さらなる快楽の波が襲う。

「あああっっ・・・イイっ・・イイのぉっっっっっっっ・・・・・もっとぉっ・・」

空虚な部屋に少女の嬌声が響く。
そして俺は一心不乱にその少女の肉体をむさぼっていた。
何ということだ。
偉大なる魔の存在であるこの俺が、たかが人間の、しかもこんな小娘ごときに夢中になって腰を振っているなど。
屈辱を感じながらも、俺は逆らいがたい快楽に囚われ、求めるままに少女と交わり続ける。
そして、俺はこみ上げるものに耐えられなくなりつつあった。
ただ快楽によるだけではなく、「この少女の胎内に精を注ぎ込みたい」という欲望が俺を支配しつつあった。

「・・っっっっああっ・・」

そして、ひときわ高い嬌声とともに少女の膣が俺を締め上げると、その快楽に抗することなく俺は欲望を解き放った。

「ああっっ・・熱・・いっっっ・・・っっっっっっ・」

少女がのけぞって烈しく震え、絶頂を迎えてくたりと地に落ちる。

何という敗北感。
俺には分かっていた。
その「絶頂」は少女のもの。
こちらがわの世界では比類するものなど全くないほどの圧倒的力を持つこの俺が、少女が「達する」のに導かれてイかされたのだ。

しかし、信じがたい事態はそれだけではなかった。
たった今絶頂を迎えたばかりのその少女が、まだつながったままゆっくりと俺の肩に手を掛けて抱き寄せるとこう囁いたのだ。

「ねぇ・・もっと・・・」

しかも自分から腰をくねらせ、また新たな快楽を求めはじめたのだ。
もちろん、俺の方はまだまだいくらでも可能だが、この少女はいったい・・・

その欲望の深さを読み誤っていたということか。
よかろう、ならば、その深淵がどれほどのものか試してやろうではないか。

俺は少女を乱暴に引き起こすと、つながったまま躰を回転させて腹這いに押し倒し、今度は後ろから烈しく責め立てた。

「ひあああああっっ・・・奥まで・あっあぁっ・・・」

少女の躰は熱い肉棒によって突き通されるたびに悦びに震え、その脈動がまた少女の中の「俺」にえもいわれぬ快楽を与えてくる。

じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぽっ・・・
「ひぃぃっ・・ひあぁぁうっっ・・・ひゃううううぅっ・・・・」


どのくらいの時間が経ったか、俺はひたすらに少女を貫き、精を注ぎ続けた。
その華奢な身体には到底収まりきらぬ精液が少女の膣内を溢れ出し、床に広がっていく。
互いに何度も絶頂を迎えながら、つながったまま前から後ろから体位を変え、俺は少女の躰を欲望のままにむさぼり続けた。
何十回目かの射精を膣奥に注ぎ込み、少女の身体がびくんびくんと激しく痙攣する。
少女がぐったりと俺の胸に寄りかかると、さすがの俺も疲れを感じて、少女の身体を貫いたまま仰向けに床に横たわって一息をついた。
脆弱な人間の意識などこの悦楽の前には他愛もなく焼き切れ、少女の自我は崩壊してただ快楽を求めるのみの人形と化した、
そのはずだった。


ところが、俺の胸の上で力無く横たわっていた少女が、少し息が整うとゆっくりその身を起こしたではないか。
俺は思わず目を疑った。

そして、今まで残していたあどけなさとは懸け離れた妖艶な笑みを浮かべ、ただ唖然とする俺を見つめると、恐るべき宣告を下したのだった。

「・・とっても・・・よかったですわ・・
 ・・・・・今度は、私がしてあげますわね。」


な・・・ん・・・・・だと?
少女のどこまでも美しい笑みに、俺は存在して初めて恐怖という感情を覚えた。
やがて俺に跨った少女の腰が動きはじめるとともに、俺は敗北を悟らざるをえなかった。

これまで少女はただ責められるがままに、受け入れていただけだったのだ。
「俺」を飲み込んだ少女の膣は、もはや明らかな意志を持って「俺」を締め上げる。
俺は少女のなすがままに快楽に飲み込まれていくしかなかった。

「ぅおおぉぉぉぉっ・・ぉおあぁぁ・・ぉおあああああああっっっっっっ・・・・」
「ぁあっっ・・・嬉しい・・・私の躰で感じてくれているのね。」

少女の腰づかいがさらに激しくなり、俺はほとんど気を失いかけながら、少女の身体に搾り取られるままその膣中へと噴水のように射精を続けていた。

・・・身体に全く力が入らない。
意識も朦朧としている。
何が起こったかはだいたい分かっている。
古来より伝わる秘術の一つ。
悪魔の力を手に入れようとすれば、契約と代償によるか、それとも何らかの手段で悪魔を「屈服」させねばならない。
後者の方がより強力な力を手にすることができるのはいうまでもないが、現実にはそれは不可能ともいえる。
悪魔を屈服させるほどの魔力を持つ人間など、有史以来ほとんど現れた試しがないし、そもそもそれほどの魔力を持つならば悪魔の力を借りる必要などない。
ただし、魔力を持たない者にも例外ともいうべき外法がある。
悪魔と交わることでその力を得るのだ。
しかし、これこそ現実には成功の可能性は皆無といってよい。
普通に考えるならば、悪魔の与える快楽に人間の肉体と精神が耐えうるはずもなく、精神を崩壊させて狂気に陥るのが関の山だからだ。

ところがこの少女はそれを成し遂げてみせた。




少女はだるそうに立ち上がると、自らが放った精液の水溜まりに横たわる俺を一瞥し、元通りの無邪気な笑顔をみせた。

「楽しかったですわ、お父様。
 でもごめんなさい。これで、さよならね。」

そして少女が部屋の出口へと向かうと重そうな扉が自然と開き、少女はもはや振り返りもせずに部屋から出て行った。

扉が閉まるとともに壁の穴より赤く光る液体が流れ出てきた。
溶けた鉄だ。
普段ならばこの程度のことはどうということもないが、今の状態では抗うこともできない。
どうやらこれまでのようだ。

灼熱に満たされた部屋で、だが、俺は嗤っていた。
自嘲ではない。

さきほど少女が出て行ったとき、扉の外に一人の男が見えた。
それはかつて俺が力を与えた、かの「災いの王」だった。
そしてその目を見て俺は知ったのだ。
あの男もすでに「少女のもの」となっていることを。


なんのことはない、ことは結局俺の思い通りだ。
なんたる者が産み落とされたことか。
これほどまでの破壊と悦楽への欲望。
あの少女ならば、さぞかしこちらの「世界」に混沌を撒き散らしてくれることだろう。

やがて俺は満足の笑いとともに灼熱の液体へと飲み込まれていった・・・・