ゆっくりと体勢を整えながら、僕は宣言めかして告げる。
「嬉しい、フェレーラさんみたいな人で童貞喪失できたなんて……。でもフェレーラ
さん、さっき言った通り、ここからもう一回だよっ……」
「はっ、はいっ」
 ぼうっとしていたのに、僕の言葉に食いつくように反応するフェレーラさん。
 その目付きが違ってきている。んはーっ、んはーっ、と鼻に掛かった息を荒げても
いる。絶頂手前でおあずけを喰らっているからか、これまで以上に淫乱な気が彼女の
意識を濁らせているみたいだった。
 生まれたての子牛のように、フェレーラさんはふるふると震えつつ上体を起こす。
湯気が彼女の肌の表面から立ち上り、揺らめいている。僕には、それは彼女のうち
から噴き出る淫気のように見えた。
「好きなだけしてくださいね……。というより、ちゃんと私の膣内で射精してくれる
までは、脱童貞と認めてあげませんから……っ」
 そんな妙な事を言ってくる。淫らというより可笑しく感じて、僕は思わず吹き
出してしまった。
「あはは。じゃあ、僕はまだ童貞って事だね。フェレーラさんのために、僕は童貞
なんだ。……フェレーラさんに捧げるためだけの童貞」
 童貞である事がこんなに嬉しいとは思わなかった。童貞童貞と言うたびに、彼女が
興奮して瞳を輝かせているのが可笑しい。

「……でも」
 ふと思って、
「それっていいの? 膣内に射精って……」
 との僕の言葉に対し、まるで固まったように動きを止める彼女。
 その表情は、何とも複雑で、意味ありげなものだった。
「に……妊娠の心配なら大丈夫ですので……。体内に入った異物である以上は、精液
に対してラツモフィス(解毒)の呪文が有効で……、まず避妊できるとされています
し……」
「ああ、確かにそういう用法を聞いた事がある。へえ、実際に有効なんだね」
「はい。……とは言え、その……、ふーっ……、わ、私の心境的には……毒などで
なくて、甘露なのですけれども……。ユスノーくんの……これ……」
 生々しい鼻息に、甘ったるい声を混ぜるように囁きながら。精液を掻き集めた手の
ひらを口の前にやって、僕に見えるように唇と舌で、ちゅちゅっと啜ってみせた。
 うわ、と僕は露骨に嬉しげな声を上げてしまう。この、僕をまるごと受け入れて
くれるような行為に感動すら覚えた。

 そして、覚えたのは性衝動の高まりも。
 淫靡な表情でぺろぺろと手を舐め続ける彼女を見て、気持ちは相変わらずむらむら
する。ただ、さすがに三回の射精後となると、萎びれた陰茎はしばらく滾りそうに
ない。
「じゃあ、今度こそフェレーラさんの中に出そう……と思うんだけど」
 僕がもどかしげに性器をしごいてみようとし、それすらできず揉んでいると、
「大丈夫、お若いのですし……、こぼれ湯とは言え回復の泉に触れ続けているのです
から……すぐ復活しますよ。何でしたら……」
「いや、ここはさっきの、思う存分に見せてくれる、の続きだよ。フェレーラさんの
裸で、もう一度、僕の興奮を駆り立ててよ。さっきの体勢だと、後ろの方が見え
なかったから、ちょっと不満かなって思ってたんだ」
「お尻の方ですか?……」
 熱い溜め息と共に形だけ聞き返してくるものの、彼女の表情には隠し切れない
嬉しさが混じっていた。瞳は潤んで、その奥に燈る粘りつくような火があからさまに
分かる。
 ――きっと、見られたいんだ。
「いやなの?」
 見透かしているのに、わざと意地悪してそう言ってみる。
「いえ、その……私はさっき、おちんちんを口と舌で舐めて差し上げましょうか、
と言いかけたのですけど、お尻を見せるのとそれ、両方を一度にしてみるとかは
どうでしょう?……」
「く、口で? それも興味あるけど……、両方を一度に?」
 僕の問いかけに対して彼女は頷き、また横になってくださいね、と床を指して
ふらりと立ち上がる。そう言われても、このまま攻め手の立場で彼女の色々な
部位を観察しようと思っていたため戸惑う僕だけど、
「ご奉仕させていただきますから……」
 との彼女の言葉。そういう事なら優位まで変わるわけではないかなと思い、意図
の分からないままに仰向けに寝転んでみる。
「失礼しますね……」
 彼女は僕の胴体の上で、足元を肩幅の倍に広げて佇立する。既視感があったけど、
さっきとは反対に僕へ背を向けていた。
 もしかして、と僕が直感的に理解すると同時に、彼女は尻を僕に突き出すように
しゃがみ込む。
「………こうしてですね」
 両膝を曲げて座り込み、前屈する。とは言え座りきらず中腰で、尻はあくまでも
持ち上げたまま。僕のすぐ鼻先の空中で、熱に染まった女体の、なまめかしく肉厚
かつ幅広の尻が視界一杯になった。
「フェ……、フェレーラさんてばっ……」
 喘ぐような僕の声に構わず彼女は、両手を背後にやって尻たぶを掴む。ぐいっと
左右に割り広げて恥部の全てを曝した。

 肛門は皺の窄まりをくわぁっと広げて、膣口に到ってはさっき挿入されて激しく
出し入れされたため、ぱっくり開いたまま。湯気まで立ちそうだった。
 その膣の有様を作った僕の性器に、彼女は顔を近づける。ただ、それは今は
萎びれて、先端には半ば皮まで被っていた。
「これはこれで可愛い感じですけど……さっき、私の膣の奥までごつごつ突いてきた
時の元気を取り戻してくださいね……」
 彼女の艶やかな唇が、陰茎に触れそうな距離に迫る。それを見つめる僕に、胸が
跳ね上がりそうな期待感。まさか本当に、と思う。
 フェレーラさんは鼻を鳴らしてくんくんと嗅ぎ、自らの体液と僕の体液の混合に
対して、はぁああと溜め息を漏らしてから――、口唇の中にぬちゅるんっと亀頭を
吸い込んだ。
「………ッ!」
 初めての感覚に思わず僕は、床に頭をぶつける勢いでのけぞってしまう。

「い、いいのっ……? こんな事っ……、うわわわわ……」
「ふぁひー」
 咥えたまま返事。
 こんな綺麗なお姉さんが、こんな恥ずかしい格好を曝しながら、口で愛撫して
くれるという状況。頭がくらくらして、背筋が総毛だった。確かに彼女は、「清楚
ぶっているくせに年下の男の子が好きな痴女のお姉さんとして、あなたを悦ばせて
差し上げますから」と言ったけど、ここまでしてくれるなんて。
 射精後でまだ鈍っているはずの性器から、早くも快感が滲み出てくる。
 フェレーラさんの裸身もまた、その肌を染める媚態の赤みが茹だるように増して
いく。しゃぶりながら、ぶるぶるっと身悶えしたのは――羞恥に焼かれているの
だろうか? その事に興奮しているのだろうか?

「んんぅっ、ユしゅノーくん、ふぉのまま見てくださいね、私の……女の部分の奥
と……恥ずかしいお尻の穴……。んぅ、ほひてまた、かちかちに勃たせてから……
その後、おちんちんで私の女をほじくり返してくださいっ……んっ、んろっ」
 逆さにした顔を傾けて僕と目線を合わせ、陰茎を頬の内側に乗せたまま、痴女
じみた事を言うフェレーラさん。言葉と共に動く舌が、唾液をまぶすように亀頭へ
ぴらぴらと撫でつけてくる。
 その淫らな美貌の手前では、熟れた果実よろしく張り詰めた乳房が垂れ下がり、
ぷるんぷるんと揺れている。
 揺れる乳房を挟むむちむちっとした両太もも。その根元では、恥骨と左右を黒毛
に飾られた陰唇が、厚ぼったくぷっくり膨みつつ拡がりきっている。膣口どころか
その内側のぬらぬらした、ロミルワの光で何一つ隠されない肉襞を覗かせて。
 膣口の上、尻の中央では、窄まりを開いた肛門。放射状の華。茹だって染まり
ながらもくすみのない色で、あの時に見た通り清潔感さえあるのに、周囲に濃い目の
産毛を数本生やしていて、卑猥さをもたらしている。
 彼女の秘所の何もかもが丸見えで。僕は、魔的な熱病に浮かされるようにボゥッと
した意識となった。

 それに前後してフェレーラさんの、僕の両側に立っていた細い両足首を握り締め、
つかまるようにする。彼女の意図が直接伝わってくる唇の動きに耐えられず、
無意識に。
「んむっ」
 と彼女が呻く。反応してか膣口がきゅううっと窄んだ。白濁した濃い性液を溢れ
出させる。その後、指三本が楽に入るほどぱっくりと開いていく。実際に、ぬぱぁっ
という水音さえ聞こえた。
「うわ……、フェレーラさんの膣口って、可愛くぱくぱくする……。水揚げされた
魚の口が呼吸に喘いでいるみたいで……、すごく卑猥だよ……。内側に糸まで
引いてる……」
 熱っぽく嘲る一節一節のたびに、たぱたぱっと彼女の恥液が僕の胸に垂れる。
「あぁんっ……開いちゃうんです……、んぅっ。ゆ、ユスノーくん、もっと奥まで
見てほしいからです……、んぅむっ、んぅっ」
 語尾で、ちゅっ、ちゅぢゅっ、と半ば勃起しかけた陰茎を吸い上げつつ、彼女は
自ら左右の人差し指を膣に入れ、肉壁を広げる。ぬるりとぬかるみに入り込む
彼女自身の指先がひどくいやらしい。

 肛門の中にも、両の中指と薬指の計四本を楽々と入れる。
 更に四隅に引っ張って、ぬらぬらと血色いい鮮やかな内側を自ら披露してみせた。
驚くほど大きく拡がる。
 直腸へ続く空洞――いや、直腸内部そのものだ。一番外側の肉の輪は皺が伸び
きっているけど、その内側の内臓然とした色合いの肉壁は窄んでいる。
 かと思うとぬぱぁと緩み、深奥まで視線が通る。もちろん、ロミルワで丸見え。
生物的な蠕動まで暴かれた。いやらしさに加えて、見てはいけないものを目にする
事の背徳感を誘う。
 この背徳感は美味で、むしろ物足りなくて、いっそ徹底的に暴いてやりたい
ぐらいだった。ここから排泄物が出てくるとはとても思えないほど、汚らしさなど
皆無だったから。
 迷宮に潜る前、夕方の入浴時にでも用を足し、念入りに清めていたのだろうか。
もちろん、探索する上で事前にそうしておくのは道理だ。けれど、こんな姿まで
曝している彼女を見ていれば、フェレーラさんは肛門の中まで見られたい人で、
そのためにわざわざ綺麗にしてきたんだ、などと妄想が僕の頭を侵す。僕まで
おかしくなってくる。
 この熱病に耐えられる者がいたら、そいつはブラザーフッド寺院の高僧の座さえ
狙えるに違いない。
 
「見てほしい?……見てあげるよ……っ、何もかも見てあげるし、何もかも全部が
見えてるっ……! 後ろが見えなかったから不満、とは言ったけど、腸の中まで
見せてとは言ってないのにっ……」
「ぷはっ……、やだ……、そんな言い方はしないでください……っ」
 陰茎から唇を離し、困ったような声で恥ずかしがる。
「違うの? 僕に求められたという体裁がないと嫌なの? 自分から見られたかった
んじゃないの?」
「…………ちが……」
「ちが?」
「違いません……、このまま見てください……。あぁん、いじわる」
 か細く、けれど嬉しそうな声で言う。膣口から、たぷーっ、という勢いで愛液が
溢れた。見られる事に加えて、辱められる事すら興奮しているように。
「よく見えているよ……、腸の中ってこんな具合になってるんだ……。意外と綺麗
だね? それともフェレーラさんのだからかな……?」
「え……、ええ……、いつも清潔にはしていますけれど……、もちろん私だって出す
ものは出しますし……、その時は汚れてしまいます……。んんぉろっ、んぶぷっ」
 再び先端に、はぷっと吸い付いてくる。排泄にまで言及しておいて、ぶぽっぶぴっ
と下品な連想を誘う音をおそらくわざと発てるフェレーラさん。明らかに自ら辱めを
誘っている。

 僕の中で、彼女を辱めて虐めたい気持ちがどんどん高まっていく。同様に、彼女の
被虐的な態度も高まっていく。どっちがどっちに応えているのかはともあれ、二人で
高めあい壊れあっているのは間違いない。
「そんなところを広げて見せるなんて……もしウンチが残ってたらどうしたの? 
痴女のお姉さんどころか変態お姉さんだよ、フェレーラさん……。見られて興奮
してる雰囲気がしてるよ? そうなの?」
「……んぅっんっ、はぷっ……、はい……、変態で、腸の奥まで見られて興奮して
います……。汚物を見られてもいいです……。んむ……んへぉ、んほっ……んふー」
 四回目の射精に向け、僕の性器に戻ってきた充血。その屹立の向こうで逆さに
なったフェレーラさんの欲情した顔。ことさら淫猥なうっとりした表情。
 それを肉茎に沿って上下させながら、彼女はそう白状した。はっきりと口走った。
気持ちを高めるためにただ復唱しただけではない、きっとそれは真実だ。そう思い
たかった。
 初見時のフェレーラさんの、清楚な雰囲気の微笑が僕の心中に浮かび、この姿と
重なり合う。何か決定的なものを暴いたような、神秘の探索により自らの世界観を
変化させる時にも似た高揚感さえあった。

「汚物すら見られてもいいような、変態の人なんだ……? だから全裸のニンジャ
なんかやってられるんだ?」
「……変態なんです……、だから全裸のニンジャなんかやっていられるんです……」
 言葉通り、鼻孔まで広げてフゥフゥと息を漏らして興奮している、痴女で変態の
お姉さん。
 僕は、様々に変化するフェレーラさんの卑猥な口淫動作と、合わせてひくひくする
膣内と腸内の肉襞を、ゆったりと交互に見つめ続ける。見つめつつ、彼女の事を
何度も言葉で虐めた。言葉で攻めながら、肉体は彼女の濃厚な奉仕を受け続けた。
 堪らなかった。
 とてつもなく気持ちよくて、とてつもなく心身を焼いた。
 今の奉仕も甘美なら、無理やり悶えさせられた時の苦痛も甘美、自分の呼吸でする
のも甘美。手も足も膣も口も、それぞれ単純には比べがたい独特の気持ちよさと興奮
があった。
 齢十五にしてこんなに色々な快楽を教えられて僕は、後々に目的を達して彼女と
解散する時、果たして素直に離れられるのだろうか?――そんな不安さえ心の片隅に
生まれた。それは、不安というより予知めいてさえいた。  
 そう思わせるだけの、このまま永遠の狭間に落ちて互いに貪りあいたいと思わせる
だけの魅力に溢れる女性は、しかし、
「んふーっ……、んふぉっ……、ぅろっ、んふーっ……はぷ、はほ……っ」
 と下品に呻きながら、その類い稀な美貌を歪め、陰茎をしゃぶっている。
 陰茎にめくられ、管のように引っ張られた口。鼻の下を伸ばした上唇。
 歯列が浮き出るほどへこませた頬。逆に、亀頭の形に盛り上がる頬。
 縦に伸びて内側まで見せ、鼻水まで垂らしている鼻孔。
 薄っすらと開けた半眼の奥で焦点の合わない、時折り白目がちの瞳。 
 ――と、ものすごくみっともない表情を曝している。
 こんなに美人のフェレーラさんでも、こういう事をすればこうして顔形が崩れる
わけだ。けど、僕は微塵も幻滅に向かわない。愛らしくさえ感じている。
 女性が最後の最後まで曝したくないだろう、それこそ膣内や腸内を見せるよりも
恥ずかしいだろう姿。それを露わにされているのだから。彼女の秘密と彼女自身を
掌中にした気分を高めこそすれ、その逆はなかった。勃起に流れ込んでいる血流は
最大の量を保ったまま。

 その口淫に合わせて受け手として喘ぎつつも、攻め手として彼女を虐めたい衝動は
強まるばかり。膣への挿入のために勃起を取り戻すという事だったわけだから、もう
とっくの前に十分な状態だ。
 そろそろ頃合かな――僕はそう思って、熱い溜め息を漏らす。
「んうっ……本当に美味しそうにしゃぶるよね、痴女のお姉さん……?」
「……んっう……、ユスノーくんのだから、ですよ……」
 からかうような言葉に彼女は弁解する。本気っぽい響きを感じさせてくれるのが
嬉しい。
「ほんなのを見せるろも、誰彼構わずではないですから……」
 彼女の顔の角度が変わり、真正面を向きつつ首を反らせて、んーっんーっ、と陰茎
を上に引っ張るようにしゃぶる。と同時に背中が弓なりになり、両手は尻肉を左右に
より強く割り、膣肉をあたかも裏返らせるように剥き出す。

「うわっ……、腸の奥も丸見えでいやらしいけど膣の中もすごいよ、生殖器という
より内臓そのものって感じ……。中にあるつるつるした丸いのが、呼吸に合わせて
ひくんひくん動いてるけど、これはなんなの……?」
「それは……、っん……」
 膣内に入っている彼女の人差し指がくるくる動いて、僕の見ている部位に触れる。
中央に小さな穴の開いた円形の肉だ。
「くくっ……、こっ、これ……ですか? ……多分……んろっ、ちゅきゅ……子宮口
だと思います、膣の一番奥の突き当たりです……。ぉん、女は絶頂近くにまで感じて
くると、こふぉが身体の奥から降りてくるのですね……」
 口に陰茎を含んだまま、自分の身体の仕組みについても彼女は白状する。男性器の
ような分かりやすい変化を見せない女性の身体が、しかし実のところ要所要所で
ものすごく劇的な変化を起こしているのだと、今夜は感心すること頻りだ。

「絶頂近くにまで感じているんだ? 奥を見られただけで? 僕のを……、んんっ…
…咥えただけで?」
 正確には、さっきの残り火が彼女を焦がし続けているのだろうけど、あえてそう
言ってみた。なにせ、「ユスノーくんに抱きついておちんちんを弄らせてもらった
時にはもう、お腹の中が気持ちよくなっていました」と言ったぐらいだし、的外れ
でもないだろう。
「んぉっ、んろっ……、んっ……見られただけ、咥えただけで感じています……」
「そうみたいだね……、汁もずっと濃くなってる。子宮口……の穴から、とぷとぷっ
て出てくるよ。フェレーラさん、これ、そういう事だよね?」
「そうです、んぅっ、それは私が本気で興奮して感じている証で……、んむっ、
んふーっ……、とっ、特濃の愛汁ですから……」 
 なんて卑猥な言い方だ。と思って、熱く溜め息を漏らす。
 連想するものがあって、僕は彼女の細い両足首から両手を離し、揺れる乳房へ
唐突に伸ばした。
「特濃の愛汁なんて、こっちからも出そうな感じがする。いやらしいよ……」
「あっ……、へろ、ふれひい……んっ、嬉しい、触ってほしかったんです」
 手のひらでたぷたぷと軽く玩んでから、乳房の根元から先端に向けて強めに揉み
しだく。下向きになっているため、まさしく牛の乳を搾っているような気分に
させられる。
「すごい柔らかくて……、んぅ……、でも張ってる手触り……」
 指先ほどの円筒形に勃起しているフェレーラさんの乳首を、指で絡めるように弄り
倒す。擦り上げる。ここを意図的に狙って愛撫するのは、これが初めてだ。
「んひっ……、んふーっ、んふーっ、んぉほっ……、ぷふっ、痛いけれど気持ちいい
ですっ」
 亀頭を舌の上に乗せたまま、フェレーラさんは鼻息がかった甘い声で訴えてくる。
 僕は、少し乱暴に根元の乳輪ごと引っ張って、ねじるように苛めてしまったのに。
それすら気持ちいいと言うのが彼女だ。きっとそういう人なんだ。

「胸もこんなに変わるんだね……、フェレーラさんの乳首、こんなに大きくなって
硬くしこってる」
 左右の乳房を真ん中に寄らせて、乳首同士をこね合わせながら、
「乳首の周りの乳輪もぷっくり盛り上がって……、乳房、乳輪、乳首と三段重ねで
尖ってる感じで……、迷宮に入ったばかりの時と全然違ってる。分かってたと思う
けど、ちらちら見ちゃってたんだよ?」
「んぷっ……、分かっていました……、んろぅろっ」
 くなくなと首を振り、尿道を舌先で割りながら、ずっちゅるるるるっ、と啜って
くる。淫猥極まりない音に僕の喘ぎ声も唱和した。
「懸命に顔を反らして、なのにちらちら見てきて、可愛いなって思ってしまったん
ですもの……んくっ……、本当の事を言うとユスノーくんの目線を意識して……、
んむっ、んろっ……へほっ……、裸でいる事への恥ずかしさより性的な気持ちが
段々と湧き出ていました……。ユスノーくんを誘ったのは、探索上の都合であなたを
裸に慣れさせてあげたいとか……、感情的な理由で慰めてあげたい、親しい仲に
なりたいというのも……あるにはありましたけど……、んぇろっ……、何より私自身
が発情したからです……。言い訳がましくそれらしい事を挙げていました……」

 こっちが恥ずかしくなる赤裸々な告白。それに釣られて僕も、
「んっううっ……、はーっ……、なんていやらしい人なの、フェレーラさんは。僕が
あなたの裸体に見惚れて、下着の中を汚してしまったのは仕方ないよね、あなたが
いやらしいせいなんだから……」
 勢いで言ってしまうけど、どうせ彼女も知った上で伏せているのだろうから、もう
構わない。
「んあっ、ごめんらさいっ……、んぉっ、ふぉれは悪かったと、んおっ、ぉ思って
いますから……、んおほっ!!?」
 やっぱり気付いていたのか、と言わんばかりに腰を軽く突き上げて、彼女の熱い
喉の奥へ屹立をねじ込んだ。やった僕自身、頭を反らして悶絶しながら、彼女の
くぐもった声を聞く。
「んへぉおおっ……、おへほっ……ぬご」
「あれって、わ……わざとでしょ? ……ぅう……、わざと破廉恥な姿勢の蹴り技を
使って僕を挑発していたくせに……、ふーっ……、ごめんなさいも何もないよ……」
 実際にどうかは分からない。ただ、反応したのかひときわ大量の愛液だか何かが、
果汁の搾り出される様相さながら、ピュルッぴゅ、っと僕の胸から顔に飛び散って
くる。まるで尿のような勢いだ。
 この淫乱っ! お漏らし女っ!――とまで罵りたくなり、まだ御し慣れない好虐的
な気持ちに僕は、全身をぞくぞくと震わせる。  
「またこんなに漏らしてっ……! 本当、いやらしいにも程があるよ、フェレーラ
さんって……。辺境諸侯の君主に仕えている良家の箱入り娘で、元ビショップの聖職
経歴者で、清楚で恥ずかしがり、裸を見られるのに抵抗ある未熟なニンジャなん
です、でも探索上は必要だから見られても構わないですよ、って言い訳じみた立ち場
を取っていたのに……」
 右手で乳首をひねり続け、左手は離して尻肉に伸ばす。
「……本性は年下童貞好きで、裸を見せびらかして発情して、子宮口と腸内まで曝し
ながら新品モノしゃぶるの堪能するって、どれだけ淫乱なんだ……っ! ひどいよ、
フェレーラさん、年端も行かない真面目な僕にこんな事を教え込んでっ!」
 あんまりな決めつけを突きつける。みっちりと張り詰めた尻肉を撫でていた左手
で、いきなりそこをギュウッとつねった。ぬぽんっ、という小気味いい音と共に口唇
から陰茎を抜いて、彼女は大きくのけ反る。
「んひっ」
 背中が反り返ったところでもう一度、摘んだ肉をねじった。
「ひぃいんっ、ごめんなさいっっ!!!」
 彼女の声が際立って高くなり、ことさら甘くなる。
「ごめんなさいじゃ済まないよっ、それどころか、さっきから変態フェレーラ汁が
出まくっているじゃないか……! 僕の顔がびしょびしょだよ……っ!!! どうして
あげよう、お仕置きしてもいいよねっ!!?」
 それにしても、僕も調子に乗りすぎだ。高揚した気分が、なぶる言葉を次々と繋げ
させる。それとも、フェレーラさんにそう言わしめる何かがあるのか。

 彼女は彼女で、発情した雌犬みたいに尻を振って悦んでいる。乳首を引っ張られ、
尻をつねられながら。自らは膣内と肛門内の指を忙しなくくちゅくちゅと動かせて。
 痴女だ。変態だ。どうしようもないぐらいに。
 慎ましく上品なお姉さんぶっていたくせして、なんて可愛らしい人だろう。この
情事に入る直前で自覚した通り、やっぱり僕は清楚な痴女の人が、その乖離が好き
なんだなと改めて噛み締める。
「してっ、お仕置きっ、してくださいっ! ……んふーっ、んぶっ、んぉほっ」
 一生懸命、精一杯におねだりする彼女。陰茎に吸い付き直し、その細いあごを上下
させ、同時に左右に回す。ねじるような動き。吸う勢いをすごく強め、管のように
伸ばした口唇の中で、ぬっぽぬっぽと淫猥すぎる音を発てて。
 僕は悲鳴を押し殺して、悶絶する。……って、この勢い、勃起させた後に膣へ挿入
してほしいとさっき懇願した事がどこかに飛んでいってないか。
「くぅうッ……!! だっ、だめだめっ、だめだよ、それじゃお仕置きにならない」
 三回出した後だというのにもう耐えられそうにない。急激に高まってくる射精感と
彼女の唇を振り払い、僕は身体を移動させ、立ち上がった。

 いきなりの事にフェレーラさんは、中腰で尻を突き出した下品な姿勢のまま首だけ
振り返って、困惑と不満を混ぜ合わせた表情を見せてくる。
 対して僕は、射精寸前まで追い詰められたのに平静を装って、
「あの時の、逆立ちの蹴り技の姿勢を取ってよ……、あのまましてあげるから。
鍛錬されたニンジャの肉体なら苦じゃないでしょ? もし苦しくても我慢しなよ、
お仕置きなんだから。フェレーラさんは恥ずかしい姿勢で犯されるんだっ……」
「ああんっ……」
 ぶるぶる震えて、ことさら鼻に掛けた甘え声を漏らしてみせる彼女だった。一転
して期待感に満ちたこの顔がやたらいやらしい。
「ち、ちょっと待ってくださいね……?」
 尻はもたげたまま、顔を前へ向き直す。膣と肛門から指を抜き、両手を床につく。
そこから下半身を持ち上げ、実に美しく伸身で垂直倒立した。
 更に両腕を交差してねじり、それを戻しながら身体をゆっくりと横向きに一回転
させ、長い両脚の先をはさみのように開く。
 あの時は瞬間的な勢いで何回転もしていて、倒立の角度も垂直ではなく斜めで、
身体全体をしならせて巻き上げるように蹴っていたけど。いずれにせよ関係ない。
「こ、こう……?」
「技を出した後の姿勢で、僕は出しちゃったんだよ」
 んはーっ、と息も荒くフェレーラさんは頷く。僕の身体の前面に対して自分の前面
が上下逆で向き合うよう、位置関係を確認してから、
「……こ、こうですね?」
 と、逆立ちしたまま平泳ぎするように、両膝を畳みつつ不恰好に開脚し、両足の裏
を真上に向ける。全裸で。
 そこからゆっくりと腰の角度を下げていき、真上に向いていた膣口と肛門、足の裏
を後ろへ――僕へ向けた。次いで両膝を伸ばし、左右それぞれつま先を真横の斜め下
に向ける。
 尻を頂点にして長い両脚で均衡を取り、全身で矢印を演じた姿勢だ。
 前の時とは微妙に違っていて、余計にいやらしい動作になっている。先のは多分、
続けて技を出せる体勢と残心のためなのだろうけど、これは本当に意味がない。
平泳ぎみたいなのは不要だろうし、開脚もこんなに深くなかった。
 卑猥なだけだ。命令された以上の事を、わざとやっている意図が透ける。こんな
美人のお姉さんが素っ裸でなんて真似をしているんだ。

「うん、そのままで……」
 僕は、彼女の周りをゆっくりと歩き、全方向から観察してみた。
 こうして貶めるようにして見ても、本当に美しく洗練された裸身だ。女体としても
だけど、その女性的な外見の内側に隠された運動能力の具現体として美しい。研ぎ
澄まされた刃としての威力を秘め、今また定位置で微動だにしないのも素晴らしい。
柔軟さもすごい。これがニンジャの肉体なんだな、と内心では賞賛する。でも、
表立ってやっている事は嘲笑だ。
「こんなに恵まれた身体を持っている、高位の強者なのに……」
 彼女の顔の右横の位置で、僕は膝をついてしゃがみ込む。その苦痛と陶酔を行き来
する表情を覗き込みながら、
「こんなに卑猥な格好を悦ぶなんて。度が過ぎて変態だよね、フェレーラさん」
「は……、はい……。でしたら、お仕置きしてくださいっ……」
 なじられ辱められているのに、彼女は犯してほしいと懇願してくる。僕の目線の
高さで、後ろへぴゅっぴゅっと恥ずかしい飛沫を散らせつつ。

「慌てないでよ。またぴゅるぴゅる滴らせて……、だらしないなぁ、小便人形みたい
だよ……。っていうか、これって何処から出てる? 潮とかいうやつじゃないの? 
逆立ち潮吹き人形フェレーラさん」
 言いつつくすくす笑う。こういう弄られかたは思いも寄らなかったみたいで、朱に
染まっていた彼女の顔から、なお赤い火が噴かれていく。伏し目を飾る睫毛が実に
色っぽく震えた。
「でも、語呂が悪いかな。やっぱり、逆立ち小便人形フェレーラさん、の方がいい
よね。そうだ、ヤル前にそのままオシッコして見せてよ?」
「いやぁん、ユスノーくん、意外と変態……っ」
「フェレーラさんには負けるよ……。どうなの? いや? 嫌だったら別にいいよ」
 意地悪な言い方だと思った。強制するなら彼女に口実を与えるけど、自由意志での
選択の体裁を取るわけだから。
「どうするの?」
 彼女は、ほんの少し逡巡する素振りを見せただけで、
「い、いえ……、嫌ではないです……っ。ユスノーくんに、こんな恥ずかしい逆立ち
のまま、オ……オシッコするところを見てもらいたいですっ……!」
 わななくように言った声には、ぬっとりとした熱が篭もっていた。完全に、僕の
なすがままを演じている。自ら望んで。
 
「ちょっと待ってね」
 僕は立ち上がって、上向き矢印を模して開脚した足先を迂回し、彼女の右太ももの
後ろに立つ。裸身の斜め横から性器を覗き込み、
「オシッコが出るところって、ここだよね?」
 ぱっくり開いたままの陰裂の中、膣前庭にある小さな肉穴の膨らみ――尿道を右手
の人差し指でくりくりと愛撫しつつ尋ねる。
「うぅっ……、ううんッ、くぅぅん……っ」
 彼女の声に、おねだりするような色の抑揚が際立つ。こんなところでさえ気持ち
いいのだろうか? 確かに僕が彼女に尿道責めされた時は悶絶しそうになるけど、
亀頭と一体化している男性器とは違うのに。
「そ、そこです……、そこからオシッコを出します……っ」
 うん、と頷いて僕は、最後に尿道を摘むようにしてから、ついと人差し指を上へ
ずらした。次いで断りもせずに膣口へ入れ、愛液を掻き出す。
 それを絡めてから、親指を肛門にぬぅっとねじ込んだ。
「んひっ」
 フェレーラさんの声が引き攣る。肛門は膣以上の強さで締め付けてきた。
「まだ漏らしたらだめだよ」

 更に、膣内側の人差し指と肛門側の親指で、会陰部の肉をギュウッと搾るように
挟む。その上で、ゆっくりと音をくちゅくちゅ鳴らす。
「膀胱ってこっち?」
 時折り逆向きにも指を開き、恥骨の裏側と尾てい骨を圧迫する。
「は、はい……っ、そこっ、です……」
 これを数回繰り返すと、裸身が微かに揺らぐ。両脚は斜め下向きに、まるで攣って
いるようにつま先までピィンと伸ばされていたけれど、これがぴくぴくして、左右
ともに素足の指がぎゅっと握り込まれたり、開かれたりした。
「んぅ―――ッ」
 もう我慢できないという勢いの声で、
「あー……、あー……っ、前と後ろ、同時に感じていますっ……! そこ刺激される
とダメっ……! オシッコ、もう漏らしていいですかっ……!!?」
「あはは、じゃあ、弄られて善がりながらフェレーラさん、オシッコ出してみよう」
「はい……っ、出しますぅっ……!」

 その瞬間、尿道はぷくっと膨らんで、飛沫が宙へ散った。膣と肛門を弄っている
と、連動して尿道も上下するのか、飛沫はあちこちへ向きを変えた。
 指を動かすのを止めると、それはすぐに一条に束ねられる。ロミルワの光の中で
細く流れる透明の輝きになり、宙に放物線を描く。意外と尿の匂いが殆どしない。
それは、勢いを衰えさせないまま驚くほど遠くへと飛んで、床を流れる湯に当たって
水音を響かせる。
 ――パジャッ、ジャッ、ヂョロロロロロッ、ヂョロロロロロロロロ……
「うわー、本当に人前でオシッコしたね、フェレーラさん。しかもこんな格好で」
「ああんっ……恥ずかしいっ……」
 目を瞑ったまま、媚びるような声。そう言いつつも彼女は排泄を止めず、恥尿を
滴らせ続けた。
 僕は、陶然とした想いでそれを見守る。

 しばらく水音の響いた後、
「…………はぁぁんっ……」
 彼女が恥辱に喘いでぐすっと鼻まで啜り、全身をぶるぶると震わせた時、放尿は
終わった。
 それを見て僕は、指を挿し入れたままでさも優しげに囁く。
「可愛いなぁ、フェレーラさん……」
 彼女は再び、ぐすっと鼻を啜り、
「……ユスノーくんは、いじわるです……」
「うん……。僕もフェレーラさんに泣かされた時、あなたをいじめっ子のお姉さん
だと言ったけど。綺麗に引っ繰り返ってるね。でも、フェレーラさんがねだった
通りだよね?……」
「……はい……」
 彼女は恥らって、逆立ちの裸身をよじりながらも、
「お互い、どっちが攻めても攻められても相性ぴったりでしたね……」
 そう言っている声は、涙声なのに嬉しそうだ。手に取るように分かる。驚くのは、
そういう微妙な感情が互いに全て直裁に伝わっていそうな事だった。
 出逢って間もないはずの僕らは、この交わりの時を過ごす中で、どれほど近づいて
どれほど心がつながったのか、と思う。

「そうだね……、本当にそうだね。じゃあ、つながろう? 僕の童貞を今度こそ
もらってくれるんでしょ? フェレーラさん、腕を曲げて? 手のひらじゃなくて、
肘から先全体で自分を支えてよ。この高さじゃ、僕の腰があなたの股間に届かない
から」
 言いつつ、膣と肛門の間の肉をくにくにと揉む。
「ひっはひっ……、はいぃっ……」
 フェレーラさんは従順に言われた通りにして、逆立ちの高さを下げた。両腕の肘
から先で、倒立開脚した裸身を支える。肘を対角線上に置いたため、椅子のように
安定してみせた。
 その途中でつま先が床に接したけど、角度を変えて浮かせたまま。苦しいお仕置き
と言い含められた事を踏まえているのだろう。目立たないけど、こういうところが
まさに被虐的だ。
「……こう? こうね? こうでいい? 入れてくださいますか?……」
 お伺い声で言う彼女に対して、荒い息のみで応じる僕。

 膣の人差し指を抜き、肛門の親指は挿入したままぐりんと回し、右手の手首の角度
を変える。変えながら、彼女の真後ろに立つ。
 親指を肛門に挿入したまま、その手で右の尻たぶを揉みしだく。彼女の張り詰めた
尻肉が変形し、肛門がぐにぃっと拡がっている。
 そうやって遊びつつ、左手は陰茎に添えて角度を水平にする。その本分――交尾、
膣内への射精を期待して、ぎんぎんと勃起した牡としての生殖器。限界まで膨れ
上がったその亀頭で、ぱっくり開いていた膣口の媚肉にぬるりと触れる。
 正常位と違ってこの体位だと丸見えになるから挿入しやすい。
「じゃあ、いくよ……、フェレーラさん、いい?」
「じっ、焦らさないでぇっ……」
 足元からにじり寄るように腰を押し出し、亀頭をねじ込む。というより勝手に
吸い込まれていく。
「くっ、ううううあっ……!」
「ひぃいッ……いっ!」
 二度目の侵略に、それでも互いに悲鳴を上げた。肌がおののくように迸る快感は、
初めての時の鮮やかさをまだ伴っていた。彼女の尻たぶを思いっきり握り締め
ながら、僕は快感に耐える。激しくめくられるように変形している肛門は、とんだ
とばっちりだ。
 その肛門の中を眼下に見つめ、空いた左手も右手の鏡映しにしようとする。左の
尻たぶのもちっとした感触を手のひらに味わいながら、親指を腸内に挿入した。
「ひんっ……」
 甘い声に込められた乞いに応えて、両の親指で肛門を開く。左右の尻肉をぎゅうっ
と握りながら、僕の側に引き寄せて股間同士を密着させる。
 さすが、思った以上に安定している。支障なくやれそうだった。  
「こ……今度こそ、膣内で射精するよ、フェレーラさん……っ」
「は、はいっ……! どうぞっ! ほじくり返してっ!……ユスノーくん、私の中で
好きなだけ射精してっ……!」
 腰をゆっくりと引くと亀頭の段差部分、雁首に熱い抵抗を感じる。膣の内側で複雑
な吸着感をもたらす肉襞が一つ一つぷりぷりとはじけている。
 と同時に、全体に吸い付くような感覚。ぬぷぅ――ッ、という音が出ている。掻き
出されるように、白濁した愛液も溢れる。
 愛液だけでなく彼女の肉襞そのものが、僕の陰茎にねっとりと絡み付き、柔らかく
めくれ上がっている。一瞬、膣が引っくり返って引きずり出されたようにさえ見えて
しまう。すごい様相だった。
「うあぅっ、なんだかさっきと違う……」
 当たり前ながら陰茎の屹立は、押さえていても上向きになろうとする力がある。
彼女の膣襞を突き上げるように。それは正常位の時にしろ同様だけど、今の体位が
体位だ。
 女性側が逆立ちしつつ、本来は真上に向く膣口を後ろに向けるという事は、膣口は
後ろを向いても肉の管としては下向きだ。そこへ後ろから水平方向に挿入すると、
変則的な後背位として直腸側へ突き上げた陰茎は、そこを擦りながら下へ潜り込む。
 だから、亀頭の上側に加わる密着感がものすごく強い。入れる時も、出す時も、
肉にめり込んでいるとさえ感じるほどだった。奥までの挿入を無理に繰り返すと
あっという間に射精してしまいそうだ。

「つ、続けて出し入れするよ……? 突くから、倒れないようにねっ」
「はひっ……」
 浅めに突き込んだだけでも、小陰唇まで巻き込みつつ膣口の肉が内側に戻る。
「もう一回、引き抜くよ……」
「……ひんっ」
 抜くと、また媚肉が内側から盛り上がる。突いて、抜いて、突いて、抜いて、
そのたびにぐにぐにと変形する彼女の恥部は、見ているだけで恥ずかしい。
 しかも拡げた肛門の奥では、膣との間の腸壁が下から波打つように蠢くのまで
曝されていた。盛り上がった腸肉の下に僕の亀頭があると分かる。あまりに淫猥
だった。
 親指を当てて、腸肉の盛り上がりをくりくりと押さえつけてみると、
「んぅんん……はひー……んひっっ……、ゆ、ユスノーくんっ……、私っ、気持ち
いいですっ……! すごく感じてます……っ!」
 言いつつ語尾で、膣内をひくひくっと強く動かしてくる。
「僕も気持ちいいっ、気持ちよくて堪らないよっ……」
 体位的にそうせざるを得ないから、先の射精直前の出し入れに比べてゆっくりと
しているし、深くへの挿入は射精してしまいそうで躊躇われるけど、それが逆に
ものすごく良かった。粘膜同士をよりぬったりと擦り合わせるコツみたいなものが
見えてきた分、快感の度合いがずっと大きい。

「……って、あ、そうか……」
 ゆったりと自らの腰を動かしていて、ふとその必要がない事に気付いた。
 彼女の尻肉を掴んでいる両手を前後に動かす。と、そのほんの僅かな力だけで、
彼女の裸身は前後に揺れる。まるで芯が入っているように姿勢を保っているため、
僕の側で均衡を取ってやる限りは、地面に突いた杖を前後に動かしているような
ものだ。
 そして、これは彼女の事を完全に「道具」扱いしていた。僕にとって強烈な支配感
を与えてくれる行為で、激しいまでの淫猥さを伴っていた。こんなの、妄想した事
すらなかった。
「あぁー……フェレーラさん……」
 僕は陶酔して湯殿の天井を見上げ、彼女と彼女の肉体に感謝した。
 再び眼下の裸身を見下ろし、この傲慢で緩慢な出し入れを何度となく繰り返す。
 下半身を貫いて足裏まで熱くなる異様な高揚が、徐々に身体の中で盛り上がって
きた。ずっとこのまましていたいな――などと贅沢な快楽をしばらく堪能する。
 
 その一方、ある時点でフェレーラさんは、
「んひぃーっ……、んふーっ……、いやぁぁあッ……、ユスノーくんっ……、もう…
…ゆる、してぇっ!!!」
 いきなり金切り声を上げて悶えだした。
 たぶん、彼女にも同じような高揚が起こっているんだろう。でも、それは自分の
制御下にあるものではないので、こういう具合に悲鳴を上げるしかないわけだ。
彼女の素足で無理やり悶えさせられた時、僕もそうだった。まして男より快感の
大きいらしい女の人だし。
「おっ……お願い、もうっ、思いっきりイカせて欲しいのっ!! ……ごめんなさい、
私が悪かったです……からぁ……っ!!! うあぁぁっッ、だめっ、お願いッ……、
本当にだめっ、お仕置きっ……、許してぇええ〜〜……っ!!!!」
「僕がイカせて許してって言った時、しばらく許してくれなかったくせにっ……! 
あなたみたいな達人ニンジャが、なにそんな泣き言を……ッ」
 戦えば僕を瞬殺だってできるだろうフェレーラさん。その情けない降伏宣言に
ぞくぞくと身震いしながら、実際のところ僕自身ももう絶頂したくて我慢が
ならなかった。彼女の奥の奥にまで突き込み、思いっきり出し入れして、最も深い
ところで注ぎ込みたかった。

 そのためには、この体位はちょっと無理がある。
「イカせて欲しかったらフェレーラさん、両足を床に下ろして、膝を床についてっ。
四つん這いになってっ」
 そう言いながら僕は、肛門から親指を左右とも引き抜く。
 彼女の細い腹を両手で搾るように持って、つま先立つように彼女の尻に上から
のし掛かり、挿入したまま半ば前屈した。
「ほらっ、なに言われたか分かる? 足を下ろしてっ……」
「あひぁっ……!? なっ、なにっ……!!?」
 何をされるのか分からなくなっている彼女。無視して、僕は体勢を変えさせる。
 遠慮なく体重を掛け、尻にぐいぐいと股間を押し付けると、まるで萎むように彼女
の裸身が下がっていく。
 それに合わせて僕は、自分の足の位置を左右に開いて、腰を落としていく。姿勢を
変えている途中も、絶頂寸前なのか膣襞はひくひくと小さな脈動を伝えてきている。
「こ、こうっ?……」
 両膝をついて、四つん這いの姿勢になりかける彼女だが、
「もっと崩して」
 更に、ぐいっと上体を押さえて床に密着させる。腋を締め、肘を曲げて畳んだ形の
両腕と胸を支えに、尻だけ高く持ち上げた姿勢を取らせる。四つん這いというより、
それを崩したような姿勢。

 そうした彼女の肉厚の尻に、僕は後ろからのし掛かっている。
 当然ながら、体内へ打ち込まれたままの肉棒と膣の角度関係が変わる。圧迫感は
なくなるけど、より深く入る感じだ。
 僕は、まずゆっくりと肉襞を楽しむように陰茎を抜いてから、体重を掛けた腰を
揺らしつつ突き下ろした。
「……ひぎっ……」
 悲鳴に取り合わず、もう一度二度と繰り返す。姿勢が安定しているから、もう何の
遠慮もない。
 ついでに彼女の胸に両手をやって、乳房の下側から手のひらを当てる。かっちかち
に勃起している乳首を、乳輪ごと指の間に挟むようにして、全体を変形させるほど
揉みしだく。こっちも遠慮なしだ。
 ぐにぐにと弄ぶたびにまるで連動しているかのように、膣肉がひくひくっと蠢く。  
「このまま一緒にイクまで突きまくるよっ……」
 押し殺すように言って、一定の拍子で腰を前後に動かし始める。合わせて、乳房と
乳頭も揉みまくる。
「はいィひっ……、ああぅっ、奥まで、奥まで来てるの……ッ!!!」
 僕のすぐ眼下で、彼女の頭が左右にぶるぶる震える。
 彼女の悲鳴通り、陰茎のめり込む角度は胴体と平行、到達点は奥の奥まで深まって
いた。感触を返してくるのはたぶん膣の底。先に彼女いわく体内の奥からせり出して
いた子宮口は、既に亀頭に押し戻されている。
「ひぃぃッ……」
 つまり、彼女の体内の内臓の位置関係そのものを、ぐいぐいと揺らして犯して
いる。性器を通じてフェレーラさんの性器の中が、その周辺の内臓まで想像できる
ほど。額面通り、奥の奥まで、という言葉の体現。
 僕は、新しく見つけたこの弾力的な感覚に夢中になって、高らかに音を発てた。
 ――パンッ、ぬぢゅッ、パンッ、ちゅぐちゅるッ、パンッ、ぢゅぽッ。
 高く粘っこく響くのは、彼女の尻肉に打ち合わされる僕の股間の音と、彼女の肉穴
から弾ける水音。密着し合う粘膜と粘膜。喚起し合う快感と快感。悦楽で浸された
海に溺れそうな恍惚感。まさしく、彼女の密壷に僕の肉茎が溺れている。

「ひぃーっ、んひーっ、んひぃいいっ……」
 フェレーラさんに到っては、溺れて水没寸前で救助を求めている、みたいな騒ぎで
悲鳴を上げる。子宮口をぐりぐりするごとに声の逼迫の度合いが、ここに来て更に
なお階段を駆け上がるように一気に高まっていく。
 それと合わせて僕は、段々と早めていきながらも一定の拍子を保っていた腰の動き
に、より強め深めに叩き込むような動きを混ぜる。彼女の尻肉全体が波打つほどの。
僕自身にとっても耐えられない動きだ。射精へ向けて、最後の山を越えるつもりで
いた。
「も……もうすぐイクよ、フェレーラさんっ」
「あぅッ……、だめぇえ――〜〜っ……、んああおぅ――〜〜っ……、私の中でぇ…
…、ユスノーくんのがっ……、おち……んちッ、ぐりんぐりんするのがぁ……、イイ
のっ……ッ、もっと強く……してほしいのッ、おっぱいももっとにぎにぎしてっ、
お願いぃいいぃ――〜〜っ、あっあっあっ、ひいいィっ!!!」
 まさしく彼女は半狂乱だ。嬌声まるだしで悶えている。もう、どう贔屓目に見ても
白痴のように善がっていた。ひっくひっくと妙な呼吸までし始めている。
「ひぃっ、んひぃんーっ……、あっ、あっあ〜〜ッ……、んおっ、おっおひっ……!?
ほひっ、ぅひっ……、ひっんっ、ひんっ……、ひっ、んひッ……」
「うう……ッ、大丈夫なのっ……?」
「わ、はひっ、私っ、ユちゅっ、ノーくんっ、あひっ、んひぃぃっ、あぁんッッ、
私っ、私っ……」
「わっ、私が、何っ?」
「私っ、んひっ、あぁいひぃーっ、気持ちいひぃ――っ……、もおだめぇえっ、
イクのッ、私、年下のほ……、どおてえおちんひっ、んにっ、イカされるのッ……、
ユスノー……っくっっぅんんぅん―――〜〜〜〜ッ!!!」
 僕の側から額まで見えるほど彼女の頭がのけ反って、涙か汗か、それとも何かが
飛び散っていく。

「あぁうっ、フェレーラさん可愛すぎるよぉっ、僕ももう……だめっ」
「……イぃ……クッッ…んうぅぅ―――〜〜〜〜〜〜ッ、ん―――〜〜〜〜ッ……」
 彼女は、絞め殺されるような声で叫んだ。その左右の脚が膝をついたまま後ろに
跳ね上がる。僕の太ももに両かかとが押し付けられ、ぎゅっと挟み込まれた。力の
加減がなくて痛苦しいぐらい。
 と言うよりその体勢になった途端、彼女の全身が硬直した。叫び声も語尾で掠れて
いき、一転して静まる。
「…………ッ、………………ッ!!!」
「くぅぅッ、出るぅううッ……」
 そのくせ膣内はものすごく劇的に、波打つように蠢く。牡の生殖器から精を搾り
出そうとするかのように。
 意識的にやっているのか無意識なのかは分からないけど、こんな事をされたら僕も
身を任せるしかない。亀頭がぐっと膨れ上がり、口淫されて以来、我慢と寸止めを
重ねに重ねた射精が弾けた。
 ――ぶぶびゅるるっ、ぶぷっ、どぷんッ……
「うぁああっ、僕、フェレーラさんの中にっ、出しちゃってる……!!」
 彼女の奥の子宮口にめり込む勢いで接触している亀頭から、とてつもなく大量の
射精感。目視できなくとも、それが異常な量だと分かった。
 魂を引き抜かれるようなそれは、果てしなく感じるほど長く続いていく。
 ――ぶゅぶっ、びゅるッびゅっ、びゅるるるッ、どぷっどびゅっ、どくっ……
「あーっ……、すごいよ、まだ出てるっ……」
 僕は、彼女の中に無為に垂れ流すだけでは飽き足らず、かかとに締め付けられ
ながらも、腰をぐりぐりと上下左右に揺する。恥骨を押し付けるようにして、この
高まりを心置きなく味わった。

「…………んはぁああ―――〜〜〜〜ッ……、はぁあっっ」
 と大きく息を吸って、止まっていたフェレーラさんが再び喘ぐ。一拍置いて、
ぐんにゃりと脱力していく。押し付けられていたかかとから解放され、僕も脱力して
ひざまずいた。もちろん、まだ挿入したまま。乳房も手のひらに感じたまま。
 彼女の横顔が湯の流れる床の上に突っ伏して、だらしなく弛緩している。口を縦に
開いて、鼻の下を伸ばし、舌を突き出し、半ば白目を剥いていた。
 これが女性の至福の表情なのか、という達成感を僕に与えてくる有様だった。普段
の美女然とした彼女との乖離がすごい。この崩れ切った顔そのものもまた可愛らしく
思う。
 僕も上体を前に倒し、彼女の背に覆いかぶさり、その右肩にあごを掛ける。
「はーっ……、ふーっ……」
「ひぃーっ……、んはーっ……」
 二人してひいはあと息を整え、ぷるぷると身じろぎする。陰茎は未だひくんひくん
動いて、彼女の中に残滓を注ぎ込み、膣壁もそれを受け取る動きをし続けている。

 ひとしきり二人はそのままの体位で密着し、真綿で包まれるような一体感の中に
あった。
 呼吸が落ち着いてから、
「……はぁーっ、ああっ……、ユス、ノー……くん……?」
 何とか自分を取り戻して彼女は、右肩にあごを掛けた僕の顔と、頬と頬を
くっつけたまま至近距離で囁いてくる。
「フェレーラさん……」
 頬を少しだけ離し、その代わりに視線を絡ませあう。彼女は、絶頂の波も
引ききらずまだ陶然として、湯以外の体液にぐっしょりと濡れたままながらも、
その美貌を取り戻していた。

「こんなに……心も身体も気持ちいい射精は初めてだった、僕……」
「うふふ……、ありがとうございます……」
「ねぇ、これで僕、脱童貞できた事でいい? フェレーラさんの中に出したし……、
フェレーラさん、イッてたよね……? 身体がすごい反応してたよ……」
「はい……脱童貞、おめでとうございます……。ユスノーくん、初めてだったのに…
…こんなに激しくされるとは思ってもいなくて、私、すごく興奮してしまって……」
 恥らうようにそっと伏し目にして、
「……あなたに、とても深い性的絶頂を与えられました……。今のは、何もかも消し
飛ぶほど気持ちよかったです……。昇り詰めている最中と前後の高ぶった頭の中は
真っ白で……、なのにユスノーくんの精液をお腹の中に受けたい、という気持ちだけ
は強く渦巻いていたんですよ?……」
 孕みたかったと言わんばかりの言葉は、ふるふると震えていた。そして、まだよく
動かせないのだろう身体を震わせながら、精一杯のにっこりとした微笑みを作って
くれた。
 そんな彼女の事がいとおしく感じた。もう一線を越している気持ちだった。これを
はっきりと自覚し、心の中で浮き彫りを刻むように形にした時、四回も射精した直後
だというのに陰茎の充血を感じる。
 ごく自然に僕は彼女の唇を奪い、後ろから両腕で抱きしめてしまう。それだけで
目蓋をぴくぴくさせ、膣内をきゅんと蠢かせて、軽く気をやってくれていそうな彼女
の乳房を左右ともに揉みしだき、
「もう……そんな事を言うからフェレーラさん……、ほら、分かる?」
 挿入したままの陰茎を少しだけ動かす。
「ああんっ……ユスノーくん、また硬くなっていますね……、嬉しいっ……」
「まだ、やろうよ……」
 そのまま僕は腰を引き、大きく突き込んだ。
 フェレーラさんの艶のある、あひっ、という喘ぎ声が湯殿に響く。

  ◆

「見つかるといいですね。お互い」

 あれから互いに二回の絶頂を与えあった後、呪文と湯水で疲労と渇きを取り、全身
くまなく洗い流し、身支度するなどしてから、湯殿を引き払った。そして湯殿前に
面した石室内に移動し、キャンプを張り、ロミルワを解いて暗闇の中で休み始めた
時だ。地上では未明を過ぎた時分。
 二人とも武具や荷物を傍らに置いて、マポーフィックを薄い寝台代わりに寄り添う
ようにしていると、そうフェレーラさんが囁いてきた。
 彼女は髪を下ろし、白いワンピースだけ着込んで素足のまま。僕の方にしても肌着
だけの姿。密着して互いの体温を絡ませあっている。
 情事を経る前なら気が気でなかっただろうに、湯殿で彼女が「交われば気持ちが
満たされ、憑き物は落ちます」と言った通りだ。僕はもうそんなにどぎまぎとして
いない。ただ、彼女の裸体に対する欲望はより高まった気もするけど、今は肌を
隠されているから落ち着いている。
 むしろ、
「……行方不明の仲間の事?」
 彼女の言葉にそう応じた僕は、疲労こそ残っていないものの、引ききらない快感の
ような心地よい気だるさの中にあった。
 彼女にしてもそれは同様のようだ。あれ以降、被虐的な雰囲気こそ潜んで再び
「年上のお姉さん」然としていながら、声の調子は未だゆっくりとして甘ったるい。
「ええ。……お互いの目的が達せられる事を、改めて願いたくて……」
「そうだねー……」
 語尾までだらけた心地よさの中にありながら、僕は彼女との一体感を引きずって
いた。それを伝えたくて、まるで恋人へ囁くような調子で口にする。
「……正直に言うと、僕は仲間を失ってからは途方に暮れて弱々しい気持ちでいた
けど。今は、違うよ。フェレーラさんとなら、旨くやり遂げられる。仲間を救い
出して、そこから先へ行ける。そう思えるから……」
 言ってしまってから、気恥ずかしさを掻き立てられる。
 僕はまだ彼女の事を少ししか知らないのに。それこそ彼女側の探す三人の仲間の中
には想い人すらいるかも知れないのに。行きずりの情事を重ねただけで恋人ぶって
いるようで、青臭くて図々しいかも知れない、と。
 けれど、それでいいと思った。それでいいと思えるだけの気持ちが、既に僕の中に
あった。
「うふふふ」
 嬉しそうに、フェレーラさんが笑った。大人びているのに何処か少女めいている、
清楚なのに何処か淫靡なあの雰囲気で。
「私も、ユスノーくんとなら、旨くやり遂げられると思いますよ……」

 彼女のその言葉を最後に、やがて僕はまどろみの中に落ちていった。