「あぅ…! っ…く…っ……ぅ…ぅ…」

 シミアに腰を押し付け、肉杭全てを埋没させた俺は唇を離し、シミアを気遣った。破瓜の衝撃に耐える
ためにしっかりと閉じられた目、痛みを堪(こら)え悩ましげに寄せられた眉、切なげに半ば開かれた
可憐な唇…。目尻から金剛石の小粒にも似た涙が次々とこぼれ、血の気の引いた白い頬を流れ落ちて行く。

 「…いいんだぞ…? 我慢しなくても…」 

 シミアの苦痛に耐える顔を迷宮探索のキャンプで見慣れてはいたが、この表情は少々勝手が違っていた。
確かに苦痛に耐えているのは同じだ。しかし、どこかしら安堵感や喪失感、困惑が見え隠れしているのが
気に為った。こればかりは男の俺が生涯掛けようと少しも解らんのだから、俺は精々気遣う事しか出来ない。
握り合わせた両手のうちの右手を解き、シミアの頬に手を当て、親指で目尻に溜まった涙を触る。

 「ジョウ…」
 
 シミアの空いた左手が、俺の右手にそっと触れた。真直ぐに俺を見上げる翠の瞳は、シミアを気遣うだけの
俺の情けない姿をありのままに映していた。シミアの目からは怒り、安堵、喜び、感謝の感情が目まぐるしく
浮かんでは消えて行く。何せ一生に一度しか経験出来ない痛みだ…が? シミアの左手が幽かに緑光を帯びる。
やはり痛みに耐え切れず、治癒か何かの僧侶魔法を遣う気でいるのだろう。…悪いがそいつは逆効果だ。
 
 「…ここで治癒魔法なんて遣うと、最初からやり直しだぞ? シミア…? 俺ので押し広げられて裂けた所を
  また再生しても…」
 「違うぞジョウ…? …モンティノだ。妾(わたし)が痛みで呻き声や叫び声を上げたら、ジョウが…」

 シミアの血の気の引いた頬が見る見るうちに赤くなる。顔を背けて蚊の羽音の唸りのようなシミアの幽かな声を
俺は聞き取った。『気持ち良く…なれないだろう? 』確かにシミアはそう言った。迷宮でのシミアの噂を聞き、
ギルガメッシュの酒場やカント寺院、ボルタック商店でのの数々の逸話から灰燼姫(カイジンキ)と綽名(あだな)
した輩(やから)が聞いたならば顎が外れる程に驚くに違いない。…俺は首を左右に振り、魔法の発動を止めさせた。

 「…俺の事はいい。そんな事を気にするな」
 「そんな事…だと? …妾にとっては何よりも大切…んぅ…ぅむ…ぅ…」

 シミアはやはり、骨の髄まで君主だ。俺がサムライだという事を意識させ過ぎたせいで、こんな…こんな…こんな…
可愛い事を…! 堪(たま)らなくいとおしく思えて来る。可愛さのあまりに唇を蹂躙したくなり、欲求に素直に従う。
シミアは俺が自分の破瓜の痛みを気にせず思うがままに動けるように、モンティノを自らに掛けるつもりでいたのだ。
シミアへの込み上げて来る独占欲が自制に逆らい、俺の腰を動かしていた。しかしシミアの女陰は俺を喰い締めたまま
離そうとしない。逆に俺を奥へ奥へと誘おうとしている。俺の大きく嵩張った亀頭がシミアの貫通したばかりの膣内を
引っ掻くが、唇を俺が塞いだままのため、シミアは声を上げられない。

 「…! …! …! …! 」

 俺が動くたびに、シミアの目からは水晶の粒が零れ落ちて行く。途轍も無い背徳感と罪悪感が俺を襲うのだが、同時に
浅ましい征服欲が満たされて行く。汚らわしい馬小屋の住人で東方人たるこの俺が、誇り高きエルフの領主の後継者でも
あり、誰よりも高潔であろうとした君主であるシミアを組み敷いて、『娘』から『女』にして『啼かせて』いるのだと
思うと、俺の欲望の権化かさらに容積と硬度を増して行くのが分かる。…所詮は俺も、本能には勝てない哀しい人間だ。
奇麗なモノを奇麗なままにして置けない者の一人なのだ。…俺はシミアから唇を離し、上体を起こす。そしてシミアの
体をじっくりと観賞する。グレーターデーモンすら屠る剣圧を生み出し、大盾を自在に扱う細くしなやかな腕が、俺の手を
握って離さずに震えている。普段は重く武骨な鎧の肩当を支え続けているのが不思議な程の撫で肩が、俺の無慈悲な腰の
律動を受けるたびに痙攣する。厚い胸甲に隠されているはずの双乳が、シミアの荒い息遣いと俺の繰り出す律動の衝撃に
揺れる様はさらに獣欲を加速させる。

 「…! …………っ! ……ぅ! 」

 だが、シミアはその声だけは聞かせてくれない。唇を噛み、歯を食い縛り、眉をひそめ、新緑を思わせるその瞳を時折
固く閉じるその受難の様は、まるで殉教者を思わせる位にシミアを神々しく見せている。それを汚しているのは自分の行為
なのだと言う自覚が、腰の律動を速くさせる。シミアに声を…上げさせて見たい。あられも無い高い嬌声を漏らさせるのだ。
――そうだ。貶めてやりたい。エルフの清純な乙女だったシミアを、この俺と同等なまでの性欲の虜に堕するのを見て見たい――
己の浅ましい欲望が頭を擡(もた)げる。男は上淫を好み、女は下淫を好む。俺の遙か東方の、国元で読んだ『指南書』の
一文だ。平たく言えば、男は身分が高い女と性交するのが好きで、女はその逆が好きなのだと言う意味だ。エルフでロードの
シミアは、格好の典型とも言えた。だが…シミアにとって俺は…どうなのだろうか? シミアが右腕を離し、上体を起こした。
それでさらに俺を深く迎え入れることになり、眉間に刻まれた皺(しわ)が深くなる。…そして、苦痛と安堵がない交ぜに
なった、涙で濡れた顔のままで俺の頬をそっと…優しい頬笑みを浮かべながら撫でた。

 「ジョウ…? 妾の…中は…良い…か? 」

 そして俺は人の心を取り戻した。種族も職業も何もかも心から吹き飛び、浅ましい欲望のまま蠢かせていた腰の激しい律動が
停まった。ああ、最初からシミアは俺を、俺だけを求めていたのだ。2人きりの迷宮探索行の時、キャンプの際はいつも俺の
胸甲がシミアの枕だった。迷宮の壁では無く、俺の身体に凭(もた)れ、休息を取っていた。俺は男だぞとしつこく拒否しても
止めなかった。どうなっても知らんからなと口だけで脅しても、何ら効果は無かった。…止めたのはマッケイが加入してからだ。
それでもマッケイの見えない所で指を絡ませたりして来たシミアが、ふっつりと触って来なくなったのが家臣の三姉妹加入からだ。
それでも、常宿になったロイヤルスイートまで送る俺を毎回誘ったのは、シミアの精一杯の『傍に居て欲しい』との訴えだったのだ。
身分も何もない。ありのままの俺を見ていてくれたシミアがただ…いとおしかった。しかし…俺は…!

 「シミア…」

 その全てを理解していて、残酷にも今まで俺はシミアの訴えを無視し続けたのだ。シミアは強靭な前衛職の君主であり、誇り高く
気品に満ちたエルフである。だから耐えられるのだ、と。俺が…愚かだった。カイやミオの口から俺と契ったのだと聞いたシミアの胸中は…
きっと嫉妬で張り裂けそうに為っていたに違いない。俺の前だから耐えたのだ。俺がシミアに抱いているだろう固い印象を崩さぬように、
精一杯の矜持で立って見せていたのだ。…本当はすぐにでも相手をぶん殴ってから俺の胸に飛び込んで泣き喚きたかったろうに…。

 「どうした…? 妾の中は…気持ち良く…ないのか…? 」
 「俺は良いんだが…。シミアは…どうなんだ? 」
 「い…っ! い、いや、良いぞ?! 良いからな…!? 本当だ…」
 「…ありがとう…。シミア…本当は痛いんだろう? 」

 俺はしぶしぶ頷いたシミアの首を抱き、目の縁に溜まった涙を吸う。あまり辛くは無いが、子供の頃に舐めた懐かしい海の水の味がした。
シミアは握り合わせたままの左手を放し、俺の背を抱くと…恥じらいながら脚を開こうとする。俺はシミアと繋がりながら脚の位置を入れ替え、
シミアの脚の間に入る格好になる。そして…シミアの脚が俺の腰の後ろで、俺を金輪際逃がすまいとガッチリと組まれた。あわせてシミアの
蜜壷が凶悪な性能を発揮し始める。迷宮内で二度と俺に排便時関係の痴態を見せるまい、と鍛えに鍛えた尿道と肛門廻りの筋肉が、俺への絶好の
復讐の機会だとばかりに活躍し始めたのだ。折れよとばかりのきついだけの喰い締めが…膣の内壁が蠢き、俺のモノを奥へ奥へと誘い、柔らかく
迎え入れつつも要所要所で逃がすまいと締め付ける、射精衝動を促す絶妙な動きへと変わって行く。俺の亀頭に何かが張り付いているのが分かる。
もう、限界だ。逃げる事が出来ないのなら…! 

 「…出すぞ…シミアっ…シミアァァァァァっ! 」
 「っ…! …! …! ジョウ…! ジョウ…っ?!  ぁあ、あついぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ! 」
 
 俺の精を体の最奥に受けたシミアが、これまで終ぞ上げなかった、いかにも女らしい高らかな嬌声をついに上げ、俺の耳に陥落を告げた。
先日ミオに散々搾り取られたはずの精が、ニ度、三度、四度と分けて、シミアの膣内に大量にぶちまけられ続ける。俺の精の液弾を受ける度に
シミアは体を痙攣させ、それによる膣の動きで、俺の肉槍を悦ばせる。シミアはついに、俺が萎える事を許さぬ凶悪極まりない、俺だけの鞘に
なったのだ。もうシミア、おまえは俺のモノだ。そんな思いを込めて、腰を左右に振ると、応えるようにシミアも腰を浮かせ押し付けて来る。
そのままの体勢でシミアを愉しみながら、シミアの頬を舐めると、やっとシミアはその目を開けてくれた。

 「…やっと…妾は…ジョウのものに…なれたのだな…? 」
 「ああ。そうだ」
 「…覚悟は…良いだろうな? 」
 「何のだ? 」
 「ジョウがカイやミオにしたその…なんだ…閨の…技をだ…これより妾は全部、ジョウと…試さねばならぬから…な…?」
 「望むところさ、シミア…」
 「ああ…ジョウ…」 

 俺はシミアのわななく唇を奪い、腰の動きを再開させた。だが俺はその時、何の逡巡も無くシミアに応じてしまった自分を呪うべきだった。
俺が萎えればディオスにディアルにディアルマにマディをシミアに使われ、最後のマディが切れたらマニフォを使って『分身』の硬度を
維持させられてしまい、三日三晩かけて馬小屋で『文字通り』に搾り取られた俺は、ロードを敵に回すとどうなるか身を以って味わう『ハメ』に
なったのである。それでもシミアが最後までエルフの可憐さや清純さを失わずにいた事をシミアの名誉のために言及して置く事にする。
…俺の得た貴重な教訓を一つだけ。『嫉妬深いエルフ女性のロードを自分のパートナーに選んだ場合、浮気の末路は腹上死を意味する』。以上。




追記:馬小屋でシミアと性交を続けていたので、閨の睦言や嬌声は周囲にダダ漏れ。馬小屋の宿泊客が三日間0と言う快挙? を成し遂げた俺達は
   後で宿の主人に両手をぶんぶん握られ感謝された。なお、その事で命知らずにもシミアをからかい、危うくカシナートと村正の錆に為りかけた
   男性冒険者が多数カント寺院に担ぎこまれた事をここに記す。