「止まれぃ。ここを通ることはならぬぞ」
俺の前に四本の腕を持った巨大な悪魔が出現し、立ちはだかる。
長年の迷宮暮らしのおかげですっかり怪物の類を見慣れた上に何度もここを通っている俺には、
今かかっているラツマピックがなかったとしてもそれがアークデビルと呼ばれる存在だとわかる。
「うぬ? 今日は一人ではないか。どうしたのだ?」
いつものように腕組みしながら現れたアークデビルは、今日はいきなり殴りかかっては来なかった。
鬼みたいな顔に訝しげな表情を浮かべて、一人でここまで歩いてきた俺を訝しげに見下ろしている。
何十回も顔を合わせていると人と悪魔の間にもちょっとした親しみが生まれるようで、
時々こうやって話しかけてくることがあるのだ。命のやり取りを通して生まれた友情という奴に
分類されるのだろうが、俺は強敵と書いて「とも」と読むような暑苦しい趣味はない。
まぁ、俺は悪の戒律を奉じているから、本当に退屈した時や貴重な情報が聞けそうな時以外は相手をしないが。
「どうした、早く答えぬか」
答えたくないので黙っていたら急かされた。悪魔には黙秘権という概念はないらしい。
本当のことを言えば、ダークロードの宝箱を開けたはいいが高圧電線を引き当ててしまって俺以外が全員灰になってしまったという、
まぁ、「しまった」が二つも重なってしまったということだ。
わざわざこちらまで来たのは、ダークロードの所から地上への転移地帯までが遠くて危険だったからだ。
不特定多数の相手に襲われ続ける転移地帯ルートよりも、
アークデビルとララ・ムームーさえ斃せばいいこちらのルートの方が割に合う賭けのように思えたからだった。
ヤカンやフェニックスで荒稼ぎして強くなりすぎたパーティが、調子に乗って唯一のスリルだとばかりに
危険な罠に挑んで火遊びをし、それに引っ掛かって受けた凄まじい被害の尻拭いに生き残りが奔走しているという、
初心者向けの教訓話にそのまま使えそうな話である。

もしこれで罠の解除に失敗したのが俺でさえなければ、俺はきっとアークデビルに面白おかしく話して聞かせたことだろう。
だが、俺が事の経緯を話してやるつもりがない以上、今回のアークデビルとの会話はここで終わりだ。
「鑑定屋の分際で生意気なんだよあのボケェ!」
「何の話だ!?」
九割以上の的中率を持つカルフォを外した挙句に「俺がリーダーなんだから俺の言う通りにしろ」とテレポーターの解除を
俺に命令してきやがった馬鹿司教への憎悪を思い出して気合を入れつつ、速攻でアークデビルをぶち殺すべく俺は跳んだ。
一応、灰を掻き分けて手に入れた特効薬が三つほどあるから即死や石化、麻痺といった状態にさえならなければ最低でも三回の攻撃には何とか耐えられるのだが、
この後にララ・ムームーが控えていることを考えれば長期戦にもつれ込んで余計な消耗をするのは避けたい。
一気に撲殺するべく首に脚を絡めて組みつき、振り払おうと暴れ回るアークデビルの攻撃を際どいところで回避しながら、
忍者としての修練の末に剣以上の凶器と化した両の拳を全力で打ち込み続けた。

「よっしゃ!」
三十秒も殴り続けただろうか。俺の拳は骨が見えるくらいに酷い状態になったが、アークデビルの頭も挽肉になっていた。
倒れる巨体に潰されないように飛び退きながら、俺は小さく歓声を上げた。俺は勝ったのだった。
「……って次はラクダ野郎がいたか……あー、手が痛ぇ」
だが、次の相手が控えていることを思い出し、その喜びも消える。
差し当たっては手の傷を治そうと思って袋から特効薬を取り出そうとしたのだが、痛みのせいではなく関節自体が壊れているせいで手が使えない。
仕方ないので口を使って特効薬を取り出し、岩を噛み砕けるほどに鍛え上げた顎の力を使って瓶の口を開ける。
「たかがあの程度でこんなになるたぁな……明日からフェニックス通いして鍛えるか」
傷口に沁みる特効薬に舌打ちしながら、不甲斐ない拳を鍛えることを誓う。

「さて、次はこいつなわけだが……」
俺の目の前には扉がある。アークデビルが守っていた扉の向こうには、メイルシュトローム最強の生物がいる。
しかし、躊躇う理由にはならない。ここまで来た以上、もうここを突破しなければ地上には戻れない。
腹を括るしかなかった。俺は扉を蹴破り、間髪入れずに室内に駆け込んだ。
「うらぁっ、ぶっ殺してやるから覚悟しやがれ!」
いつものように部屋の真ん中付近に不確定名称「ララ・ムームー」というラクダのような影が見えるのを確認した俺は、
可能な限りの大ダメージを与えるべく不意打ちの手刀を叩き込もうと肉薄し、驚きのあまり急停止した。
「なっ、何だ、お前っ、進化したのか!?」
俺と同じように驚愕の表情を浮かべて硬直していた不確定名称「奇妙な動物」は、何とも異様としか言い様がない存在だった。
今すぐ回れ右したい衝動に駆られたが、それでは何の解決にもならない。俺は何とかして声を絞り出した。
「……お、お前……ララ……ムームーだよ……な?」
恐る恐るその奇妙な存在に問いかける。頼むから何かの間違いだと言ってくれ。
「………うん」
そこにいたのは、一人というべきか一匹というべきか、それとも二体というべきかが微妙な生物だった。
いかにも慌てて着込みましたといった感じでトーガを纏ったラマとラクダの合いの子のような外観の生物、つまりララ・ムームーの背から、
小麦色の肌をした美少女の素っ裸の上半身が全く下の生物と調和した様子もなしに生えているのだ。
ララ・ムームーは実は人とラクダとラマのキメラの失敗作か何かだったのだろうか。
俺は何だか見てはいけないものを見てしまったような気まずい気分のまま、ララ・ムームーの背中に生えた少女と見つめ合った。
「……違うよ。私はキメラじゃないよ。魔法生物だけど」
背中から生えた少女が口を開く。声にはまだ幼さが残っている感じだが、実年齢を知る参考にはならない。
「えっとね、これはトーガ・ラマスーツって言うの。
 簡単に言うと着包みと鎧と拘束具を足して平均したみたいなもので、私の力を抑制する機能つき」
何やらもぞもぞと動いてララ・ムームーの抜け殻、いやトーガ・ラマスーツから這い出ようとしながら、無表情な少女は淡々と語る。
「私は人と会う時はいつもこれを着ていなければならない決まりなんだけど、君達しか来ないから普段は
 鬱陶しいから脱いでいるの。入口のところにいるアークデビルが時間を稼いでいる内に着ればいいから」
直立不動に保たれたトーガ・ラマスーツを脱ぎ捨てて地面に降り立ったララ・ムームーを見て、俺は息を呑んだ。
驚くべきことに、こいつは身に寸鉄一つ帯びていない完全な全裸だったのだ。引き締まった小麦色の尻が艶かしい。
しかし、俺に背を向けているララ・ムームーはそんなことを気にした様子も見せず、
トーガ・ラマスーツが着込むトーガの位置がずれているのを直しながら淡々と語り続けた。
「でも、今日はもう来ないと思って油断していたわ。まさかこんな時間に来るなんて……アークデビルの悲鳴がしたから
 跳ね起きてスーツを着ようとしたけど、結局間に合わなかったよ……ちゃんといつも通りの時間に来てよね」
「あ、いや、悪かったな……」
淡々と詰ってくるララ・ムームーに思わず謝ってしまったが、よく考えてみれば怪物の都合が悪い時に
部屋の中に突入するのは冒険者の心得みたいなものだから、謝る理由などない。
そう言い返してやろうとした瞬間、ララ・ムームーがこちらを向き、俺は言葉に詰まった。
「まぁ、いいけど。君とは顔なじみだから許してあげる。で、理由を知りたい?」
十四、五歳くらいの年頃のララ・ムームーが生意気なことを言いながら俺を見上げて問いかけてくるが、俺は答えられなかった。
ビューティのカツを喰らってだらしなく見惚れていた時のように、俺は少女の綺麗な裸に見惚れていたのだった。
頭頂部から爪先までに続く、理想に近いなだらかな曲線。
大人への過渡期特有の幼さと落ち着きが等配合されたような、「ララ・ムームーはエジプト人なんだぜ!」という
リック・ザ・ピックの法螺吹き野郎の言葉の意味がわかる、異国情緒溢れる整った顔。
少し小振りな感があることは否めないが漲る若さを感じさせる形のいい胸と、その先端を飾る桃色の乳首。
贅肉の欠片も見当たらず引き締まっている割に柔らかそうな腹。
筋肉と脂肪の割合とつき方が理想に近い感じの太腿とそこから伸びるすらりと長い脚。
その間に見える、ここだけ妙に幼い感じがする毛も生えていない綺麗な割れ目。
俺はそれらに魅了され、知らず知らずの内に欲望を滾らせていた。
膨らみきった逸物が、動きを妨げないように作られた忍者装束の前を凄まじい勢いで押し上げている。
この所グウィリオンやジプシー、ロイヤルレディなどの迷宮に住む女達とヤっていないせいで溜まって仕方がない。
幸いなことに今の俺には運さえよければララ・ムームーに一人で勝てる力がある。
折角の機会だから、ララ・ムームーから出てきた目の前のエジプト美少女で発散するか。
そう思ってじりじりと間合を詰めようとした瞬間、ララ・ムームーに機先を制されて俺は動けなかった。
「それはね、男の人が今の貴方みたいな状態になっちゃうからだよ。
 でも、凄いね。男の人のってこんなになるんだ。それとも、君のが大きいのかな?」
相変わらずの無表情の上に僅かばかりの好奇心を乗せて、ララ・ムームーがなかなか痛い所を突いてくる。
それならきちんとした服を着ろ、という反論が頭に浮かぶが、
行動を見透かされていたという事実に僅かばかり動揺していた俺は、咄嗟に言葉に詰まってしまう。
「……冗談だよ」
にこりともせず、ララ・ムームーは言いやがった。
俺は顔を顰めて床に唾を吐いた。一瞬でも動揺した自分が憎たらしくて仕方ない。
「……もしかして、面白くなかった?……ちぇ、ウケると思ったのに……」
俺の反応からウケなかったことに気づいたらしいララ・ムームーは、無表情を僅かに悔しげなものへと歪めて舌打ちした。
しかし、こんなギャグがウケると考えるとは、どうやら、ララ・ムームーのユーモアセンスはかなり腐っているらしい。
「本当はね、私を造った人の命令なの。最初に私からトーガ・ラマスーツを脱がせた人の物になりなさいって」
これはギャグで言っているのだろうか。
幾ら何でも、先ほどの笑えないギャグよりも真実味のないこれが本当の話ということはないだろうと俺は思う。
ララ・ムームーがにこりともせずに「……冗談だよ」と言うのを俺は待った。待ち続けた。
「あ、造った人のことを訊かれても困るよ。私、その人のことは記憶を消されているから」
だが、俺の沈黙をどう受け取ったのか、ララ・ムームーは俺が望んでいるのとは全く異なる答えを返してきた。
どうやら、これはギャグで言っているのではなかったらしい。
力に魅せられたソーンか、快楽主義者のマンフレッティか、はたまた聖人面したゲートキーパーか。
ざっと容疑者の名簿が脳内に出来上がるが、どうにも黒しかいないように思える。
「それで、そんなことを俺に教えてどうするつもりなんだよ。俺の物になるとでも言うつもりか?
 だったら一発と言わず、二発三発とヤらせてくれよ?」
これはもう話の流れからしてそういう流れだ。極上の異国美少女を抱けるとは願ってもない幸運だ。
嬉しくなったので、最近吹けるようになった口笛を吹いた。
「そうだけど違うよ」
しかし、ララ・ムームーの答えは要領を得ないものだった。そうだが違うとはどういうことなのか。
俺は目の前にぶら下げられたご馳走を持っていかれたような気分だった。苛々する。
「どっちなんだよ、はっきりしやがれ」
「ええとね、本当の条件はね、トーガ・ラマスーツを着た私を斃してスーツを剥ぎ取ることなの。
 力ずくでスーツを脱がせた人の物になるっていうのが、造った人の命令なわけ」
淡々としたララ・ムームーの語り口に微妙な変化を感じ、俺は冷たい汗が背筋を流れ落ちるのを感じた。
ララ・ムームーは構わずに続ける。
「だからね……私と戦って勝たないといけないの。そうしないと、私は貴方の物にならないし、ここからも出られないの」
その瞬間、俺は身震いした。
何の力も感じられなかった小柄な少女の裸身からこれまでに戦った誰よりも強い力が立ち上り、物理的な圧力すら伴って俺に吹き付けてきたのだった。
「トーガ・ラマスーツを着せられていたのは」
ララ・ムームーと名乗った少女は例の如くの無表情で俺を見ながら、淡々と語った。
「そうしないと誰も私に勝てないから」
ララ・ムームーと呼ばれるメイルシュトローム最強の生物は、気圧されて立ち竦む俺に向かってゆっくりと迫ってきた。
ヤバイ。勝てる気がしない。誰だ、一人でも勝てるとか言いやがったのは。
援軍にホークウインド卿を寄越してくれ、大至急。
「頑張ってね」
ゆっくりと、だが全くの無駄のない熟練の戦士や忍者のような足運びだった。
もしかしたら、メイルシュトロームをうろつく中では一番強い忍者と言われている俺よりも足運び限定では上かもしれない。
「ぐっ……!」
掴んだだけでも折れてしまいそうな細腕から繰り出された超高速の引っ掻き攻撃が左腕を掠った瞬間、
有り得ないことに僅かに引っ掛かった指先が忍者装束ごと肉をごっそり削っていきやがった。
幸い動かないほどの怪我ではないから特効薬はまだ温存できるが、痛いことには変わりがない。
「……真面目にやらないと死んじゃうよ?」
それだけの攻撃を繰り出してなお息一つ乱していない小柄な少女は、
淡々とした口調で喋りながらも矢継ぎ早に致死の一撃を繰り出してくる。
「ぐぇっ……!」
眼福としか言い様のない豪快な大開脚から放たれる鋭く重い蹴りがこめかみを掠り、脳味噌に響く鈍痛を残す。
この少女の攻撃は、直撃イコール死の図式が成り立つクリティカルヒット級の威力を秘めている上に、
完全回避が不可能なほどの速度で迫ってくるのだった。防御や回避は考えても無駄かもしれない。
しかも熟練の僧侶や魔術師よりも強力な呪文を使ってくる。
ますます勝てる要素がなくなってきた。トーガ・ラマスーツで力が抑えられていたというのは本当だったらしい。
こいつはララ・ムームーだが、俺の知っているララ・ムームーとは別の生物だった。
「……畜生、絶対生きて帰ってやるからな!」
俺は全神経をララ・ムームーの動きに集中し、呪文を使う暇を与えないよう被弾覚悟の超接近戦を挑んだ。



  * * * * * * * * * * * *



「……負け……ちゃっ……た……」
俺の前にララ・ムームーと呼ばれるメイルシュトローム最強の生物が倒れている。
仰向けに倒れているララ・ムームーは息も絶え絶えといった様子で、ぼんやりと俺を見上げていた。
俺が全力で蹴りつけた片目は腫れ上がった瞼で塞がり、滅多打ちにしてやった全身には至る所に痣ができ、
上手く隙を狙ってかけてやった関節技の効果で、関節が幾つかおかしな具合に捻じ曲がっている。
口の端から血を垂らして全裸で大の字になっているララ・ムームーという光景を事情を知らない奴が見たとしたら、
十中八九、憐れな少女がボコボコにされた挙句にレイプされかかっていると受け取るだろう。
ガチンコファイトに勝利してその惨劇を演出したのは俺だった。
俺はララ・ムームーを見下ろし、激痛を堪えて小さく笑った。
「俺の……勝ち……みてえ、だな……」
ここだけを見れば俺の完全勝利に見えるのだろうが、俺の状態を見ればその認識もすぐに改まる。
何しろ、俺ときたらララ・ムームー以上の重傷だった。
部分的に石化させられた挙句に殴られた左腕は肘から先が砕けてしまっているし、
残った右も全力で殴り続けたせいで衝撃に耐え切れずに潰れている。
蹴りの直撃を受けたせいで右目が視神経ごと飛び出して、顔の前で振り子のように揺れている。
岩も噛み砕ける自慢の歯と顎は砕けている。頚動脈でも噛み切ってやろうと思って噛み付いたら、
柔らかそうな質感の皮膚からは予想もつかないほどの反発を食らって砕けたのだった。
身体中の至る所を掠めた引っ掻き攻撃によって忍者装束ごと肉が持っていかれ、全身が生肉色である。
これはもう、急いで特効薬のシャワーを浴びないと痛みで狂い死ぬか出血多量で死ぬかのどちらかだ。
ラバディを喰らった挙句に毒を受けているというような状態が今の俺に一番近いかもしれない。
「ち、畜生……滅茶苦茶に、やり、やがって……」
ララ・ムームーが完璧に動けなくなっていることを確認してから背を向け、特効薬が入った袋を探した。
さて、袋は無事に見つかったが、今回は両手が使えない上に口も使えない。どうするべきか。
満足に使えるのは骨だけは何とか生きている足くらいのものだった。
「……仕方ねえな……」
一瞬だけあまりに酷な現実に呆然としたが、すぐに気を取り直して激痛を発する足を瓶に伸ばし、
必死に瓶を掴み取ろうと努めた。
関節が限界以上に捻れて外れそうだが何とか堪え、瓶を掴み取ることに成功した。
後は簡単だった。
掴んだ瓶をそのまま脚を振り上げて放り上げ、落ちてくるところに蹴りを入れて叩き割ればよかった。
たったそれだけの動作で、俺の頭上にガラス片交じりの薬液が降り注ぐ。
傷口にガラスが刺さって痛いが、直後に染み透った薬液の魔力で全身の傷が一瞬で癒される。
よし、完全復活完了だ。
そう思いながらもどこかに傷が残っていないか自分の身体を見てみる辺り俺もチキンだが、
こうして改めて自分の身体を見てみて気づいたことがある。
肉ごと忍者装束を持っていかれたせいで、何と今の俺は本当の意味で全裸に等しかった。
はっきり言って、腰に布を巻いているだけバーサーカーやトログラダイトの方がマシだろう。
そこらに散らばっている忍者装束の切れ端を集めれば腰巻くらいは作れるだろうが、それも手間がかかりそうだ。
「てめえのせいで、素っ裸だ。どうしろってんだよ」
この惨状を引き起こした張本人のことを思い出し、悪態をつきながらララ・ムームーの方を振り返った。
「……これ……で……私……は、君……の、物……」
ララ・ムームーは焦点の合わない目でぼんやりと宙を見上げ、ほとんどうわごとのように呟いている。
仰向けになってもほとんど形を崩さずに天を目指している胸や痣だらけでも手触りのよさそうな肌は
扇情的だったが、所々でへし折れている手足や塞がった目、虚ろな瞳がそれを台無しにしている。
俺は自他共に認める悪人でレイプも嫌いではないのだが、殴りつけて屈服させるようなのは嫌いだったりする。
快感よりも苦痛の方が強く顔に出ている女は、抱いてもあまり興奮できないタチなのだ。
だから、このままこいつを犯したとしても自分で扱くより気持ちいいということはないだろう。
「ちっ、手間かけさせやがって」
舌打ちして最後の特効薬の瓶の首を手刀で斬り落とし、ぬるぬるした薬液を大の字で横たわる
ララ・ムームーの小麦色の裸身にぶちまけた。流石はマディの効力が封じ込まれた薬液だけあって、
中身を全てかけ終えた時には、傷だらけだったララ・ムームーは元通りの完璧なエジプト美少女になっていた。
もともと綺麗な身体だったが、まだ乾いていない薬液がこの辺りではあまり見かけない小麦色の肌を艶かしく光らせているせいで、
そこに外見不相応な妖艶さが加わり、存在自体が誘惑のような姿になっている。剥き出しの逸物が再び熱く滾り出す。
「……治して、くれたの?」
ララ・ムームーは手を開閉したり足の指を動かしたりして身体の調子を確かめながら、俺のことを見上げている。
「ああ」
発された問いに素っ気無く答えを返した俺だったが、頭の中はこの身体を思う存分に撫で回したいという
人間的にはアレでも生物としては正しい衝動で一杯だった。
俺はララ・ムームーに跪くようにして膝を突き、無造作にそのぬらぬらと濡れ光る魅力的な身体に手を伸ばした。
「……私、マディ使えるし、ヒーリング能力もあるから別によかっ…あっ……」
何か生意気なことを言い出すララ・ムームーを無視し、薬液にまみれた形のいい胸を軽く掴んだ。
ララ・ムームーが小さく吐息を漏らして震えるが、それにはお構いなしに薬液を擦り込むようにして撫で回す。
胸が小さめの女は強く揉むと痛がるから、感じさせてやるつもりがあるのなら手触りを堪能するように撫で回すのが一番いい。
俺は薬液でぬめる柔らかい肌と手の中にすっぱりと収まる胸の弾力を堪能しながら、もう片方の手で身体中を撫で回した。
「ん……ふ……何……してるの…?」
「ああ、イイコトだから気にすんな。黙って悶えてろ」
くすぐったそうに身を捩るララ・ムームーに適当な答えを返しつつ、首筋に始まり、肩、二の腕、手首、
胸元、腹、脇腹、太腿、尻、膝、足首、爪先、そして割れ目付近といった具合に、
性感マッサージとローションプレイの合いの子のような手つきで全身を撫で回していく。
本当に手触りがよくて触っているだけで凄まじく興奮してきたのだが、今すぐ突撃したいのを堪えて愛撫に徹する。
「はぁ……ん……ひっ、ぁ……」
身を捩るララ・ムームーを半ば押さえつけるようにして撫で回していると、次第にララ・ムームーの息が荒くなってきた。
感じてくるとやたらと声を出す女もいればあまり声を出さない女もいる。ララ・ムームーはどうやら後者らしい。
「どうよ、気持ちいいだろ?」
刺激されて尖った乳首を摘んで捻ったり、臍の辺りを指先で撫でたりして反応を楽しみながらララ・ムームーに訊いてみた。
実際、俺に、いや、俺に限らず繰り出す攻撃のほぼ全てがクリティカルヒットになるような高レベルの忍者に全身を念入りに愛撫されて感じない女は少数派だと言っていい。
はっきり言って、俺達の愛撫は不感症の女も悶絶させる。
一般人は敵の急所を見抜いて一撃で倒す技としか認識していないクリティカルヒットの技だが、実は色事にも応用できるのだ。
たとえば乳首の弄り方一つとっても、摘む強さから引っ張る角度、舐める位置から口に含む部分に至る全てを相手の好みに合わせて加減できる高レベルの忍者ならば、
それだけでイクほどの快感を女に与えられる。
一流の忍者は男女共に一流の色事師でもあるのだ。どんなに純情な奴でも、技術だけは訓練所で叩き込まれるのだ。
「ふぁ……身体が熱くて……むずむずする……気持ちいいよ……んぅっ…そこ……もっとぉ……」
全身を這い回る俺の腕を抱え込むようにしがみつきながら熱い吐息を漏らすララ・ムームーは、
快楽によって潤んだ瞳で俺を見上げ、更に多くの快感を要求してくる。
何も知らないように見えて意外に好き者のようだ。
「こんなに濡らしやがって、床に垂れてるじゃねえか。お前、案外エロい奴なんだな」
見れば、すっかり全身から余計な力の抜けたララ・ムームーの毛も生えていない桃色の割れ目からは、
舐めたら舌に絡みついてきそうなほどねっとりとした愛液が滴り始めている。
俺の手が触れるたびに感度のよさを示してくれるララ・ムームーは、火照った顔に不思議そうな表情を浮かべていた。
「……私、んっ、えっちな、ぁ、娘、なの…?」
「いや、これで普通だろうぜ。むしろ、他の女の方があんあんうるさかったな」
ここまで素直な反応を示されると、愛撫を加えた俺としても物凄く嬉しい。
あまり嬉しいので、俺も楽しくララ・ムームーにも気持ちいいという一石二鳥のサービスをしてやる。
「ひっ…ぁ……んっ、ふぁっ……ぁんっ……」
力なく投げ出された両脚の間に身体を割り込ませて汗と薬液に濡れた太腿を撫でながら開脚させ、
露わになった割れ目に舌を這わせ、ねっとりとした愛液を舐め取る。とても美味い。
「あっ、それ、いいっ、もっと、もっとして……」
もっと舐めたくなったので中に舌を差し込み、少し激しい舌遣いで掻き混ぜて啜り上げたら、
ララ・ムームーは凄まじい反応を示した。柔らかい太腿で俺の頭を挟んで固定し、
舐め取る側から愛液が湧き出してくる割れ目を擦りつけてきたのだ。
「げっ、おい、ちょっ、待てって……!」
柔らかい太腿の感触は最高だったが、万力のような力で頭ががっちりと固定されていて動かせない。
擦り付けられてくる割れ目は匂いといい味といい最高だったが、口が塞がれるのと愛液が流れ込んでくるのとで息ができない。
「気持ちいいよぉ……そこぉ……そこもっとぉ……」
逃れようともがく動きすらララ・ムームーには快感となって伝わるのか、びくびくと震える太腿に込められた力が強まる。
こうなったら、腹を括るしかない。あの死闘を制した挙句に女の股に挟まれて窒息死しましたでは本当に笑い話だ。
「ひゃんっ、そこっ、そこもっとっ……!」
口内でサクランボの茎を蝶結びにできる器用さと某殺し屋のように頭蓋骨を貫くほどの強靭さを兼ね備えた舌でぎちぎちに締め付けてくる内側を探り、
特に反応が顕著な所を探り当てる。
太腿を抱え込むようにして必死に顔を動かし、ララ・ムームーの急所を激しく舌で刺激し続けた。
とにかく、早いところイカせて脱力させないと流れ込んでくる愛液で溺死するか押し付けられた割れ目で窒息死するかのどちらかだから、俺も必死だった。
息苦しさを堪えつつ、命懸けでララ・ムームーの急所を探り続ける。
先ほどまでの興奮もどこへやら、今の俺は生きるのに必死だった。これはセックスではなく、戦いだった。
「あっ、んっ、いぃっ、そこっ、そこぉっ……!」
「ぐぇぇ……!」
舌を触手のように蠢かせて弱点を責め立てながら鼻先で陰核を押し潰すように擦り上げてやった瞬間、
俺の頭を柔らかく固定している太腿に何の前触れもなく鬼のような力が込められ、割れ目に密着している
口の中にねっとりとした愛液が大量に噴き出してくるのを感じた。どうやらイッたらしい。
ララ・ムームーが全身を震わせて悶絶している数秒の間、俺は頭蓋骨はみしみしと軋む痛みに悶絶していた。
物凄い筋力だった。これが柔らかい女の太腿でなく硬い石か何かだったら、間違いなく俺の頭蓋骨は砕けていただろう。
もしかして、ララ・ムームーを自分の物にする条件が力ずくなのは、最低限それだけの力がなければ、
一緒にいるだけで諸事情によって遅かれ早かれ殺されてしまうことになるからだろうか。
流石はメイルシュトローム最強の生物だった。普通にセックスするのさえ命懸けだ。
「ぁ……ふぁ……あ……」
ララ・ムームーの全身からすっかり力が抜けて拘束が外れた瞬間を見逃さず、太腿の間から頭を引き抜いた。
「ぷはっ…! マジで死ぬかと思ったぜ……しかし、空気がこんなに美味えとはなぁ」
空気の美味さに感動しながら、脱力しきったララ・ムームーを見る。
「……ん……気持ち、よかったよ……」
俺の視線に気づいたのか、荒い息を吐いて小振りな胸を上下させていたララ・ムームーは
初めて見た時には仮面のように無表情だった顔に満足げな目元を緩めている。
物凄く可愛かった。笑うと可愛くなる女はたくさんいるが、こいつはその中でも上位に位置する。
緩んだ表情に見惚れたせいで返事をするのに一瞬だけ間が空いたが、正直に見惚れていたと言うのも
馬鹿馬鹿しいことのように思えるので適当に流してさっさとヤってしまうことにした。
「……おう、そうか。んじゃ、俺も気持ちよくならせて貰うわ」
ララ・ムームーの華奢な身体を組み敷き、背中に腕を回して逃げられないように抱き込む。
俺の行動に気づいたのか身じろぎして逃げようとしているが、もう遅い。
既に、鉄棒のように硬くなった逸物を一回イッて蕩けた割れ目に押し当てている。
「あ……待って」
少しだけ押し込んだ瞬間、待ったがかかったが、待ってと言われて馬鹿正直に止まる男はまずいない。
少なくとも、俺の知る限りでは俺も含めてこの状況で待つ奴はいない。
「知るか」
俺は構わず腰に力を入れると同時に体重をかけ、逸物を押し込もうとした。
だが、無理だった。
「あのなぁ……」
先ほど俺を窒息死寸前まで追い詰めた太腿が、再び俺に牙を向いた。
「おいこら……」
人間どころか魔物としても規格外の筋力で俺の腰を挟み込み、これ以上の全身を阻んでいる。
特効薬の薬液が既に乾いてしまっているせいで滑らない上に筋力が拮抗しているので、進むことができない。
「てめえ、いい加減にしろよ」
俺はかぶりつく寸前でお預けを喰らった犬のような気分でララ・ムームーの顔を睨みつけた。
「待って……初めてはベッドがいい……本の中ではそうだったから。
 あと、私、初めてだから優しくしてね……って言うと男の人は喜ぶって書いてあった」
ララ・ムームーが読書家だったということには新鮮な驚きを覚えるが、
それよりもまず一体どんな本を読んでいるのかと問い詰めたくなり、更には正直に言うなよとも思う。
「しょうがねえな……」
何を考えているか今一つわからない顔を見て毒気を抜かれたので、溜息をつきながら腰を引いてやった。
くっついたままでいるとまた突っ込みたくなってしまうので、断腸の思いで身体を離して立ち上がる。
「あ……ベッドは向こう。それと、初めてっていうのは本当だから……」
指された方を見てみると、普段は何もない部屋の隅に小さなベッドがあった。いつもは隠しているのだろうか。
毛布やシーツが乱れているのは、アークデビルの悲鳴で飛び起きたきりそのままだからだろう。
「……で、お前は何してる」
上半身に飛びつき、そのまま俺の首に腕を回してしがみついてきたララ・ムームーに冷たい視線を送る。
正直な話、腹にくっつくくらいの急角度で発情している逸物が俺の腹とララ・ムームーとの間に挟まれて、
とろとろに蕩けた割れ目に擦られる位置にあるのが素股をしているみたいで気持ちいいのだが、それは言わないでおく。
「あのね……お姫様抱っこでベッドに連れて行って」
逸物が素股状態になっているのに気づいているのかいないのか、例の如くの無表情で俺を見上げてくる。
これも本で得た知識なのだろうか。だとしたら、ろくでもない本ばかり読んでいるとしか言い様がない。
「……わかったわかった。言う通りにしてやるよ」
力ずくで犯そうとしてもたぶん無理だろうから、ここは大人しく言うことを聞いてやることにする。
膝裏に手を回して全体を支え、背中に腕を回して上体を支え、最後に俺の首に掴まらせる。
体重だけは外見相応なララ・ムームーはとても軽いので、特に困難はなかった。
「これで満足したか?……まだ何かあるならさっさと言え」
「ううん……満足したよ。それじゃ、ベッドで、ね?」
ララ・ムームーは俺の投げやりな問いかけに首を横に振ると俺の肩に頭を預け、嬉しそうに目を細めた。

「んじゃ、いただくからな。力むと痛いから全身の力抜けよ」
大柄な俺には少し小さい気もするベッドにララ・ムームーを下ろし、蜘蛛が獲物を捕らえるようにゆっくりと覆い被さった。
「心配してくれたの?」
首に腕を回して抱きつきながら、ララ・ムームーは不思議そうに俺の顔を見てくる。
「まぁな。ギャーギャー喚かれたら萎えるしよ」
「ふぅん、意外に優しいんだね、君」
俺の答えに一瞬だけ意外そうな顔を見せ、直後に僅かな笑みを浮かべる。
何となく雰囲気が和んだのはいいが、これから一発ヤるという空気が消えてしまったのはどうにも困るところだった。
雰囲気を和みモードから濡れ場モードに戻すべく、クリティカルヒットを繰り出す熟練の指先を割れ目に潜り込ませた。
指を食い千切られそうなほどきつい穴に指先だけを差し込み、僅かに曲げ伸ばしして微弱な刺激を与えていく。
「んぁっ……は……ふ……きゅ、急に、何、するの……んっ…あ、も……もっと……ぁ…ん」
快楽の色の混ざった抗議の声が上がるが、既に知り尽くした入口付近の弱点を責め抜いたのですぐに大人しく身を任せてくる。
例によって太腿が動いて俺の腰ごと腕を抱き込もうとしてくるが、先ほどの轍を踏まないために前もって太腿に
殺人的な力が入らないように忍者の寝技を駆使して押さえ込んであるため、普通に抱きつかれているのと同じ圧力しか感じない。
「ん、そろそろいいだろ」
シーツに染みができるほどの愛液を滴らせる蕩けきった割れ目に逸物を押し当てる。先端に感じられる愛液のぬめりが気持ちいい。
女巨人には「子供みたい」と笑われるがそれでも一応あいつらとヤれるほどの巨根だから、
こんな毛も生えていないような割れ目に果たしてまともに突っ込めるのかどうか疑問だったが、少しずつ慣らしていけば何とでもなるだろう。
「ん……ふぁ…い、入れる、の……?」
俺の指先が与えた快楽の余韻に浸っていたらしいララ・ムームーが酔っ払ったような目で顔を見上げ、
背中に手足を回してしがみついてくる。準備はできたということだろう。
「おう。じゃ、いただくぜ……おっ、凄ぇ、締まりだな……流石、処女……」
俺は腰をゆっくりと突き出し、毛も生えていない桃色の割れ目に逸物をめり込ませた。
小さな割れ目を押し拡げて突き刺した逸物の先に蠕動する肉壁が絡みつき、噛み付くように締め付けてくる。
これまでに犯してきたどの女よりも強烈な締め付けと心地よい肉壁を備えたこれは、紛れもない名器だった。
少し締め付けが強すぎるような気がしないでもないが、これから何度も何度も使い込んでゆっくりと
いい具合になるように慣らしていけば、全く気にならないと言ってもいいほど些細な難点もすぐに消えるはずだ。
俺の物になるということはこれからずっと連れ歩けるわけだから、その気になれば四六時中ハメたままでもいられる。
全く、明日からの生活が楽しみで楽しみで仕方がない。
「あっ、ぐっ……痛……っ…!」
先を突っ込んだら、何かを引き裂いたような感触が伝わってきた。
処女膜を破ったのだった。
あれだけ殴っても涙一つ零さなかったララ・ムームーは、処女喪失による痛みに涙を零しながら苦鳴を漏らす。
痛みを紛らわせるためか反射的にかは知らないが、俺の身体に絡めた手足に力を込め、しっかりと抱きついてきた。
俺も同じくらいに力を込めてしっかりと抱き返してやり、涙に濡れる頬にキスしながら囁いた。
「そうか、痛ぇか……我慢しろよぉ、もうすぐよくなるからよ」
苦痛と恐怖で泣き出されて萎えてしまうといったことがないよう、しっかりと抱き締めて安心感を与えてやる。
男のことを気分的に受け入れている女というのは全くちょろい。身体を密着させて優しい言葉をかけたり、
励ましてやったりすれば、ただそれだけのことで処女喪失に対する恐怖や不安を解消させることができ、
それと同時に苦痛を和らげてやることができる。
案の定、ララ・ムームーは俺の頬にキスを返しながら、痛みを堪えるように笑った。
「う…ん…我慢、する……」
「よし、いい子だ……」
頭を撫でてやりながら、少しずつ少しずつ、壊さないように引き裂かないように、慎重な動きで奥を目指していく。
強烈な締め付けと共に余すところなく包み込んで絡みついてくる肉壁の感触がとても心地いいせいで、
思わずこのまま全力で突っ込んで思う存分に腰を振りたくなってくるが、処女にそれをやったら確実に
嫌われるので今後も付き合いが続く可能性がある相手には絶対にできない。忍者として鍛えた自制心をフル稼働させる。
蛞蝓が這うような速度で少しずつ押し進み、たっぷりと時間をかけて根元までを内部に納める。
それにしても、凄まじい快感だった。
徐々に慣らしながら進んだおかげで入れただけでイクという事態を避けられたが、
もし誘惑に負けて一気に貫いていたら発狂しそうな快楽の中で早漏の不名誉を被っていたことだろう。
「……ん…全部…入、った…?」
腰が密着したことがわかったのか、ララ・ムームーが俺の頬にキスをしながら囁くような声で訊いてくる。
「おう。しかし、よ…凄ぇな、お前の中。何つーか、すぐに出ちまいそうだ……まだ痛いかよ?」
本音を言うと今すぐにでも好きなように突きまくりたいところだったが、痛がるようならまだやめておくつもりだ。
折角、自制心を働かせてここまで耐えたのだから、それを無駄にしてはいけない。
「ん…まだ、少しズキズキする……かな…?」
もう大丈夫そうだが、強がっている可能性もあるので少し別の所を責めてリラックスさせてやった方がいい。
「そうか、んじゃ、気持ちいいだけにしてやるよ」
頬に当てていた唇を離して少しずつ下を責めていき、
首筋を舐め上げたり胸元にキスマークをつけたりしてちょっとした愛撫を加えていく。
全身を撫で回したことで急所は全て知り尽くしているので、悶えさせるのは簡単だ。
瑞々しくなめらかな肌の弾力と僅かに滲んだ汗の味を楽しみながら、首筋から胸元にかけてを何度も舐め回す。
「ふぁっ…っ…あぁ……ぅ…ん…」
涙目で苦痛を堪えるような表情を浮かべていたララ・ムームーの顔に、少しずつ快楽の色が浮かんできた。
背中に回していた手を俺の後頭部に回して優しく抱え込み、もっと舐めろと要求してくる。
太腿で俺を殺しかけたことを反省しているのか、今回は強すぎる力で絞めつけてくるようなこともなかった。
「よしよし、これくらいの力なら可愛いもんだ。どれ、可愛がってやるか」
ララ・ムームーが喘ぎ声を漏らして身じろぎするたびに連動して程よく締め付けてくる肉壁に身震いしつつ、
力加減というものを理解したことに対する褒美としてぷっくりと膨らんだ桃色の乳首に舌を這わせてやる。
「あっ……んっ…」
余程気持ちいいらしく、尖った乳首の先を舌で撫でてやるたびに全身を震わせている。
俺が探り当てた急所によると、こいつは乳首の先が弱い。乳首全体でもなければ乳首の側面でもなく、
とにかく先端のごく狭い部分を責められるのが弱いのだ。
こいつの場合、乳首をしゃぶるよりは舐めてやった方がより高い快感を導けるのだった。
俺としては舐めるのでは物足りないのだが、処女だということで特例扱いにしてこいつの快楽を優先してやっている。
次回からはしっかりと俺のやりたいようにやらせて貰うつもりだ。
「あぁ…ん……そこ、好きぃ……もっとぉ……」
恍惚として俺の舌を求めているララ・ムームーの声からは、完全に苦痛が消え去っている。頃合だった。
そろそろじっとしているのが辛くなってきたこともあり、俺はゆっくりと腰を動かし始めた。
「えっ、あっ、んんっ…ひっ…ぁ、ぁ……!」
咽び泣くような声を上げてしがみついてきたのでまだ痛いのかと思ったが、よく確かめてみるとララ・ムームー自身も
俺の動きに合わせて腰を動かしている。どうやら、胸を弄ったことで完全に痛みが紛れたらしかった。
「き、きも、気持ち、いぃ…よぉ……もっと……もっとぉ……」
しっかりとしがみついて囁き声のような嬌声を上げるララ・ムームーがとても可愛らしいので、押せば甘い抵抗を返し、
引けばいやらしく引き止めようとする名器のこともあってついつい俺も腰を激しく動かしてしまう。
処女を相手に激しく突くのは少しまずいかもしれないが、ララ・ムームーならば平気だろう。
それに、激しくとは言っても、しっかりと両手足を使ってしがみつかれてしまっているせいで、実質的には
身体を密着させたまま身体を揺さ振っているだけだ。動き自体は激しいものの突く運動としては大したものではない。
「あっ、気持ちっ、いい、よぉ…っ…ん…くぅ……ひゃ……ぃっ…」
だが、俺達にはそれでも充分だった。
俺はララ・ムームーの弱点ばかりを責めているし、ララ・ムームーの中はただ入れているだけでも気持ちいい名器だ。
こうして密着したまま揺さ振るだけでも、相当な快感がもたらされる。ララ・ムームーは夢見心地のような表情で
身悶えしていてイク寸前のようだったし、決して早漏ではない俺も腰が砕けるような快感にもう発射寸前だった。
「おら、イッち、まえ……!」
「あっ、んっ、やぁっ、そこはぁ……っ…!」
個人的な好みとして女よりも先にイキたくない派の俺は何とかしてララ・ムームーをイカせるべく、指や舌では届かない
弱点がそこかしこに並ぶ場所を激しく突き擦った。ララ・ムームーの肉壁が獣のように絡みついてくる。
「あっ、そこぉ…そこだめぇっ、くぁっ……んんっ…!」
責めた所は弱点ばかりだったので当然のことながらどこも反応が凄まじかったのだが、
その中でも一際反応が顕著だった部分ばかりを重点的に擦ってやると、ララ・ムームーは
忍者として鍛え抜いた俺の骨が軋むほどの力で抱きつき、全身を大きく震わせながら高らかな嬌声を上げた。
激しく震える肉壁も食い千切られそうなほどの強さで締め付け、俺も一緒にイケと雄弁に要求してくる。
俺は耐えた。
最後の最後まで耐えて、耐え切れなくなる限界まで達したところで解放するのが気持ちいいのだ。
ただし、頭の中で小難しいことを考えて快感を紛らわせるような我慢の仕方は激しく邪道だ。
また、もう駄目だと思った瞬間にイクような奴に至っては論外だ。
あくまでも、快感を何よりもはっきりと認識しながら耐えるから気持ちいいのだ。
「ぐっ……あぁ……!」
最後に繰り出された強烈な締め付け攻撃に俺は屈した。込み上げてくる射精感を抑えきれない。
情けない声を上げながら、俺はララ・ムームーの華奢な身体を抱き締めた。
「ちっ……も、もう駄目だぁ……!」
腰を一際深く沈め、これまでに強いられてきた長い禁欲生活によって溜まりに溜まった精液を
子宮に直接流し込むような勢いで全力でぶちまける。
雄の本能に従ってララ・ムームーの身体を押さえ込み、孕みにくい安全日の女でも確実に孕ませそうな量を流し込み続ける。
ドクドクという効果音が脳内で響くほどの量が、大きく痙攣する逸物から迸っているのが感覚としてわかる。
「あっ、熱い……のが……中にぃ……ぁん……」
すっかり身体から力が抜けたララ・ムームーは、火照った顔に陶然とした表情を浮かべている。
身体の中に精液を注いでいる最中にこういう顔をされると、出している俺としてももっと出したくなってしまう。
幸いなことに、ぐったりとした様子のララ・ムームーとまだまだ元気な俺とを繋げている逸物はまだ硬い。
実年齢は五十を超えたが一応イハロンで三十歳程度の肉体年齢を保っている俺だったが、
下半身の方は三十どころかまだまだヤりたい盛りのガキ共並みに若いらしかった。
なお、頭の中身に関してはノーコメントだ。

「まだ、終わりじゃ、ねえぞ……」
激しい運動をしたばかりで息が乱れているが、まだまだ俺は元気だ。しかし、このまま二発目というのも味気ない。
「折角だし、バックでヤって、みるか」
ぐったりとしているララ・ムームーの背中に腕を回し、身体をうつぶせにひっくり返してから腰を掴んで尻を掲げさせる。
もちろん、逸物を抜くような勿体無いことはしない。身体をひっくり返す時の逸物を捻られるような感触をきちんと味わう。
「……ふぇ…? な、何ぃ……?」
汗だくになって火照った上半身をぐったりとベッドに投げ出して尻だけを俺に対して掲げているという、
凄まじくエロい状態のララ・ムームーはまだ事態が飲み込めていないらしく、快楽に酔っているような表情で俺の顔を見上げてくる。
「抜かずの二発目って奴さ」
誰もが振り返りそうな可愛い上に綺麗な本当の意味での美少女に尻を掲げさせているという状況に更なる興奮を味わって発情しまくってはいたが、
まだ相手の言葉も聞こえないくらいには盛っていない。
「抜か、ず…?…何、それ…んひゃぁっ……!」
しかし、長々と話し込んでいられるほど冷静でもなかった。
よく意味が飲み込めていないらしく問い返してくるララ・ムームーの言葉が終わるのすら待たず、俺は腰を動かした。
若々しい弾力と女の柔らかさを兼ね備えたいい尻を割り開くようにして揉みながら、カリが引っ掛かる所までゆっくりと腰を引く。
刺激を受けて充血した肉がめくれ、出て行くのを引きとめようとするかのように逸物に絡みついてくる感触を存分に楽しむ。
割り開かれたせいで丸見えになったアヌスがひくつくのを見てここも弄ってやりたい衝動に駆られるが、
ここは次回以降にここだけを徹底的に可愛がってやる予定をもう立ててあるので我慢する。
腰を引いたら、今度は押し込む。今度は逆に押し潰すように尻を揉みながら、根元までゆっくりと押し込んでいく。
先ほどまでは行かないでくれと懇願していた肉壁が、今度は拒むように締め付けてくるのを楽しむ。
ついでに、腰に密着して変形し、必死に押し返してくる尻の弾力も楽しんでおく。
イッたばかりで敏感になっているララ・ムームーは、こんな具合に動かしただけでも大袈裟な声を上げて仰け反る。
何というか、可愛いという以外にこいつのことを表現する言葉が思いつかない。
「こういう、こと、だって、の!」
その反応に情欲を煽られてしまった俺に、いつまでも悠長に逸物を抜き差ししているような余裕があるはずもない。
途中でくずおれられて逸物が抜けてしまうといった興醒めなことが起こらないよう華奢な腰を掴んで尻を固定し、
ララ・ムームーの強靭な肉体でなければ壊してしまいかねないほどの強さと速度で腰を叩きつける。
「あっ、強っ、強ぃっ、よぉ…っ…! ひぃんっ、ふぁ……あぁっ、ん……!」
肉同士のぶつかる音が立つたびに啜り泣きのような声が聞こえてくるが、別に苦痛を感じているわけではない。
苦痛を感じているのなら俺の動きにタイミングを合わせて尻を押し付けてくることもないだろうし、
第一、本当に嫌がっているのならもっと辛そうな声で泣くだろう。
だから、小さめの枕を抱え込んで尻を振るララ・ムームーが放っているのは、紛れもない嬌声だ。
「ひっ、ぁ、ぁぅ……ぃ……いぃ……んぁぁっ……!」
心の底から気持ちよさそうな恍惚とした表情を浮かべたララ・ムームーは、
汗と愛液で濡れ光る尻を高々と掲げながら激しく腰を振り始めた。
どうやら、もう気持ちよすぎて抑えが効かないようだ。
それにしても、俺がもうそろそろイキそうな頃合になると同時に自分もイク寸前になるとは、
こいつと俺の身体の相性はもしかしたら物凄くいいのかもしれない。
「うっ……そ、それじゃ、二発目、イカせて、貰うぜ……っ…!」
お互いにイキそうになっているのなら、先にイクのは嫌だなどと変に意地を張る必要はもうない。
俺がイケばララ・ムームーもイクだろうし、ララ・ムームーがイケば俺もイクだろう。
腰とララ・ムームーの尻が隙間なく完璧に密着し、
更にはその華奢な身体が浮き上がるほどの力を腰を掴む手に込めて俺の方へと引き寄せ、より深くへと逸物をねじ込んだ。
「ひっ、も、ぉっ、やぁっ……ひぁっ…ぁぁ…………!」
ララ・ムームーが枕を抱き締めたまま大きく反り返り、声にならない嬌声を上げる。イッたらしい。
かく言う俺も、逸物全体がぎちぎちに締め付けられたことによって訪れた、脳味噌が破裂しそうな快感に耐え切れず、
再びララ・ムームーの中に大量の精液を吐き出した。
「うっ……す、凄ぇ……っ……」
エナジードレインを受けている最中のような、全てを搾り取られていく心地よい脱力感を感じる俺。
女を抱いてここまでの快感を味わったことは、これまでになかった。
心地よい脱力感を覚えて精液を吐き出しながら、汗の浮いた小麦色の背中に覆い被さる。
「……ぁ……お腹が……熱……ん…っ………ぁ…」
快楽の余韻に浸りながら、熱く滾った精液を注ぎ込まれる感覚に身悶えしている、幸せそうなララ・ムームー。
俺が与えてやる快感によがる女はいても、幸せそうな表情を浮かべる女はこれまでにいなかった。
覆い被さった俺に対して、ララ・ムームーは繋がったまま身体を反転させて抱きついてきた。



 * * * * * * * * * * * *



「……ねぇ……」
俺達は繋がったまま、小さなベッドに寝転がっていた。唐突に、腕の中のララ・ムームーが俺の顔を見てくる。
「私達って、愛し合っているの?」
例の如くの無表情でわけのわからないことを言われ、俺は思わず聞き返した。
「あ? 何だよそりゃ。どういうこった?」
「こういうことをするのは愛し合う人同士だって、本に書いてあったから……」
また本の話か。本当に、こいつは一体どんな本を読んできたのか。こいつの本棚を漁りたくなってきた。
「……それに……好きな人とすると幸せな気持ちになれるって……だから、私は君を愛しているのかもしれない」
抱きつき、胸に頬を擦り寄らせてきながら、俺の顔を真っ直ぐに見上げてくる。
「……君は、どうかな。私のこと、愛している?」
正直な話、俺には愛というものはよくわからない。愛したこともないし、愛されたこともない。
「……知らん。たぶん、愛しちゃいねえとは思うがよ」
ララ・ムームーの表情が曇る前に付け足した。
「だがよ、一緒にいりゃ、その内に情も湧いてくるかもしれんぜ」
「……うん。一緒にいよう……」
だが、幸せそうに俺の胸に顔を埋めてくるララ・ムームーの表情を見ると、愛されるというのも悪くないことのように思える。
同時に、愛されるために愛し、愛されたから愛すということも、とても幸せなことに思える。
「……ちょっと疲れたから寝るわ。抱き枕になってくれや」
だから、もう少しここでじっとしていよう。俺はララ・ムームーを抱き締め、目を閉じた。
「……うん。私も寝るね」
ララ・ムームーが寝息を立て始めるのを聞きながら、俺は夢の世界に旅立った。