「全裸はやめてって言ってるでしょ!どうして分かってくれないんです!」
「だって仕方ないじゃない!装備外さないとすばやく動けないんだから!」
「だからって服まで脱ぐことはないじゃないですか!」
ホテルのロイヤルスイートで女の忍者と男の僧侶が口論していた。
ほかのパーティメンバーはすでに自分の部屋に戻っていた。女が忍者になってから1週間。
いつものことなのでもう慣れてしまっていた。この僧侶以外は。
「女の人が裸で迷宮練り歩いて、恥ずかしいとは思わないんですか!」
「全然恥ずかしくなんてないわよ!」
「こっちが恥ずかしいんです!見ましたか今日すれ違ったパーティ、次の玄室のドア開けるまでいつまでもジロジロと」
「あたしの体だしいいじゃない、減るもんじゃないわ!」
「こっちの神経が磨り減るんですよ!人の気も知らないで!」
「知るわけないでしょ!」
「じゃあ僕も裸で迷宮行ってやりますよ!」
「ええ行ってもらおうじゃないの!」
次の日、男の僧侶が裸で迷宮を探索することになった。
地下一階、階段の横。腰に一枚の葉っぱをつけた僧侶と忍び装束を着た女忍者の二人が立っていた。
忍者も裸でいくつもりだったのだが、「服を着ていないと周りの気持ちは分かりません」という事でしぶしぶ忍者装束を着た。
葉っぱに「粗末なモノを隠しておきたいのね」と煽る女を無視し、僧侶は身を小さくしながら奥へ進む。
忍者も後に続いた。僧侶だから青菜みたいななよっとした体だと思っていたが、
こうやって見ると必要最低限の筋肉は付いていてわりと男らしい。
身をすくめた歩き方を除けば、だが。
しばらく歩くと玄室の前にたどり着いた。
扉をおずおずと押し開ける僧侶の姿に、(どこの乙女よ…)。ため息を吐きつつ敵の出現に身構えた。
出会いざまにアンデットコボルトの首をすぐさま刎ねる。「アンデットコボルトの方ははよろしくー」
声が終わるか終わらないかのうちにアンデットコボルとはバリコで粉々にくだけちった。
(ふーん、意外と冷静じゃん)と感心しながら宝箱に歩み寄る。
「ほら裸でも全然大丈夫でしょ?」
宝箱に手を掛けつつ振り向いた忍者の目に映ったのは、葉っぱを押しのけて自己主張している僧侶のちんちん。
思わず手がすべって宝箱の鍵に指が触れた。
*プリーストブラスター*
「嘘っ!?」
唖然とする忍者の前で、僧侶は死んだ。
目を開けた僧侶の視界に移ったのは、カント寺院の薄暗い天井と女の顔だった。
僧侶が蘇生するのを見てなにかをこらえるように目を潤めかせ、そして小さくごめんと謝ってうなだれた。
「そうだ、服…」死ぬ前まで裸だったのを思い出し、僧侶は体に触れた。
「うん、迷宮を出る前に着せてから外に出たよ。迷宮内で服を脱いでて正解だった…」
涙声で忍者が答える。
「そんな泣かにゃいでくだしゃいよ、生き返ることできたんでしゅから」
そういって笑おうとしたが、顔に上手く力が入らず、呂律も回っていない。
まだ体が生き返り切っていないようだ。起き上がろうとしてよろめいたところを忍者が慌てて支える。
「ごめんね、帰りはおぶっていくね…」
「い、いいでしゅよ自分であるきます!」
抵抗しようとするが体に力が入らず結局おぶわれたまま寺院の外に出た。
外はすっかり暗くなっており、通りを歩く人影もまばらになっていたが一応裏道を歩く。
気配を消しているからか、二人を気にする人はいない。
「なんとなく、あなたの気持ちが分かった気がします」「ん?」
「ローブを着てたときより、心持ち身が軽くなった気がしました」
「あたしもね、あんたの言いたいこと、なんとなく分かったよ」
そう言って少し迷った後で、言葉を続ける。
「ちんちんみただけであんなに動揺しちゃうなんてねえ、我ながら情けないわ。
あんた今までよくミスしなかったね、尊敬するわ」
と言って他の仲間の態度を思い出して気づいた。
「そういや裸になるのに反対してたのはあんただけだったよねぇ。
ってことはもしかしてあんた…」
「ちょっと何を言い出すんです勘違いしないでください、僕はただ」
「まだ何も言ってないわよー。ま、言い訳は今夜ゆっくり聞いてあげるから騒がない騒がない」
呂律も回るようになって、男はすっかり生き返りきった事に気づかないふりをしながら、女は宿の門をくぐった
おつかれさまでした
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