「コンチクショウ!」
怒りに任せて金敷に拳を振り下ろす。
ぶつかる素手から火花が飛び散り、脇に控えていたドワーフの一人が怯える。
「あの淫乱女め、ワシの腕では満足できぬというのかッ!!」
スミッティにも職人としての意地がある。
貴重な鉱石を分けて貰う条件として、
「ゼンマイ仕掛けの玩具」を作る事になったのが一月ほど前の事だ。
それは勿論女王の性癖を第一に考え、鍛冶職人の業の集大成とも言える傑作となった。
半月ほど前に完成させたソレは、丁度通りかかった冒険者達に、
歯車修理の依頼代金代わりとして届けさせたのだ。
そして、つい先程聞きかじった噂では、
『女王の元に向かった冒険者達は毎晩夜伽につかわされている』
『近々より多くの男性を募集する』
『連日毎晩部屋から響く声に、多くのアマズールが不眠症になった』
との事だ。
男ばかりの冒険者に任せたのも失敗だったのだろうか。
否、女一人満足させられずに何が職人であろうか。
スミッティは金槌を手に取る。
「そこの若いの、ちぃと手伝ってくれぃ」
「ヘイ、親方っ」
職人とは、日々鍛錬、研究を重ね、さらなる高みを目指すものよ……。














「アッーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」



「アレが届いてからというもの……」
クワリ・クボナは以前にも増して心労を抱え込んでいた。

女王の寝室からは連日連夜、淫らな宴が続けられていた。
中には六人の男と一人の女。
「あぁぁあああっ! つぅぅんっ! いいっ! イイよぉおおおぅぅ!!!!」
「っはぁっはぁっはぁ」
「もっとぉおおお、突いてついてツイテェェエエ!!!」
「俺…限界ッス……」
「やめちゃぁあぁらめぇええぁぁ!!!!」
「ほら…まだ立てるだろ……俺だってもう限界近いんだっ…」
「っひぅぅぅんんんんっっっ! いくぅうういっちゃうぅぅん!!!!」
「っはぁっはぁ…ウッ!」

 聞き耳を立てながらクワリ・クボナはうっすらと浮かんでいた涙を拭う。
今まで夜伽の場であそこにいたのは自分であったのに。
あの憎らしい冒険者が来てからというもの、
女王の声に耳を傾けながら、一人で自分を慰める夜が続いている。
「ぁぁあ、女王様。わたくしも……っはぅん!」
足の指先を突っ張らせながら身体を震わせても、
一度人の肌を知ってしまった身体には燃える様な絶頂は訪れない。
「こんなにもお慕いしておりますのに……」
止まない声を聞きながら、満たされない想いを沈める為に、
クワリ・クボナは再び指を濡らす。
「わたくしくしよりもあんな下賤なモノが良いと申されるのですか……女王様」
宴はまだ終わる様子は無い。

ギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシ
アンアンアンアンアンアンアンアンアンアンアンアンアンアンアンアン









ギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシ
「あんぁぁあんんっ!」
ギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシ
「もう…許して…くだ…」
ギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシ
「あっはぁあああんんっっつ! なっ何を言うか奴隷共がっ!」
ギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシ
「俺達…もぅ…このままじゃ死んでしまいます!!」
ギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシ
「んっんっはぁぁんんっ! 安心おしっ! 代りは既に集め始めておるわっ!」
ギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシギシ
「スマン…リーダー…俺…」
ギシギシギシギシギシギシギシギシギシ
「なさけないのぅ、さっさと立たぬか! まだ代りは来ておらぬのだぞ!?
 一体誰がこのゼンマイを巻くと思っておるのか! この役立たずめが!」

中には五人の男と一人の女。
そして巨大なゼンマイ仕掛けの玩具と、横たわる役立たずが一人。
喘ぎ声と、金属の擦れる不協和音がピラミッドに響き渡る。

「あはぁんっ、ドワーフの鍛冶屋も、中々に良いものを作ってくれたものだ」