床を流れる湯と心地よい快感の微熱。未だこれに浸っていた僕には、彼女の言葉の
意味がよく分からなかった。

 立ち上がったフェレーラさんは、股間を左手で覆いつつ右脚を一歩進めて、仰向け
のままの僕の胴体を跨った。左を向いてこちらの視界へ裸体の前面を曝し、足元を
肩幅の倍まで広げて真っ直ぐ立ち、その姿勢のまま見下ろしてくる。
 下から見上げる位置関係になると、ただでさえ長い脚がことさら長く目に映った。
彼女の向こうに、岩窟から削り出された湯殿の天井が湯煙でぼやけて見える。
 今、この湯殿は彼女の舞台で、濡れた裸身を光らせるロミルワの明かりはさながら
舞台照明だった。
 王都リルガミンの場末に、冒険者の落とす金を目当てとした卑猥な見世物小屋や
娼館がいくつもある事は、ギルガメッシュの酒場でがなり立てられる猥談を聞いて
いれば嫌でも知る。僕はそんな場所へ行く気になれずにいたけど、まるで無為な時を
取り返させてくれる慰めのように、とてつもなく美麗な裸身が僕だけに露わにされて
いた。

 その、赤く染まった長身の女体。
 今更ながら唯一そこだけを隠した手のひらからこぼれる、しっとりとした黒い恥毛
がなまめかしい。その上には、細長くくびれた腹に刻まれた縦長のへそ。
 更にその上、豊かに実った二つの乳房の、ぴぃんと反り返るように上向きになった
先端は、僅かな身じろぎのたびにゆらゆらと揺れていた。勃起して膨らんだ乳頭の
色は濃くなっていて、ぬめっとした質感を放っている。
 乳房の谷間の向こうにある、上気した美貌。大人びて柔和な造りの顔立ち。それで
いて少女めいた印象もある繊細な小顔。
 僕を見下ろしているその綺麗な黒い眼は、淫靡に細められ、嬉しげですらある。
いやらしい事を考えているのが丸分かりで、どこか期待の色を宿し、潤んでいた。
平常時のフェレーラさんは、優しげでありながらも堂々としていて、貴族的な雰囲気
さえあったのに、今の表情はどこか後ろめたさの影が覗いている。

「フェレーラさん……っ」
 僕はどきどきと期待に踊る心臓に喘いで、彼女が何をするのか見守った。
 息詰まる雰囲気の中、彼女は前髪の乱れを右手で払って揃えつつ、顔をやや左に
向ける。後ろめたい事から逃れるように。目線だけを残していて、僕を見つめ続けて
いる。
「ユスノーくん……」
 年上の女性然とした、真っ赤な艶に光る厚い唇。そこから、しっとりと落ち着き
ながらも情念の宿る声が漏れる。その綺麗な声で名前を呼ばれるだけで、僕は再び
熱くなっていく。
 いやらしい事を考え、いやらしい事をしようとしているはずの彼女もまた、熱く
なった自らのうちで踊る心臓に喘いでいるようだった。これだけ大胆な姿を曝し
ながら、あと一歩を躊躇している。何となく分かる。
 それを示すように、左手がもじもじと動き、右手も左手に添える。その下の
茂みが、じゃり、と微かな音を発てた。
「……私のここ……」
 もちろん、「ここ」とはその両手の下だろう。恥部を意識して茹だるように染まる
顔が、ゆっくりと僕の方へ向き直ってくる。
「あなたに見せてあげます……。ううん、見てくださいますか?」
 そんな質問、答えは決まっていた。あの時、湯殿へ来る前の戦闘終了時に見えた
のは、ごく短い瞬間でしかないのだし。
「も、もちろん、見せてほしいよっ……」
 食餌を許されてがっつく犬のように上体を起こしかけると、彼女がスッと半歩前に
出てきた。制される形になり、僕は再び背中を床に預ける。
「そのまま横になって、楽な体勢で見上げてくださいね」
「……いや、でも……近くで見たいんだもの……」
 半ば愚図るように言ってしまった。それが可笑しかったのか、くすくすと笑って、
「男の子ですものね。……それなら……」
 僕の両肘の外辺りに両足を置いて佇んでいる裸身。その姿勢から彼女は、両膝を
曲げながら外に開いて、ゆっくりとしゃがみ込んできた。
 中腰のガニ股姿勢で一瞬だけ、ためらうように静止した後、
「失礼しますね……」
 僕の両肩の外辺りの床に両膝をつく。膝を支えにして、胴体が前にせり出す。
すると僕の顔の真上、まさに眼と鼻の先に、彼女の恥部が隠されている構図と
なった。

 そのまま熱い目と目で見つめ合う。彼女のへその上で、視線が絡んでいる。
「………」
「………」
 二人同時に喉を動かし、何かを飲み込んだ。
 鼻に抜けていく空気が柔らかく匂う。湯気に蒸らされてほのかに香る、彼女の汗の
匂い。フェレーラさんの体臭や髪の匂いは陽射しのように清々しく、ほのかに
甘ったるい香りが混ざっていて、汗もまた同様だった。ただ、少し生々しい感じが
強まっていて、それですら鼻腔に気持ちいい。
 ふと、射精後で萎えていた陰茎に、たぎるような感覚が戻っているのを自覚する。
「手を……どけて見せてよ……」
 僕がそう言うと、彼女は再び顔をゆっくりと横向きに反らした。今度は目線も
残さない。くっきりと浮かんだ左の鎖骨に細いあごを乗せて、はふ……、と熱い
溜め息を漏らしてみせる。
 両手が除けられ、露わにされる恥毛。
 恥丘に生えている分は黒々と濃く、恥丘の下の辺りでは薄めの生え方だというのは
あの時に見た通り。今は湯に濡れているため、長くなった毛足が中央に集まり、
割れ目を慎ましげに隠していた。

 更に彼女の両手の指先が、ぬめるように光る茂みを左右に掻き分け始める。
 ――この瞬間、不思議な事に僕はむしろ股間よりも彼女の顔を見ていた。
 さっき揃えた前髪が数条、また美貌の前に垂れている。もちろん、彼女のどこか
嬉しそうな表情を隠すのには全く寄与しない。
 それは、あまりにも魅力的な表情だった。切なげに閉じた目蓋をふるふる震わせ、
恥ずかしげに頬を紅潮させているくせに、実際やっている事は全く逆で、目元が
微笑んでいるのだから。
 見せたくないけど見せたいという、矛盾した心理がそこにあるのかも知れない。
だとしたら、フェレーラさん特有の心理なのだろうか?――あるいは、女性に共通
する心理なのだろうか? そういう話は、聞いた事がないでもない。
 思い返せば、「ニンジャとしては未熟で羞恥心を捨て切れていない」と言いながら
実際にその恥ずかしい姿で行動する事もまた矛盾心理じゃないのか。いかにやむを
得ない事情があるとしても、僕一人だけに絞り込んでいるとしても。
 それは彼女の内面をどう焦がしているのだろう。

 そして、フェレーラさんはその衝動に身を委ねたようだ。恥毛の茂みを掻き分け、
ふっくらした肉同士で合わさった割れ目を露出させる。いや、というか割れ目は既に
半開きになっていて、内側から肉びら――小陰唇が完全に顔を出していた。
 つるんとした健康的な質感の、淡い唇のような整った色形で、なのに淫猥な肉厚が
あるという、僕の心中に刻まれた先の記憶。まず最初に生々しく感じ、けれど直後に
美しいと感じたあの様相。それとは少し違っていて、赤々しく充血していやらしさを
増している。
 彼女の美貌の中で特に淫靡な印象のある、その厚めの唇を連想させた。
 フェレーラさんはその肉びらに細い指を掛ける。そこから奥は、僕がまだ見た事の
ない場所。左右の人差し指が滑るように入り込み、ほんの少し逡巡の間を置く。と、
大陰唇ごと肉をむにっと引き伸ばし、ぱっくり開いて見せてくれた。
 途端、いきなり様相が変わる。びっくりするほど印象が変わる。くわっと捕食器官
を剥き出したジャイアントスラッグの口のようでもあり、戦闘を掻い潜るうちに幾度
となく目にする肉の斬傷のようでもある。
「お、女の人って、こんな……っ!!?」
 僕は、思わず驚愕の声を上げていた。
 けれど衝撃を受けながらも、魔力に縛られたようにそこを凝視してしまう。

 小陰唇は左右にめくられ、露わになったその裏側は口唇の裏側のようだった。対の
肉びらが囲む「中庭」の下部で窪んでいて、そこから滴った半濁半透明の体液が
今にも垂れてきそう。――たぶん、ここが膣口で、滴るのはいわゆる愛液。
 窪みの上では、その先端に小さな穴のある盛り上がった部分。更にその上、小陰唇
が合わさった辺りでは、小さな肉粒が皮からツンッと剥け出ている。それぞれ、尿道
と陰核だろうと見当は付く。
 全体的に、彼女の呼吸に合わせてひくついている。色合い、形や肉付きはやはり
生々しくも美しく整った印象がある。しかし、女性器そのものの基本的な造形は珍奇
というしかない。
 こんな奇妙な部位が、神の被造物として美しい部類だろう人族の女性に、しかも
フェレーラさんのような飛び抜けて美しい女性に隠されていたのかという思いは、
僕の中で何か壁みたいなものを崩した。
 でも、それは嫌悪感ではない。
 彼女の股下、両太ももの間から向こうに見える僕の性器がひくついて、その崩れた
壁の先に順応している。

「ど……どうでしょう? 年の割に綺麗だな、ぐらいには思っていただけると嬉しい
のですけれど……」
 顔を横に反らしたまま、薄目でこちらを窺っているフェレーラさん。15歳の僕との
年齢差を、内心では気にしているのかも知れない。まだ21歳のくせにそんな事を言う
ところが可愛らしい。
 その言葉の語尾のあたりで、つぅぅ――、と愛液が垂れていた。ほんのりとした
生々しい香りを伴いながら。それを吸い込む鼻息も荒いまま、僕は、
「ほ、他の女の人のを見た事ないし……、そういう比較は分からないよ……。でも、
聞きかじった話を基準にするなら、こんなに淡い色合いだもの、ものすごく綺麗だと
いうのは分かる。清潔感すらするよ。……ただ……」
 先の十字路での自嘲を思い返す。自分は、大人びているのではなくただの奥手だ、
と。
「…………ただ?……」
「僕は客観的に言って……奥手というか……、うん……、それに潔癖なところがある
から、初めて目にしたのがあなたのもの以外だったら生々しさに負けて、そのまま
女性自体から距離を置いたかも知れない。きっと多分そうだ。だから、フェレーラ
さんのを最初に見れてよかったと思う……。こんな、すごく魅力的で……、何だか
嬉しくなってくる……」
 
 何の飾り気もなしに、思った事をそのまま言っただけ。
 なのに、彼女の膣口の窪みがぷくりと内側から盛り上がり、愛液が一気に滴って
僕のあごに落ちてくる。それをごく自然に受け入れた僕の気持ちを、どう表現すれば
いいのだろう。
 受け入れて当然だった。これは、彼女が僕を受け入れてくれている証拠だろう
から。
 何より、彼女の心地よい体臭に、微かな酸っぱさと生々しさを混ぜた香り。酒場や
宿屋で耳に入る猥談から想像して、もっと不快で強い匂いを覚悟していたのに、
むしろ慎ましげで、僕を陶然とさせる悩ましげな香り。何の抵抗感もなかった。
「私も嬉しいです……」
 フェレーラさんは僕へ顔を向き直して、はにかみながら微笑んでくれる。同時に
もう一度、膣口から愛液がぽたぽたっと滴ってきた。
「……あっ……、ご、ごめんなさいね、ユスノーくん……、はしたなく垂らして
しまって……」
「謝る必要なんて全然ないよ、フェレーラさんっ……、あなたのだったら……」

 ここから僕にとって何かが変わった。そんな感じがする。
 彼女に手を伸ばして能動的に触れる事への躊躇は、ふと気付けば殆ど消え去って
いた。それを押しのけて、むらむらぐつぐつする衝動が僕の中で沸騰し渦巻いて
いる。
 身体の側面に置いていた僕の両手を、フェレーラさんの尻の下から潜らせ、彼女の
股間に伸ばしていく。
「僕を受け入れてくれるから濡れるんだよね? ……さ、触ってもいいよね……」
 恥毛に触れただけでぴくんとされるのを、勢いで乗り越える。左右の人差し指で
ぬらりとする感触の小陰唇を拡げ、内側の窪みをよりはっきり見ようとする。
「はい……、好きなだけ触って、好きなだけ見てくださいね……」
 そう言って彼女は、同様に小陰唇を左右に拡げていた自らの指をそこから離す。
太ももを拡げて股間はより落とし、より突き出してくる。更に、後ろへやった両手を
床につき、上体はのけ反った。
 主導権を渡してくれたと理解して僕は、左右の親指まで使って膣口も開いてみる。
「うわぁ………」
 僕は感嘆の声を上げて、その奥を見つめた。夢中で凝視した。
 ただのぬかるんだ窪みに見えていたのに、窄んだ襞を開いた奥にまだ秘密があった
から。もちろん、そうだという見当を付けて暴いたのだけれど。
「そこ……が、私の膣口です、ユスノーくん……」

 直前に体勢をやや変えたからか、開きやすくなっている。くぱあっ、と指二本も
楽に入るぐらいの直径に拡がっていく肉の穴。内側では、血色のいい肉壁が半透明の
体液でてらてらと光っていた。
 初めて目にする生々しい器官――そこから生まれてきたのに、生まれて初めて見る
そこ。
「よく見えるよっ……、すごいいやらしいっ……。ロミルワのせい……?」
 その呪文は、術者自身を中心とした一定空間が均一な光に満たされる効果を持つ。
こんな事になるとは初めて知ったのだけど、つまり、
「フェレーラさんの膣の奥まで、全く影がないよ……? 完全に曝されている……」
 と、そういう様相だった。
 熱っぽい声でフェレーラさんに教えた途端、彼女の膣壁がきゅうっと窄む。内側
から押し出されるように性臭伴う熱い液が、真下に滴るのではなくて、ぴゅうっと
溢れた。僕の口の中にまで入ってくる。
 酸っぱいのかと思ったら、ほんの少しだけ塩味と苦味がした。匂いもさっきと
違ってきている。僕の中の原始的な牡の部分を、更に高めてくれるものだった。 
「ロミルワがそんないやらしい呪文だなんて……、私も初めて知りました……っ。
恥ずかしい……」
「……さっき、好きなだけ見てって言ったばかりなのに……、いやなの?」
 逃がさない、という気持ちから、右手の親指で膣口の中に触れた。ぬかるみに滑り
込むように、ぬるーっ、と奥へ入っていく。
「んっ……」
 挿入を受け入れ、彼女はくぐもった声を出す。指をきゅううっと膣肉で締め付け、
吸い込もうとするような感触がある。こんなところへ敏感な性器を挿入したら
どうなるのだろう。
「いやではなくて……、あっ……」
 粘液でまみれた人差し指が滑って、彼女の陰核に触れる。ころころした感触。
にゅうんと柔らかく伸びる陰唇に比べれば、しこるように硬い印象があった。
「いやではなくて?」
 反応を目ざとく拾って、そこをくりくりと指の腹で転がしてみる。
「えーっと……んぅっ……、そのですね……、んんんっ……」
 既に充血しているようにも見えたそれは、更に赤子の指先ほどの大きさまで膨れて
いく。まるで陰茎の勃起みたいに。

「んぅ……、ふぅー……、んぁっ……」
 細いあごを上げて長い首を露わにし、切なげに宙を見上げる彼女。その声に混ざる
淫猥な色の割合が、あからさまに高まっていく。
 僕は何となく分かってきて、さっき彼女から素足でされた時の要領をそのまま
やり返しだした。柔らかい力加減で、ゆっくりと、粘液の油膜一枚分の距離感を意識
して。
「んぁんんっ…………、く……、あっ……、あっあっ……」
「……気持ちいいんだ?」
 いささか意地悪な韻でそう言ってみる。
 すると、フェレーラさんは少しとろんとする眼で見下ろしてきた。眉も下がった
困り顔で。弱々しくて、妙に可愛い。
 数瞬の沈黙の後、
「……はい……」
 静かな溜め息を漏らし、
「いやではなくて……、あっ……、気持ちいいです……。ユスノーくんに奥まで
見られて、か……感じる……ところを触ってもらえて、気持ちいいです……」
 苦笑と言うか、照れ笑いのような微妙な顔で肯定する彼女だった。

「ニンジャって、性的な耐性も修めているって聞くけど……フェレーラさん、
もしかして弱かったり?」
「……は……はい……。体質的にも精神的にも、かなり感じやすい方です……。
んっ……、ユスノーくんに抱きついておちんちんを弄らせてもらった時にはもう、
お腹の中が気持ちよくなっていました……」
 彼女の喋り方が、段々と従属的になってきている。言い回しが丁寧かどうかでは
なくて。その意味では大差はない。込められたものが違ってきている。そこに僕は
感づいていた。
「へぇ……、そうなんだ……」
 僕の中で、むくむくと噴き上がる嗜虐心が、先に辱められた事へのささやかな
復讐を欲する。思い返せば、その後で彼女が口にした「自分は被虐的な嗜好も
持ち合わせている」云々はそういう事だ。攻め手と受け手を逆転しましょうね、
という。攻めてもらいたいです、という。
 彼女がそれを欲し、僕もそれを欲するなら応じるまでだ――と、唇に飛び散って
いた彼女の恥液を舐め取り、そう思った。
「お腹の中とかも感じる……って、こことは別に感じるの?」
 左右の人差し指で挟むように、陰核をすりすりと愛撫する。攻めようという意識
からつい乱暴になりそうなのを抑え、あくまでも柔らかく。
「はい……、ん……っ、そこは私の女芯です……。おな……、お腹の中とは別に、
そこも特に感じるのですね……」
 それならと陰毛を掻き分け、陰核の根元からへそ方向へ伸びている莢状の皮まで
露出させる。左の人差し指の腹で、莢から陰核に向けて全体を撫で下ろし、血と熱を
集めるようにこね回す。
「毛の下に、こんなのが隠れてたんだね……」
「……ん……、あっ……」
 同時に右の人差し指で、陰核そのものをゆっくりと撫で続け、彼女の息を荒くして
いく。莢を押さえるたび、ピィンと勃起した肉芽の角度がくいくいと卑猥に変わるの
を指先に感じつつ。

「……ん……、んっ……、あっ……、あ……んっ」
 フェレーラさんいわくの女芯。なるほど、と思わなくもない。一撫でするに連れ、
その裸身がぴくんぴくんと震え、親指を咥えている膣の内壁がきゅっきゅっと蠢くの
だから。まさしく、反応を喚起する敏感な芯の部分だ。
 ここを弄るだけで、彼女の肉体を攻めているというか、操作し支配している実感を
煽られてしまう。自分の手の中で、思い通りに反応して善がってくれる事――それが
愉しくて仕方ない。たぶん、さっき僕の事を攻め抜いた時の彼女も、こんな気持ち
だったんじゃなかろうか。
 自分のうちに好虐的な一面をまざまざと見出しながら、僕は彼女を攻め立てた。
「んひっ……、ああんッ……あぁあ……っ、ユスノーくん、上手いです……」
 性器への愛撫に感じる自分を抑えようとせず、フェレーラさんは乳房を揺らし
ながら大胆にのけ反る。薔薇色の美貌を左右に振るう。一際上ずった声で喘いで
みせる。とても情熱的で、とても色っぽい声だった。
「声……、すごいいやらしくなってるっ……」

 あるいは、そのまま彼女を愛撫し続ける――という流れに浸るべきだったかも
知れない。けれど、僕の性器は痛いくらいに充血し、張り詰めるほどの勃起と敏感さ
を取り戻していた。攻め立てたい気持ちもまた十分に張り詰め、もはや堰が切れつつ
あった。
 僕はいきなり上半身を起こし、
「フェレーラさんッ……」
「きゃっ……!?」
 尻をついて座る姿勢となる。股間に彼女を跨らせ、向かい合ったその全裸の身体を
かき抱く。平均的な成人男性より低めな僕とほぼ同じ背丈の、女性としては長身、
かつ肉感的な彼女の身体は、腕の中に囲ってしまうとむっちりと存在感があった。
 豊かな乳房が彼女と僕の間に挟まっているから、余計にそう感じる。柔らかい肉の
塊が僕の胸板に押し付けられ、変形しながら密着すると、少し泡の残るすべすべで
むにむにの感触が伝わってくる。
 この酔い痴れるほどの一体感を、より強く求めたい。そんな情動に押されて、彼女
の潤んだ瞳を下から覗き込むように見つめた。誰かとここまで近く顔を接した事は
ない、そんな距離。
「我慢できないよ……、僕、もうフェレーラさんの中に挿れたい……、一緒に
なりたい……っ」
 むっちりと肉感的な尻の谷間に、僕の屹立が滑り込むように挟まっている。これを
彼女の膣内にねじ込みたくて堪らない。
「いいでしょ……?」
 彼女のなまめかしい首筋に興奮した息を吐き掛ける。さっき彼女にされたように、
唇で触れてみる。左腕で彼女の背中を抱いたまま、どさくさに紛れるように右手で
左の乳房を横から触りもする。
 それは、鋭敏になっている指先にとってすごく柔らかかった。なのに押し返す
ような張りがあり、ぷるぷるっと波打つ。
「もぉ……」
 と言いつつ彼女は嬉しそうにはにかみ、長い睫毛を伏せる。どう言えばいい
のだろう、求められた女性の達成感のような表情が、ちらりと垣間見えた感じだ。
「もっともっと、思う存分に見てもらいたかったのですけれど……」
「もちろん、まだまだ見せてほしいよ、でももう今すぐに挿れたいんだ……!」
 自分の欲望を直裁にぶつけ、僕は右膝を立てつつ彼女を押し倒す。と、床に流れる
湯が、ぱしゃあ……、という音を響かせた。

 そんな水音よりも、自分自身の心臓の音の方が強く響いている気がする。
 僕の下で抱きしめられ、左乳房を触られたまま、うっとりと紅潮させた顔を呈し、
何の抵抗もしないどころか抱きつき返してきているフェレーラさん。
 彼女は、尋常でなく美麗な、楚々として穏やかな年上の女性で、かつニンジャと
ビショップの両面を極めた戦闘強者だ。おそらくは貴族的な身分階級に生まれ、一門
の秘伝を継承する箱入り娘として育った才女。おまけに国許では祭事を司る要職に
あるらしい。
 そんな色んな意味ですごい人を、たかだか中堅どころのサムライの僕がどうして
組み伏せていられるのか。こうなるべくしてなった、としか言いようがない。気が
付くとこの状況だった、と言っても過言ではないのに、先日の僕からは全く予想
できない。
 いや、数刻前ですら、彼女を犯したいと暴走しかける気持ちを抑え、そんな事を
すれば首と身体が離れる羽目になっても文句は言えない、と煩悶していたのに。

 夢想的ですらある状況の中、フェレーラさんは「全てを捧げてあげます」と言わん
ばかりの表情だった。艶やかな唇を緩く突き出し、舌先を覗かせている。それは、
口づけを求めているように見えた。
 ――しても、いいのだろうか。口づけというのは、僕のいささか堅苦しい貞操観念
の中で重要な、事によると性交それ自体よりも核心的な位置づけにある。――などと
いう、気後れがなくもなかったけれど。
 そんなもの、もはや膨れ上がる欲望の中で、隅に押しやられた小さな欠片でしか
ない。知るか、って感じだ。気付くと僕は情緒も何もなく、貪るように彼女の唇を
奪っていた。
「んぅ……っ」
 僕のそれは初めてで、激しかった。優しく吸い付いてきたフェレーラさんも、
応じて激しいものに転じた。唇の向こうから舌先がノックしてきて、うねるように
僕の口の中に入り込み、舌同士でもつれて絡み合う。
 
 頭の深奥が痺れる。
 頭の中に白い靄が掛かっている。
 冷静に表せばただ口と口を接しただけのこの行為が、上下左右すら分からなくなる
ような興奮を誘う。耳の後ろで血流の音がして、頭の中では血流以外の何かが
どくどくと溢れ出ている。
 何故か、と思う。
 自我と自我を触れ合わせている行為だからだ、と思った。
 互いの鼻息さえ音を発てるそれは、まるで飢えを満たし合おうとしているような、
相手を貪り尽くそうとする勢いだった。
 フェレーラさんの唾液さえ美味に感じる。彼女の綺麗な歯並びとつるつるとした
感覚を舌先で愉しみ、歯茎と唇の間や舌の下の唾液を啜り取り、夢中で飲み込む。
この生々しくも芳しい匂いが堪らない。
 逆に、彼女の滴る舌は、同じ事を僕にしてくる。口内の上側を舐められた時など、
それ自体が快感を呼ぶ。

「ふぅっ……、んんんっ」
「んくっ、んむ……」
 口づけに悶え、右手で左乳房を揉みしだきながら、僕は挿入のために体位を変えて
いく。
 投げ出していた両脚は、彼女を押し倒した時点で片膝を立たせている。彼女の両の
太ももの間に割り込ませていた自分の胴体を、更に押し付けようとするべく、両膝を
床について左右へ拡げつつ、股間を床近くにまで下げた。
 自然、彼女の膝から下が僕の腰に巻き付いてくる。いわゆる正常位というのか。
僕の方もまた自然に、と言うには意図的だけれど、股間を彼女の股間と接触させる。
よりしっくり来る密着感を探して、腰をぐいぐいと動かした。
 同時に右手の中で、彼女の乳房が形を変えている。指の間に意外なほど硬いものを
感じ、これが乳首だと気付く。
 口と股間でぬるぬるとした感覚が、手と指の中では硬軟の感覚が交錯する。
「んんむっ」
 興奮と相まって、もう何がなんだか分からなくなりそう。思わず反射的に腰を突き
出すものの、陰茎の仰角がありすぎて、彼女の陰裂の内側に沿って滑ってしまう。
 何回か繰り返すも、結果は同じ。

「ぷはっ……、フェっ……フェレーラさん……、えっと……どこ?」
 唇を離し、唾液の糸を引きながら尋ねる。
 ぎんぎんに滾った屹立が、彼女のぬかるんだ肉穴を探して何度も擦り付けられて
いるのに。つるんつるん、あるいはじゃりじゃりして抵抗感がない。胸と胸を離して
股間へ見やってみると、彼女の茂みの上に顔を出すのを繰り返している。
「あれ?……」
 攻め手としての意識に追いつかず空回りしている事に焦る。と、彼女の手がそっと
伸びてきて、僕の陰茎に添えられた。
「ユスノーくん……、私の性器は少し上付きですから、位置はちゃんと合ってます。
角度をちょっとだけ……、ほら……ここ……」
 僕の先端を自分の内側への入り口に当てがい、そっと囁いて導いてくれる。この
優しい配慮が彼女の魅力だと改めて思う。ばつの悪ささえ感じなかった。
「う、うんっ……いくよっ」
「はい……」  
 くっと腰を僅かに押し出すだけで、吸い込まれるように挿入された。亀頭の先端に
触れていた肉の輪が、ぬぅぅっとぬたついた密着感と共に雁首までずれ、陰茎半ば
までずれ、根元にまでずれていく。
 それに伴う焼けつく熱さに、まるで彼女の生命力そのものが絡みついているように
感じる。――いや、実際にそうなのかも知れない。
「うっ、うわっ……!!」
「んんっ……!!」
 同時に喘ぐ僕ら。
 陰茎の根元を包む肉の輪の感覚が、抜いてもいないのに先端へ向けて返っていく。
柔らかい肉の環が何重にも連続して、奥方向へ緩やかにうねっている。
 射精用の肉仕掛けだ。こんないやらしいものを、彼女は腹の中に隠していたんだ。
 即、何か熱いものが陰茎を突き抜けた。射精感には到っていないけど、先走った
体液というにはあまりに多い。もしかしたら既に半ば射精してしまったのかも
知れない、と思えるほどだった。
 唇を噛み、陰茎の根元に力を入れて、乳房を握るようにして、ぶるぶると震えて
耐える。耐え抜く。耐え切った。

「……くぅううっ……、うっ、動くよっ? フェレーラさんの中で動くよ、いい?」
「は、はいっ……ユスノーくん、私の中で気持ちよくなってっ……」
 嬉しい事を言ってくれる。とろんと閉じかかった目蓋がぴくぴく震えているその
綺麗な顔を見ながら、まず彼女の一番奥まで押し付ける。
「あぁっ、んっ……」
 そこからゆっくり腰を引いていく。と、幾重もの微細な肉襞はきゅうきゅうと
甘噛みし、抜かせまいとばかりに抵抗感が強まった。
「ううぅっ、気持ちよすぎっ、るよっ……!!」
「あぁん……、ありが……とう、ございます……、嬉しひっ……」
 彼女は嬌声にも似た礼を言いつつ、再び僕の背中に両腕を回す。腰へ巻きつけた
両脚と共に、四肢全てでぎゅうっとしがみついてくる。密着度が高まり、指先から
突き出ている彼女の乳首が、僕の乳首と擦れ合う。
 半ば抜き出した陰茎を再び彼女の肉の中にねじ込み、快感を貪る。すると、ぬくっ
ぬくっという、奥へ持ち上げられるような締め付けで迎え入れてくれた。
 単純な圧力だけの締め付けではなくて。何より驚き、何より蕩けそうになるのは、
もっと表現しがたい吸着感だった。濡れた手のひら同士を合わせれば真空で吸い付く
事があるけど、たぶんあれと同じ現象。同じと言うか、よりぬったりとした感覚。
微細なおうとつの全てに入り込み、僕と彼女をつなげている粘液のせいか。

 次第に粘液は、陰茎と膣肉の間から、ブじゅるっ、ぷぴっ、と卑猥な水音を発てて
溢れ出し、フェレーラさんのすごく恥ずかしげな表情を誘発する。
 それを見て、先走りと言うよりもっと濃い何かが、またも尿道から溢れ出た。射精
寸前の、ぎりぎりのところで僕は全身を硬直させて耐える。
「やぁん……変な音、たてないでください……」
 なのに、全身の硬直を緩ませるような、彼女の甘え声。僕の背筋に電撃的な
ぎくぎくっとした感覚が走り、体液も先走る。胸の奥は跳ね上がり、切なさが
はじけていく。フェレーラさんが可愛くて可愛くて堪らない。
 そして、この快感も堪らない。僕の絶頂はすぐそこにある。フェレーラさんの素足
で絶頂手前をたゆたうように攻められた先程と違い、ただ一直線に絶頂へと誘う快感
の中ではもう耐えられない。
 彼女の膣襞は、あとほんの少しの刺激で僕を射精に追いやるはず。
 このまま挿入してすぐに屈しては、攻め手として駆り立てられている僕の、
男としての矜持を崩してしまう。受け手として彼女に辱められた分と合わせて、
完全屈服だ。
 それを守るには、一つしか思いつかなかった。――逆に、あえて先んじる事。

「………よ、よしっ」
 思い立って僕はフェレーラさんの両腕を解かせ、自分だけ上半身を起こす。名残
惜しげに左乳房から右手を離した。仰向けの彼女の両膝に両手を当て、がばっと左右
に開かせる。乳房を眼下に見下ろしつつ、彼女の腰を両手で抱いて、その尻を少し
持ち上げさせた。
 彼女からも、所在なさげになった手を僕の両膝の裏へ掛け、身の支えとしてきた。
「すぐ出ちゃいそうだよ、フェレーラさんの中っ……。とりあえず、一回イッても
いいよね? こんなの、一回イッてからじゃないと逆に楽しめないよっ……」
「えっ……、ええ、いいですけど……」
 面食らったような彼女だったが、その表情が直後に蹂躙される。射精も構わない
と割り切った僕がいきなり腰の動きを速め、膣内の肉襞に亀頭をめり込ませ、擦り
上げたからだ。
「あっ!!? あっアッ、あっあっ」
 悶えるというより慌てた感じで、フェレーラさんの断続的な声が湯殿に響く。
「あひっ、ひっ、ちょっ……ああんっ、いっ、いっ…いきなりっ……ユスっ、ノー…
…くんっ、ゆっくひっ……」
 それに連動して、彼女の豊満な両乳房が前後に揺れる。乳房の下側を見せて跳ね
上がり、波の反射のように弾み、逆向きに伸びて歪に変形する。そのたびに肉と肉
とを打ち合わせる音。まるで別の生き物がそこに寄生しているような有様だった。

 同じく併発して、床の湯の飛沫音よりも高らかに、彼女の膣口から濡れた破裂音が
する。ぷっ、ぷぱっ、ぱぷっ、ぬぷっ、ぷぴっ、ぶぽっ、ぼぽっ――あまりに下品
で、滑稽で、卑猥な音。
 僕の乱暴な出し入れが、彼女の膣内をあたかも楽器のようにして、空気を鳴らして
いるのだろう。
「いやぁんっ……、へっ、変な音……発てないでって、おっ、お願いしました、
のにっ……、うあっ」
 フェレーラさんは恥ずかしげな、むしろそれを通り越して泣きそうな顔で
嫌がった。でも、僕には同時に気持ちよさそうにも見える。
「んっんっんっ、あっ……、ひぃぃんっ……、んっあっ、あっあっ、ひっ……」
 彼女はその両端の間を行ったりきたりしていたけど、
「……ああんっ、んぅっ、でも気持ちイイですっ……、あっ、あふっ」
 唐突に、明らかに悶え始めた。眉の根に寄った線が減って、悦んでいる笑顔の
ような表情がそのまま表れたりする。
 彼女の膣肉が奥へ向けてきゅうきゅうっと締め上げ、吸い上げるような感覚を
強めてもくる。痺れるほど気持ちいい。出すつもりで刺激を強めれば、むしろ少し
余裕が生じたのだけど、それも早々に追い詰められていく。

「フェレーラさんも気持ちいいのっ……!!?」
 そう聞いた途端に彼女は、僕の背後で両足を床に突っ張った。頭を無理やり
のけ反らせて支点とし、背中を僅かに浮かせ、全身をピインッと緊張させる。
 胸の角度が変わり、たぱんたぱんという音を発てて前後に揺れていた乳房が、
たゆんたゆんと回転する円を左右対称で描きだす。
 股間の高さもずれて出し入れしづらくなるものの、僕の方で膝立ちの高さを
合わせる。なおも動きを激しくしていく。それはたぶん闇雲に拙く乱暴で、僕自身の
快楽だけを考えたものだ。両手は彼女の腰を抱くと言うより、前後に動かすのに
使っている。僕の勃起だけで彼女を支えているような瞬間や、恥骨の裏側の膣襞
ただ一点で出し入れが受け止められている瞬間すら、たびたびある。
 なのに、そんな乱暴な出し入れがちょうど快感のツボに当たっているのか、
「……気持ちいいですっ……、恥骨の裏側が……あァっ……、感じるのッ……! 
もっと乱暴に……犯してくれてもいいですっ……! 私……、何をされても私……、
構いませんので……っ!!!」
 自ら被虐的な面を持つと言っていたフェレーラさんは、舌まで出して悶えて
みせた。何気にすごい事を口走ってないか。
 煽られるままに僕は、彼女の恥骨の裏側へ目がけて屹立を突き上げる。裸体を
半ば吊り上げるつもりでがくがく揺すった。彼女の苦痛の事など頭の中から一切が
抜け落ちての暴走だった。
「……っっ、ユスノー……くっぅんんぅ―――〜〜〜〜ッ」
 切なげな声で名前を呼ばれて、ひどい事をしていると気付く。と同時に、僕の中で
尾骨から頭頂までの背骨を貫く何かが上ってきた。
 彼女の中へこのまま射精したいという気持ちと、それを自制する気持ちが交錯
する。その一瞬の葛藤を捨て置いて、無理ある体勢だったのか半ば過失的に陰茎が
すっぽ抜けた。
「うぁあああっ、フェレーラさんっ……!!!」
 ――どくッ、ぶびゅるるっ……
 白濁した精液が見た事のない勢いで飛び散り、
 ――ぶゅるるるるッ、どくっどっくっ、どくっ……
「ああんっ……、だめぇえ……」
 彼女のへそからみぞおち、胸の谷間を越え、喉から頬にかけてを汚していく。

「うはぁああっ……、ああっ……」
 僕は、ぶるぶるっと震えて昂ぶりを悦んでから――、しばし呆然とした意識で
見下ろした。自分の撒き散らした精液が、練達した女ニンジャの裸身を染め上げて
いるのを。
 殆ど、挿入してちょっと擦ったら出した、というぐらいみっともない有様だった
のに。そんな事を省みるよりも、まとまらない気持ちの中で、支配感、達成感、
充足感みたいなものが強く渦巻いている。悦びがどれだけ大きいかという事だ。
 僕はそうだ。でも、一方でフェレーラさんはどうなのか。
 くたっ、と背中を床につけて、その手が僕の膝の裏からするりと抜け出て、白く
濡れた乳房に伸ばされている。
「ううん……、はぁー……、はぁーっ……、た、たくさん出しましたね……」
 と興奮冷めやらぬ荒い声で言う。仰向けのまま乳房辺りの精液をぬるぬると触って
いた。淫靡な行為だった。塗り拡げるつもりかと思うと、逆に手のひらで集めだして
いく。
 その雰囲気とは逆に、彼女はまだ満ち足りてない。表情から何となく分かる。
たぶん、まだ昇り詰めていないのだろう。
 満ち足りていない、という意味では僕も同じだ。確かに一区切りとして充実した
気持ちはある、けれどまだ貪り足りない。彼女の美しい肉体を、彼女という女性を
貪り足りない。