コンコン

宿で最も安い部屋では、ノックの音さえ大きく響く。
俺が生返事を返すと、木戸が開き、ルサリルが入ってきた。
武装は解いたらしく、身体のラインが際立つ薄手のローブを纏っていた。

「身体を清めて寝台に寝かせてきたわ」
そう言って、寝台に身を投げ出す俺の脇にそっと腰を下ろす。

「がっかりさせちゃったかしら?リーダーが近衛兵の肉奴隷だったと知って」
一瞬耳を疑った。
頭に血を上らせて咄嗟に跳ね起きる。
ラグナに対する容赦ない物言いへの怒りなのか、図星を指されたことへの動揺なのか。
よくわからない怒りに視線を尖らせる俺に、ルサリルは目を合わせようとしない。

「ラグナはね……ずっと、あのドワーフに目をつけられているの」
顔を背けたままのルサリルの表情は伺えない。
肩口で切りそろえられた金髪から、か細いうなじがのぞく。

「『>』持ち相手じゃ仕方がないわ。もっとも、女探索者の扱いなんてどこでもあんなものだけど。
 あなたも早く慣れてね。変に同情の目を向けられるのが一番堪えるから」
素っ気無い言い方に冷水を浴びせかけられた気分になる。
淡々とした、しかしまるで我が事のような物言いに、俺は怒りのぶつけ先を失ってしまった。

ルサリルが振り返る。能面のような無表情だった。

「そう。その目。それやめて。……でないと、パーティーを抜けてもらうことになるわ。
 せっかく自分より実力ある人間と組めたのに、その幸運をふいにするのは、あなたも嫌でしょう?」
俺は無言だった。

女エルフはゆっくりと立ち上がる。

「自分も犯す側になれば、考え方も変わるかしら?」
そして、静止の声を上げる俺に構わず、腰帯を解くと、するりとローブを脱ぎ落とした。

思っていたよりも遥かに肉付きの良い後姿が露になる。
抜けるような白い肌だ。日に焼けていないというより、色素自体が薄い。
張り出た肩甲骨から、うっすらと浮いたあばらを辿っていくと、はっきりとしたくびれに行き当たる。
全体的に細身なのに、尻にしっかり肉がついているため、卑猥なほど身体のラインが強調されていた。

 ごくり

思わず唾を飲み込む。
何か言わなければならないのだが、エルフの肢体に魅了されて言葉が浮かばない。
それでもどうにか口を開きかけたところで、舌が凍り付いてしまった。
ルサリルが俺に向き直ったからだ。

否応なしに目に飛び込んだのは、エルフにしては豊かな乳房と金色の陰毛だけではなかった。
臀部同様、華奢な身体にそこだけたっぷりと脂肪をたたえた乳房の先、
色素の薄い褐色の両先端部には、金属の輪がだらしなく垂れ下がっていた。
股間の毛量の少ない繁みの中にも、おそらくは同じ素材で鋳造された金属の突起が見える。
一糸纏わぬルサリルの裸体には、そこだけ異質な三箇所の金属の煌きがあった。

「ラグナと組むまでは、ずっと、男だけのパーティーにいたの。
 登録したてで、訓練場の前で声をかけられて、ね。この意味、わかるでしょう?」
気付けば、無表情だったルサリルの顔には妖艶な笑みが浮かんでいた。
右手を空中にかかげ、何かを握って上下にしごく仕草を見せる。
卑猥な手つきだった。

「ちょっとサービスすれば命は守ってもらえたわ。
 でも少し、身体を弄られ過ぎちゃったかしら」
そう言って片方の乳首に通されたピアスを指でつまむ。
先端部こそ上を向いているが、豊かな胸全体は重力にしたがって緩やかにたわんでいる。
ピアスをつまんだ指を持ち上げると、つられて乳房が持ち上がりいやらしく形を歪ませる。

「これ、ボルタックで扱ってるのよ。
 しかも呪いがこめられているから、外すにはボルタックにびっくりするくらい高い金を払わなくちゃいけない。
 なかなか上手い商売を考えたと思わない?」
言いながら、ルサリルは寝台で上体を起こす俺に膝立ちで跨った。
そのまま淫らな腰つきでにじり寄ると、たわわな脂肪の塊が眼前に肉薄する。
ルサリルの両手が、すっと乳房の下側に添えられた。
そして、呆然とする俺の顔をゆっくりと包み込む。
ひんやりとした金属の感触の間から、不定形のやわらかな乳房があふれ出し、顔全体を覆った。

「男なしじゃいられない身体なの。抱いてくれる?」

「顔を上げて、口を開きなさい」
言われるままの体勢をとる。
胸の谷間に挟まれたまま、色欲に潤んだエルフの瞳を見上げる。

 ちゅぷ

その楚々とした薄い唇から、ルサリルの唾液が中空を伝い落ちる。
間抜けに開いた俺の口腔に糸をひいて垂らされた。

「飲みこんで」
俺が喉を鳴らすと、ルサリルは満足そうな微笑を浮かべた。
その淫蕩な表情に背を押されて、俺の両手はルサリルの二つの膨らみに伸びる。
絹のような手触りのそれは、掌に、しっとりと吸い付くように形を変え、揉むというよりはすくうような手つきになる。
すると、ふくらみの中央に鎮座する褐色の突起が、こころなし硬度を増したようだった。

「ん……はああ」
俺が乳首に吸い付くと、頭上で深い溜息が吐き出された。
無心になって舐めたてると、突起はどんどん肥大してゆく。
むしゃぶりつこうとするが、金属の輪が邪魔をしてもどかしい。

「ねえ、ピアスをつまんで……そう……引っ張るの。……んっ、もっと乱暴に……んあっ」
口を離し、両手で摘み上げた金属環を恐る恐る引っ張る。
痛みを想像して躊躇されたが、軽く持ち上げただけで、褐色の突起がいっそう固く張り詰めた。
ルサリルの言葉に従い、やや乱暴に引き絞る。
胸全体が紡錘形に引き上げられ、先端の突起は痛々しいほど形を変えて引き伸ばされた。
「んん、はああ、はああん、んっ、んんん」
ピアスが乳首を食い千切りそうになる度に、ルサリルは官能の呻きを上げた。すると、

 ぴとっ

湿った音と共に、俺の大腿部に粘度の高い液体が零れ落ちる。
目をやると、ルサリルの股間から溢れ出た愛液がだらしなく糸を引いていた。

「ふふふ、いやらしい」
ルサリルもそれに気付き、淫らに笑う。
そして、両手で俺のシャツを捲り上げ、脱がすと、俺の胸板に軽く力を入れ、押し倒す。
仰向けに倒れた俺に、ルサリルが覆いかぶさる。

 にちゃあ

首筋から鎖骨にかけてを、ルサリルの舌が這う。
尖った爪の先でかりかりと胸の先端を引っ掻いた。
手は、腹筋に沿ってなぞるように下ろされてゆく。
そして、痛いくらいに張り詰めた俺の股間で止まった。
優雅な指つきで、腰紐を緩め、ズボンを下にずらす。
限度を超えて硬直し、脈動するそれを、ルサリルがゆるやかにしごいた。
切れ長で理知的な瞳に、軽蔑の色を湛えて言う。

「こんなに大きくして……あなたも他の男どもと一緒なのね」
侮蔑の言葉を吐いたその口が、そのまま下りてゆき、一物の直上で止まった。
唇が開き、そこから、ねっとりと唾を滴らせた舌が伸ばされる。
その先端に触れるか触れないかのところで、舌を淫らに蠢かせる。
ルサリルの熱い吐息がかかった。

「舐めて欲しいのね?なら、ちゃんと言いなさい」
面白がるような口ぶりだった。
「あのドワーフの下衆野郎がラグナにしたみたいに、私のお口を犯したいって。
 本当は興奮してたんでしょう?あのクズと同じことがしたくて、この汚らしいものを勃起させてたんでしょう?
 正直に言いなさい。このチ×ポを私の口に突っ込みたくてたまらないって。さあ」

俺は逆らえなかった。
ルサリルは満足した笑みを浮かべると、ゆっくりと口腔に迎え容れる。

 じゅっぱっ、ちゅっぱっ、じゅっぱっ

淫らだった。
柔らかな、零れるような優しい笑みを浮かべるはずのその瞳は、今は発情にぎらついている。
理知的で、彫像のように整った顔立ちを目一杯歪ませ、一心不乱に俺の股間に吸い付いていた。
緩やかな上下運動にも関わらず、ルサリルは舌先を巧みに躍らせる。
そのため、口内の粘膜が蠢き張り付いてくるような錯覚に囚われた。

 くぽっ

垂れ下がる金髪の隙間から覗いたルサリルの瞳が、妖艶に細められた。
そうかと思うと、まるで一物を自分の喉の奥に押し付けるように、ぐっ、ぐっ、と顔を沈めてゆく。
先端が、ぬらめく舌先を越えて、何か空洞のようなものにかぽりとはまる。
そして、口腔のそれとは触感の異なる粘膜が、胎動するような緩やかな、しかし暴力的な締め付けを始める。

ほとんど生理的な反応によって、喉の入り口が侵入物を排除しようとすぼまる。
それにつれて刺さり方が少しだけ浅くなると、ルサリルはまるで自分の身体を苛めるように、
息を吸い込む要領で、ぐっと、深く飲み込み直すのだった。

それは、先ほどラグナがドワーフにされていたことの再現だった。

その繰り返しが伝える快感もさることながら、
この淫らな牝エルフの体内までを蹂躙しているのだ、という実感が駆け巡った。
思わず腰が持ち上がり、腰部の力が抜けそうになる。

「ぷはあっ、はあっ、はあっ、はあ、はあ……満足してもらえた?」
男根を吐き出し、唾液と胃液の混合物を口の端から垂らしたルサリルが、肩を弾ませながら問う。

「これで射精しなかったのはあなたが初めてだわ」
呟いたルサリルの顔は紅潮し、瞳はいっそう潤いを加えていた。
苦しかったからだけではない。発情しているのだ。
牝エルフは、自分自身を苛め抜くような口淫奉仕をすることで、被虐的な快感を感じていたのである。
そんなルサリルを見て、何かわけのわからない暴力的な衝動が沸き起こってくるのを感じた。
熱に浮かされたような俺とルサリルの視線が、一瞬、絡み合う。

「犯して」
ルサリルは背を向けて、俺に、白く震える尻を突き出す。
しとどに濡れそぼったルサリルの秘部が露になった。
金色の猫毛に囲まれた陰部は、内に仕舞い込まれていた陰唇が開いて、大輪の花が咲いたようになっていた。
花弁は蠕動を繰り返しながら、絶え間なく愛液を吐き出し、湯気を立てる。
それは、男に媚びて男を誘う淫売のそれであって、とても神に仕えるエルフの持ち物だとは信じられなかった。

「ねえ、はや……くううううっ、んんんっ、んんふう」
俺は、いきり立つ男根を躊躇も予備動作もなく、開ききった花弁に突き立てた。
牝エルフの淫らな催促は、腹を突き破るような衝撃にかき消される。
使い込まれたルサリルの秘部をもってしても、その暴力的な衝撃を受け止めるのは困難だった。
男根は、予想していたよりもずっと深くに突き刺さる。
終点まで行き着いても、なお、先を食い破るようにルサリルの腹の中を突き上げた。

「んはああ、はあっ、あっ、うっ、だ、だめ、ああ……っっ!」
ルサリルは、華奢な背中を限界まで反らし、上半身全体をびくびくと痙攣させる。
それに伴って、膣肉がぎゅっと収縮した。
まるで、迎えいれたばかりの男根を愛おしむように、きつく締め付ける。
そして、貫かれたままの陰部から、愛液とは異なる液体をぴゅぴゅっとほとばしらせた。

「はあ、はあ、……す、すごい。入れただけで軽くイっちゃった」
俺はくいっと腰を引くと、そのまま大きなグラインドに入ろうとする。

「ま、待って!」
ルサリルがそれを押し留める。
左手を伸ばし、後ろ手に俺の手首を掴んだ。
そして、そのまま自分の秘所に俺の手を誘導する。

ルサリルに誘われるまま触れたのは、まさに今貫いている部分の直下、繁みとの境界にある突起部だった。
陰毛を掻き分けて探ると、丸まった金属の頭があった。陰核を貫くピアスに触れたのである。

「お願い……それに触れながら動いて……」
俺は、試みにピアスを小さく弾いた。

「あっ!あっ、あっ、あっ、やっ」
ルサリルは鋭い刺激を受けて、身をくねらせる。
その甲高い鳴き声に、内を貫かれるのとはまた別種の快楽が走ったことが見て取れた。
そのまま左手をピアスにそえ、右手で生白いエルフの尻肉を鷲掴みにする。
そして、おもむろに、大きく、早く、腰を降り始めた。

「あっはああ、ひ、や、はああん、んあっ、あはあっ、ああん、あああんっ」
突如始まった激しい責めに、ルサリルは悲鳴を上げる。
俺は、力任せに尻を握り締めると、悲鳴にかまわず、打ち下ろすように男根を突き込む。
つられてルサリルが腰をくねらせると、ピアスが俺の左手の指先で弾かれる。
包皮がめくれ、充血した突起を、弾かれたピアスの先が容赦なく左右に嬲る。

「ひいい、はっんっ、つ、つよすぎるっ、やっ、ひっ、んんはっ、いやああっ」
狂ったように身を捩り、あられもない嬌声を上げ続ける。
俺はよがり狂う牝エルフを見て、いっそう破壊的な衝動を刺激された。
左手で強くピアスを押し込みながら、揺れる尻肉に音が鳴るほど腰を打ち付ける。

 じゅぽっ、じゅぽっ

苦痛と快楽に泣き叫ぶ上半身とは別に、熟れきった秘部は貪欲に男根をむさぼるようだった。
腰を引けば内部の膣肉がめくれあがり、まるで離すまいとするかのように、陰茎にまとわりついて伸びる。
後背から攻め立てる姿勢だと、その淫猥なさまが嫌でも目に入る。
男の握力で鷲掴みにされた尻肉は、赤く腫れながらも喜びに身を震わせた。
爛れた接合部分では、攪拌され、白く濁った愛液が飛び散るように降り注いでいた。

 ぴくっ

快感を極めた男根が小さく脈動し、その限界の近いことを告げる。
すると、それを敏感に感じ取ったルサリルが、金髪を振り乱しながら叫んだ。

「きてっ!膣内にっ、注いでっ!だ、だいじょうぶだから、わたしはだいじょうぶだからっ!」
叫びに答えるように、放出の予感が身体の芯に走った。
今までのどの突き込みよりも深く、ルサリルの中に入り込む。

 どくどくどくっ

強烈な射精感に、男根が身をふるわせた。
大量の精液が、牝エルフの胎内に容赦なく放出される。

「あああああっ、ああああっ、はああああああ」
ルサリルは喉を反らし、声帯を潰さんばかりに、獣のように叫んでいた。

 どくっ、どくっ

残滓が断続的に吐き出されると、まるで呼応するかのように、寝台に沈んだルサリルの身体が痙攣する。
俺は力尽き、ルサリルの身体に被さる。
最後の放出が終わるまで、ルサリルの華奢な身体はぴくっ、ぴくっと小刻みに反応することを止めなかった。

俺は身体をずらし、ルサリルに体重をかけないようにしてうつ伏せになった。
脱力しきって体が動かない。
傍らのルサリルは、しばらく、同じように、情事の余韻に打ちひしがれているようであった。

やがて、衣擦れの音が耳に飛び込む。
ルサリルが上半身を起こしたようだった。

 ふっ

耳に吐息がかかる。
エルフの顔が、寝台に伏せられた俺の顔の、すぐ隣に近づけられる。

ルサリルは、かすれるような囁き声で、俺の耳元にそっと呟いた。

「……ようこそ。トレボーの城塞都市へ」