いちいち自己紹介しなくったって俺の名前くらい知ってるだろ?
例の一件以後このシリカの名前と身分はえらい勢いで広まったからな。
まあそれでもタメ口だった奴が敬語に変わった、とかそんな事は微塵も無かったあたり
この式部京の校風はいいものだと思うし、同時にちょいと不安も覚えるけどな。
さて、今はまだ2月で早春真っ只中のクソ寒い中俺は屋上でお弁当を食っていた。
一応ツッぱってる手前、寒いから、なんて軟弱な理由で教室では食えんし
食堂は込み合い過ぎてウザいことこの上ない。
悴む両手でこうして弁当を食っていると──あ、からあげ落とした畜生ッ──
大波乱のこの一年を思い出すね。お兄t……アニキの事もいろいろあったしな。

そういやアイツら、学徒補欠隊だっけ?、は今どうしてるんだろうか。
聞くところによると未だに補欠隊とかいう名称のまま活動を続けているらしいが。
アイツらには借りがある。ありまくりだ。
ガラでもねぇと思うがちょっと一言くらい励ましというか何というか、
とにかく頑張れよと伝えてやりたい気分ではある。
うし、と気合を入れて食べ終わったお弁当を片付ける。
おっとご飯粒がフタに残ってるじゃないか、いけねぇいけねぇ。


しかし補欠隊がどこにいるのか俺はさっぱり知らないからな。
手っ取り早い手を使うことにしておく。
専属オペになりつつある凛を捕まえて伝言を頼むってことだ。俺らしいだろ?
で。
学府中回ってみたものの凛の姿が無い。
通信室で軍務中なのか、と廊下で思案していると前からユリウス教頭が歩いてきた。
「教頭先生、凛を見なかったか?」
「あらシリカ君」
俺から話かける事はあんまり無いからな、まあ驚いたような顔になるのも頷ける。
ええと、と言いかけたんだろう。
考えるような仕草を一瞬した後「あっ」と突然声を上げて走り去ってしまった。
おいおい、何なんだよ一体。

寄宿舎にいるってセンもあるな。
てことでとりあえず寄宿舎の広間でちょいと時間を潰してみる。
たんたんたん、と軽い足取りが女階段(女学生棟へ繋がる階段の通称だ)から
聞こえてきた。
「おお凛、丁度いいところに……ってなんだ光か」
「なんだとは何よ」
ん、珍しい事もあるもんだな。光は短剣と小ぶりなズタ袋を持っている。
これからロードに行きます、って格好だ。
一瞬朝倉さん、と言いかけたが飲み込んでおく。
「今日はロードに出るのか、珍しいな」
普段は生徒会が忙しくてロードなんかにゃ出れないはずだ。
「うーん……何ていうのかな、たまには、ね」
「アレか、運動不足の予防みたいなもんか」
「あ、そうそう、そんな感じ」
オマエ適当に答えてないか、と思ったがまあいい。大方ストレス発散とかだろう。
溜め込むタイプだからなぁコイツは。
「なあ、ところで凛を知らないか?」
「へ?」
なんかすげぇアホ面を見た気がする、と思った矢先に突然光は走り去ってしまった。
いや、何かリアクションしてくれよ。何なんだよこれは。



おかしい。出会う奴全員に聞いて廻ったんだがこれはおかしい。
どいつもこいつも凛の事を尋ねると態度がおかしくなりやがる。
俺の王族センサーが察知した限りではまた何か厄介な事件が起きてる感触だ。
だが学府中を歩き回ってみたが、学府の中は少なくとも見た目は普段通りだ。
しかしそうなると何か事が起きてるのはロード内の可能性が高いんじゃないのか。
空に突き刺さる光の柱を仰ぐ。
俺が本気出さないといけないような事件じゃない事を祈ってるぜ。



とりあえずノービスロードに入ってみた。今日は生態監察スレッドの日らしい。
俺はこのスレッドはあまり好きじゃない、呪文禁止区域が多くてウザいからな。
適当にコインやトードどもを蹴散らしながら歩いていると、ふと声が聞こえた気がした。
んん? 気のせいか?
「誰かいるのか?」
目の前の曲がり角からも、横手のガラスの向こうからも、どこからも返答は無い。
やっぱり気のせいか。やれやれ、と緊張を解いた時はっきりそれが聞こえた。
──ぁぁぁ!
甲高い女の声だ。
ロード内じゃ断末魔なんてひっきりなしだからな、本来は驚くような事でもないんだが。
ただ声が凛に似ていたのが気になる。
しかしこれは結構近いところから聞こえた声だな。
長い事ロードを歩いてると、どれだけ音が反響してても大体の場所がわかるようになる。
果たしてビンゴだったのか──俺が走りついたその部屋からは断続的な悲鳴がこぼれていた。

おいおいここは……。
ノービスロードで最も危険な場所、キマイラのいる部屋じゃないか。
俺は数年前この部屋に何も知らないで入り、全力で逃げ出した事がある。
てことはさっきの声は……!
「ち、馬鹿どもが!」
大方逃げ送れたか興味本位で喧嘩売ったに違いねぇ。
俺は扉を開け裂帛の気合とともに部屋に飛び込んだ!

「うんっ、く、あ、ああっ」
「ダメ、イク、イッちゃうよお!」
「あっふあっ、んあああ」
おおおおおおおああああああ、なんだこれは!?
部屋は女……のフェルパーだらけだった。しかも全裸。さらに絡み合っている。
新しいキマイラでも作る気ですかそうですか。
フェルパー達はお互い胸をもみ合い、指を挿れあい、悶えててててててて。
漂ってくる強烈な匂いに一瞬クラリときちまった。

あろうことかそのフェルパー達の中に凛がいた。
集団からはずれた所で自慰行為に耽っている。
仰向けに寝てあられもなく大股を開き、左手の指で押し広げたその内部で
思うままに右手の指突き入れる。
反るように曲げられた人差し指で膣中で回転させるようにえぐり
声が漏れ腰が跳ねる度に押し出されるように粘液が垂れていた。
「にゃっあっあっんんん、くぁっにゃっはん、んうう!!」
次第に指はリズムを刻みはじめ中指の加勢が加わる。
「ぅにゃあああああ」
ぐちゅ、という水音が俺の耳にまで響いてくる。
歯を食いしばって涙目になりながらも指を閉じ、開き、回し、複雑な動きで
自らの膣を蹂躙する。
そしてさらに半ば上体起してさらに指を深く突きこもうとする凛。
「あふ、うにゃあ、届かないにゃ、届かないにゃあ!」
ぱちゅん、と濡れた手のひらと恥丘がぶつかり音を立てる。
しかしそれほど強く求めても女の、子供の指では奥に届かない。
それを知ったのだろう、手元の村正を掴むと──そんなの持ってきてたのか!──
その長い柄をずぶずぶと自分の中へと導く。
堅い柄がほぐれた肉をかきわけ、ゆっくり中へ沈んでいく。
柄特有の滑り止めが溢れる液をものともせずごりごりと膣壁をえぐり抜く。
「うにゃあ、くるにゃ、いくにゃ、ああああああ!」
どっちなんだよおい、と思った瞬間、柄は半回転しながら凛の中でと吸い込まれた。
「いっ、ぎ、にゃあああああ!!」
思い切りねじり込んだのか一瞬顔を歪ませた後、収縮した膣から大量の液体がぶちまけられた。



エラいもん見ちまった。
つまりアレか、今は2月だ。
発情期って奴なのか。
そういや俺性教育サボってたしな。
人間のとかはいろいろ知ってるつもりだったからな。
つまるところフェルパーってのはこうやってこの季節を乗り切ってるのか。

凛はぐったりとして絶頂の余韻に溺れて……あれ?
「…………見たにゃ…………?」
ああ、さすが親子。ゆらりと村正を構えるその姿はとてもサマになりますね。
いやいやいや隙も全く無い。
しかしその構えはあれですが、例の滅殺衝撃波ですか。
ここにはモンスターなんていませんよあははは。




  死 ん だ



-END-




アーカイブxx:
偽キマイラはフェルパー達の生理現象解消行為を維持するために設置されている。
故に偽者だと貴方が見破った場合でも、そこは怖がったフリして近寄らないであげよう。
でないと村正のサビにされちゃうかも☆