明らかに貴人のためのものであると見て取れる豪奢な寝室。
そこには何やら押し問答をしている様子の男女の姿があった。
「奥方。私は前々から貴方のことをお慕いしていたのですよ」
長身痩躯に黒いローブを纏った陰気な風貌の魔術師の骨張った手が、
豊満な肉体をゆったりとしたドレスで覆った妖しく熟れた貴婦人の頬へと伸ばされる。
貴婦人は伸ばされてきた手を柔らかな手つきで押し留め、伏し目がちに答えた。
「駄目……駄目ですわ。私にはもう夫たるお方がいらっしゃいますもの。不貞を働くわけには参りません。
 増して、そのお方は貴方のお仲間ではありませんか。貴方はお仲間を裏切るおつもりなのですか?
 あの方は貴方を信頼して、この城の留守を貴方にお任せになったのですよ?」
貴婦人は魔王殺しの英雄として知られる君主の妻でもあり、魔術師はその英雄が最も信頼し、尊敬する無二の盟友だった。
彼女はそのことを指摘し、魔術師の横恋慕を諦めさせようとしたのだ。
しかし魔術師はというと、そのことを指摘されても一向に悪びれた気配も見せず、更に貴婦人に詰め寄った。
差し伸べた手を押し留めてきた貴婦人の手を握り、身体を少しずつ近づけていった。
研究のみの世界で安穏と生きる者達とは違い、
死線を潜り抜けてきた歴戦の冒険者である魔術師の動きは蛇のように素早く滑らかで、
貴婦人が慌てて身を離そうとした時には互いの体温が分厚い布越しに感じ取れてしまうほどに身体を密着させていた。
そうして、貴婦人を抱き締め、背中から腰にかけてを撫で回すように手を滑らせながら魔術師は言う。
「それがどうしたというのです。私は貴方を得るためならば、どのような裏切り、どのような悪行もなす覚悟です。
 ですから、どうか、どうかその身を私にお委ねください」
「駄目ですわ、いけませんわ……ああ、おやめになってください……」
柔らかさ、豊かさ共に小娘とは比較にならないほどに熟れた肉体を骨張った手で撫で回される、
そのむず痒いような刺激に思わず官能の吐息を漏らしてしまいそうになるのを堪えながら、
貴婦人は目に色欲の邪な光を宿した魔術師に哀願した。
夫たる人と同じく神に仕え、聖女とまで讃えられた高徳の尼僧である彼女には、
夫を裏切るなどという背徳は許容しうるものではなかった。
「それに……それに貴方は知る由もないでしょうが、この身はあの方のお子を宿しているのです。
 私の気持ちがどうあろうとも、貴方のお気持ちにお応えすることは叶いませんわ……」
「なっ……!」
魔術師の腕による拘束が緩んだ隙を見計らって身を離しながら、貴婦人は言う。
それを受けて驚愕の呻きを漏らしたきり絶句した魔術師が貴婦人の下腹部に視線を向けてみれば、
確かにそこには不自然な膨らみが僅かに存在しているように見えた。
「気づいているのは私とあの方、侍女、そして貴方だけですが、
 私は三月前のあの方との交わりによって、あの方のお子をこの身に授かったのです」
貴婦人は絶句している魔術師に対して殊更に見せ付けるようにして、下腹部を愛しげに撫でた。
「……左様ですか。彼の子を身籠られたのですか」
ようやく言葉を絞り出した魔術師の表情はローブのフードの陰になっているため、貴婦人には読めない。
しかし、抑揚のないその声が得体の知れない危うさを含んでいることもわかった。
「そうですか、その子が私の恋慕を妨げる悪魔なのですか。ならば悪魔よ、去るがよい!」
身の危険を感じて後ずさった貴婦人に対して、魔術師は神速の詠唱によって完成させた呪文を投げつけた。
その掌から迸った不快な波動が室内を荒れ狂い、貴婦人に襲い掛かる。
「な、何をなさるのですか……そ、それはマカニトではありませんか!」
しかし、弱者には必殺であっても、強者には何らの効力も発揮しない特異な呪文であるマカニトが、
既に一線を退いたとはいえ高位の僧侶である貴婦人に害を与えることはない。
何をするのかという困惑と共に抗議の表情を浮かべる貴婦人に対し、魔術師は狂気を孕んだ口調で優しく告げた。
「奥方。大丈夫です。奥方と私の愛を妨げる悪魔は死にました」
「えっ……う、嘘っ、そんな……赤ちゃんがっ、赤ちゃんが……!」
魔術師の言葉に困惑を深めていた貴婦人だったが、
何事かに思い至ったように下腹部に手を当て、愕然とした表情を浮かべ、悲痛な悲鳴を上げる。
そこにはあるべき膨らみがなかったのだ。胎内で育まれていた命が消え去っていたのだ。
「やあ、悪魔が弱くて助かりました。おかげで、貴方を傷つけずに済みました」
事もなげに言ってのけた魔術師は、再び貴婦人を抱き寄せ、その全身を撫で回しながら微笑んだ。
「あ、貴方は、何と、いう、ことを……!」
「お待ちなさい。そのように乱暴なことをなさらないでください」
「離しっ、離してくださいっ!人を呼びますよ!」
怒りと悲しみに表情を曇らせた貴婦人は高位の魔術師にどれほどの効果が期待できるかも怪しいモンティノの呪文を発動させようとしたが、
先手を打った魔術師に印を結ぶための手を拘束されてしまって果たせなかった。
振り解こうと抵抗しながら、魔術師を睨む。
「まあ、落ち着いて私の話を聞いてください」
「一体、一体何の話があるというのですか!?」
生まれる前に死んだ我が子の死の悲哀を思って涙を流す貴婦人は、
もし邪眼を持っていたとしたら魔術師の身体など肉片一つ残さずに消し飛ばすだろうほどの憎悪を双眸に湛えている。
「遠い異国に遠征中の彼は、きっとお子さんの誕生を心待ちにしていることでしょうね」
悪魔の笑みを浮かべて魔術師は続ける。
「待望の我が子への期待に胸を湧かせて帰還した彼に、『私が子供を殺した』などという事実を
 突きつけるおつもりですか、奥方。そのようなことをしてしまったら、彼が一体どれほど傷つくとお思いで?
 最も信頼する友の裏切りと、我が子の意図された死とを知ってしまって、果たして純真な彼が
 その事実に耐えることができるでしょうか?なるほど、私にその怒りをぶつければその苦しみも紛れるでしょう。
 しかし、その後はどうします?絶望のあまり、死を求めてしまうかもしれませんよ?
 或いは死を求めないまでも、絶望と憤怒から人中の魔王と化すかもしれません。彼にはそれだけの資質がありますからね」
「では、どうせよと……どうせよと貴方は仰るのですか!?」
涙の雫を床に零しながら、貴婦人は耐えかねたように絶叫する。それは追い詰められた者の絶望の叫びだった。
「他の男と子供を作ればよいではありませんか。幸い、彼は来年まであちらにいます。
 今からでも充分に間に合います。そして、丁度よい男が貴方の目の前にいますよ。
 さあ、私と子作りをしようではありませんか。ええ、無論、不貞です。許しがたい不貞です。
 しかし、夫の友情を破壊し、絶望させてしまうよりは、
 夫に何も知らせず、密かに対策を講じる方が、遥かに彼にとって幸せなことではありませんか?
 それとも貴方は身勝手にもご自身の尊厳ばかりを追い求め、夫たる人の心を思い遣ろうとはしないおつもりで?」
聖人を堕落させる悪魔のような態度で囁くと、魔術師は貴婦人のドレスの結び紐に手をかけ、それを解き始めた。
「ああ、おやめください……お願いです、どうか許してください……」
「貴方はこの期に及んでまだそのようなことを……
 これも全て彼のためなのですよ。いいえ、彼のためだけではありません。
 小は彼を悲しませないため、大は世のため人のため、貴方も自身の運命を受け入れなさい」
「ああ、嫌、嫌です……駄目です……やめて……」
結び目を解こうとする魔術師の手を押さえて、貴婦人は嗚咽のような拒絶を口にする。
「おや左様で。ならば私は貴方を断腸の思いで諦め、立ち去りましょう。
 そしてその足で彼の元に向かって、全ての事実を告白するといたしましょう。そうして彼に斬られましょう」
道化が歌うような調子で述べた魔術師は、さっと身を離すとマロールの詠唱を始めようとした。
「ああ、待って、お待ちください、それだけは……」
「私を止めたいのならば、どうすればよいかはおわかりですね?」
印を結ぼうとする手に縋りつく貴婦人に、魔術師は豪奢なベッドに意味深な視線を向けつつ、
蛇が獲物に絡みつくような陰湿な声音で微笑みかけた。

           *           *           *

「ああ、そんな……」
ドレスを脱ぎ捨て、若い娘には持ち得ない妖しい色香を漂わせる白磁の肌と豊満な肉体を夫以外の男の前に曝け出した貴婦人は、
眼前に突きつけられたものを見て言葉を失った。
まるで十代の若者のように逞しく反り返ったそれは、あまりにも巨大で、醜悪で、凶悪だった。
それは彼女が唯一知る男根である夫のそれを超越した逞しさを誇っていた。
しかも、大きさだけが尋常を超えているのではない。
嫌らしく黒光りする肌は、その所々にイボのようなものがあり、幹の形自体奇妙に捻じ曲がり、歪み、歪に膨らんでいた。
「どうです?魔法強化を施した逸品です。彼の貧相なモノとは随分と趣が異なるでしょう?」
痩せ型の身体にそぐわぬ人外の男根を突き出し、魔術師は笑った。
「ほら、貴方の肌を見ただけでこんなにも昂ぶっていますよ」
「う、うぅ……」
「さあ、男を知り、男に躾けられた貴方には、どうすればよいかわかるでしょう?
 いつも貴方が彼にしてあげているように私にもしてください。ほら、ほら」
羞恥と嫌悪の涙を零しながら、貴婦人は眼前に突き出されたおぞましい男根に繊手を伸ばした。
清潔な手を汚物に触れさせるような屈辱感と共に、
その興奮のあまり触れてもいない関わらず先走りの露を滴らせる醜悪な男根に、
それでも優しい手つきで手を添える。
最愛の夫にしているのと全く同じ奉仕を他の男に対して強いられる屈辱に震えながら、
その細い指を男根に絡ませ、緩く扱き上げる。
「違うでしょう?貴方は彼のモノに口と舌で奉仕していたはずです。それをやってください。
 いいですか、私は水晶球を通して全部見ていたんですよ。嘘や誤魔化しは通用しません」
嫌らしい笑みを浮かべて、魔術師は貴婦人のささやかな抵抗を無慈悲に叩き潰した。
「さあ、銜えてください?」
「う……わ、わかりました……うぅ……」
屈辱の涙を零す貴婦人は、先走りの露の臭気を漂わせる汚らわしい男根に顔を近づけていった。
満足げな表情でそれを見下ろす魔術師の視線を避けるように顔を伏せると、赤黒い先端に清楚な魅力を放つ唇を触れさせた。
全てを見通していた魔術師の男根に唇を当てて、夫にしているのと同じように奉仕をしていく。
最初に唇で先端を挟み込み、そのまま幹を滑らせて根元まで下りていき、再び上っていく。
それを何度か繰り返した後、一旦は唇を離し、
今度は舌を突き出して先端を丹念に舐め回し、舌を絡み付けるようにして根元まで下りていく。
今度は唇の時のように上っていくことはなく、根元に到達するとその下に鎮座した重量感溢れる陰嚢に舌を這わせていく。
舌を伸ばして袋の中身を転がすように撫で回し、時には唇で啄ばむような技巧も見せる。
「ん、うぅ……流石は人妻。実に巧みです……」
股間に生じるむず痒い快楽に腰の辺りを震わせて、魔術師は満足そうに貴婦人の髪を撫でる。
貴婦人はその言葉に何の反応も示さず、丹念に、しかし事務的に奉仕を続けていく。
唾液と先走りで濡れていない場所などはない、というほど徹底して男根を舐め清めた後、
貴婦人は大きく口を開け、一瞬躊躇った後に凶悪な男根を口内に導き入れた。
あまりの巨大さのため、根元までは銜えることができず、半ばまでを納めるのが限界ではあったが、
魔術師はそのことを不満に思う様子は見せなかった。
「ああ、貴方が、聖女と呼ばれた貴方が私のモノを銜えている……夢のようです……」
貴婦人の頭に手をかけて固定しながら、魔術師は快楽に喘いでいる。
貴婦人は一刻も早く終わって欲しいという表情を浮かべ、技巧の限りを尽くして男根を責め立てた。
奥に隠された全てを吸い出そうと言うかのような凄まじい吸引に加えて、舌がまるで蛞蝓のように
絡みついてくる。しかもそれに合わせて顔を前後させ、唇を使って幹を扱き立ててもいる。
長く耐えられる男などはいるはずもない。事実、彼女の夫は口内に含んですぐに果ててしまうことがしばしばだ。
それであるのに、この魔術師は快楽に喘ぎはするものの、一向に果てる気配を見せなかった。

「ああ、いい、いいですよ、そう、もっと強く、うう、そうです……」
遂には空いている手を重量感に満ちた陰嚢に回し、優しく揉み解すような愛撫を加えたが、やはり一向に果てる気配を見せない。
口内に満ちる男根の味に吐き気すら覚えながら、貴婦人は懸命に愛撫を続けた。
「あっ、うっぅ、出ますよぉ……!」
「うむぅぅ、ぅっ……!」
夫のそれの十倍近い時間が経過して、ようやく魔術師は快楽の絶頂に達した。
腰を痙攣させながら突き出し、両手を突いて固定した貴婦人の喉奥に男根を押し入れる。
貴婦人は先端と、そこから吐き出された彼女の夫のそれよりも遥かに粘度の高い精の迸りに、くぐもった悲鳴を上げたが、
魔術師は無情にも夫の数倍もの量の精を注ぎ込んだ。
「はぁ、流石ですね……よかったですよ。どうです、私の子種は美味しかったですか?」
「うっ、えぉっ、えぅ……」
からかうような魔術師の言葉は、苦しげに咳き込み、口内に残る白濁した汚液を吐き出すのに必死の貴婦人には届いていないようだった。
貴婦人は一切の反応を示さず、咳き込み続けている。
「奥方、これで口をすすいでくださって結構ですよ。
 ああ、ただし、吐き出しては駄目ですよ。私の子種を一滴残らず飲み干していただきたいのです」
どこからともなく取り出されて差し出された水に、貴婦人は果たしてそれを飲んでよいものか、
やや躊躇いを覚えたが、口内を覆う不快感を拭い去りたい衝動には逆らえず、それを受け取った。
一息に呷り、口内を隅々まですすぎ、夫以外の男の子種を飲み干す嫌悪感を堪えてそれを飲み干す。
「……飲みましたね?」
魔術師は悪魔の笑みを浮かべて貴婦人を眺めた。
「え……ええ、飲みましたわ……まさか、何か混ぜたのですか!?」
「ええ。サキュバスの愛液から作った秘薬を少々ね」
表情を強張らせた貴婦人は慌ててラツモフィスを詠唱しようとしたが、
やはりそれを先読みしていた魔術師によって印組みを妨害され、更にはベッドの上に押し倒されて組み敷かれてしまった。
「い、嫌っ、やはり、やはりおやめになってください……!」
「何を仰いますか。ここまできて、やめられるはずがないでしょう?」
死に物狂いで抵抗する貴婦人を巧みな体重移動で押さえつけると、
魔術師はその抵抗する動きによって縦横無尽に暴れ回る左右の豊乳に鷲掴みにして揉みしだき、
その深い谷間に顔を埋めて舌を暴れさせた。
「あっ、い、嫌ぁっ、やっ、あぁんっ……うっ、あぁっ、な、何でっ、ひぁっ!」
魔術師が胸肉を揉み潰し、やや色素の沈着が見られる乳首に歯を立て、
刺激を加えるたびに、貴婦人の身体は震えながら仰け反り、嫌悪する心は裏腹に快楽の炎が滾っていった。
「いい薬でしょう?どれほど慎み深いご婦人も、場末の娼婦のように恥も外聞もなく悶え狂うようになるのです。
 高かったのですから、やはり元を取らねばなりませんね。 せいぜい、いい声で鳴いてくださいね、奥方」
「あっ、いひぃっ、嫌ぁっ……そこっ、駄目っ……駄目、やめてぇ……!」
魔術師は快楽に悶える女体の様々な場所に舌と手を這わせていき、
男の欲情を刺激する熟れた身体の最も秘められて在るべき場所にそれらが到達した。
その時、息も絶え絶えといった声音で貴婦人が哀願したが、
魔術師はそれを一顧だにせず脚を開かせ、むしろ見せ付けるようにしてゆっくりとそのやや深い茂みとそれに守られた秘所に顔を埋めた。
「はは、これは凄い。洪水状態ですね。口では嫌がっておられたのに、淫らなお方です」
薬を使ったことを棚に上げたようなことを言いながら、
魔術師はまるで猫がミルクを舐め取るような音を立てて湧き出る蜜を執拗に舐め取り、啜り上げた。
羞恥と快楽の喘ぎ声を上げていた貴婦人だが、
魔術師の執拗な責めが茂みに潜んだまさに豆粒といった風情に充血した陰核にまで及んだ途端、
耐えかねたように背筋を反らして絶叫し、埋められた魔術師の顔に目掛けて大量の愛液を噴き出した。
「おやおや、本当に淫らなお方だ。潮まで吹くとはね」
すっかり脱力しきって両手両脚を投げ出し、火照った身体を時折震わせて快楽の余韻に浸るだけとなった貴婦人の肢体を眺め、
魔術師は欲情に満ちた笑みを浮かべた。
「さて、そろそろこれが欲しくなった頃でしょう。いきますよ」
だらしなく開かれた両脚の間に身体を割り込ませ、魔術師は人外の凶悪さを備えた男根をしとどに濡れた秘所に宛がった。
「あ……ぁ……そのような……だ、め……あぁ……」
貴婦人は力の入らない身体を右に左に捩って逃れようとするも、
両腿を捕まえられてしまっているため、果たせなかった。
魔術師はしばらくの間、嬲るようにして男根を擦り付けていたが、逃れようとする貴婦人の焦燥を充分に堪能したのか、
その巨大な男根を既婚者であるにも関わらず硬く閉じた秘所に捻じ込み始めた。
「ああ、あぁぁ……駄目、駄目ですぅ……あぁ……」
貴婦人は両腕を顔の前で交差するようにして目を覆い、啜り泣くような声を漏らした。
「何が駄目だと言うのですか。ほら、貴方のここはこんなにも喜んでいますよ?」
「あっ、お、おっき、ぁぁっ、な、ぁっ、何、こ、れぇ……!」
イボのような突起に覆われ、その形状自体が奇怪に捻じ曲がった人外の男根が内部を掻き分け、
押し分け、貫き、満たしていくおぞましいほどの快楽に、貴婦人は涙を流して全身を震わせた。
「ああ、これだ、ずっと、こうしたかったのです!いい、いいですよ、貴方の中は……!」
最早、快楽の波濤の前に理性が消し飛びかかっている貴婦人を押さえつけた魔術師は、
これまでの超絶的な技巧はどこへやら、まるで初めて女を知った若者のような我武者羅さで熟れた女体に腰を叩きつけた。
「あっ、嫌っ、あぁっ、ひぃぃぃっ、こんなぁっ、こんなのってぇ……!」
甘い響きすら漂う形ばかりの拒絶を口にする貴婦人は、力の入らない手足に力を込めて懸命に持ち上げた。
そのまま抵抗するかと思いきや、意外なことにそのまま魔術師の身体を抱き締めるように、
その手足を魔術師の背中と腰に絡めつけたのだった。
「あっ、いぃっ、もっとっ、もっと強くしてぇっ、あぁっ、いいのぉっ!」
「ふふふ、やっと素直になってくれましたね。どうです?私と彼のはどちらがいいですか?」
遂に理性を決壊させた貴婦人が浅ましく快楽を貪り、悶える様子を楽しげに眺めながら、魔術師はその耳元に囁いた。
「あっ、あっ、あんっ、あんなっ、ものよりっ、貴方の、方がっ、万倍も、っ、い、いいですぅっ……!」
既に彼女の心に夫への想いなど残されてはおらず、
代わってそこにはただ目の前の快楽を貪りたいという淫らな欲望ばかりがあるのみだった。
敬虔な尼僧は悪魔のような魔術師の手によって堕落したのだ。
「うっ、くっ、出しますよ、子種を、一杯注いであげますよ!」
「あぁっ、来てっ、来てぇっ、一杯注いでくださひぃぃぃ!」
魔術師が腰を一層深く沈めておぞましい快楽を生み出す男根を埋めると、
それに応えて貴婦人も腰を突き出し、手足を絡め、より深く、最奥の奥底にまで導くように魔術師の腰を引き寄せた。
「うっ、で、出ます……!」
「あぁぁぁっ、熱いぃぃっ、あの人っ、のっ、なんかよりもっ、あぁぁっ、凄いっ、凄いぃぃぃ……!」
おぞましい男根がこの上更に膨張して秘肉を押し広げ、胎内に灼熱した子種を注ぎ込む快感に、
聖女とまで呼ばれた慎ましやかな女は、浅ましい娼婦のような叫びを上げて絶頂に達した。
絶頂に達しながらもなおも男根を締め付けて精を搾り取ろうとするその動きに、
魔術師も堪らず連続して達し、達しながら突き上げ、両者共に際限のない絶頂の連鎖へと互いを高め合っていった。


           *           *           *

「はぁっ、はぁっ、いい、いいですわぁ、あれほど出したのに、まだこんなに硬い……」
最初に手を触れた時とは一転、貴婦人は恍惚とした表情を浮かべて凶悪な男根に舌を這わせている。
手の方は愛しげに、まるで宝物を扱うような手つきで男根と陰嚢とを撫で回している。
「貴方が相手ですから、いくらでも子種を吐き出す用意ができていますよ」
熟練した舌と指が生み出す快楽のあまり、身震いしながら魔術師が応じる。
「ええ、何度でも……私の身体でよければいくらでもお使いください……」
「無論ですよ。まだまだ注ぎ足りません。子供を作るというのは一朝一夕ではいかないものですからね」
そう言いながら、魔術師は十回近くも子種を注ぎ込んだ肉壷に手を当て、再びマカニトの呪文を詠唱した。
不快な波動が再び貴婦人の下腹部を襲った。
「あっん、何を、なさるのですか?」
実に美味そうに男根を銜え込んでいた貴婦人が、純粋な疑念の眼差しを向ける。
「ええ。受精卵をマカニトで殺したのですよ。子供ができてしまっては注ぎ込めなくなってしまいますから」
本末転倒はまさにこのことであるが、貴婦人はその論理の矛盾を指摘するようなことはしなかった。
それどころか、満面に淫蕩な笑みを浮かべて頷いたのである。
「はい……子供はもっと後でよろしいですわよね、『あ・な・た』」
既に貴婦人の心には遠い異郷の地に旅立った夫など住んではいなかった。
「ああ、その通りだとも、『お前』。さあ、今度は『お前』が上になりなさい」
魔術師の方もそれに気づき、仰向けに横たわると、満面の笑みを浮かべて貴婦人に告げた。
「わかりましたわ、『貴方』」
魔術師の腰を跨ぎ、そそり立った剛直を恍惚とした表情で秘所に宛がった貴婦人は、
静かに、そして貪欲にそのおぞましい肉塊を胎内に呑み込んでいった。

           *           *           *

一年後、見事に敵を討ち果たして帰還した君主を待っていたものは、
最愛の妻と最高の友の裏切りだった。
彼は妻によって武器を奪われた挙句にモンティノをかけられ、
完全に戦う力をなくしたところに魔術師が満身の力を込めて放ったマハマンを受け、
滾る溶岩の底にその身を沈められてその悲劇的な生涯を閉じた。
その後、君主を裏切った魔術師とその妻は、
魔術師の強大な呪法によって不老不死を手に入れ、
今もその寝室において永遠の蜜月を過ごし続けているのだという。