陰核へ、粘質の怪物が触れた。
たったそれだけで、小さな、しかし継続的な責めにより昂っていた私の身体は深い悦楽を得る。
腰が跳ね上がる。水面が乱れてさざ波が体をくすぐる。
波は貯水槽の淵で幾重にも反射して繰り返され、ただその程度のものですら心地いい。
こちらの反応を受けてかは判らぬが、スライムの動きは激しさを増す。
敏感な部位に直に絡みついた部分にも当然その動きは伝わる。
徐々に強くなるそれは甘美で、充足した何かが背筋を過ぎ、手足の指先までもにじむように侵食する。
突然、陰核を弾いて、スライムが跳ねた。それまでで最も強い感覚が、身体を溶かす。
突き刺すような感覚が通り抜け、力など入らぬと思っていた体が、大きく仰け反る。
布を引き裂く音を聴きながら、私は短い悲鳴を漏らして達した。

元より朽ちかけていた意志は、この時ほぼ崩されていたと判断していいだろう。
これまで身体を這いずり回るのみで、危害らしいものは加えられてはいないのだ。
私はまどろみの中、粘質的な音を立てて愉悦をくれるスライムに、むしろ愛着のようなものを覚えていた。
胸から腰までをくまなく覆うほどに広がったスライムは、先ほどの激しさも無く、体を波打たせている。
長く嬲るうちに私の秘孔を心得たのか――無論、それほどの知性が有るとは思えぬが――スライムは私に苦痛を与える事無く、静かに蠢いている。
なぶるという言葉の相応しからぬそれは、正に愛撫であった。
スライムを通して透けて見える我が胸は押し潰され、へし上げられて元々それなりにあるものが強調されるように卑猥に歪む。
その眺めは女の目からしても心を昂ぶらせるものでありながらも非現実的で、とても己を包む快美の源とは思えぬものだ。

淫蕩に霞む中、気が付けば、身体を嘗め回すスライムがひとつ増えている。
上体を包むものと下半身を刺激するものとの動きが、明らかに独立している。
どこから嗅ぎつけたものか、あるいはこの個体が分裂したものか、その程度の判断も億劫に感じるほどに私の精神は萎えていたようだ。
ある種の規則性も有ったそれまでの刺激とは違う、予測できぬ動きを追い切れず、
例え愛撫する強さなどは変わらずとも、新鮮な喜びとして感じられた。

下に取り憑いたスライムは時折狭間へと流れ込み、弛みの極みたる内部を甘くなぞりながら、
何を気に入ったものか、幾度となく隠核に噛みついてくる。
上は上で、薄皮を剥ぐかのようにゆるりとした動きで、
特にどこということもなく、身体の凝りを解してくれるかと思うほどに優しく絡みつくのだ。
強弱の刺激は留まることなく我が身を振るわせ、確実に、確実に、心を蝕む。

 
 一度滅びを思うた身だ、例えどうなろうと、構わないだろう?