「じゃあ始めとくれ」
侍さんは僕に組み敷かれているというよりは、仰向けになって僕を抱きしめているような状態のまま、
僕の頬を大きくて柔らかい掌で撫でて促した。
しかし、始めろと言われてもどうすればいいのかわからない。
官能小説などでは、まずキスを楽しみ、続いて相手が快感に耐えられなくなって懇願してくるまで全身をねっとりと愛撫し、
大きな陰茎をゆっくりと押し込んでいき、最後は何も考えられなくなるくらいに 巧みで激しい腰使いで相手を翻弄して、
相手が絶頂に達すると同時にこちらも達する、というような感じだが、僕には無理だ。
キスに関しては翻弄されたのは僕だったし、
どこをどうやってどの程度愛撫すれば気持ちいいのかなどということはやったことがないからわからないし、
陰茎にしても、本当のところは知らないが、たぶん僕のはそれほど大きい方ではなく、
また、童貞の僕が女の人を喜ばせられるような腰使いをマスターしている道理がない。
「やり方がわからないのかい?」
「え、えと……」
中途半端に上体を起こしたはいいが、そこから先にすることがわからずに空中で手を遊ばせていたら、
侍さんが下から手を伸ばして僕の頬を撫でながら、優しげな微笑を浮かべた。
「あの……はい……」
「そうかい」
侍さんは笑ったが、決して不愉快な笑みではなかった。馬鹿にしているような色はなく、
とても優しい、まるで姉が弟に、母が子に向けるような温かい笑みだったのだ。
「それじゃあね……ん、女抱く時にはね、いきなり突っ込むんじゃ駄目だよ。
 そんなんじゃ、折角燃えてた火が消えちまう。少しずつ少しずつ、焚き火をやるみたいに火起こししてやるんだ。
 そうさね……まずはおっぱいでも弄って貰おうかね」
「えっ……」
「揉んでもいいし、舐めてもいいし、もちろん吸ってもいいよ。さ、やってご覧」
そう言って笑うと、侍さんは、小さな西瓜のように豊満で形のいい胸を、
まるで差し出すかのように僕の顔へと突きつけてきた。
ぷくりと膨らんだ淡い桜色の乳首やその周りを慎ましやかに彩る乳輪、とても深い上に隙間がないため
底が見通せない谷間、見るだけで圧倒される質量に、僕は生唾を飲んだ。
「じゃ、じゃあ、触り、ます、ね」
だが見ているだけでは、僕はともかく侍さんの方は退屈で仕方がないだろう。
僕は意を決し、今までに一度も触れたことのない未知の肉へと恐る恐る手を伸ばした。
「うわぁ……」
指先が触れた。最初の感想は「熱い」だった。桜色に火照った身体はとても熱く、それは胸も例外ではなかった。
続いての感想は「柔らかい」だった。反射的に指を引きたくなるのを堪えて何度かつついてみ、
最初に触れた時点では指を押し返すような弾力に富んでいたが、更に指を進めると蕩けるような柔らかさに迎えられた。
「ん……あたしのおっぱいはどうだい……ちょっと硬すぎるかい?」
「そんなことないです!」
優しげな笑みを浮かべつつもどこか不安げな侍さんの顔を見て何だかいたたまれなくなり、僕は思わず大きな声を出してしまった。
感情的になってしまった自分に僕自身が驚いたが、いきなりの大声に驚いているのは侍さんも同じだった。
目を瞬かせている侍さんに構わず、僕は侍さんの胸がいかに素晴らしいかを述べ始めた。
「柔らかいです。最初はとても弾力があるのに、ずっと触っていると途端に柔らかくなって……
 それに形や色も、他の人のは知らないですけど綺麗だと思いますし……
 その、とても素晴らしい……お、おっぱいだと思います……」
最後の部分になると次第に我に返り始めていたので、恥ずかしさのあまりしどろもどろだったが、
呆気に取られたような侍さんの表情を見るに、言いたかったことはきちんと通じているようだ。
「そ、そうかい……嬉しいこと言ってくれるねえ」
「わっ……!」
嬉しそうに笑う侍さんにまた抱きしめられた。
今度は娼館の前でやられた時と同じく、僕が顔を胸に埋めるような体勢だった。
弾力と柔らかさを併せ持った大きな胸に顔を押し付けられ、谷間に顔を挟まれてしまった。
脱出しようにも背中に力強い腕が回され、腰から脚にかけてを長い脚で捕まえられてしまっているせいでどうにもならないし、
そもそも立ち上る女の人の香りや柔らかく吸い付いてくるような肌の感触、全身を包み込む熱の心地よさによって、
この状態から逃げようなどという気持ちは全く湧いてこない。
僕は半ば恍惚としてその魅惑の抱擁を受け続けた。
「ん、丁度いいから、そのままおっぱい弄っとくれ」
前述の感覚や後頭部から腰にかけてを撫で回す手の心地よさに酔いしれていると、楽しそうな侍さんの声が聞こえた。
霞がかかった頭で言葉の意味を理解するが早いか、僕は顔を半ば覆うようにして目の前にある豊かな胸に手を伸ばした。
掌全体を使って触れると、その心地よさは指先だけの時とは比較にもならなかった。掌を通して伝わる弾力や熱、
鼓動や柔らかさは、同時に僕をも高めてくれた。

「ぅ、ん……」
ほとんど無意識の内に手を動かしていたらしく、気づくと侍さんが悩ましげな吐息を漏らしていた。
恐る恐る表情を窺ってみると、侍さんは目を細めて安らいだ顔をしている。
よかった。失敗はしていないみたいだ。
僕は侍さんの反応に自信をつけ、手の動きを少しずつ大胆で激しいものへと変えていった。
最初は掌全体で撫でさするように、
次に掌を僅かに開閉してゆったりと揉むように、
最終的にはパン生地を捏ねるように、
僕は侍さんの、豊満ながらもしっかりと引き締まった胸を弄り回した。
「はぁ……なかなか上手だねえ……いいよ、とってもいいよ」
「は、はい!」
侍さんの色っぽい声を聞いて僕が感じたのは喜びだった。
僕がこのとても立派な女の人を喜ばせているという事実が嬉しくて堪らない。
僕は喜び勇んで侍さんの胸を弄り続けた。
そうする内に、僕はあることに気づいた。
胸の上を這い回る手が時たま乳首に触れてしまうことがあったのだが、そのたびに侍さんは微かな声を上げるのだ。
これは要するに、感じている、ということなのか。
僕は侍さんの反応を探るため、慎重な手つきでぷくりと尖った乳首に触れた。
「ん……乳首、もっと触っとくれ……」
心地よさげな声で言われて、僕は推測が当たっていたことを知った。
ただし、そのことを喜びつつも決して手は止めない。
ここまでの経験で、何となく手を休めずに責め続ける方がいいような気がしたからだ。
指先でつつき、指の腹で擦り、押し潰し、摘んで引っ張り、揉み、擦りと、僕は指先でできる知る限りの愛撫を加えた。
僕が何かをするたびに、侍さんの身体が小刻みに震える。僕が、この僕が侍さんを感じさせているのだ。
「本当、上手、だねえ……本当に童貞かい…?」
僕を抱きしめる手足に込める力を強めつつ、侍さんが悩ましげな吐息と共に言葉を吐き出す。
「き、気持ちいいですか?」
その声にあまりにも色気が含まれていたので、思わず訊いてしまった。
「ん……生意気」
侍さんは口ではそう言っているが、目はとても優しかった。

「でもね……いいよ、凄く……そ、そう、そうやって……舐めたり、吸ったりはしてくれないのかい……?」
「えっ……は、はい……!」
もう躊躇うような僕ではない。
言われてすぐに僕は、手の動きをそのままに、すっかり膨らんだ乳首を唇で軽く啄ばんでみた。
侍さんを感じさせているという認識は、僕の人間性に変化をもたらした。
少なくとも女の人の身体に触れることへの恐れは僕の中から消えた。
変わって生まれたのが、女の人に触れたいという欲求だった。
「ぅ、そうだよ、上手、上手……次は、どうしてくれるんだい」
何度もそうやって、悪戯をするように啄ばんでいると、震える声で息を吐き出しながら侍さんが僕の頭を撫でた。
そろそろ頃合かと思って啄ばむのをやめ、唇で乳首を挟んで固定し、舌先で敏感そうな先端を舐め始める。
唾液に濡れた乳首は甘く薫り、口内に甘美な味わいを生じさせた。
舐めるだけでは気が済まず、試しに啄ばんだまま引っ張ってみると、侍さんの身体が微かに反り返った。
そのまま今度は吸ってみると、押し殺した喘ぎ声と共に後頭部を押さえつけられ、胸を強く押し付けられた。
僕の顔の形に合わせて変形した胸の質量すらも楽しみつつ、僕は侍さんの乳首を味わった。
「っ……そ、そうそう、上手じゃないか……もっと激しくしてもいいんだよ……」
声を上げそうになるのを必死に堪えているような様子の侍さんに、更に悪戯心が刺激された。
僕は唇で挟んでいた乳首を一旦解放してから、今度は細心の注意を払って前歯で挟み込み、少しずつ力を込めていった。
「あっ……くぅ……そ、そんな技を使うのかい…っ…エロ小説の……ん…読みすぎじゃ……ないかい……!」
丁度、摘んだ時に最も反応が激しかった時の強さに合わせて甘噛みしてみると、反応は劇的だった。
「んぷ……」
歯を立てるたびに力強い腕で抱きしめられ、胸を押し付けられ、ふと気づけば乳首だけでなく
胸全体を頬張っているような状態にまでなっていた。口内に押し込まれた胸の弾力と柔らかさを
半ば食べるようにして味わい、これ以上は入らないというほどまでに吸い込んでは吐き出し、
また吸い込みというようなことを繰り返していく。

「あっ……はぁ……も、もう、弄るのは、いいさね……」
それは唐突な出来事だった。
「んぁっ!」
両側の胸を代わる代わる味わっていた時のことだった。
「へぇ……可愛い……顔してるのに……こっちの方……は立派…じゃない…かい」
僕の背中に回されていた手が股間に差し入れられて、そのまま陰茎を握られてしまったのだ。
ただ握られているだけだというのに、痺れるような感覚が下腹部全体に生まれた。
「硬いし、熱いし、大きさも……まずまずさね。それに…しっかり剥けてる。いいチンポさね」
そう言いつつ、侍さんは大きな掌で陰茎を握り、「扱く」という動作の一歩手前くらいの強さで撫で回してくる。
僕自身が流す先走りが潤滑液になっているせいで、その快感には凄まじいものがあった。
「ふあ、あ、あぁ……!」
途端に腰砕けになるような快感が生じて、つい自分でも抑えきれない声が出てしまう。
今度は僕が侍さんにしがみつく番だった。
侍さんの豊かな胸の深い谷間に顔を埋めるようにしてしがみつき、侍さんの手に股間を押しつけるように突き出す。
こんな調子で刺激されたら、今すぐに射精してしまってもおかしくはなかった。
「ふ、ふ……入れる前に一発手で抜いてやろうと思ったけど、気が変わったよ」
そう言って笑うと、侍さんは僕の陰茎から手を離してしまった。
それは丁度、僕が絶頂に達しようかという瞬間のことだった。
やり場のない放出寸前の熱を股間に抱えて、僕は情けない声を上げてしまった。
「え、そ、そんなぁ……」
侍さんの引き締まった腹に陰茎を擦り付けて、続きを懇願する。
「こらこら、早合点はいけないよ。そらっ」
「うわぁっ!」
あまりにも鮮やかな前衛職の体捌きによって上下が逆転してしまった。
これで侍さんが僕に乗っているような体勢になった。侍さんは僕よりも大柄なので、まさに圧し掛かられているという感じだ。
「いいことしてやるからね、じっとしてるんだよ」
「んぅ……ぁ…うひぁ……」
侍さんは僕に唇を触れ合わせるだけのキスをすると少しずつ身体をずらしていき、頬、首筋、胸元へと
唇と舌による愛撫を加えてきた。
柔らかい唇と肉厚の舌が肌を撫でるたびに、その部分に痺れにも似た快感が走る。
「ふふ……さっきも言ったけど、あんたのは立派だね」
そして少しずつ身体をずらしていった結果、大の字になった僕の股間に侍さんの顔がくるような体勢になってしまった。
「んふぁ…ぁ…」
寄せられた唇から漏れる熱い吐息がもう爆発寸前の陰茎に浴びせられ、腰の辺りに寒気のような快感が走る。
僕の陰茎に頬ずりができるくらいの所まで顔を寄せた侍さんは、上目遣いに僕を見て笑った。
「あんた、こういうのは知ってるかい?」
「うひゃあ!」
無造作に根元から先端までを熱い肉厚の舌で舐め上げられ、僕は悲鳴のような声を上げてしまった。
「どうだい、いいかい?」
「うあぁ、は、はぃぃ……!」
先端を重点的に舐められると同時に陰嚢をやんわりと揉まれ、
僕は全身の神経が股間に集中してでもいるかのような凶悪な感覚に全身を貫かれた。
陰嚢の付け根辺りから熱いものが込み上げるような感覚を覚えた。
まずい。出る。
「あっ、あっ、も、駄目、です、あっ……あっ!?」
「駄目駄目。まだ出しちゃ駄目だよ。ここからが楽しいんだからね」
「あ、あ、そ、そんなぁぁぁぁ……!」
股間に灼熱感を覚えたのを見計らったかのように根元を握り締められ、堪らず僕は悲鳴を上げた。
行き場を失った灼熱が出口を求めて暴れているような痛みと切なさには、とてもではないが耐えられない。
それなのに、侍さんは僕の欲望をまだ解放させてくれるつもりはないらしい。
「折角こんな牛みたいなおっぱいがついてるんだから、楽しまなきゃ損ってもんさね」
にかっと笑った侍さんは身を乗り出し、胸を強調するような姿勢を取った。
「挟んであげるよ」
「う、わ……これ……凄い……」
次の瞬間、僕の陰茎は侍さんの胸の谷間に吸い込まれていた。根元から先端までを熱い塊によって
満遍なく包み込まれ、その心地よい圧迫感と熱、そして何よりもまず、僕の陰茎が大きな胸に
埋没しているという視覚的効果によって、自慰では得られない情欲の滾りを覚えた。
ただ挟み込まれているだけでも射精してしまいそうだった。
「おーっと。駄目だってば。あたしに任せときな」
「うぅ……」
快楽を求めて無意識の内に腰が動いてしまったのだが、ほんの少し動いたくらいで押さえ込まれてしまった。
「じゃ、一発ヌいてあげようかね、と」
侍さんは絶頂寸前に留められるという地獄の快楽に悶える僕の様子を満足げに眺めると、
その大きな胸に左右から手を当てて圧迫し、上体を激しく上下させ始めた。
「あ、あ、す、凄いですぅ……包まれて…るのに…うぅ……擦られて……あぁっ……」
左右からの圧迫によって肉圧が高まった挙句、僕の陰茎が滴らせる先走りでぬめる滑らかな肌で
全方向から扱き立てられるという未知の快楽に、これまで散々に高められてきた僕が耐えられるはずもなかった。
「で、出ちゃいます……!うあぁっ…!」
「ん……出てるね。熱いし、粘っこい……」
肉の谷間に包まれたまま、僕は過去最高記録の快感と共に射精していた。
全方位を包み込まれるという、本当に挿入しているようにすら思える状態で、
僕は腰が抜け落ちるような快楽と共に侍さんの胸を汚していった。
「はぁ……はぁ……」
「どれ、終わったみたいだね、と」
十秒ほども続いた射精が収まると、それを見計らって侍さんが身体を離した。
精液と先走りで汚れた陰茎が谷間から力なく抜け落ち、そのまま情けなく下を向く。
陰茎の衰弱はそのまま僕の状態の説明も兼ねている。
僕も射精による倦怠感や虚脱感で、ほとんど動く気にもなれないような状態だった。
大の字になったままぼんやりと天井を見上げる。
「たくさん出したね。溜まってたのかい?」
微笑みつつ濡れた布で胸の白濁液を拭い取る侍さんにも、ろくに返事らしい返事ができない。
「やれやれ……もうへばっちまったのかい?まだ肝心の筆下ろしが済んでないってのに」
そうは言われても、本当に体力を使い果たしてしまったのだからどうしようもない。
迷宮に入ったこともない司教の体力など、はっきり言って道を歩いている一般人と変わらない。
エルフである僕の場合は特にそれが顕著で、本当に体力には縁がない。
こうして女の人と肌を合わせるという行為は肉体的にも精神的にも非常に疲れることで、
僕如きがその重圧にそう何度も耐えられるはずがないのだ。
「も……無理…です…すみませ、ん……」
だから息も絶え絶えに謝ることしかできない。
「んー、仕方ないねえ。これでも使うかね」
「何ですか……それ…?」
侍さんは気を悪くした風もなく笑うと、袋から何かの小瓶を取り出した。
「ディオスポーションさね。いいかい、じっとしてるんだよ」
侍さんは器用に片手で蓋を開けると、中身を掌に塗りたくって僕の萎えきった陰茎に視線を向けた。
「も、もしかして……」
僕は侍さんが何をしようとしているのか、何となく推測がついてしまった。

「そういうことさね」
「うわっ……冷たい……!」
微かな粘性のあるのある冷たい薬液にまみれた手に握られて、僕は心臓が停まりそうな衝撃を受けた。
あまりの冷たさに、平常時はお世辞にも大きいとは言えない陰茎と陰嚢が縮み上がっていく。
「ちょっと我慢おし」
「あ、ひ……うぅ……」
冷たく濡れ光る、しかし物凄く優しい手によって、縮み上がった陰茎と陰嚢が揉み解されていく。
痺れるような快感とはまた一味違う、じんわりと温まっていくような感覚が下半身を包む。
「よしよし。ほら、これでまたできるだろう?」
数分ほどその冷たくて温かいマッサージが続き、
ふと気がつけば僕の股間は一週間ほど自慰を我慢した時のような凄まじい復活を遂げていた。
下半身が物凄く熱い。
ディオスポーションには精力剤としての使い方もあるらしい。世間は実に広いものだと思う。
「じゃ、いよいよ本番だよ。覚悟はいいかい?」
大の字になったままの僕に覆い被さり、侍さんが顔を覗き込んできた。
いよいよ童貞を捨てる時が来たのだ。
侍さんの身体に触れる前までの僕だったら緊張のあまり何も答えられなかったかもしれないし、
最終的には怖気づいて土壇場で逃げ出してしまっていたかもしれない。
しかし、今の僕は違う。もう僕は女の人とまともに口が利けないような子供ではない。
「……はい!」
僕ははっきりとした声でしっかりと頷いて見せた。
侍さんの笑みが深くなった。
「それじゃあ、あたしが教えてあげるからね。ここにあんたのが入ってくのをよく見ときなよ」
侍さんは大きく脚を開いて僕の身体を跨ぐようにしゃがむと、股間に手を添えて綺麗な女陰を開いてみせてくれた。
開かれたその神秘の領域からは透明な雫が滴っており、よく見れば両太腿も汗とは明らかに違うそれに濡れ光っていた。
「あ……濡れてる…?」
そこに満ちた愛液が僕の陰茎や下腹部に滴り落ちる感覚に、僕は思わず問いかけてしまった。
「そうさ。あんたが上手におっぱい弄ってきたり、あんたのチンポ舐めたりしたせいですっかり濡れちまったよ。
この責任はきっちり取って貰うからね」
侍さんは快活に笑いながら、僕の陰茎に手を添えて垂直に立たせた。
そのままゆっくりと腰を落としていき、開かれた女陰と僕の陰茎の先端が接触した。
僕は最も敏感な部分から伝わる温かく湿った感覚に、股間が更に熱くなるのを感じた。
「あっ……」
「お?また大きくなったみたいだね。あんた素質あるよ……じゃ、入れるからね……んぅ…!」
侍さんはゆっくりと焦らすような速度で腰を落とし始めた。
僕の欲望の塊が少しずつ狭い女陰を押し広げて埋没していく。
「あっ、熱い…うっ、あっ、す、吸い付いてくる……きつ、きついですぅ……!」
まだ亀頭だけしか入っていないというのに、先ほど胸でして貰った以上の気持ちよさだった。
愛液で潤った熱い内壁が、微かに蠢きながら締め上げ、吸い付いてくるのだ。
何度か出した今の状態でなければ、もうこの時点で絶頂に達することになっていたかもしれない。
「んっ、ん、硬くて熱くて、あんたのいいよ、とってもいい……!」
ねっとりと味わっているかのようにゆっくりと奥へ奥へと導かれていき、ようやく根元まで入って
僕の下腹部と侍さんの尻が密着した頃には、もう陰茎から駆け上ってくる雷撃のような快楽に身も心も虜にされていた。
万力のような力で、しかし不思議と痛みを感じさせずに、柔らかな内壁が根元から締め上げてくる。
「はふぅ……あたしが、動くから、あんたは、しっかりあたしに抱きついてな……」
身体を火照らせ、目を潤ませた侍さんが覆い被さってきた。再び圧し掛かられる格好となった僕は、
やはりその体格差から侍さんの胸に顔を埋めることになってしまった。
「は、はぃ、わ、わかりましたぁ……!」
濃密な女の人の香りに眩暈すら感じながら、僕は両手両足を使って侍さんにしがみついた。
ただし、僕も責められてばかりではない。
顔を埋めた先にある桜色の乳首や上気した肌を思う様舐め回し、吸い付き、甘噛みした。
「あっ、はぅん、あ、あんた、な、生意気な、こと、する、ねぇ……!」
鼻にかかった声で喘ぎながら、侍さんも豊満かつ引き締まった腰と尻を振りたくり始めた。
しっかりと抱き締め合っていたにも関わらず、その陰茎を身体から引き抜かれそうな動きによって、
僕の身体は右に左に振り回されてしまった。
「うっ、は、激しすぎ……です……あぁぁっ……うぅ……」
「し、仕方ないさね…と、停まらないんだからさぁぁっ……!」
腰が少し離れるだけでも魂が抜かれていくような快感が駆け巡るし、逆により深くに引き込まれただけでも
全身を包み込まれてでもいるかのような快感に満たされる。
根元まで銜え込まれた状態で右に左に腰を捻られただけでも、しっかりと絡み付いてくる内壁によって
信じられないほどの熱を伴う快感が生まれる。
「あっ、すご、凄いです……あっ、あぁぁっ、うぅぅっ……!」
ふと気づくと、僕も侍さんの動きに合わせて無意識の内に腰を突き出していた。
「ひぃっ、そこ、そこ弱いのぉっ…もっと、もっとぉぉっ!」
侍さんも感じてくれているようで、咽び泣くような嬌声を上げながら僕にしがみつき、
より一層腰の動きを激しくしてくる。
僕は押し付けられた胸を吸うことも忘れて我武者羅に腰を突き上げた。
童貞の僕がよくもこれだけ持続できたものだと思うくらいの時間を繋がったまま過ごし、
喉が痛くなるくらいに互いに嬌声を聞かせ合ったが、遂に終わりの時がきた。
即ち、僕の限界だ。
融けてしまっているのではないかとすら思える灼熱感が股間に生じ、
そうと認識した時には陰嚢から根元へ、根元から先端へと溶岩のような熱が駆け上り、解放されていた。
「あっ、も、駄目ですぅっ、出る、出ますぅぅぅっ……あぁぁっ!」
僕は激しく振りたくられる大きな尻に指を食い込ませて本能的にしがみつき、このまま溶け合ってしまいそうな
くらいに腰を密着させ、奥の奥まで届けとばかりに陰茎を突き込み、薬の効果か大量に作られた子種を注ぎ込んだ。
「あ、熱いのがっ、熱いのがぁぁ……!ひぃっ、凄い、凄いよぉ……熱いぃぃぃっ……!」
僕の第一波が女の人の聖域を汚すのに数秒遅れて、侍さんの中が痙攣でもするかのように震え、
次いでこれまでにないくらいの強さできつく締め上げてきた。それはまるで、一滴残らず搾り取ろうとでもいうように。
「あっ、あ、あぁぁぁ……」
「ひぁ、ん……くぁぁ……っ…!」
僕はぐったりともたれかかってくる侍さんの身体を力なく抱き締めたまま、下半身だけをしつこく律動させ続けていた。
力を失っていない陰茎が力尽きるまで出そうとしているのか、身体が勝手に動いてしまうのだ。
僕が出したものと侍さんが中で染み出させたものを潤滑液代わりに更に激しく突き上げていくが、
やはり一度達して敏感になっていたため、そう長くは持たない。
「あっ、また、また出ちゃいますぅ……うっ、ぁっ……!」
「ふぁぁ……また、出てるぅ……熱いぃ……」
腰をしっかり掴んで最奥に灼熱した欲望の白濁液を吐き出し、ようやく僕の下半身は満足したらしい。
ぐったりともたれかかってくる侍さんの体内に包まれながら、陰茎が力を失っていくのがわかった。

「……一杯、出たね……童貞卒業、おめでとう……気持ちよかったかい……?」
荒い息をつく侍さんが僕に覆い被さったまま、嬌声を上げすぎて喉を傷めてしまったのか耳元で囁くように言う。
僕も息も絶え絶えといった状態ながら、力を振り絞って答えた。
「もち、もちろん、です……こんな、素敵な、ことが、あるなんて、思いません、でした」
「そ、かい……嬉しい……あたし、も、とても、よかったよ……何せ、イっちゃった、からね……」
満足げに微笑んで吐息を漏らす侍さん。
しかし、虚脱感と倦怠感と満足感の中で、僅かに残っていた理性がとんでもないことに気づいた。
「あ、あ……」
「ん、どうか、したの、かい……?もしか、して、まだ、足りなかった、かい……?」
あまりのことに咄嗟に言葉が出てこない僕に侍さんが訝しげな視線を向けるが、答えられない。
そうだ。僕は中で出してしまったのだ。それも二回も。子供ができてしまったらどうしよう。
堕胎など駄目に決まっているし、しかし冒険者が子供を育てられるはずもない。
どうしようどうしようどうしよう。
「あ……子供のこと、心配してる、のかい?」
頭を抱えて七転八倒している内心を見透かしたように侍さんは笑った。
「えっ、あっ、その……はい……中で、出してしまいましたし……」
「何、言ってんのさ……あんた、あたしを、誰にでも股開く、淫売だと、思ってる、のかい?」
「そ、そんなことないですよ!」
侍さんはその対極に位置するような人だ。本人が言う通り、本当に貞淑な人だ。
とそこまで思い、そんな人が何で僕の初体験の相手になってくれたのかという疑念が生じた。
侍という職業に似合わず優しい人だから、僕を哀れんでのことなのだろうか。
それとも――いや、それは有り得ない。絶対に有り得ない。
「そう、さ。あたしは、相手は、ちゃんと選ぶよ……子供、産んでもいいと、思う男にしか、股なんて開きゃ、しないよ…」
「そ、それって……まさか」
「そ。あたし、あんたのこと、それくらいには、思ってるんだ……」
「な、何で……」
あまりにも予想外の展開に上手く舌が回らなかった。絶対に有り得ないと思っていた展開に頭がついていかなかった。
「あんた……んんっ」
軽く咳払いをして声の調子を整えて、侍さんは続けた。
「あたし達が迷宮に出発する時は、凄く心配そうな顔で見送ってくれたよね。
 あたし達が無事に帰ってきた時には凄く嬉しそうな顔で出迎えてくれたし、
 あたし達の冒険話を目を輝かせて聞いてくれたよね。
 それに……」
しみじみとした調子で語った侍さんはそこで言い淀み、照れ臭そうな顔で続けた。
「それに、この間あたしが死に掛けた時なんかは、呪文で傷を塞ぐまでずっと付き添っててくれたよね。
 それからしばらくは色々とあたしのこと、気遣ってくれたよね……何かね、それで参っちまったのよ、これが」
そういえばそんなこともあったが、仲間を気遣うのは当然のことだから、特に意識もしていなかった。
「よ、憎いね、この女殺し。末恐ろしいよ」
最後に侍さんはそう言って笑い、冗談に紛れさせようとしてくれたが、流石に無理があった。
「……大丈夫だよ……もし、できたらちゃんと産むし、あんたにゃ迷惑かけないから。
あたしのことは忘れちゃっていいからさ。気にしないどくれよ」
とても笑う余裕などない僕を気遣ってか、どこか痛々しい笑顔で侍さんは言った。
「で、でも、冒険者続けられないでしょ、それじゃ……」
そう言いながら、僕は自分が侍さんにどうして欲しいのか、侍さんをどうしたいのかがわからなかった。
堕胎は以ての外だし、だからといって無責任に産み育てろとも言えない。
「ああ、それなら大丈夫さね……あたし、冒険者やめることにしたのさ……この間死に掛けて、
 もうこんな怖い思いは懲り懲りだ、ってね。
 もう、みんなにも了解取ってあってさ、知らないのはあんただけさね。
 いつも通りのあんたと思い出作っときたかったし、できたらあんたの子供が欲しかったのさ
 だからもしできてたとしても大丈夫。
 それがあたしの願いさね。好きな男の子を産んで、平穏で退屈な人生送って年取って死ぬのがさ」
侍さんはいつも通りの快活な笑みを浮かべた。
冒険者をやめる。侍さんが。やめた冒険者は街を去るのが通例だ。ということはもう会えないということになる。
そう思った瞬間、僕は侍さんにどうして欲しいのか、侍さんをどうしたいのかを理解した。
「あのっ!」
「な、何だい、急に大きな声出して……」
戸惑う侍さんに構わず、僕は続けた。
「僕も……僕も貴方についていきます!ついていかせてください!」
「えっ……何だって……?」
僕は侍さんに一緒にいて欲しいのだ。侍さんと一緒にいたいのだ。
そしてそれは単なる義務感や責任感ではなく、もっと心の深い部分に根ざした想いなのだ。
いつも姉のように、母のように接してくれたこの優しい女の人を、僕はいつの間にか好きになっていたのだ。
今回のことは、僕自身すら気づかないほど深い部分に隠れた想いを引きずり出すきっかけになっただけなのだ。
「でも……あんたはまだ若いし……八つも年の差があるんだよ……?あたしなんてすぐにおばさんだよ?
 あんたが男盛りの頃には、あたしなんてもう盛りの過ぎた枯れ木なんだよ?……考え直しな」
一瞬嬉しそうな表情を浮かべたがすぐにそれを打ち消した侍さんは、僕を思い留まらせようと否定的な要素を並べ立ててきた。
「いいんです……僕は、僕は冒険者には向いてません。人生をやり直すには、むしろ若い方がいいんです。
 でも、それには必要なことが一つあるんです……それは、貴方が僕と一緒にいてくれることなんです」
この初体験は僕という人間を一回りも二回りも成長させてくれた。
以前の僕だったら、きっと侍さんに何も言えずに今日という一日だけの関係で終わってしまったことだろう。
だが、今の僕は違う。女の人にもきちんと話せるし、自分の意見や望みもはっきりと口に出せる。
「だから、僕と結婚してください。僕と一緒に暮らして、僕の子供を産んで、僕と一緒に育てて、僕と一緒に年を取ってください」
身体を重ねたまま、身体を繋げたまま、僕は侍さんのことをきつく抱き締めた。
抱き締めたというよりは抱きついたといった方が正しい体格差だったが、抱き締めたのだ。
「……本当に、あたしでいいのかい?」
いつになく真剣な表情の侍さん。答えはもちろんイエスに決まっている。
「貴方じゃなきゃ嫌です」
「責任とか、そういうのはいいんだよ、別に……」
「そんなのとは関係なく貴方が……好きなんです。愛してるんです」
「……でも、さ。年の差が……」
この人はまだ言うのか。本当は僕のことが嫌いなのではないだろうか。そんなことを考えてしまうくらいに僕は不安だった。
実は本心から断りたいのではないか、と怖くて仕方がない。
だから僕は、侍さんを僕に縛り付ける一言を告げた。
「年上なんですから、責任取ってくださいよ」
「せ、責任…?」
「そうです。僕を……その、惚れさせた責任です!」
「う……せ、責任……」
これは流石に言うのが恥ずかしかった。だが、侍さんも真っ赤になっているからよしとしよう。
「……わかったよ。でも、その代わり、あたしを捨てたら、村正にかけてあんたを真っ二つにしてやるからね!」
物騒な発言とは好対照な太陽のような笑顔を浮かべて、侍さんは僕をしっかりと抱き締めてくれた。
「大丈夫です。僕の方が八つも若いですから、順当に行けば僕は貴方よりも長生きします」
だから絶対に寂しい思いはさせません。僕は貴方が死ぬまで傍にいて、残りの一生を僕との思い出で一杯にしてあげます。

僕は首を伸ばして、侍さんに誓いのキスをした。