抱かれている。
力強い腕に抱きすくめられ、心臓が破裂しそう。
彼の唇を感じただけで、心臓の鼓動が高鳴っていく。
どくん、どくん。
指先に、うなじに、胸に、お腹に、太ももに、――。
彼の口づけを感じて、その度にどくんどくん。全身からほとばしりそう。
おまえを食べたい。一つになりたい。
そう言った彼の瞳があまりに真剣で。
はじめて体を許しても良い。そう思った。
全身への優しい口づけ。
あまりの優しさに、私泣き出しそう。
でも泣いちゃだめ。
だって、彼が泣きそうだから。
指、手のひら、肘、そして肩。
彼の食べられた部分が冷たくなって。
彼に抱かれている部分から、熱が伝わって。
どくん、どくん。
でもこのまま全部食べられちゃったら、わたしどうなるんだろう。
彼の口がゆっくりと動く。
つま先、太もも、そして。
堅くて、灼けるように熱いものが、体の中に突きこまれていく。
そのまま奥まで貫いて、凄い力で跳ね上げていく。
お腹を見下ろすわたしの目が、彼の真っ赤な瞳と繋がる。
どうしたの?
泣いているの?
ねえ、もっともっと。
もっとたべて。
のこさずたべて。
ぜんぶ、ぜんぶ。
「ごちそうさま」
全て残さずいただいて、両手をあわせて最後の挨拶。
優しい彼女は消え失せて。
全ては自分の腹の中。
甘い唇、大きな瞳。
優しい言葉とはにかむ笑顔。
全ては己が肉の内。
喰ってるうちは泣きたくなって、喰ったあとでは死にたくなった。
己のあまりの浅ましさ。
床に刺さった短刀を見つめる。
真っ赤な瞳、長い牙。流す涙は赤い色。
城塞都市での最大の娯楽は探索者たちの武勇伝だ。
吟遊詩人はこぞって彼らの探索行を謡う。
市民たちは日暮れと共に数多の酒場で語られる物語に酔い、金に余裕のあるものたちは迷宮上層部に設置された水晶球の記録を肴に酒を飲む。
集められた逸話はいつしか本となり、出版され周囲の国々にまで売られていく。
交易商人たちの人気の土産の一つが、最新の探索行をまとめた小説集だ。
華麗な挿絵と血湧き肉躍る物語は、下は田舎郷士から上は王妃までありとあらゆる階層に受け入れられ楽しまれている。
近頃は美人の女君主アナテの活躍が大評判で、お姉さまと慕う声があちこちから聞かれてくる。
アナテの住んでいる借宿には連日贈り物が絶えないそうだ。
最近もっとも生きが良い流行語りは、魔窟の吸血鬼だ。
残忍極まりないその魔物は、犠牲者を壁に貼りつけてからその身を喰らうとのもっぱらの噂だ。
しかも狙うのは女ばかり。女だけで編成した組は最近迷宮に潜るのを控えているらしい。
現にいくつかのパーティが壊滅させられているだけでなく、迷宮の住人までもが犠牲になっているようだ。
1日の探索を終えて帰還した冒険者の内何隊かが、実際に玄室で血まみれになった犠牲者や守護者たちを見ているのだ。
そのどれもが壁に打ち付けられ、喉だけでなく腹まで食い破られているというのだから性質が悪い。
おかげで全滅した探索者の救出料金は跳ね上がる一方だ。
冒険者たちは非強制ではあるが、わずかずつだが戦利品から得た金をプールしあっている。
金を出したやつが迷宮内で消息を絶ったとき、それを救出・搬送したやつにはプール金から報償が出る。
苛烈な探索の中で生まれた相互扶助の精神というやつだ。
相互扶助と言えば、酒場での探索行の自慢話もある意味助けあいだ。
お互いの持つ情報を交換し、次の探索の手がかりとする。
特に未踏破地域の情報や、新顔の守護者たちの情報は貴重だ。だれもが金を出してでも情報を求める。
対価として同じ情報だけでなく戦利品や呪文、時には体で支払われることすらあるぐらいだ。
「やっほー、アーノルド。最近羽振りが良いみたいじゃない。何か良いネタでも捕まえた? それともヒモでもやってる?」
けたたましく弦楽器がかき鳴らされ、最近の迷宮での猟奇吸血鬼をおもしろおかしく歌い上げる吟遊詩人の怒声の合間をかいくぐり、
憶えのある顔がそばで負けじと声を張り上げる。
「そんなに大声を出さなくても聞こえる。現に俺の声は聞こえるだろう。この前、傭兵斡旋の大口がまとまったのさ」
「へぇぇぇ、うらやましいねー。アンタみたいに商売の種を次々に見つけるやつはさ」
となりに座った人間族の女は、たしか雇われの盗賊だったはずだ。
元々のパーティーが離散し、今では迷宮での罠解除や鍵はずしを専門に請け負っているやつだった。
魔窟の中には質の悪い仕掛けが多い。
片方からは開くが、もう片方からは鍵をはずさないと開けられない扉が、その典型だ。
こうなるとパーティーの盗賊の技量によっては抜き差しならない羽目に陥る。
他にも救援部隊に道案内で参加することもある。
どうせ玄室の守護者を倒さなければ助けにいけないのだ。だったらお宝を無視する手はない。
盗賊の腕があればこそ、探索者たちは財宝を手に入れることが出来るのだ。
そう言う意味では、盗賊は替えの効かない重要な人材だ。
無論忍者たちも罠を外す訓練は受けている。
だが専門職に比べれば、その腕は格段に落ちる。
加えて盗賊の腕の伸びに比べて、忍者の成長はかなり遅い。
自らの肉体の改造。敵の肉体組成の看破。この二つに圧倒的な訓練と経験を要するからだ。
腕に良い盗賊はどのパーティーでも引く手あまただ。
「で、何か用か。最近の迷宮に関するネタでもあるのなら、金があるうちに買っても良いぞ」
既に空になっている杯に酒をつぐようにバーテンダーに目配せする。
「お、さっすがアーノルド。紳士だねー。となりに座った女には必ず良い酒を奢るってのは本当の話なんだ」
「どこで聞いた、そんな与太話。お客様は神様ってやつだ。お前ら冒険者が儲かれば儲ける程、こっちだって商売が広がるからな」
目の前の皿に残った特注のナッツを一つ一つ食べながら返事をする。
「つれないなー。さすが女嫌いのアーノルドさん。とは言っても男が好きという話も聞かないし。もしかしてアブノーマル?それともあれか!
『自分しか愛せない、ああ!なんて美しいんだ僕は。もう一人の自分がいれば時の果てるまで愛しあえるのにーーーー』かい?」
下手な芝居をしつつ、いやんいやんと身もだえする酔っぱらい。
「人をどこぞの水仙といっしょにするな。で、本題は何だ? 言いにくいなら上の部屋でも用意させるぞ」
「うわっはーーーー。やばいねアタシ! いい女とは常々気がついてはいたけどさ、まさかアーノルドから誘われるなんて!」
「悪いが今は腹がいっぱいでな。消化に悪い冗談はどこかよそでやれ」
カウンターにとなりの酔っぱらいが飲むであろう分まで勘定を置き、椅子から離れようとする。
「うわ、待った待った。人の勘定を持つぐらい優しいんならさ、女の長広舌ぐらいにはつきあってよ。けっこう今へこんでてさ」
「何があった。罠の解除に失敗して、仲間からお仕置きでもくらったか」
……実際に良くある話だ。
盗賊は力のかわりに素早さと運が必要とされる。
だから冒険者のうち、もっとも女が多いのが盗賊だ。
ついで魔術師や司教に僧侶だ。
さて盗賊が罠の解除に失敗したとする。
もっとも危険なのは盗賊自身だが、呪文使いに反応するブラスターや爆弾、状態異常を引き起こす虹のきらめきあたりはパーティーを巻き込む。
地域によっては全員が石化や麻痺させられたり、数人が黒こげや灰化までさせられる恐ろしいものまであると聞く。
こうなるとパーティーの恨みはついつい盗賊へと向かう。
自暴自棄になりそれまで仲間だった女盗賊に襲いかかった何てのは、良く聞く話だ。
実際、迷宮で回廊や宝箱の罠の設置に従事している盗賊のうち、女のほとんどがそういう風に仲間だったやつらにさんざん犯された経験を持つ。
まあ、あれだ。数人がかりで押さえつけ、むりやり突っ込んでいるところを不意打ちというところまでお約束なんだが。
怯える女盗賊を迷宮内の施設で介抱してやり、妊娠を防ぐ薬を渡しておまけに自分たちの体験も語ってアフターケアまでばっちりだ。
こうなるともう迷宮に潜ってくることはなくなる。
それどころか、大半が冒険者への復讐に燃えて仲間入りといった寸法である。
…………施設やら介抱手順やら、その後の手助けやらの手引き書を作ったのは俺だが。
「お、お仕置きって。分かったよ、話すよ。最近の吸血鬼騒ぎのネタがあるんだよ。とは言ってもこれだけガセが出回ってると売りにくくてさ。
アーノルドなら顔が広いから、売り込み先もあるでしょ?」
後ろからは吟遊詩人の絶叫か途切れることなく吐き出されている。
凄い内容だ。
何でも件の吸血鬼は、パーティーにこっそり紛れ込んで迷宮の奥深くで裏切るそうだ。
殺し方は全員を磔にしたあとで「一人だけ餌食にする。残りに手出しはしない」と持ちかけ多数決で犠牲者を決めさせる。
仲間から生け贄に選ばれたそいつの血を吸血鬼が飲み干し、約束通り吸血鬼はその場を去る。
そしてあとには磔にされた裏切り者たちと、吸血鬼の仲間入りをした犠牲者が残される。
最後は言うまでもなく、推して知るべしってやつだ
「うわ、食欲無くすぜ。せっかくのナッツが台無しだ。残るは6つ。大切に食べないとな。で、どんなネタなんだ?吸血鬼らしいやつでも見つけたか」
ぽりぽりとナッツを食べては残りをカウントする。
「そこまでズバリなネタじゃないよ。聞いた話だけどさ、最近評判の女君主のアナテがこの街にきた理由なんだけどさ、
吸血鬼を追いかけてきたんだって。
何でも昔の仇らしくて、今までも色々な迷宮にきたそいつを追いかけては、追い払ってきたとか。
で、本題。いつまでも逃がしてはいられないと言うんで、冒険者から協力者を募って対吸血鬼専門のパーティを組むみたい。
あわせて迷宮の案内人とかも探してるよ。ちなみに女限定。レズレズお姉さまってみたね、あたしは!」
「単に餌代わりだろうな。無論戦力としてもカウントしているだろうが。君主といえば吸血鬼や悪魔の天敵だぞ」
伝説級の至宝である聖なる鎧に代表されるように、君主の武装は退魔に特化している。
上位クラスの武装ともなれば精気吸収を防ぎ、構えた武器には魔を退ける力が宿る。
吸血鬼や悪魔族を滅するにはこれ以上はない職業だ。
「で、売れそう? あたしは四割で良いよ。もちろん五割や六割でも文句は言わないけど」
「それだけじゃあなぁ。アナテに適当な人材を斡旋して報酬がもらえればいいんだが」
ま、何とか売り込んでみるわと言って、席を立つ。
「おお。仕事に燃える男は違うね!頑張ってダーリン!愛してるからね!」
はいはい、と返事をして俺はまずは探索者御用達のぼったくり店へと脚を向けた。
ぼったくり価格上等の店で、最近の商品の流れを確認する。
闇夜のマントが売り切れていた。
他にもいくつか巻物類の在庫が少ない。
なるほど。新規にパーティーを組んだやつらがいることは間違いがないようだ。
「いやいや、これはアーノルドさん。また、仕入れにきて頂けましたか?」
めざとい店員が揉み手をしながら近づいてくる。
「今日は売れ筋の確認だ。あまり売れないものを持ち込んでも悪いしな」
「これはこれはお気遣いを。ですが当店といたしましては、全店舗を通しての在庫管理を行っていますので、お気遣いなされませんよう」
「了解。話は変わるんだが、ずいぶんと高額なものばかり売れたみたいだな。だれか装備品でも壊されたのか?」
「ああ、そちらでございますか。何でもアナテ様の使いが吸血鬼退治にお買いあげとのことにございます。
装備品を壊された方々はもっと手頃なものをお買いあげいただいたようでして」
「そうか。確かに武装を破壊する厄介な魔物が出る、そのあたりの階層で買えるぐらいのものの方がさばきやすいかもな。参考にしておく」
お辞儀する店員をあしらい、とりあえず家に帰ることにした。
「なあ、シニストラリ。最近の吸血鬼騒ぎは聞いているか」
家に帰り、コートを脱ぎながら聞く。
「聞いていますよ。でもどちらの吸血鬼ですか? 迷宮をうろつく方ですか。それとも街で若い娘を引っかけている方ですか」
コートを受け取ると、ハンガーにつるしてほこりを取りながらシニストラリが答える。
家の中で動きやすいように、長いブルネットを結い上げている。服も短めのチュニックにカーディガン、下はクロップド丈のパンツだ。
「なあ、シニストラリ。どうも棘がある言い方の気がするが、とりあえず迷宮をうろつく方の話を聞きたいな」
シニストラリはテーブルの上に冷茶と干菓子を並べ、台所へと向かう。
「何でも探索者だけでなく、魔導師が雇っている兵にも犠牲者が出ているみたいです。
管理職のヴァンパイアたちはかなり対応に追われているとかで。外出中の魔導師様とヴァンパイアロード様が戻られるまでに事態を納めたいとのご様子でした」
シニストラリは温めたミルクと焼き菓子を置くと、飲み終わった冷茶と干菓子の皿を片付ける。
「なあ、シニストラリ。ということは外部から入り込んでいると目算がついているらしいが、いつぐらいかは絞り込めるか」
エプロンを外し、ソファに並んで座る。そのまま何故か俺の肩幅などを計測している。
「残念ながら。あの女君主、名前は覚えていませ『アナテ』んが――あら、お詳しいこと。
でしたら何も聞かなくても『すまん、俺が悪かった。何故かそんな気がする』――――あの女が来た時期からとしか言えませんわ。
追ってきたのですから、何の参考にもなりませんね。もし調べろと言われるのなら、前の都市でどの程度で追い払えたのか調べますわ」
テーブルの上には小さい紙があり、何故か肩幅、身長、厚みなどを次々と記入していく。
「なあ、シニストラリ。どうもこれを聞いたら負けな気がするし、平和のためにはあえて流れに乗った方が良いんだろうが。
それなんだ? という前にだな。何でお前が俺の家にいるんだ?そもそも口調が違わないか」
シニストラリは俺の肩に手をかけると、そのまま自分の太ももの上に引き倒した。灯りの魔術を呟き、手に持った棒を光らせる。
「動かないでくださいましね。先ほどの紙はサイズ票です。何のサイズになるかはあなた次第ですわ。
家にいる理由は押しかけ女房というやつでございます。
口調は元々がこれですから。店でははすっぱな方が受けが良いものですから、あえて変えていましたのよ」
耳の垢をゆっくりとシニストラリは掻き出していく。時折呟く歌に、まぶたが閉じそうになる。
「なあ、シニストラリ。で、いつまで『あらあら、動かないでくださいと言ったのに。思わず耳かきを貫通させそうになりますわ』
…………部屋は別だからな」
何故か同居人が増えた。とりあえず寝床の鍵を新調しておくべきだな。
「た、助けて。何でもするから!」
玄室入口の扉に張り付いたまま、恐怖に涙や汗、小便まで流しながら戦士の少女は懇願した。
まさかこんな魔物が、こんな上層にいるなんて。
女性だけで組んだ、男の目を気にしなくて良い分気楽なパーティーだった。
全員年齢も近く、積んできた経験もそうかわりはなかった。
侍の少女の堅苦しさは気になったが、僧侶や魔術師ふたりとはすぐにうち解けた。
同じ中立の盗賊の娘が持っていた地図はかなり詳細で、苦労せずに先へと進めるはずだった。
それがあっさりと全滅の危機に陥っていた。
彼女は剣を手放し、目の前の魔物に懇願をした。
中立の彼女にとって今のパーティの仲間は命を賭けて救う程の相手ではなかった。
もともと魔物によって欠けたパーティの生き残り同士の寄せ集めだ。
数日の試しのつもりでパーティーを組んだだけだ。
それが宝箱の罠に引っかかり、呪文使いが麻痺したところを強襲された。
盗賊は一目散に逃げ出し、戦おうとしたのは侍と彼女だけだった。
迷宮の暗がりにとけ込むような敵は、まず侍の少女に襲いかかった。
不意を打たれた侍に為す術はなかった。攻撃には長けているが、守勢にまわると侍は脆い。
あっという間に魔物の爪が、腹部へと突き刺さり中身をかき混ぜていく。
それでも侍少女は必死の抵抗を見せた。
魔物の爪を掴むと、引き抜くのではなく自らのさらに奥深くへ突き刺させた。
どうせ助からない。ならば仲間が逃げる時間を稼ぐ。例え寄せ集めでも一度仲間になったのであれば見捨てることはない。
その命の最後までパーティーのために戦う。自らの身を犠牲にしてもだ。
それが彼女の探索者としての誇りであり、少女の戒律である善の強さだった。
「逃……げ……」
あふれる血潮に言葉を害されながらも、少女は中まである戦士へと最後の声をかけた。
勝てない!
そう判断した戦士はきびすを返し唯一の出口である扉へと向かった。
扉に飛びつき、一気に開け放つ!
……………開かなかった。
先ほどまで普通に開閉していた扉が、だれかが鍵でもかけたかのように閉まったまま、いくら押しても開かない。
「なんで、なんでよ!さっき開いたでしょ!何で!!」
パニックに陥り、ドアノブを狂ったようにまわす。
背後から、ごぽごぽとあぶくがはじけるような音が聞こえる。
ついでがちゃり、がちゃ、と何かが崩れ落ちる音が立て続けに鳴り響いた。
「うふふふふふ、かわいいわねぇ。そんなに必死になって。お姉さん好きよ。そういう頑張る姿」
耳元に吐息がかかる。
「ひぃぃぃっ、た、助けて!」
その場にしゃがみ込み、身をすくませて懇願する。
「そうねぇ。かわいいあなたがお漏らしまでしてお願いしている姿は良い感じ。ちょっと助けてあげても良いかなという気になったわ。
こっちにきなさい。ちょっと気晴らしにつきあってくれたら助けてあげる」
魔物はゆっくり部屋の中央、麻痺したままの僧侶と魔術師たちの前に立つ。
「ほら、はやく。言うこと聞かないと気が変わっちゃうから」
「は、はいぃ」
戦士は転がるように部屋の中央へと駆け寄った。
「そうねぇ。あなた処女?そっちの三人は?」
薄暗いおぼろげな影は、屍とかした侍の上に座ると、楽しそうに質問を投げかける。
「しょ、処女です。その三人は今日パーティーになったので分かりません」
「あらそう。じゃあいいわ。ねえ、服脱いで。そっちの三人の服も全部破きなさい」
一も二もなく従う。
それしか生き延びる術はないのだ。
言葉からすれば女の魔物だ。強姦されることはないだろう。
三人の無言の抗議を無視して、ローブを切り裂き、胸当てを外す。
自分よりも小さめの胸と自分よりも濃いめの恥毛が三人分さらけ出された。
「良い眺めねぇ。まだ子供っぽさが残ってるところが良いわ。次は三人を座らせて、思いっきり脚を広げるのよ。
そうわかってるじゃない。良い格好ね。うん、三人等も真面目ね。まだ白っぽい膜が残ってるわよ。
じゃあ、助かる方法を教えてあげるわ。もうちょっとすると巡回のやつらが来るわ。もちろん全員が男。
どうなっちゃうかしらね。いたいけな少女たちが身動きできないまま蹂躙されるなんて、想像するだけで最高よねぇ。
そこでチャンスを上げるわ。一人だけ犯されなさい。だれでも良いの。ただ、あなた達が自分で選ぶのよ」
「え、あ、でも」
三人は動けないからと言おうとして、彼女は三人の瞳が自分へと向けられていることに気づいた。
その瞳に宿る憎しみを見たときに、彼女は自分が選ばれたことにようやく気がついたのだ。
「はい、正解。残念だったわねぇ。多数決ですもの。さあ、頑張って犯されましょうね」
「ひ、い、いや! や、だ!! 助けてーーーーー!!!!!!!!」
「あらそう。だったらこの三人を殺してから、あなたは最後にゆっくりと解体してあげる。
まずは大きなおっぱいから引きちぎってみようかしら。
あーあ、残念ね。命は助かるのに。全員死んじゃうのよね。そう言えばさっき一人逃げたっけ?
運が良ければ助けを呼んでもらえるかもしれないから、少しでも時間を稼いだ方がいいのにねぇ」
悪魔の声だった。
生き延びたい。
そのためには犯されるしかない。
「ぅ、あの……」
涙を流し、しゃくり上げながら命乞いを行う。
「なぁに、おっぱいちゃん。それともお漏らしちゃんと呼ぼうかしら。お姉さん、おねだりには弱いの。
ちゃんとお願いできたら優しく犯してあげても良いのよ? それからこれが重要。
今日は獣な気分だから、わたしが許すまで四つんばいのままでいなさい」
残酷な命令に、命惜しさに戦士の少女は従う。侍の血で粘つく床に手のひらをつき、屈辱的なポーズになる。
「わ、わたしを、優しく、犯して、く、ください」
「うんうん、言えるじゃない。ちゃんといやらしいお願いが出来るじゃないの。だったら話は別。ちゃんとそのおしっこ臭い穴に入れてあげる」
「さ、まずはご挨拶から。わたしのズボンのチャックを開けるのよ。あらら、獣は手は使わないわ。雌犬は口でものを運ぶでしょ」
片手を上げてチャックを降ろそうとしたが、制止の言葉に手を下げる。
チィィィィィ。
口でくわえたジッパーを降ろしていく。
最後まで降ろすと、軽く膨張し始めた肉の槍が彼女の目の前に突き出された。
「どう? わたしのおちんちん。まずは舐めて大きくしてね。ちゃんと涎をまぶしておいた方がオマンコが痛くないわよ」
目をつぶり、口を開けた。
ゆっくりと顔を突き出して、肉棒をくわえる。
口の中いっぱいに違和感が広がり、吐き気がこみ上げてきた。
汗くさく、かすかに青臭い匂いが鼻孔へと届く。わずかに感じる苦みが、どうしようもなく辛かった。
「まずはお口の中に唾をいっぱいに溜めなさい」
魔物は口を陵辱する肉槍をさらに押しつける。
少女は顔をかすかに反らし、舌で口の中にさらに分け入ろうとする凶器を押しのけようとするが、魔物は片手で後頭部を押さえている。
もう片方の血に汚れた方の手で少女の頬を掴むように固定しているため、少女にはどうすることも出来なかった。
それでも唯一自由になる舌でぷっくりと膨れ始めた肉の実を押しのけようと必死に抵抗するが、それは結果として涎の音をじゅぶじゅぶと垂らしながらの口腔奉仕にしかならない。
口の中で淫猥な実はますます成長をし、怒張となって彼女の口を圧倒的な存在感で征服し尽くそうとする。
肉の凶器がさらに熱を発して猛る。割れた肉の先から粘っこい粘液を吐き出し始め、少女の口の粘膜全てにまとわりつき染みこんでいく。
そのあまりの熱さに少女戦士は抵抗の気力を失い、はずみで口からちゅぽんという水音を立てながら勃起が飛び出した。
口を解放され、少女は思わず大きく息をつく。吐息に混じる淫猥な匂いに気がつき、悔しさと恐ろしさから瞳を滲ませてしまう。
「あらあら、もう入れて欲しくなっちゃったの?それならそれで良いわ。もう少ししっかりと舐めた方がいいと思うけれど、無理矢理オマンコにねじ込まれた悲鳴を聞くというのも悪くないし」
心底楽しそうな笑いを漏らしながら、魔物はペニスをびくん、びくん、とふるわせて誇示する。
「でもいやらしくわたしのおちんちんにむしゃぶりついてくれる娘だったら、入れる前に優しくほぐして、なるべく痛くないように膜を裂いてあげるんだけど」
魔物は一歩少女の方へと歩み寄り、ペニスの根本に手を添えるとまるでどうするのか尋ねるかのように、その肉で出来た角を軽く振った。
鈴割れからは透明な粘液がしみ出し、幹の部分は赤く充血している。全体にまぶされた少女の唾液で艶々と光り、青臭い匂いをさらに強く漂わせている。
「恥ずかしいのね。初めておちんちんをくわえてもらえて嬉しいでしょ。ああ、何て可愛い顔のなの。呆然としていながら諦観を滲ませているその表情。お姉さん、勃起が止まらないわ。ねえ、ぺろぺろして。美味しい飴をなめるように、おつゆをすすりながら舐めるのよ」
迷う彼女の視界に、小さく動く魔物の爪が見えた。それは指の一つ一つが別の生き物のように蠢き、逆らったらどうなるかを明確に突きつけていた。
少女は覚悟を決め、四つんばいのまま凌辱者へとにじり寄っていく。
求められるまま生臭い露を浮かべた鈴割れに舌先を伸ばし、ゆっくりと舐め取った露を唾液で薄めて嚥下する。
「良いわよ。次はそうね、おちんちんを横から舐めてくれると嬉しいわ。ゆっくりと根本から先端まで何度もその可愛い舌と唇で磨きなさい」
うふふふふふと悦にいった笑いと共に、少女に苛烈な奉仕を要求する。
どうすれば楽に舐められるのか。経験のない少女は四苦八苦しながら、顔を傾けて横笛を吹くようにくわえるやり方に気がついた。
自ら奉仕の術を見つけようとする少女の痛ましい姿は、さらに魔物を喜ばせ、股間の陽根をさらに堅くさせていく。
口の中にくわえるよりも心理的に楽なせいか、少女の口唇奉仕はたどたどしいながらも途切れることなく続き、
一舐めごとに少女の抵抗の意志は削り取られていった。
固く、熱く、粘つく感触に、少女の舌先は痺れていく。
いつしか少女の思考には霞がかかり、気がつけば再び肉棒の先端をくわえて吸い付いていた。
「良い娘ね。素直でいやらしくて。ご褒美に好きなようにフェラチオさせてあげるわ。ゆっくりでいいからお口を動かして、おちんちんの先端をしごいてご覧なさい。下手でも許してあげるから、自分の好きな方法で舐めるのよ」
優しく髪をすき、後頭部を撫であげる。先ほどまで死の恐怖を味わっていただけに、少女に抵抗する気力などありえなかった。
恐ろしい魔物が見せた仮初めの優しさに少女は強い喜びと感謝を感じて、必死に肉棒から伝わる反応を口内に受け止め愛撫とすら呼べる熱心さで淫猥な奉仕を開始する。
何度か喉の奥までくわえてしまいえずきそうになったが、口内に溜めた唾をじゅるじゅるとこぼしながら魔物のペニスを陶然としゃぶっていく。
顎が疲れると動きを止め、先端からあふれ出し続ける粘液をすすりながらもごもごと舌先を動かして、肉の実の表面を磨いていく。
「ん…………ふぁ……む……あぁ…………はぁ」
ペニスに犯された口から、吐息が漏れ出す。
鼻にかかった淫蕩な響きが、ますます少女を高める。
頬の内側にペニスをこすりつけ、口蓋の上側で先端部分を摩擦する。
「うん……あ……うぁ……ふぅ……あはぁ」
既に漏れるのは吐息ではなく喘ぎ声になっていた。
「いやらしい声ねぇ。本当に淫乱な娘。処女なのに、見知らぬ相手のおちんちんをそんなに美味しそうにくわえて。口元が涎でべたべたよ」
魔物の嘲りに満ちたからかいも、既に少女にとっては喜びをもたらす褒め言葉と化していた。
ますます熱意を込めて、愛おしそうに今にもはじけそうな肉棒をしゃぶる。
四つんばいになり持ち上げられた腰が自然に揺れる。
まるで麻痺したままの仲間たちに誇示するように、自らの豊かな双球や中央のすぼまりやその下で白っぽい半透明の粘液を垂らし始めたピンク色の肉割れをさらけだす。
うっとりとした表情で仲間の命を奪った魔物の汚らわしいはずの陰茎を舐め尽くさんばかりに、幼さの残る顔を紅潮させて動かし続ける。
「何ていやらしい娘なの。このヘンタイ」
上から降る罵声が嗜虐の喜びを燃え立たせる。魔物に実を捧げることに、自らを貶める喜びを感じた。
そう、自分はヘンタイだ。仲間を見捨てて逃げ出そうとした卑怯者だ。だから罰をいっぱい受けなきゃならない。
いっぱい罰をもらうんだ。そうすれば自分は、また元通りの良い娘に戻れるのだから。
仲間を見捨て、仲間から見捨てられたとの思いが、少女を自虐の快楽に酔わせていった。
「最低の淫乱娘。毛も生えそろってないのに、そんなにおっぱいを膨らませて。乳首まで尖らせてるのね。
ここまであなたのオマンコが漏らした発情汁の匂いが漂っているのに気がつかないの?
お友達に見られているオマンコは今、どれだけはしたない濡れ方をしているのかしらね」
少女の精神が崩壊しつつあることなど、当然わかりきっているのだろう。
魔物は少女が求める罵声をご褒美代わりに吐き出し続ける。
「さあ、そのいやらしい穴を見せてご覧なさい。しっかりと見えるようにお尻を突き出して、自分の手で開くのよ」
魔物の新たな命令に、何ら逡巡を見せずに少女は従った。
名残惜しそうにペニスの先にキスをすると、四つんばいのまま旋回し豊かな尻肉を魔物の方へと突き出した。
当然目の前には麻痺した仲間たち、それも少女が辱めた格好のままの同年代の裸の少女たちが並んでいる。
…………みんなも濡れてる。そうか、いやらしいのはわたしだけじゃないんだ。よかった。みんないっしょなんだよね。
ぼんやりとした脳裏にそんな考えが浮かんで、我知らず少女は笑みを漏らした。
…………よかった。みんなといっしょ。みんなぱーてぃーのなかまだもんね。あ、なに。何かお尻に当てられている?
にこにこと嬉しそうに仲間たちの未通の性器を眺めていた少女戦士の表情が、一気にこわばった。
ぬちゅううう……
何か狭い場所から、粘液が絞り出されるような音がした。
「あっ、あ! うくぅっ! いっ、ぐぅぅ」
痛いと叫びそうになって、少女は耐えた。
これは罰だ。自分だけ逃げようとしたから、みんなのかわりに犯されているのだ。
痛みで正気に返ったが、続くさらなる激痛に、思考はあっという間に散逸した。かろうじて胸に残るのは悔恨だけだ。
「あはぁ。健気ね。良いわ、そう言うのって。お姉さん、泣き喚く娘も好きだけれど、おまんこを犯されているのに耐えようと意地を張る姿も大好きなのよ。ああ、何て気持ちの良い入り口かしら」
「ねえ、わかる? 今一番太いところが入口にはまったわ。これからゆっくりとあなたの中を味わってあげる。しっかりと憶えておくのよ。
あなたの処女を奪って、だれも触ったことのないヒダヒダにおちんちんをこすりつけたのはこの私。
あなたが初めて愛液を塗りたくったのは私のペニスなのよ」
さらに奥へと魔物は腰を突き出していく。
少女のアソコはペニスの先端を押し返そうと、必死に硬く道を閉ざして抵抗する。
少女の全身を冷たい汗が包む。噛みしめた口から苦鳴が漏れでそうになるのを、少女は眉をしかめ苦痛に顔を歪ませながらぎりぎりでとどめた。
痛みから逃れるためか、少女は身をよじり仲間の方へと進むように手足を動かす。
だが、がっしりと腰を押さえた凌辱者の両手が、ゆっくりと彼女の腰を引き戻していく。
「くぅぅぅぅ……」
彼女が痛みを逃そうと、息を吐き出したときだった。
ずにゅうッ!
見計らったかのように強姦者は肉の槍を突き出して、少女の最後の守りである輪状の膣ひだを貫いた。
「い、痛いッ痛い、痛い痛い痛い!! イタイ、イタイっ!」
体が二つに割れるような痛みに、ついに少女の心が敗れ去った。
苦痛に悶え、股間を引き裂く痛みに涙があふれ出た。
灼熱した槍が、股間からお腹を抜けて、のど元まで突き破ったかのようだ。
「い、痛いよぉ。……ひどい………やめてぇ…………つらいよぉ」
届くはずもない懇願を何度も繰り返す。
「あら、痛かったかしら? そう言えば私のおちんちんが真っ赤ねぇ。とってもきれいよ、貴方の処女の雫。ほら、こうするともっときれい」
半ばまで埋めた肉棒を、魔物はゆっくりと引き出した。
めいっぱい広がった大陰唇の間から、破瓜の血にまみれてまだら模様の肉茎がゆっくりと抜き出されていく。
処女の結合部を見ると、サーモンピンク色の肉の輪が肉茎を取り巻いている。膣から引き出された処女膜が、ペニスに絡みついているのだ。
純潔を奪われた直後特有の光景が、奪われた少女自身の目の前に浮かび上がる。
魔物が幻影を使い、少女を犯した証を本人に見せつけているのだ。
そしてそれは麻痺したままの仲間たちの眼にもしっかりと焼き付く。
「ふふ。今あなたのオマンコ、きゅんって締まったわよ。ざらざらした肉粒も立ち上がってとっても気持ちいいわ。
貴方のオマンコはね、入口近くからひだが絡んで、途中のでこぼこがいい具合よ。ほか、私のおちんちんの傘にしっかりまとわりついてる。
あらあら。どうしたの? 自分のオマンコの中を教えてもらって興奮したのかしら。はしたない膣がうごめいて、おねだりをはじめたわ」
容赦ない責め句が、次々と少女の耳を汚す。
幼い狭穴がぐにゅぐにゅと本能に従って反応し、ますます自分の体を割広げる肉茎の存在を確かなものにしてしまう。
逃げたい。そう思って、体を動かしたときだった。
偶然にも挿入とタイミングが揃って、未熟な子宮口に亀頭があたってしまった。
ヌチャ!
「ぅあ! あふ!」
少女は確かに自分の胎内から響く音を感じた。
それは凄まじい未知の感覚、すなわち性的快感を伴っていた。
我知らず背中を反らす。当然豊かな臀部が突き出され、中身を陰茎によってこすり上げることになる。
先ほどまでみっしりとあわさり侵入者を防ぐだけだった膣壁が、ペニスを絞り出すように動き中に射精するように促しはじめた。
「っ! 奥が感じる娘なのね。いきなりおちんちんを気持ちよくして。一気に熱い雌汁がたれてきたじゃない」
「あ、あっ、奥! すごい! いや、怖い!!」
少女は快楽をどう受け止めて良いのか分からず、頭を激しく振る。
だが正直な体が、本能のままさらに腰を押し下げ、白い双球をさらに引き上げて深い挿入を求める。
子宮口に硬く勃起したペニスがあたるたびに、中のひだがうごめく。
精液をねだって喜びの蜜を吐き出し、自分から腰を前後にゆすっては雁首が与える刺激を貪欲に求めはじめる。
「うぅん、もっとえぐってぇ! お姉さまぁ! もっともっとぉ!」
「いっ……すごい!……うふ、んぁ……っあ、ああああん!!
ん……くはぁ、あっあっぁ! い、いや、やめ…っふあああ!」
完全に自らの性器が産み出す快楽に堕ち、少女は一気に絶頂へと駆け上っていく。
「ん、ぁぁあぁあああ、はぁああ……
ゃぁぁあん、はぁぁぁ、ああ、んっ!
や、やだ! いやぁ! 止めて!許して!助けてっ!」
あまりの快楽に恐怖を憶えたのか、少女は腰を何度も左右に動かして、必死に逃げ出そうとする。
「うふふふ。いくのね。可愛いわ!良いわよ、いかせてあげる。たっぷり出してあげる!!」
少女との結合部から、白いあぶく混じりの粘液がしたたり落ち、激しい抽送を開始した肉槍の表面を磨いてく。
「やめてっ! もう許し、て、くださ……い……んぁぁぁ! だめ、いくいくいく! 怖い! いやぁぁぁっ!」
尿の匂いに汗の臭い、そして錆びた鉄の匂い。
それらを圧倒して、少女の発情した淫臭が玄室いっぱいに広がる。
「ふ、深いッ! や、怖い! だめ、オマンコ! オマンコだめ! いいっ! 気持ちいいの! だめ、だめ、だめぇぇぇぇぇぇぇっ!」
いやいやと激しく拒否しながら、少女は絶頂を迎えた。
「ん!いいわ!でちゃう!!出ちゃうう!!」
同時に絶頂を迎えた魔物が、最後の一突きを最奥へとねじりこむ。
激しく締め上げる膣内に、魔物が容赦なく精液を注ぎ込んでいく。
女の本能に従い、少女の未成熟な性孔が犯した相手の精液を吸い上げて、子宮へと運んでいく。
…………犯されちゃった。
膣から流れ落ちた粘液が太ももを伝うのを感じて、少女は自分が完全に汚されたことを知った。